Skip to navigationSkip to content

🌊 米国の新しい「投資」の波

Published

GIVE ME THAT CUSTOMIZATION, BABY

今夜は「資産運用」の話

いつでも好きなときに欲しいものが手に入る時代にあって、投資家がポートフォリオにも同じような自由度を求めるのは当然の流れでしょう。これに税制上の理由も加わって、米国の資産運用業界では「ダイレクトインデックス」の人気が高まっています。

ダイレクトインデックスは、投資家がファンドの構成銘柄や比重を自由に選択できる投資手法です。既存の投資信託や上場投資信託(ETF)を購入するのではなく、基本的にはゼロから好きなようにポートフォリオを組み立てられるため、例えば天然ガス価格が上昇している現在のような状況でエネルギー株への比率を高めたり、気候変動との戦いを支援するために石油関連銘柄は排除するといったことが簡単にできるのです。

カスタマイズ性という特徴とは別に、節税効果もあります。超富裕層は過去30年にわたり、キャピタルゲイン税(資産売却で得られた所得にかかる税)を抑えるために、ダイレクトインデックスと同じやり方を採用してきました。パフォーマンスの低い銘柄は売却し、税金を極力払わないで済むような工夫をしてきたのです。

そしていま、ウォール街の一部の投資会社がこの分野に特化した資産運用会社を買収して、投資に必要な最低額を引き下げたために、一般投資家を中心にダイレクトインデックス市場が急成長しています。この新しい(けれども実際には昔から存在した)投資戦略は、どのような方向に向かっていくのでしょうか。


BY THE DIGITS

数字でみる

  • 250銘柄:インデックス型投資をするのに最低限必要な銘柄の数
  • 12%:2021〜25年のダイレクトインデックス市場の推定年間成長率
  • 3,500億ドル(45兆8,500億円):2020年のダイレクトインデックス投資による総資産運用額
  • 1兆5,000億ドル(196億4,600万円):2025年のダイレクトインデックスの市場規模。オリバー・ワイマン(Oliver Wyman)とモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)による試算
  • 10万ドル(約1,310万円):ダイレクトインデックスの専用口座の開設に必要な最低額。10万ドルが相場だが、一部の資産運用会社では機能などは制限されるが低価格の特別口座を提供する

HOW DIRECT INDEXING WORKS

どんな仕組み?

Quartz

ダイレクトインデックスでは、投資家は特定のETFもしくは投資信託消費の構成銘柄を購入し、自らの投資戦略に従って業績の悪い銘柄や保有したくない銘柄は売却します。

この結果、市場全体の流れを幅広く追うというETFの特徴は維持しながらも、例えば含み損を抱えた株を売却して損失を確定することで節税効果が得られるのです。通常のETFでは特定の株を切り離すことはできないので、損失を確定したければETF全体が下がるまで待ってから売らなければ、ダイレクトインデックスのような損益合算による節税はできません。

インデックス型のポートフォリオを作成するには多数の銘柄を保有する必要があるため、こうした手法での投資にはかなりのお金がかかります。最低投資額は10万ドル前後で、管理手数料も通常は0.15〜0.35%程度とかなり割高です。


BRIEF HISTORY

DI小史

  • 1976年:バンガード・グループ(The Vanguard Group)の創業者ジャック・ボーグル(Jack Bogle)がインデックスファンドを考案。誰でも投資信託で利益を出せるようになる
  • 1992年:資産運用会社パラメトリック(Parametric)が初のダイレクトインデックス商品の提供を開始。パラメトリックはダイレクト・インデックスという概念の生みの親とみなされている
  • 2003年:投資会社イートン・バンス(Eaton Vance)がパラメトリックを買収
  • 2020〜22年:ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、ブラックロック(BlackRock)、JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)など業界大手11社が、ダイレクトインデックス関連で計12件の買収を行う。モルガン・スタンレーによるイートン・バンス買収や、バンガードによるフィンテックのスタートアップ、ジャスト・インベスト(Just Invest)の買収が市場を賑わせた。また、フィデリティ・インベスメンツ(Fidelity Investments)はダイレクトインデックス事業を立ち上げて試験展開している

IT’S ALWAYS ABOUT MONEY

本音と建て前

Quartz

上場投資信託(ETF)人気が高まり投資を始める人は増えましたが、資産格差は依然として解消されず、金融の民主化は果たされていません。ダイレクトインデックスも現状ではまだ富裕層が中心ですが、ここ数年の大手による企業買収を契機に、一般投資家を対象とした商品を提供する運用会社も出てきました。

金融分野の調査会社セルーリ・アソシエイツ(Cerulli Associates)によれば、ダイレクトインデックスは必要な最低額が高めに設定されているため、ある程度の規模の資産を運用していてキャピタルゲイン税の課税率の高い投資家の方が、大きな恩恵を得られます。一般投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)という観点からダイレクトインデックスに興味をもつ人がいるかもしれませんが、間口が下がったとはいえ、コストが高いことに変わりはありません。

さらに、もうひとつ耳の痛い話もあります。ESGを重要視する投資家が増えていることは事実ですが、一方でダイレクトインデックスを選ぶ本当の理由は倫理的なことではないようです。セルーリが大手ブローカーのディーラーなどにダイレクト・インデックスの最大の魅力は何か尋ねたところ、実に93%が節税効果と答え、ESGという回答は60%にとどまりました。

セルーリのマット・ベルナップ(Matt Belnap)は、「ファイナンシャルアドバイザーと話すと、かなりの確率で税金対策以外の目的はないと言われます」と述べています。ダイレクトインデックスを始める動機としては、地球を救うことよりも節税効果の方が大きいようです。


POP QUIZ

ここで問題です

ダイレクトインデックスで損失を確定するために銘柄を売却することを何と言うでしょう?

  1. キャピタルゲイン・ガーデニング(Capital-gain gardening)
  1. タックスロス・ハーベスティング(Tax-loss harvesting)
  1. スタンダードディダクション・ディギング(Standard-deduction digging)
  1. ファイリングステータス・ファーミング(Filing-status farming)

回答はこのニュースレターの最後で!

Quartz

QUOTABLE

こんな発言も

「価値観は人によって微妙に異なります。ですから、ファンド商品が自分の価値観と完全に一致することはほとんどありません」

── フィンテック企業アルトゥルイスト(Altruist)の投資部門責任者アダム・グリーリッシュ(Adam Grealish)。CNBCとのインタビューで、価値観を重視する投資家が構成銘柄が決まっている投資信託よりもダイレクトインデックスに意義を見いだすとすれば、それはなぜかという質問に対しての答え。


FUN FACT!

最後にトリビア

ESG投資が注目を集めるようになったのは、2004年に元国連事務総長のコフィー・アナン(Kofi Annan)が世界の大手金融機関の最高経営責任者(CEO)50人に対して、資本市場でESGという概念を広めるよう促したことがきっかけです。


クイズの答えは「② タックスロス・ハーベスティング」でした。今夜のニュースレターはNate Dicamillo、Morgan Haefner、Chihiro Oka、Sota Toshiyoshiがお届けしました。また明日朝のDaily Briefでお会いしましょう。

📬 Kick off each morning with coffee and the Daily Brief (BYO coffee).

By providing your email, you agree to the Quartz Privacy Policy.