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Startup:コロナ解雇5万人の「別れ際」

Image copyright: REUTERS/LEAH MILLIS
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This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

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REUTERS/LEAH MILLIS

アメリカのテック業界には、レイオフの嵐が吹き荒れています。Uber:3,700人(14%)、Groupon:2,800人(44%)、Airbnb:1,900人(25%)、Toast:1,300人(50%)、Yelp:1,000人(17%)など、ユニコーン企業が大胆な事業縮小を余儀なくされています。職種別ではセールスとカスタマーサクセスで、全体の半分を占めます。

シリコンバレーでは、ここ数年続いた求職者優位でタイトな売り手市場が一変、冷え込む採用市場にテック人材が溢れ返る、急転直下の事態です。

今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、テックの力でレイオフ社員の再就職を支援するDraftedを取り上げます。

Image copyright: DRAFTED

Drafted(再就職支援プラットフォーム)
・設立:2014年
・創業者:Vinayak Ranade
・調達額:320万ドル(約3億4,000万円)
・事業内容:レイオフ対象者のアウトプレイスメント・プラットフォーム運営

Layoff Reality

レイオフ5万人の現実

Airbnbは5月初め、1,900人(全社員の25%規模)となる大規模なレイオフを発表しました。

公開された共同創業者CEOのBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)が社員に宛てたレターには、想定外の事態に葛藤し苦渋の決断に至るまでの想い、会社を去らなければならない仲間への愛情と感謝がストレートに綴られています。退職金や再就職支援など最大限のアフターケアが約束され、透明性を重んじ、人を大事にするカルチャーが滲み出ていました。

好対照なのが、30%にあたる400人のレイオフを行なった電動バイクシェアのBirdです。

レイオフ当日朝に緊急招集メールを受け取った在宅勤務中の社員。他のミーティングが全てキャンセルされ、不穏な空気を感じつつZoom会議に参加すると、見知らぬ女性が原稿を機械的に読み上げ、わずか2分で参加者全員への解雇が告げられました。直後に会社のメールやSlackアカウントから強制的にロックアウトされるなど、グタグダぶりが話題になりました。

Image copyright: CNBC TELEVISION/YOUTUBE

5月18日現在までにレイオフを実施したスタートアップは430社、解雇された社員数は約5万人ですが、実際はこれよりずっと多そうです。

この規模でのレイオフ実施はほとんどどの企業にも経験がなく、リモート環境でのZoom宣告という異例の事態です。冷え込んだ採用市場に放り出される社員も大変ですが、企業側も大混乱を来しています。

Linkedin 2.0

リンクトイン2.0

レイオフ社員の再就職支援でユニークなサービスを提供するのが、Draftedです。「Layoff Network」という、レイオフされた社員と採用企業が繋がるプラットフォームを提供しています。

Layoff Networkの特徴は、本人のプロフィールに「エンドースメント(=お墨付き)」として、第三者の推薦コメントが付くことです。求職者の経歴やスキルのサマリーに加えて、推薦者からのお墨付きがコメント付で表示されます。

Image copyright: DRAFTED

Layoff Networkに参加する人は、簡単なプロフィールを記入したのち、友人や前職の上司など知り合いから、この“お墨付き”を貰います。知り合いにお墨付きを与えたり、お墨付きをリクエストされることもあります。求職者情報はリストではなくタイムライン形式で表示され、情報の鮮度が保たれています。

“褒め合う”“助け合う”ことで知り合いを巻き込むネットワーク効果により、自然とユーザーが増える仕組みです。個人利用は無料で、企業には有料で法人プランを提供しています。4月に始まったばかりですが、ローンチ前から100社を超える利用登録があり、人気を博しています。

第三者の評価やコメントがあることで、採用側はより客観的に候補者を評価できます。エンドースメントの機能はLinkedInにもありますが、それに絞り込んで内容を削ぎ落とし、求職という目的に絞ったソーシャルグラフという点で、まさに“LinkedIn 2.0”とも呼べるサービスです。

Community of Layoff Employees

“互助”ネットワーク

Draftedの創業は2014年。旅行予約サイト大手Kayakでエンジニアの採用担当だったビナヤック・ラネイド(Vinayak Ranade)は、リファラルに特化したリクルーティングSNSに起業のヒントを得ます。

採用にあたって、いつも同僚に「誰かいい人いない?」と聞いて回る毎日ですが、大抵すぐ思いつく人には評価に偏りがあるし、聞いたり調べたりすればするほど、さらにいい人がいるケースがほとんど。もっと簡単に探せて、知り合いを評価できるサービスがあればと、Draftedを創業しました。

Image copyright: COURTESY OF DRAFTED

企業がレイオフの際に使うアウトプレースメント・サービスは、面接での簡単なアドバイスと採用企業への数回の電話と面接アレンジで一人あたり3,000ドルと高額です。何より、レイオフで傷ついた社員と上から目線で機械的対応の業者との乾いた関係は、前向きでオープンなスタートアップ文化とズレています

AirbnbやUberなど、自社で再就職支援まで手掛けられる会社はごく少数で、小規模スタートアップのレイオフ対象者には適切なサポートが届けられていません。Draftedは、AIを駆使した“最適マッチング”ではなく、個人の人間関係に基づいた“コミュニティ型のアウトプレースメントサービス”へと傾注していきます。

2019年春から片手間でテック企業のレイオフ情報(Layoff List)をメール配信し始めたところ、今年になって登録者が急増。これにソーシャルな仕組みを入れてプラットフォームとして送り出したのがLayoff Networkで、これが大当たりでした。

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Hardthings by Slack

Slackの通った道

退職者の再就職支援で有名な事例は、Slackです。現在のグループツールにピボットする以前、2012年にオンラインゲーム「Glitch」で失敗し、シャットダウンに追い込まれます。

レイオフを社員に伝えるその場面で、創業者兼CEOのスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)は立ち上がったまま涙が溢れ、言うはずだった第一声が出てきません。彼の視線は、3カ月前に2人の子どもと妻を連れて本社のあるバンクーバーに来てくれたエンジニアに釘付けになったまま、37人の社員を前にゆっくりと、“it’s over…”と切り出したそうです。

そして、レイオフ対象の社員の顔写真とLinkedInのプロフィール、そして作品を載せたサイト「Hire A Genius」をつくり、一人残らず転職を成功させました。

Image copyright: REUTERS/BECK DIEFENBACH

このストーリーには続きがあります。

Slackが軌道に乗り始めたとき、前出のエンジニアにスチュワートは「バンクーバーに戻ってこないか」と一通のメールを送ります。かつて自分を解雇した本人からの誘いに悩む彼でしたが、意を決して出戻り、Slackは大成功を収めます。

Attitude toward People Departing

別れ際の誠意

新たに入社した社員のサポートを「オンボーディング」と言いますが、会社を去る社員と良好な関係を構築・維持する「オフボーディング」が、人事の世界ではキーワードです。

退職者は、お互い知れた出戻り採用や、顧客や事業提携先になる可能性もあります。卒業生コミュニティの「アラムナイ」(Alumni)は、社内と社外の中間、まさに企業にとっての“隠れたタレントプール”です。Alumniを活性化するためには、手厚く緻密なオフボーディングはとても重要です。

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Slackの事例は、レイオフされたエンジニアが出戻る誠実なオフボーディング、それを産んだ経営者の姿勢と企業文化が成功のカギを握ると実感させられます。

会社を去る社員とどの様に向き合い、付き合っていくのか。苦しい局面で、いかに真摯に人と向き合えるか。コロナ後に復活を遂げる企業とそのまま失速する企業を占うヒントが、そこに隠されているのかも知れません。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. FBが推定4億ドルでGIPHYを傘下に。Facebookは5月15日(現地時間)、GIF作成プラットフォームのGIPHYの買収を発表。GIPHYブランドは残したまま、Facebook傘下のInstagramに統合されます。ネット上では不安の声も上がっており、メッセージアプリSignalの元には、同アプリ上でのGIPHY検索について質問が寄せられているそうです。
  2. Apple、VR配信スタートアップのNextVRを買収。買収額については明らかになっていませんが、4月の報道では、買収額は1億ドル(約107億円)とも伝えられていました。Appleにとって今年3件目の買収。AppleのARデバイスは2022年ごろに発売すると報じられています。
  3. OYO創業者辞任説はウソ。OYOグループ創業者兼CEOのリテシュ・アガルワル(Ritesh Agarwal)の辞任の噂が出回っていましたが、取締役のベッツィ・アトキンス(Betsy Atkins)がこれを正式に否定しました。Agarwal本人も、Twitterでデマだと投稿しています。
  4. IT技術を巡る応酬続く。トランプ米大統領による、米国の技術を使用したファーウェイの半導体開発をさらに制限する計画の発表を受け、中国政府は22億5,000万ドル(約2,360億円)を国内最大手チップメーカーSMICのウェハー工場に投入します。米国への対抗措置とみられます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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