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Millennials:怒れる若者が求める「政治」

Image copyright: 2012年5月、スペイン。怒りの声を上げてる若者は「indignados(怒れる人々)」と呼ばれる。REUTERS/ALBERT GEA
2012年5月、スペイン。怒りの声を上げてる若者は「indignados(怒れる人々)」と呼ばれる。REUTERS/ALBERT GEA
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日お届けする「Millennials Now」では、キャリア形成に重要な時期にコロナショックが直撃することになったミレニアル世代が、今後どのように政治と「歩んでいく」のか、欧米の識者の声とともに考えます。

Image copyright: REUTERS/KAI PFAFFENBACH
REUTERS/KAI PFAFFENBACH

今、ミレニアル世代は、社会に出て2度目の経済危機に直面しています。

2000年代後期の世界金融危機、いわゆるGreat Recessionから続く経済不況によって、ミレニアル世代は上の世代に比べて、経済的により不安定な状況に陥っているとされていました。

そして、コロナショックが、彼らの不安にさらなる影を落としています。

質の高い教育を受け、テクノロジーに精通し、複数の言語を操る者も多いミレニアル世代。にもかかわらず、キャリア形成の初期を襲った2度の経済危機が、その後の人生において、長期にわたり経済的・精神的な影響を与え続けるのは間違いありません。

こうした現状を、英Economist誌は、「ついていないミレニアル世代」と表現。そして、こうした経済危機は、ミレニアル世代の政治意識に対しても大きな影響を与えているといいます。

Underemployment

働きたくとも

1985年生まれのイタリア人Carlo Bonetti(仮名)が、金融危機の影響を痛感したのは大学4回生のころ。3カ国語を流暢に操り、名門の経営学校に通っていた彼は、周囲からも将来は有望だと言われていました。

しかし、2008年に金融危機が起き、彼は就職浪人に。その後、幸い一流ホテルに就職をしましたが、今度はコロナ危機によって失業の可能性が高まっています。

Carloは、管理職への昇進や昇給は近い将来見込めず、収入不足から家庭をもつことすら考えられないと言います。

Image copyright: ロックダウンが緩和されたイタリア・ローマ。REUTERS/GUGLIELMO MANGIAPANE
ロックダウンが緩和されたイタリア・ローマ。REUTERS/GUGLIELMO MANGIAPANE

2008年の金融危機とそれに続く欧州での債務危機において、その矛先は若年層に向かいました

欧州の若者は「アンダーエンプロイメント」(失業、あるいは学歴・職歴に見合わない仕事に従事せざるをえないこと)を強いられました。イタリアでは若者の10人中4人(2013年)、スペインでは10人中5人(2012~2013年)が失業者となったとされています。

A call for change

変革を求める声

経済的打撃は、ミレニアル世代の政治意識にも影響を与えています。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでミレニアル政治(Millennial Politics)を研究するYonatan Leviは、次のように分析します。

「2008年の金融政策の際、欧州のミレニアル世代は、緊縮財政により、銀行などが引き起こした経済危機の代償を払わされた。これは多くの若者に怒りを買うと同時に、既存の政治・経済のシステムに幻滅させ、経済・社会の変革への強い願望を生み出した」

Image copyright: 2012年5月、スペイン。怒りの声を上げてる若者は「indignados(怒れる人々)」と呼ばれる。REUTERS/ALBERT GEA
2012年5月、スペイン。怒りの声を上げてる若者は「indignados(怒れる人々)」と呼ばれる。REUTERS/ALBERT GEA

パリ政治学院准教授(社会学)のEmanuele Ferraginaは、“変革を起こしてくれそうな”政党への支持が広がっていると指摘します。

「ミレニアル世代は政治に対し、強い疑念を抱いている。特に2008年の金融危機は、非典型雇用者が主流政党に投票しない傾向を強めた」

実際に、2019年の欧州選挙をはじめ、近年の各国の選挙では、主流派の退潮が鮮明になり、新勢力の躍進が目立ちました。

たとえば、南欧ではポピュリスト政党が、若者の人気を得ています。

昨年5月に行われた2019年欧州議会議員選挙では、イタリアでは右派ポピュリスト政党LEGA(北部同盟)がミレニアル世代とZ世代から篤い支持を得ました。スペインでも、極右政党VOXや左派ポピュリズム政党Podemosが、若者を中心に賛同する声を集めています。

Image copyright: Podemosのリーダー、パブロ・イグレシアス(左)とスペインのペドロ・サンチェス首相。 REUTERS/SUSANA
Podemosのリーダー、パブロ・イグレシアス(左)とスペインのペドロ・サンチェス首相。 REUTERS/SUSANA

この選挙では、複数の国において環境政党が躍進したことも注目されています。特に、ドイツの18~30歳の有権者の間では緑の党が最も人気を集めました

世界経済フォーラムの報告書(PDF)によると、ミレニアル世代の約半数が世界規模で「気候変動を最も深刻な問題」と捉えているとされていますが、この選挙はこの報告を裏付けるものともいえそうです。

College isn’t what it used to be

大卒者の憂うつ

米国においても、2008年の金融危機の傷跡は深いようです。ミレニアル世代は親世代よりも低い生活水準を強いられる、米国史上初の世代になるともいわれています

皮肉にも、ミレニアル世代は最も幅広く教育を受けている世代でもあります。Pew Research Centerによると、就職している米国民のうち、25~29歳の40%が大卒者です(X世代は32%、ブーマー世代は26%)。

Image copyright: AP PHOTO/DARRON CUMMINGS
AP PHOTO/DARRON CUMMINGS

コンサルティング会社Greenmantleでシニアアナリストを務めるEyck Freymannは、こうした状況を次のように説明します。

「これは、教育における“軍備競争”にすぎない。現在、大卒の就業者が過剰となり、高卒資格だけを必要としていた仕事も大卒者で埋められている。多額の授業料を支払って大学を卒業しても、安定した中流階級の生活を保障してはくれない」

「さらに数十年前に比べ、高等教育の学費、医療費、住宅価格は高騰している。ブーマー世代やX世代よりも貯蓄が少ないミレニアル世代にとって、家を買うこと、ひいては家庭をもつことはより難しくなった」

Socialism Rises

社会主義でもいい

調査会社Data for Progressの新しい報告書によると、米国では、パンデミックで失業、休暇取得、労働時間の短縮を命じられている45歳未満の人々は、すでに52%にのぼっています。

さらに米国では、世代間だけでなく人種によって受けるダメージが変わってきていることも明らかになっています(男女間の差はさらに顕著です)。

Image copyright: REUTERS/LEAH MILLIS
REUTERS/LEAH MILLIS

こうした状況は、ミレニアル世代の政党支持にどのように表れているのでしょうか?

メリーランド大学准教授で『The Politic of Millennials』の著者でもあるStella M. Rouseは、「ミレニアル世代は既存の政党に忠実ではなく、無党派の傾向(筆者注:同国のミレニアル世代の約40%は無党派)がある」と指摘します。

加えて、前出のFreymannは、「若者の社会問題に対する姿勢は、むしろ積極的だ。経済においては左派傾向がある」と付け加えます。

実際、2020年の米大統領選民主党候補だったバーニー・サンダース(今年4月に民主党大統領選挙予備選から撤退)は、医療皆保険制度公立大学の無償化富裕層への増税などを掲げ、30歳以下の有権者から熱狂的な支持を集めていました。

Political Interest

彼らの求めるもの

では、コロナショックを経て、ミレニアルの政治意識はどう変わるのでしょうか。前出の専門家は、次のように分析しています。

  • 政府が本気で取り組めば、国民の生活の保護・医療へ積極的な協調など、大規模で決断力のある対策をとる能力があることが示された。今後、不平等、不安定な経済情勢、気候変動などの問題に対して、政府は『困難だ/不可能だ』と発言しづらくなるだろう。コロナ危機はミレニアル世代の経済・社会の変革への願望を過熱させ、大きな理想を抱いて社会問題に立ち向かう左派がより支持を集める可能性がある。──Yonatan Levi(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
  • 欧州に不安定な状況を招き、今後の選挙の結果に変動が起こる可能性がある。──Emanuele Ferragina(パリ政治学院准教授)
  • 米国のミレニアル世代は、トランプ大統領や共和党を支持しない傾向がある。コロナ危機は、彼らを共和党からより遠ざけるだろう。また、彼らは、政府が社会的セーフティーネット(国民皆保険、無償・もしくは負担を減らした高等教育など)の供給に取り組むことの重要性に気付くことになった。既存の政治や経済システムの、急進的な変化を支持するだろう。──Stella M. Rouse(メリーランド大学准教授)
  • ロックダウンは若者の生活に経済的な犠牲を伴う。政府は、彼らが抱える多額の学生ローンの返済、良心的な価格の住宅供給などに投資するべきだ。──Eyck Freymann(Greenmantle)

This week’s top stories

今週の注目ニュース5選

  1. 米国で自転車不足。市場調査会社N.P.D.グループによると、米国では、3月の全国の自転車、機器、修理サービスの売上が、昨年の同時期に比べてほぼ2倍になりました。背景にはパンデミックの影響があるとされますが、同月の通勤用およびフィットネス用自転車の売上は66%増、レジャー用は121%増、子ども用は59%増、電動自転車は85%増となっています。また、4月末までには、多くの店舗や流通業者が低価格帯の消費者向け自転車を売り切っています。
  2. Polestarが米国進出へ。2020年後半には、Polestarの米国初の小売店がロサンゼルス、ニューヨークのほか、サンフランシスコには2カ所にオープンする予定です。ボルボ・カー・グループと中国の浙江吉利控股集団が共同で所有するPolestarは、かつてボルボ・カーズ傘下でした。2017年に高級電気自動車(EV)ブランドとして生まれ変わって以来、2021年モデルの「Polestar 2」は、Polestarから発売される初の完全なEVとなります。
  3. パンデミック下での値上げ。ラグジュアリーブランドが値上げを行っています。ルイ・ヴィトンは3月に3%、4月にはさらに5%の値上げ。シャネルは先日、一部の革製品の価格を5%から17%値上げしています。この値上げはフランス国内の価格を反映したものですが、世界的には段階的に値上げしていくとのことです。
  4. シングルは恋人探しに「抗体」を使う。マッチングアプリのプロフィールには今後、新型コロナウイルスの抗体検査の結果をステータスとして加えるのが必須になるかもしれません。すでに一部の人たちは、パンデミックの最中に恋人をゲットするため、抗体があることを武器にしています。しかし、抗体検査が陽性であれば、COVID-19に対する免疫反応の正確な証拠を提供することができますが、それはまだ確実な免疫パスポートではなく、再感染する可能性はあります。
  5. 失業保険を待つ米国人。新型コロナウイルスの流行が始まって以来、3,650万人の米国人が失業給付金を申請しました。しかし、この危機から2カ月以上が経過していますが、多くの人々はまだ州からの給付金を受け取っていません。非営利団体One Fair Wageの新しい推計は、米国労働省のデータを分析したところ、全国で失業申請の56%しか処理されて支払われておらず、給付金を待っている申請者の割合は州によって大きく異なることを明らかにしました。コネチカット州やバーモント州のような州では失業申請の100%が処理されていますが、フロリダ州やアラバマ州のような州では40%にも達していません。

(編集:福津くるみ)

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