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Startup:中毒者続出。謎の「雑談」アプリ

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
Published This article is more than 2 years old.

[qz-japan-author usernames=”masaya kubota”]

Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

今、シリコンバレーでClubhouseというアプリが話題です。4月にクローズドβ版をローンチし、有名起業家やセレブ投資家が殺到。利用するための招待状争奪戦が加熱しています。

ロックダウン下のシリコンバレーで始まった新勢力の胎動。今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、次世代SNSの覇権を狙うClubhouseに迫ります。

techcrunch.com
Clubhouse(音声版ソーシャルコミュニティ)
・設立:不明
・創業者:Paul Davison、Rohan Seth
・調達総額:不明

REGAINING A CHAT WITH FRIENDS

「雑談」を、取り戻す

リモートワークで消えたもののひとつが「雑談」です。面白そうな同僚の会話に混ざったり、その場のノリで誰かとランチに行ったり。目的や約束のない自然発生的な交流は、参加者と時間が決められたZoomでは不可能です。

Clubhouseはいわば「音声版Twitter」です。アプリ内は各Roomに分かれており、3〜4人のスピーカーが会話=雑談をし、10〜15人くらいのオーディエンスが聞いています。Roomの参加者はリスト表示されていますが、テーマはなく、開始も終了も時間は決まっていません

ユーザーは、ただ面白そうなRoomに入って会話を聞いていても、自らRoomを立てて誰かと雑談するのでもOKです。会話の途中で誰かを会話に誘ったり、聞いている途中で手を挙げて会話に参加することもできます。

「朝起きたらまずこのアプリを立ち上げる」「次のZoom会議までの10分で面白そうなRoomをチェックする」など、中毒になるユーザーが続出しています。Android版がリリースされていないため、このためにわざわざiPhoneを購入する人もいるそうです。

まだクローズドβ版でウェブサイトも存在しません。招待制なため、多くの人にその実態は謎です。Twitterで招待状リクエストのツイートが飛び交い、間違って同名のソフトウェアにサインアップしてしまう人が多発するなど、過熱しています。

@RICBURTON / TWITTER

REASONS BEHIND A BUZZ

熱狂の理由

Clubhouseがウケる理由はいくつか考えられます。

まず、ふらっと使える気軽さです。相手を誘う必要がなく、ふらふらとオフィスで面白い会話をしている同僚を探す感覚です。音声なので料理中や運転中でも、服装や場所も何でもよし。トピックも時間も決められていないので、気の向くままに、ゆるく話せて聞けるカジュアルさがあります。

また、オーディエンスとスピーカーの境界線が曖昧です。突然スピーカーから発言を求められたり、手を挙げて発言することもできます。オフィスで誰かの会話を“ながら聞き”しながら、流れで会話に途中参加する、あの感覚です。ポッドキャストやウェビナーのように話し手と聞き手がきっちりと分かれておらず、この境界線を行ったり来たりする体験は新鮮です。

そして、録音がないため、今聞かないと永遠に聞けないという希少感です。一度きりの特別感と、何が起こるか分からないワクワク感。参加者同士が今という時間を共有でき、情報の鮮度も最新です。「1日20回チェックする」「寝る前に聞いたら朝2時まで話し込んでしまう」などハマる例が多発しています。

さらに、起業家やVCなどテック業界の有力者が多く参加しています。Shopifyについて話していたら創業者のTobias Lutkeが聞いていて、そのまま会話に入ってきたことも。コミュニティの親密感が安心感を醸成し、会話の質を担保しています。招待制のため、「使いたくても使えない」焦燥感も掻き立られます。

@ALEXADELMAN / TWITTER

REVENGE UNDER COVID-19

連続起業家のリベンジ

Clubhouseの生みの親は、連続起業家のPaul Davison(ポール・デイヴィスン)です。

地図上にFacebookプロファイルを表示する出会いアプリHighlightで2012年のSXSW(サウスバイサウスウェスト)で一躍話題をさらいました。事業としてはパッとせず、2016年に安値でPinterestに会社を売却した過去をもちます。

GIGAOM / YOUTUBE

当時から、“People Discovery”(人との出会い)に興味があったというデイヴィスン。「人との出会いや繋がりは人生で最も大事なもの。私たちは知るべき人のことを何も知らず、繋がる方法も非効率に満ちている」と、Highlightを送り出した当時のインタビューで語っています。

「出会い系アプリ」と「音声版Twitter」。一見全く別物に見えるこの2つのサービスの、根底に流れる彼の想いは同じです。Clubhouseという強力なプロダクトを引っ提げ、デイヴィスンは8年越しのリベンジに戻って来ました。

現在Clubhouseの社員は、彼と共同創業者の2人だけです。ほぼ毎日アプリがアップデートされている様子から、開発スピードの速さとコミットの高さが伺い知れます。

DEMAND FOR SOCIALIZING

求められる「交流」

孤独を強いられる過酷な状況で、「人と繋がりたい」欲求から、Clubhouse以外にも急成長中のサービスが次々と出てきています。

techcrunch.com
  • Houseparty友達と簡単にビデオチャットできるアプリ。面白そうな友達の会話に参加したり、オンライン中の友人にWaveを送って誘導できます。一緒にカジュアルゲームも楽しめます。「友達の友達」までを上限8名のRoomに誘え、クローズとオープンの設定が絶妙です。16カ国のApp Storeで総合1位を獲得(上記グラフ参照)し、1カ月でユーザー数が70倍に伸びた地域もあります。
  • Squadビデオチャットしながら画面共有できるアプリ。TikTokやInstagramなどの画面を共有しながら雑談できます。10代の女子に人気で、3月後半の2週間で利用が1,100%の伸びを記録。自宅利用の急増に対応してローンチしたデスクトップ版では、Netflixなどストリーミング動画を一緒に見ることができます。「Z世代向けのZoom」です。
  • Marco Poloビデオメッセージを送り合うアプリ。簡単にエフェクトを入れて編集ができ、グループに一斉に送信できます。ライブではないため時間を合わせる必要がありません。2014年からあるアプリですが急成長中で、3月に新規ユーザーが16倍に増加しました。

また、Facebookはビデオチャットツール「Messenger Rooms」を発表しました。最大50人まで接続できて時間無制限で無料、ARエフェクト機能に強固なセキュリティと、万全の構えです。

FUTURE OF CLUBHOUSE

Clubhouseの未来

さて、Clubhouseはソーシャルの新境地を切り開く存在になり得るでしょうか。それともロックダウンが明けて人の交流が戻ると忘れ去られる、一過性のサービスで終わってしまうのでしょうか。

REUTERS/MIKE HUTCHINGS

ユーザーを広げながら、いかに親密さを保てるか。コンテンツの質やコミュニティの安心感が、マスに広げた時にどう保たれるか、は課題になるでしょう。TwitterやSpotifyあたりが早期に買収する可能性もありそうです。

一日中ビデオ会議でイヤホンを着けっ放しな人が増えるなか、音声市場の成長は続きそうです。動画ほどの情報量や期待値の高くない、音声オンリーのカジュアルな交流の市場は、空白地帯です。Clubhouseは「音声版SNS」として覇権を握れるでしょうか。今後も目が離せません。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. デジタル人民元発行の後押し。高精度な顔認証技術で世界でも注目されるAIスタートアップSenseTimeが、デジタル人民元のリスク管理と金融機関の運用能力改善に向け、中国人民銀行(PBoC)に協力することが明らかになりました。深セン、成都、蘇州、雄安新区の4エリアでのテスト運用は今月にも実施されると噂されています。
  1. LINEで通話相手と一緒にYouTubeを楽しむ。今日からLINEのビデオ通話の相手とYouTubeを同時に視聴することができるようになりました。これに先立ち、スマホの画面に表示されている内容をそのまま相手に見せることができる画面共有も可能に。また、ビデオ通話時の1画面の同時表示人数が、スマートフォンは最大6人、iPadは最大9人に増えました。
  1. 医療従事者を守るテクノロジー。新型コロナウイルスの感染が広がるインドで、最前線に立つ医療従事者の安全を守るアプリDozeeが活躍しています。感染者の心拍数、呼吸、睡眠などの状態を遠隔で監視する、非接触型のヘルスモニタリングデバイスで、すでに、感染者最多のムンバイを擁するマハーラーシュトラ州はじめ7つの州で導入されています。
  1. 混雑具合チェックも一瞬で。イスラエル発のスタートアップNexarが、街のスポットの混雑状況を可視化するデータサービス「Nexar Virtual Camera」をローンチ。パンデミックの期間中は無料で提供されるそうです。同社はまた、シリーズCの資金調達ラウンドで5,200万ドル(約55億6,000万円)の調達を発表しています。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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