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Startup:中国で再発見された「生鮮食品EC」

Image copyright: REUTERS/KEVIN LAMARQUE
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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[qz-japan-author usernames=”masaya kubota”]

Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

Image copyright: REUTERS/KEVIN LAMARQUE

今回は、先週に引き続きサイバーエージェント・キャピタル・チャイナの北川伸明CEOをゲストに迎え、一足早くアフターコロナに突入した中国の動向に迫ります。

他国に先立ち「アフターコロナ」を迎えた経済回復の軌跡が注目される中国。上海在住のベンチャーキャピタリストである北川氏とともにその実情を探ります。

北川伸明(きたがわ・のぶあき)サイバーエージェント・キャピタル・チャイナCEO、海外投資担当取締役。NTTドコモで経営企画部門、国際事業部門等を経て、2006年、サイバーエージェント・キャピタル入社。2008年の中国現地法人設立に伴い代表に就任して以来、今日まで中国に駐在。中国、東南アジア、韓国における同社の海外投資事業を立ち上げ、現在も全ての海外投資案件を管轄する。一橋大学経済学部、米国ジョージタウン大学経営大学院卒。

EXPLOSIVE FRESH E-COMMERCE

爆伸する生鮮EC

北川(以下、K) 中国はもともとEコマース(EC)が進んでいる国ですが、実は生鮮食品のコマースはとても遅れていました。中国の小売のEC比率は20%に達していますが、生鮮食品では1%未満でした。コロナを機に、ここが大きく伸びています。

──代表的なプレイヤーはどういったところでしょうか。

K 独立系だと、Tencent(騰訊、テンセント)が初期から支援する最大手のMissFreshや、セコイアチャイナが出資するDingDongは共にユニコーン企業です。Alibaba(阿里巴巴、アリババ)傘下のHema Freshを加えた上位3社の戦いとなっています。

Image copyright: SCREENSHOT

──即時配送が有名ですが、本当にオーダーして30分で届くのですか?

K はい、もちろん配送時間の指定もできるのですが、上海市内だと、だいたいそれぐらいで来ます。ジュース1本でもオーダーできます。注文して待っていられる限界が30分だそうで、リピートする顧客体験の起点になっています。

Hema Freshだと、上海市内の至るところに小型の倉庫兼店舗があります。スマホで注文すると近くの店舗にオーダーが入り、スタッフがすぐにモノをピックして配送員がバイクで届けます。フードコートもあるので、食材だけでなく料理も持って来てくれます。モノを見て選びたければ店舗に行って、セルフレジで決済します。重くて持って帰りたくなければ、スマホアプリのカートに入れれば家に届けてもらえます。オンラインとオフラインの垣根が取り払われている感覚です。

──そんなに便利なのに、なぜ今まで普及しなかったんですか?

K 若い人や忙しいビジネスマンには受けていましたが、一般的な中国人にとっては自分の口に入れるものはやっぱり自分で選びたいという気持ちがあり、ネットで買うことに対する不信感がハードルになっていました。コロナで、仕方なしに生鮮食品をECで買ってみたら案外よかった、という感じです。

DELIVERY BOXES ARE PROLIFERATING

宅配ボックス増殖中

K 課題は物流です。生鮮食品のECを広げるには冷蔵と冷凍の物流が欠かせませんが、中国は未成熟です。そこを狙った中国の大手の物流会社がここ数年で整備する計画をバンバン打ち出しています。サプライチェーン含め、生鮮ECの市場を広げようとする動きはコロナを機に急に目立ってきた気がします。

──届けられた荷物は玄関前に置かれたのを取りに行くのですか?

K コロナで制限されている間はずっとそうでした。今では直接手渡すかたちに戻ってきているのですが、流行り始めているのが生鮮食品も受け取れる宅配ボックスで、マンションとかオフィスビルにどんどん設置されています。配達員とユーザーが接触せずに、荷物をやりとりしたいというニーズに応えるようにして激しく伸びています。

──なるほど。どういう企業が出てきているのですか?

K 代表的なのは宅急便大手が合弁で運営するHive Box(豊巣)です。物流会社が配達のラストワンマイルのコスト削減として取り組んでいたのが、コロナで非接触のニーズが立ち上がったことで急に追い風が吹きました。

Image copyright: CATHY LI VIA YOUTUBE

K 私が住むマンションにも最近設置されて、試しに使ってみましたが、オーダー時に受け取り方法を選択でき、使い方は簡単です。QRコードを元にボックスを開けるので、セキュリティも問題ありません。上海の街中ではかなり見られる光景になりました。

ACCELERATING SEMICONDUCTOR VENTURES

半導体で猛追する中国

──スタートアップで他に熱い分野はありますか?

K ひとつは半導体ですね。米中対立の緊張の高まりを受けて、国産チップをつくろうという機運が高まっています。中国は世界最大の半導体輸入国ですが、自前のサプライチェーンを構築して米国依存から脱却する狙いです。昨年10月、政府は3兆円の半導体専用ファンドを立ち上げました。

すでに数え切れないほど半導体ベンチャーが生まれていて、大手も入り乱れての大激戦状態です。成果も出始めていて、1~3月期はスマホのシステム・オン・チップ(SoC)の国内シェアで、中国のHiSilicon Technologiesが米クアルコムを抜きました。

Image copyright: REUTERS/KIM KYUNG-HOON

──注目のスタートアップはどこでしょう?

K Cambricon Technologies(寒武纪)はAI専用チップの開発企業で、2016年設立後たった2年で25億ドル(2,750億円)の企業価値が付いたモンスター企業です。

共同創業者の2人は34歳と36歳の兄弟で、それぞれ14歳と16歳で大学に入りコンピューターサイエンスの博士号を取得、中国の科学技術の総本山でエリート養成機関である中国科学院で経験を積んだ天才コンビです。GoogleやNvidia対抗の深層学習用プロセッサを開発しており、HuaweiやAlibabaなどが顧客になっています。

謎に包まれた部分も多かったのですが、3月に上場承認が下りて、実態が明らかになってきました。全社員の64%に及ぶ546名が修士号を取得する天才集団で、2019年の売上は6,300万ドル(約70億円)ですがこの何倍もの研究開発投資を行っているそうです。

──凄まじいですね。今後はどうなりそうですか?

K Alibabaは昨年9月に自社製のプロセッサを発表し、Tencentも有望ベンチャーへの出資を積極的に行っています。チップは開発期間も長くコストもかかるので、合従連衡が進みそうな勢いです。スタートアップは数社しか生き残れないと思いますが、こういった生態系の進化を通じて、半導体の米国依存脱却という悲願は徐々に達成されていく気がします。

REGRESSION OF CAPITAL

Uターン先は香港?

──中国のスタートアップはこれまで米国に株式上場していましたが、米中の関係悪化でどういう影響を受けるでしょうか。昨年11月のAlibabaを皮切りに、中国企業が香港の証券取引所にも株式を二重上場する流れがありますね。

K 仰るとおりですね。最近ではLuckin Coffee(瑞幸咖啡、ラッキンコーヒー)の不正会計が発覚して信頼性も揺らいでいます。IPOの出口が難しくなってくると、投資で入るお金も当然影響は受けるので、中国スタートアップにとってのリスク要因と見ています。NetEase(網易、ネットイース)もつい先日香港で上場しましたが、目論見書のリスク項目に「米国での上場廃止の可能性」が言及されていました。

──やはり逃避先は香港なのですか? “中国版ナスダック”の科創板(Science and Technology Innovation Board)も設立されましたが、こちらの選択肢はないのでしょうか。

Image copyright: REUTERS

K まさにその点が、中国“本音と建前”な世界です。科創板含め中国本土の証券取引所は、外資が出資しているインターネット企業は上場できないルールになっています。テクノロジー産業の育成がいかに重要であるとはいえ、言論統制など国家の根幹に関わるこのルールを簡単に曲げることは出来ません。

ところがここに来て、中国企業が米国の証券取引所から締め出されるリスクが出て来ましたが、逃避先として都合がよかったのが香港市場でした。「半分中国」みたいな存在の香港に戻しておけば、本国のルールを変える必要はありません。中国にとって香港は、「面子を保ちながら実を取れる」便利な存在なのです。

もともと香港ではなくナスダックなど米国市場が株式上場の主流になったのは、香港では種類株での上場が出来ないなど、硬直的なルールが理由でした。最近ではこのルールも変わり、上場先として不都合は解消されて来ています。

──なるほど。ただ香港も難しい状況ですよね。

K はい、国家安全法をめぐる政治的な闘争で、資金を海外に移転する動きが加速しています。撤退を伺う海外マネーと支える中国との攻防戦。ここが悪化すれば、中国のテック業界にとっても大きな悪影響を及ぼしかねません。

──そうですね。中国のスタートアップ界は、米国依存脱却でテクノロジーの進化が加速している一方、事業も資本も内向きに閉じる流れが成長の足かせとなりかねないという点は皮肉ですね。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 中国板ナスダックにIPOルール整備。深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」に米国方式の新規株式公開(IPO)登録制が年内に導入されると11日に中国国務院が発表。12日夜には中国証券監督管理委員会(CSRC)から株式の新規株式公開のための行政措置、およびパイロット登録システム関連のルールが発表されました。
  2. アカウント停止措置は「誤り」だった…。今年1月から「虐待とハラスメント」に対する規制に違反したとしてアカウントを一時停止されていた、オルタナ右派の金融ブログサイトZeroHedge(ゼロヘッジ)のTwitterアカウントが再開されました。Twitterは、この措置について「誤りを犯した」とコメントしています。
  3. 米2州、Amazonに調査。カリフォルニアとワシントンの州当局がAmazonの事業慣行について調査を進めています。12日、関係者の話としてWall Street JournalとNew York Timesが報じたところによると、オンラインマーケットの出店業者と競合する自社製品を売るなどの慣行が含まれるようです。
  4. 設立から5カ月で1,050万ドル調達。インドネシアで今年1月に設立されたula(ウラ)は、シードで1,050万ドル(約11億3,000万円)を調達したことを発表しました。セコイア、ライトスピードがリードVCをつとめ、著名な投資家が複数参加。ulaは卸売りのECマーケットプレイスを運営しており、店舗の在庫管理支援、運転資金の提供を行なっています。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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