Skip to navigationSkip to content

Startup:地球を救う小さなサラダベンチャー

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
Published This article is more than 2 years old.

[qz-japan-author usernames=”masaya kubota”]

Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

Image copyright: REUTERS/DANIEL MUNOZ

突然ですが、今日のランチは何を食べましたか? 週の頭の月曜日は特に忙しいからと、コンビニやテイクアウトで済ませる人も多いでしょう。プラスチックの容器とビニール袋、そして溢れるゴミ箱。実は、こんな私たちの日常は、世界のトレンドとは対極にあります。

「持続可能性(サステナビリティ)」への関心が高まる昨今、ユニークな自動販売機が起こすランチ革命が、ニューヨークで話題になっています。今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、サラダを通し持続可能な社会を支えるFresh Bowlをご紹介します。

Image copyright: FRESH BOWL

Fresh Bowl(自動販売機型サラダ販売)

  • 創業:2018年
  • 創業者:Zach Lawless, Chloe Vichot
  • 本社:米ニューヨーク
  • 調達総額:210万ドル(約2億3,100万円)
  • 事業内容:自動販売機型サラダ販売

SUSTAINABLE FOOD SYSTEM

「持続可能」なサラダ

Fresh Bowl社は自動販売機でサラダやアサイーボウルを売っています。野菜は全てオーガニック。サラダはその日の朝につくられたものを毎朝補充しています。サラダの価格は6〜10ドル(約600〜1,200円)でボリュームもあり、おしゃれなサラダが1,500円程もする日本よりも割安な印象です。現在、自動販売機はニューヨークの駅構内やコワーキングスペースなど5カ所にあります。

Image copyright: FRESH BOWL

Fresh Bowlの特徴は容器にあります。再利用可能なガラス瓶を使っており、食べ終えて自動販売機に設置された回収ボックスに容器を戻すと、次回の購入で使える2ドル(約220円)割引のクーポンがもらえるんです。

容器を返却するついでに、購入して割引が受けられるなら、買いますよね。一度購入し始めるとリピートしたくなる仕組みです。容器の回収率は85%にも上り、駅構内などに設置された自販機はユーザーの行動導線にすんなりとはまっています。容器はどの自販機で返却しても良く、自販機の数が増えれば増えるほど便利になる、ネットワーク効果の効いたビジネスモデルです。

Image copyright: FRESH BOWL

このクーポンはSMSメッセージを通じて付与され、ユーザーとのダイレクトな関係性を得られます。クーポンが利用されれば、どの自販機からどんな商品が買われたかの購買データを取得できます。自販機ごとの人気商品や、天候などの条件を商品補充に活かします。例えば天気のよい日には赤や黄色のトマトやパプリカが入ったカラフルなサラダを提案する。利用者が増えるほどデータが蓄積され、マーケティングの精度が増します。

また、パッケージ費用はプラスチックだと50セント(約55円)、一方ガラス瓶でも1.25ドル(約140円)程度です。2〜3回の再利用ができれば、回収や洗浄も含めても、通常のパッケージよりコスト的にメリットが出せるそうです。サラダに絞った点も秀逸で、「あっため」が不要なので自販機に合うのと、見た目も綺麗なのでソーシャルで拡散されやすく、野菜をカットして詰めるだけなので生産も簡単。ビジネスモデル的にもよく考えられていると言えます。

DISPOSABLE AS AN ANACHRONISM

「時代錯誤」な使い捨て

Fresh Bowlが面白いのは、「使い捨て容器が便利」と思い込んでいた供給者の固定概念を覆した点です。食事の後、オフィスや屋外でプラスチックの容器を捨てる罪悪感、汚いゴミ箱を目にすることの不快感、日本なら外でゴミ箱を探すのも一苦労です。

使い捨ては大量生産・大量消費な、前時代の利便性です。そして「ゴミを捨てる」という行為は、実はかなりユーザーエクスペリエンス(UX)が悪い、という気づきが大きな発明でした。

Image copyright: REUTERS/JUAN MEDINA

共同創業者のChloe Vichot(クロエ・ブシェット)はフランス出身。欧州ではオフィスワーカーも、ランチはレストランで食べ、エスプレッソはカウンターで飲むため、容器のゴミは出ません。ところがニューヨークの金融機関で働くようになり、コーヒーはテイクアウト、ランチもランチボックスでデスクランチが普通。そこで、ニューヨークで再利用可能な容器で提供されるランチボックスを探してみたが、ありませんでした。そこで自分たちでつくろうと決意し、創業に至るのです。

最近の消費者は地球温暖化への意識が高く、環境問題に貢献したいけど手段が無い。Fresh Bowlのサラダ自販機がユーザーに届ける価値、それは、オーガニック野菜でつくられたヘルシーで美味しいサラダとともに、ランチを通じて手軽に「サステナビリティに貢献する」という体験そのものと言えます。

Image copyright: FRESH BOWL

そして、Fresh Bowlが支持される理由は、その誠実な世界観がユーザーに共感を呼んでいる点です。「世界はこうあるべきだ」「自分たちはこういう世界をつくりたい」というメッセージを、顔が見える形でユーザーに届けている。共感したユーザーはソーシャルメディアを通じて拡散し、世界観を共有します。D2C時代のミレニアル世代やZ世代のユーザーとの接し方を抑えた展開と言えます。

SALAD FOR ONE TO SAVE THE EARTH

サラダは地球を救う

日本と違い大規模農園が中心のアメリカでは野菜の価格が安く、カリフォルニアで15ドル(約1,700円)で提供されるサラダの原材料費は大体4.68ドル(約520円)に抑えられます。アメリカでたっぷりと美味しいサラダが食べられるのはこの為です。

Image copyright: REUTERS/ABED OMAR QUSINI

米国のサラダ市場の成長の理由は、健康志向の高まりとともに、女性の社会進出が起因していると言われています。オフィスのランチタイムに手軽でヘルシーなものを食べたいという女性の増加が後押ししました。

サラダ専門店にはなんとユニコーン企業も存在しています。Sweet Green(スウィート・グリーン)は400店舗以上を展開する全米No.1のサラダ専門店で、これまで5億1,500万ドル(約567億円)を調達し、直近の企業価値は16億ドル(約1,760億円)に上ります。

FACING CONSUMERS

ユーザーとの向き合い方

Fresh Bowlが体現したもの、それは「地球環境に貢献したい」というユーザーの声を代弁してカタチにしたことと言えるのではないでしょうか。

Image copyright: REUTERS/KEVIN LAMARQUE

世界観を提示し、共感を生むこと。「購入して終わり」な消費ではなく、ガラス瓶の返却やSNSでの繋がりを通じたダイレクトな関係性を構築し、長く顧客に寄り添うこと。今や企業はその規模を問わず、環境問題のような地球規模の課題と無縁ではいられない事実を突きつけています。

Fresh Bowlの熱狂は、これからの企業の消費者との向き合い方について、多くの示唆を与えてくれています。小さなサラダベンチャーの今後の挑戦に期待です。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. プラゴミ削減スタートアップ続々。人類がこれまでつくり出したプラスチックの総量は83億メートルトンを超えると推定され、その91%はリサイクルされていません。近年、プラスチック容器を避けて環境に配慮したい消費者のニーズは高まっており、ニューヨークのスタートアップ、DeliverZero(デリバーゼロ)はブルックリンはレストラン15軒に、デリバリー用の再利用可能なコンテナを。ケータリングサービスを手がけるDig(ディグ)は月3ドル(約330円)で再利用可能なボウルを提供しています。環境配慮を謳うことが、この1、2年で業界のトレンドだと説明しました。
  1. 秘密兵器は配偶者兼共同創業者。カップルかつビジネススパートナーとしてビジネスするのは難しそうに思えますが、案外そうでもないようです。スタートアップにおいては、その関係が良い効果をもたらす場合があります。Clearbanc(クリアブラン)の共同創業者カップルは、1人よりも2人であれば事業規模は倍になるうえ、忙しい相手の行動を理解できるからこそ、仕事を理由に喧嘩することもなくなると言います。同じ状況に置かれたパートナーの存在は、情熱、平等なモチベーション、スキル補完等のメリットがあり、孤独な経営者のメンタルを癒す支えにもなるそうです。しかしながら、ビジネスの協業関係も結婚もフレッシュなときはいい。答えは、時間が経ってから……。
  1. ロケット開発のギルモアスペース、実用化へもう少し。次世代の小型衛星打ち上げを目指すオーストラリアに拠点を置くGilmour Space Technologies(ギルモアスペース)は、従来の重量の最大30%を節約し、打ち上げコストを最大25%削減できる軽量化ロケット燃料タンクの開発に向け、政府から300万ドル(約3億3,000万円)の支援を受けました。同社は昨年11月に、同じく豪州発のスタートアップTitomic(タイトミック)と協力し、金属で作られた世界最大級の3Dプリントロケットを発表。小型ロケット実用化の日は着々と近づいているようです。
  1. 中国との接触が多いシリコンバレーの不安。Facebookは来月中旬に開催を予定していた5,000人規模の年次マーケティング会議をキャンセルしました。ベイエリアでは2月10日までに4人の患者が確認され、ハイテク企業は対応を進めています。Googleでは最近、手洗いと口を塞ぐよう促す標識が設置されたという情報も。

今週の特集

今日から配信開始の、今週のQuartz(英語版)の特集は「The purpose of B Corps(Bコーポレーションの目的)」です。日本ではあまり知られていませんが、環境やガバナンスなどの「良い会社」の基準として、世界で何千社もが認証を得ている「B Corp」。その真相をQuartzがレポートしていきます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

👇に、こちらの記事をシェアできる機能が追加されました(Quartz Japanのツイッターで最新ニュースもどうぞ)。