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Startup:コロナの対岸に見える「未来」

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。経済が止まり厳しい状況が続いていますが、スタートアップにとって危機は同時にチャンスでもあります。

Image copyright: PIETER BRUEGHEL THE ELDER (DETAIL, PUBLIC DOMAIN)
PIETER BRUEGHEL THE ELDER (DETAIL, PUBLIC DOMAIN)

毎週月曜はWiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで「次なるスタートアップ」の動向をお送りしていますが、本日は先週に引き続き、「新型コロナを通して見えるスタートアップの現在地と未来」をテーマにお送りします。

BEST TIME TO START A STARTUP

起業の「好機」

不況でスタートアップも停滞と思いがちですが、クライシスの今は起業に最適との指摘もあります。

まず、コロナで生まれた大量の不便や不満。課題があるところにニーズがあり、機会が生まれます。消費者のマインドセットが変わり、習慣が変わるタイミング。リモート環境下で身の回りの生活に転がる大量の課題は、全て起業のヒントになります。

次に、仲間を募りやすい点が挙げられます。行き詰まるスタートアップや機能不全に陥った大企業から、多くの優秀人材が放り出されます。危機はキャリアチェンジや仕事のやり甲斐と向き合うきっかけとなり、多くの人々を社会課題の解決へと突き動かす原動力となります。

REUTERS/ROMAN BALUK

そして、少ない資金調達は倹約な企業文化を醸成し、創意工夫を鍛えます。収益性にこだわり、戦略のフォーカスを研ぎ澄まします。リーマン危機と違い金融機関のバランスシートは健全ですし、VCはむしろ好機とみて優良な投資機会を模索しています。

さらに、顧客の財布の紐は固くても、創業間もない「持たざる」スタートアップの利点は大量の顧客や売上は不要であること。むしろ顧客の厳しい目線は、初期のプロダクトマーケットフィット(PMF)を試すには最適で、少数の熱狂的な顧客を醸成することに集中できます。

また、大企業もベンチャーもディフェンスに手一杯で、新規事業を手掛ける余裕はなくなります。マーケティングの打ち合いに明け暮れたコロナ前と比べて、競合環境はずっと緩いはずです。

NEW OPPORTUNITIES

新たに生じる「機会」

では、ポストコロナで注目すべき事業トレンドは何でしょうか。注目分野を見ていきましょう。

1. クラウド/今回のコロナの特徴は全員に等しく影響がある点。リモート化で進展したデジタル化は企業規模を問わずクラウドシフトを促すでしょう。中小の事業者向けに機能を削ぎ落とし、使い易さを追求したクラウドツールなど可能性があるかもしれません。ZoomキラーやZoom上でのサービスも次々とも現れるでしょう。

2. ヘルスケア/在宅ワークのストレスやウィルス感染への不安で、瞑想やマインドフルネスなどのメンタルヘルス急成長中です。フィジカルでは在宅フィットネスPelotonの日本版など、日本の狭い住宅事情に合うソリューションも可能性がありそうです。行政承認が一気に進んだメディカルでは、ヘルストラッカーや遠隔医療、Web問診票、薬のデリバリーなども徐々に普及していくでしょう。

REUTERS/HAMAD I MOHAMMED

3. 教育/Google Classroomのユーザーは1.2億人と急速に成長していますが、AppStoreでの評価は1.7と低迷。学校も家庭もITリテラシーは高くないため、使い易さと販路がカギです。大人にとっては、在宅でワークとライフが近接化するなかで、仕事(自己実現)と教育(自己研鑽)を行き来するようになり、リモートでのスキルトレーニングも需要がありそうです。学歴と仕事のパフォーマンスの相関が薄れる中で、大学のディスラプトに繋がるかもしれません。

4. エンタメ/スタジアムや映画館やライヴハウスに足を運ぶ日は先になってしまいそうですが、リモートは新たな可能性を生みます。場所やスペースの制約はなく、家から気軽に参加でき、グッズは並ばずに買え、好きなだけ投げ銭を投げられる。いずれVRが流れを加速するでしょう。

5. セキュリティ/いきなりのリモートワークで、パスワードが丸見えのルーターなどセキュリティは未整備。Zoomで秘密情報が漏洩したりBYODでウィルス感染したりと、リモートワークはリスクにあふれています。サイバー保険の需要も高まるかもしれません。

REUTERS/TYRONE LIU

6. ハードウェア/着け心地のよいヘッドセット、長時間座っても疲れない椅子、着心地のよい部屋着など、ライフスタイルの変化で新しいニーズが生まれています。極限まで削られた状況で、ソフトウェアでは解決できない、本当に生活や暮らしに必要なもの、心地いいものが見直され、求められるでしょう。

7. 不動産/一等地のオフィスが不要だと人々が気づき、不動産業界の大変革が起きるかもしれません。「オフィス」は「ワークプレイス」へと進化し、新たなコミュニティ形成の可能性もあります。同時に、移動の必要性が薄れ、モビリティの所有から利用へのシフトは一層進みそうです。

8. バイオテック/今や「世界中のバイオテックスタートアップが、何らかのかたちで新型コロナを研究している」と言っても過言ではないともいわれます。日本では話題になりにくいですが、海外では急成長中の分野。ワクチン開発で先行するModernaInovioなどが成果をあげれば一層弾みがつき、成長は加速するでしょう。

9. ブロックチェーン/次のパンデミックを防ぐには、監視の仕組みが必要になります。個人のヘルスデータは秘匿性が高くセキュリティが重要なため、ブロックチェーンとの相性がよさそうです。GoogleやAppleの新型コロナ感染者トラッキングは事態が落ち着いた頃に大きな議論を呼び、いずれ公的なインフラが必要になるかもしれません。

POST CRISIS

対岸に立つ私たち

私たちの生活は3カ月前と様変わりしました。街から人は消え、子どもは学校に行けず、会社員はリモートワーク、医療従事者は命を賭して働き、夕方にスマホに届く「今日の感染者数」を見て、一喜一憂する——。

米ハーバード大の公衆衛生チームが主導した研究は、2022年までは長期または断続的なソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)が必要で、さらには新たな感染が止んでも、2024年までに伝染病が再発する可能性があると指摘しています。

REUTERS/GARY CAMERON

不安定な毎日が続きますが、一つ明らかなのは、私たちはいつかこの谷の対岸に立っているということです。それは6カ月後なのか、2年後なのかはわかりませんが、この危機を克服して平穏な生活を送れる日は間違いなく来ます。

Uber、Airbnb、Square、Instagram、Stripe、Spotify、Dropbox, Twilio…これらは全て、前回の金融危機前後に生まれた企業です。「不況期に偉大な会社が生まれる」のは、単なる偶然ではないのかもしれません。今回のコロナ危機の裏で、この瞬間にも次のGAFAが産声を上げているかもしれません。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. SpaceXは来月、宇宙へ人を送る。NASAとSpaceXは5月27日、宇宙船に宇宙飛行士2人をのせて打ち上げると発表しました。2011年7月のスペースシャトル退役以来、アメリカでは有人宇宙船の運用をしておらず、約9年ぶりの打ち上げとなります。宇宙船は軌道に乗った後、約24時間でISS(国際宇宙ステーション)とドッキングする予定です。
  1. ワクチン開発、最高のシナリオ。オックスフォード大サラ・ギルバート博士によると、新型コロナウイルスワクチンは年内に完成する可能性があるようです。「最高のシナリオは、2020年秋までにフェーズ3で有効性が示され、大規模なワクチン製造能力が整うこと」。同大研究チームは5月中旬までに、ワクチンの可能性を調べる無作為臨床初期・中期ステージ試験を500人超を対象に行う計画です。
  1. プロフィール写真流出。顔認識AIを開発・販売していたClearview AIから個人情報が漏れていたことが明らかになりました。同社は、顔写真を撮りアップロードすると同社のデータベースと照合できるサービスを法執行機関向けに提供していましたが、照合先となる顔写真はSNSから無許可で集めたものでした。
  1. イギリスは6月まで封鎖? 夏の間まで“ローカルな封鎖”が継続される可能性があると、ドミニク・ラーブ英外相が警告しました。封鎖制限を解除すると感染の第2波が発生し、死者数増加のリスクがあるためと説明しています。17日に発表されたレポートは、パンデミックによって銀行の不良債権比率が悪化、中小企業は融資返済に苦労し倒産が連鎖するという欧州経済の負の連鎖を危惧しています。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

4月13日配信の「Startup:コロナ危機とスタートアップの今」で文中に誤りがありました。お詫びとともに訂正させていただきます。

誤)2018年のリーマンショック時と比べ
正)2008年のリーマンショック時と比べ
誤)現在世界のVCには1,890億ドル(約20兆円)の投資余力(ドライパウダー)があるとされていますが
正)現在世界のVCには1,890億ドル(約20兆円)の投資余力(ドライパウダー)があるとされていますが ※リンク先URL

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