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Startup:トヨタの先行く「未来都市」の作り手

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

Image copyright: REUTERS/MIKE SEGAR

CESでトヨタが発表した、実験都市「ウーブン・シティ(Woven City)」の開発計画はメディアで大きく取り上げられ、注目を集めました。ロボットやAIを駆使したスマートシティはまさに「未来都市」と話題を集めました。

一方、華やかなトヨタの発表の影で、同じCESの会場の隅でしたたかにスマートシティの事業化を進める、あるユニークなスタートアップの姿がありました。

今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、スマートシティという巨大産業に挑むスタートアップ、Culdesacをご紹介します。

Image copyright: Culdesac

Culdesac(都市ディベロッパー)

  • 創業:2018年
  • 創業者:Jeff Berens, Ryan Johnson
  • 調達総額:1,650万ドル(約18億円)
  • 事業内容:自動車のない、スマートシティの開発・建設
  • 株主:Khosla Ventures, Bessemer Venture Partners, Y Combinator

CAR FREE CITIES

自動車のない街

スマートシティは「金がかかる」「まだ先の未来」と思われがちです。自動運転車やドローン、街中をロボットが行き交う様子を想像すると、まだ先に思えてしまうのは仕方ありませんよね。

ところが、設立2年目の若きスタートアップCuldesacが手掛けるスマートシティは、すでにアリゾナ州テンピで建設中です。今年の秋には最初のスマートシティ「Culdesac Tempe(クルデサック・テンピ)」の入居が開始される予定です。

面白いのは彼らが提唱する「自動車のない街」というコンセプト。スマートシティというと、つい自動運転を想像してしまいますが、「そもそも車なんて要らないよね」と、「カーフリー」な街づくりを進めています。

■Culdesac Tempeイメージ

Image copyright: Culdesac

街には自動車用の道路や駐車スペースがなく、代わりに3割も緑が多くなります。住宅エリアには約1,000人を収容できる住宅636戸が建てられ、レストランや小売テナントが入居する約2,300平方メートルのエリアがオープンします。

■Culdesac Tempeイメージ

Image copyright: Culdesac

近隣には徒歩で行ける商業施設はもちろん、スクーターやバイクのレンタル、遠出をする際の交通手段に利用できるカーライドシェアサービス、電車、バスなどが整備されるので、自動車に頼らなくても生活を完結できます。1億4,000万ドル(約153億円)を投じ、16エーカー(約6万5,000平方メートル)の広大な土地が自動車を使わなくても生活できるスマートシティに変貌を遂げようとしています。

WHY CULDESAC

CULDESACとは何者か?

Culdesacの創業は2018年。不動産テックのユニコーンスタートアップであるOpendoorの創業メンバーRyan Johnsonと、McKinsey & Companyなどで公共開発や都市開発を担当してきたJeff Berensのコンビは多くの投資家の目にとまり、これまで著名投資家のビノッド・コースラのファンドなどから1,650万ドル(約18億円)を集めました。

Culdesacがユニークなのは、「スマートシティ」という巨大産業へのチャレンジにおいて、アリが象に挑むスタートアップ的な戦いをうまく展開していると思うからです。

「スマートシティ」はトヨタやGoogleの取り組みが有名ですが、大企業らしく「あれもこれも」です。トヨタのリリースを見ると「CASE、AI、パーソナルモビリティ、ロボット」と、てんこ盛り。かたやCuldesacは、スタートアップらしくスピード重視、そして”less is better”とばかりに、「クルマを無くす」という打ち出しです。「自動運転だろうと何だろうと、クルマには興味がない」という若者の価値観の変化をうまく突いていると言えます。

■トヨタWoven Cityのイメージ

Image copyright: TOYOTA

また「カーフリー」という一点にその特徴を集約させている点も、極めてスタートアップ的と言えます。「あれもこれも」では実現に時間を要するうえに、体験として尖ったものがないのがオチです。トヨタがこれから何年もかけて「未来都市」をつくる間に、Culdesacはいくつものスマートシティの建設を手掛け、その顧客体験に磨きをかけることでしょう。

そして、自動運転やロボットなど「テクノロジーの先端」に依存せず、今手に入るテクノロジーの組み合わせで提供している点。住民が求めているのは最先端のテクノロジー体験ではなく、その利便性。供給者のエゴに溺れず、ユーザー視点に立ってニーズを研ぎ澄ますスタートアップの特性がよく現れています。

Image copyright: Culdesac

さらに、データ寡占によるプライバシー意識の盛り上がりのなかで、スマートシティという「市民の生活そのもの」を手中に収める大企業に対する、市民や自治体からの抵抗感をうまく突いている点。実際、Googleがトロントで手掛けるSidewalk Labは、Googleが集めるデータに市民が懸念を示し暗礁に乗り上げています。対するスタートアップは一社で丸抱えせずさまざまな事業者とフラットに付き合うことができます。Culdesacはアリゾナ州テンピの開発に地元の大手デベロッパーを起用しています。

アリゾナ州はCuldesacのファウンダー2人の出身地。そしてテンピは大学都市で、19万の人口の平均年齢は30歳以下と若者の街で、新しいコンセプトが受け入れ易い。マーク・ミッチェル市長は「我々の理念と一致する」と、全面的なバックアップを約束しています。

CHANGING LIFE STYLE AND CITIES

ライフスタイルの変化と都市

リモートワークで通勤が不要になり、アマゾンで何でも揃うので郊外のショッピングセンターに行く必要もなく、スマホ一つであらゆるレストランのメニューがデリバリーされる。クルマを保有する理由は、今後益々乏しくなります。

むしろ市民が欲しているのは、自動車の往来を気にせず安心して歩ける道路や、憩いを得られる公園、排気ガスのないクリーンで緑の多い環境、そして近所同士で顔が見える近隣コミュニティかもしれません。

Image copyright: REUTERS/VASILY FEDOSENKA

Culdesacの試みには、否定的な向きもあります。「アリゾナの夏の猛暑に徒歩やe-Bikeでの移動など自殺行為だ」「一人暮らしの学生ならよいが、子どもの送り迎えなどファミリー層にクルマがないのはありえない」など。

成否はわかりませんが、驚きはクルマ社会なアメリカ発で「カーフリー」なスマートシティが構想されたこと。実は鉄道など公共交通機関が発達した日本でこそ、このコンセプトは機能するかもしれません。

設立2年目のスタートアップが手掛ける大規模都市開発。Culdesacの戦いは、もはやスタートアップに手掛けられない聖域は存在しないと痛感させられます。Culdesacの今後に注目です。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

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  1. AppleがNetflixのトップエンジニアを引き抜きThe Wall Street Journalの報道によると、AppleはNetflixのトップエンジニアの1人である、ルスラン・メッシェンバーグを引き抜きました。Apple MusicやiCloudなどのサービスを展開するうえでAppleが直面する技術的課題の解決が狙いだとされています。

今週の特集

今週のQuartz(英語版)の特集は「The VC boom(VCブームの行方)」です。つい最近までニッチな産業に過ぎなかったベンチャーキャピタルが今や爆発し、特に大きなVCによる弊害や問題も生まれています。その最前線をQuartzがレポートしていきます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵、写真:ロイター、Culdesac、TOYOTA、Design by Opticos Design Inc. Rendering by Hugo Render)

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