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Startup:中国は「素人ライヴコマース」の時代へ

Image copyright: REUTERS/THOMAS PETER
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。今週と来週は、サイバーエージェント・キャピタル・チャイナの北川伸明CEOをゲストに迎え、一足早くアフターコロナに突入した中国の動向に迫ります。

Image copyright: REUTERS/THOMAS PETER

新型コロナウイルスの震源地として注目された中国ですが、5月からは本格的に経済を再開。他国に先立ち「アフターコロナ」を迎えたことで、今度はその軌跡から経済回復の手がかりを得ようと世界から関心が寄せられています。

中国のスタートアップを取り巻くビジネス環境、そして市場に変化はあったのか。10年にわたり中国からアジアの投資案件を数多く手掛けてきた北川氏の眼に映る、アフターコロナのリアルとは。

北川伸明(きたがわ・のぶあき)サイバーエージェント・キャピタル・チャイナCEO、海外投資担当取締役。NTTドコモで経営企画部門、国際事業部門等を経て、2006年、サイバーエージェント・キャピタル入社。2008年の中国現地法人設立に伴い代表に就任して以来、今日まで中国に駐在。中国、東南アジア、韓国における同社の海外投資事業を立ち上げ、現在も全ての海外投資案件を管轄する。一橋大学経済学部、米国ジョージタウン大学経営大学院卒。

“THE POST-PANDEMIC WORLD“

アフターコロナは幻想?

──中国といえば、コロナの感染ルートを徹底的にコントロールしようとする様子を伝える報道が目につきます。実際のところ、いかがですか?

北川(以下、K) レストランやオフィスビルの入り口など、各所に検問があって緑色のQRコードを見せないと通れないのですが、最近はそのような検問の規制も緩くなってきています。

私が住む上海では、誰か感染者が出たらトレースして、接触履歴がある人はQRコードの色が変わり移動制限を受けるので、感染の怖さはなくなっています。気にする人もいますが、もう市中に感染者はいないからと油断する気持ちもあるのかと。ただ、地下鉄やお店によってはマスクをしていないと入れないところもあります。

Image copyright: REUTERS/HUIZHONG WU

──アプリで追跡されることに抵抗感のある人もいるようですが、受け入れてしまえば逆に安心というのが皮肉ですね。誰か感染したらすぐにクラスターを潰せるわけですから。

K ええ。

──世の中のレストランは全てデリバリーになるだとか、コンサートもスポーツ観戦も全てVRになるだとか、自宅待機中はアフターコロナの妄想を膨らませる人も多かったですが、いざ“アフター”を迎えて蓋を開けてみたら大して変わらなかったという印象でしょうか。

K 中国では、日本や欧米で感じられているほど“社会を思いきり変えるイベント”とは捉えられていない気がしています。武漢以外は、経済活動や行動が制限されたのは1月末からのおよそ1カ月間の話で、そこからはほぼ普通の生活に戻りつつあります。私が住む上海はもう全然普通です。制限されているのは、カラオケなどのいかにも危なそうなところと、プロスポーツリーグの試合やコンサートくらいです。

イメージとしては、“デジタル化がさらに加速した”という感じでしょうか。今まで使われていたサービスが一層浸透した感じです。中国でも一部の老人は現金中心だったり、教育や医療は対面がメインだったりしたわけですが、こうした隅々にまでキャッシュレスやオンラインが浸透していった印象ですね。

E-COMMERCE TRANSFORMATION

選別の進むVC市場

──スタートアップをめぐる市況・全体感はどうなっていますか?

K 生活はそれほど変わっていないのですが、ベンチャー投資市場への影響はかなり大きいです。ざっくりした統計ですが、中国の第一四半期で、ベンチャー投資・新しいファンド組成の数字を見ても去年の同じ時期の半分以下。去年は米中貿易戦争が勃発しそうなムードからベンチャーの動きが冷え始めましたが、それと比べても半分にも満たない状況です。

K 私たちもそうですが、海外から中国への移動が一切できなくなっているので、年明けから4、5月まで外資系ファンドの活動がストップし、その影響はかなりありましたね。全时(Our Hours)というコンビニチェーンのスタートアップは1,500億円ほど調達していたと報道されましたがつい最近倒産しました。

昨年の冷え込みは「バリュエーションが調整されて投資しやすくなった」とポジティブに捉える雰囲気もありましたが、今年に入っての落ち込みは深刻に受けて止める人も増えました。VCはファンドレイズに苦戦し、投資先の選別も厳しくなっている気がしますね。

──そうですか。

K そんななかでも資金調達できているスタートアップでは、VCの関心が高いのは半導体とバイオテックと言われています。半導体は中国政府が後ろ盾の兆円単位のキャピタルをもった半導体専門VCがあって、米国依存から脱却すべく投資を加速しています。バイオテックは、やはりコロナの流れを受けて、こちらも加速しています。

CONFRONTATION WITH A WALL

中国ベンチャーの壁

──中国国内でのスタートアップの成長限界についてはいかがでしょう。Bytedance(バイトダンス)が出てきて、中国発のスタートアップが本格的にアメリカを攻めることができる段階にきていたと思いますが、反対にここにきて「チャイナアレルギー」が加速している印象です。

Image copyright: REUTERS/EVGENIA NOVOZHENIN

K 確かに、コロナの前の方が海外に出て行こうとする意欲はすごかった。中国国内で伸びているとはいえ、人口増加トレンドでは天井が見えてしまっていた。この先の成長を求めるのであれば海外進出が必要、という動きはここ数年スタートアップで非常に強く感じられました。

一方で、コロナで海外との摩擦が広がってしまったようにも見えます。インドではユニコーン企業31社中18社に中国資本が入っていますが、インドと中国は元々仲が良くない。最近では「Remove China」という中国系のアプリを削除するアプリが登場するなど、脱中国の声が大きくなってきています。

──なるほど。

K これまでも、日本とかアメリカに行けるのは本当にかなり限られたプレイヤーだけで、東南アジア、アフリカに向かう企業がほとんどでした。今回のコロナでしばらく移動も制限されることに加え、中国への風当たりを考えると海外展開の壁はさらに高くなった印象です。

AMATEUR LIVE COMMERCE

素人ライヴコマース

──コロナをきっかけに台頭してきた新たなサービスはありますか?

K ひとつはライヴコマースの浸透です。これまでも伸びてはいましたが、これまでの配信者はいわゆる人気インフルエンサー(KOL)や有名人ばかりでした。しかし、コロナをきっかけに、どこかの会社の社長やその家族、店主やスタッフなど、無名の一般人が自分たちの商品をライヴコマースで売ったんです。その素人っぽさや、飾らない普通な感じが受けています。

日本みたいにFacebookを使うやり方をポーンと越えて、中国は一般の人にまでライヴコマースでの物販が一気に浸透しました。私たちは「素人ライヴコマース」と呼んでいます。

──「素人ライヴコマース」の集客はどう行われているんですか?

Image copyright: REUTERS/PETAR KUJUNDZIC

K 元々のリアル店舗のお客さんがメインです。中国のライヴコマースのプラットフォームは「Taobao」「 Tiktok」「 WeChat」など、いくつかありますが、「素人ライヴコマース」ではWeChatがよく使われれています。配信者はすでにWeChatに自分の既存顧客とつながるグループがあるので、そこに、今度ライヴコマースをやると通知を出せば、みんなライヴコマースが好きだから見ます。

──ユーザーも事業者も、すでにWeChat経済圏に生息している影響が大きいですよね。お客さんともつながるチャネルをもっていて、決済情報も登録済みですし。 何もかもそこで完結するインフラの上に、ライヴコマースがポンと乗ってきて、コロナで火がついた感じですかね。

MINI-APP ARE A GIVEN

ミニアプリは当たり前

K このトレンドに乗って、いち早く出てきたのが、特抱抱(TBB)という企業です。日本円で10億円弱の資金調達をしたそうです。彼らの公表ベースですが、すでに約2,000万社の配信者の顧客がいるそうです。

ミニアプリ自体はオープンなプラットフォームなので、TBBは、そのミニアプリ上で簡単にライヴコマースができるツールを提供しています。中国では、店舗ごとにミニアプリをつくっているほど、当たり前のものなんです。

Image copyright: YOUTUBE/LIJUAN TANG

──当たり前、ですか。

K ミニアプリは、中国だとごく普通の使い方になっています。メガアプリは当然みんなダウンロードしますけど、それ以外はミニアプリでよいという空気になってきています。会社としての法人番号や登記情報を登録さえすれば、簡単に利用できるようになっています。

おそらく、ここから同じような会社が沢山でてくるでしょうし、すでに相当数がいるとは思いますが、先駆者の一社なので注目してはいます。

POPULARITY FACTORS

流行る理由

──中国ではこんなに流行っているライヴコマースですが、日本ではまだまだですよね。

K 中国でライヴコマースを好む若い人たちが動画ファーストが染み付いた世代っていう要因もあると思います。Tiktokとか短尺動画プラットフォームも複数あるし、流行るタイミングが日本より早かったので、ヒマなときはとりあえず短編動画を見る習慣が根付いていました。

Image copyright: 人気の中国人TikTokerたち / COURTESY OF TIKTOK

K あとはやはり、ミニアプリ展開が大きなポイントかなと思っています。ライヴコマースといっても、それ専用のネイティブアプリをインストールさせるハードルは高い。ところがWeChat上のミニアプリなら、視聴者は、お店からきたメッセージに反応してワンクリックで見ることができます。見る気にさせる仕組みができています。

──なるほど。

K 中国ではメガアプリの生態系の中にミニアプリがかなり組み込まれています。このミニアプリが、リテラシーが高くないユーザー以外にも、テクノロジーの利便性を届ける大きな役割を果たしている気がします。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. ポートフォリオ強化を急ぐ投資家たち。コロナ禍における投資環境の変化が徐々に数字として明らかになってきました。投資家は新しいリスクのある賭けをするのではなく、既存のポートフォリオの強化を急いだことをCB Insightsのレポートが示唆しています。シリーズAを含む初期の投資ラウンドに当てられた資金の割合は前年30%から28%に低下しています。
  2. Amazon、自動運転Zooxの買収を間もなく完了か。先月末に報じられた、Amazonによる、ロボットタクシーを開発するZoox(ズークス)買収の噂ですが、間もなく合意に達する可能性が伝えられています。Amazonは今後数年で900億ドル(約9兆7,100億円)にも達すると予想される莫大な配送コストを、自動運転車で年間で約200億ドル(約2兆2,000億円)削減できるとされています。
  3. アジアのエドテック覇権争いの裏に…。シンガポール発のオンライン言語学習プラットフォームを運営するLingoAceは中国VCの順為資本(Shunwei Capital)からシリーズAで700万ドル(約7億6,600万円)を調達。順為資本は小米(シャオミ)の成長を支えたことで知られ、これまでに400社近い企業へ出資し、コー・タックリエCEOはミダスリスト(世界トップレベルのベンチャー投資家ランキング)で42位につけています。
  4. Twitterのダウンロード数過去最高。アプリストア情報を提供するApptopiaによると、6月3日水曜日にTwitterの世界のダウンロード数は67万7,000を記録しました。世界に広がったジョージ・フロイド殺害事件への抗議運動の様子を、デモ参加者がTwitterを通じて拡散するために需要が伸びたことが要因とみられます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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