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New Normal:未来は「国にも企業にも」頼らない

Image copyright: REUTERS
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Friday: New Normal

新しい「あたりまえ」

Quartz読者の皆さん、こんにちは。毎週金曜日のPMメールでは、パンデミックを経た先にある社会のありかたを見据えます。今日は、ポストコロナで気候変動とどのように付き合っていくのか、「個」がキーワードとなるこれからについて考えます。

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「私たちには、安全な未来を守る権利がある」。スウェーデン人の環境活動家グレタ・トゥーンべリさんの訴えは、世界各地の人々の共感を呼びました。

とくに、森林面積が40%以上を占め、パリ、ローマなどの大都市のすぐ近くに、牛や羊が放牧されるのどかな自然の風景が広がるような欧州においては、自然はごく身近で特別な存在です。

だからこそ、近年世界各地を襲う異常気象や自然災害は、欧州の人々に、しのび寄る“自然の終焉”への真剣な脅威を感じさせ、各地で大勢の人々がグローバル気候マーチに参加するきっかけとなりました。

Hold Back

「リバウンド」防止

しかし、コロナ危機は思いがけないかたちで、環境活動家たちに“ユートピア”をもたらしました。ロックダウンが世界各地で実施されていた今年の春、空を見上げても飛行機の姿は見当たらず、街からはクルマが激減しました。さらに街中の店舗のシャッターが閉じられ、工場やオフィスの電気も消え、賑やかだった都市は閑散としたゴーストタウンと化しました。

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REUTERS/Charles Platiau

この影響は、実際に数字にも表れています。4月初旬の1日のCO2(二酸化炭素)排出量は前年比で17%減少したといわれています。IEA(国際エネルギー機関)も、今年のエネルギー関連のCO2総排出量が前年に比べ、8%減少すると推計しています。

しかし、世界各地でロックダウンが解除されたことにより、CO2排出量が増加し始めています。せっかく達成したCO2排出量の大幅減を一時的な現象で終わらせず、今後、「長期間」続かせることが重要です。

そこで、国際機関や各国政府は、環境を軸としたコロナ後の経済復興を目標とする「グリーン・リカバリー」を推奨しています。

この動きを率先する欧州連合では、7月21日に合意した中期予算案(2021年~27年)において、総額1.824兆ユーロ(約225兆円)のうち、30%を気候変動対策のための予算にあてることに合意しました。これは、2050年までにEU域内の「温室効果ガス排出ゼロ」という目標を実現させるためです。

また、この中期予算に含まれる新型コロナ対策「復興基金」においては、従来のエネルギー多消費型社会に戻らず、復興策を通じ、持続可能な社会へと生まれ変わることを目指しています。

さらに、IMF(国際通貨基金)もグリーン・リカバリーを提唱し、The World Economic Forum(世界経済フォーラム)は、コロナ危機をきっかけに従来の資本主義からの「Great Reset(グレート・リセット)」を提言しています。

また、Googleが気候変動に関するスタートアップのためのアクセラレータープログラムを立ち上げたり、Amazonは温室効果ガスを削減するテクノロジー開発していくために20億ドル(約2,100億円)の基金をローンチするなど、企業も環境問題に対して向き合うよう動き出しているのが現状です。

New lifestyle

変わる「足」

こうしたグリーン化のなかで、欧州の街の風景にも変化が訪れようとしています。新型コロナ対策や健康への意識も高まり、自転車の利用が人気を増しているのです(7/30配信ニュースレター・世界が今、熱狂する「e-bike」参照)。

フランスのパリでは、ロックダウンが解除された5月以降、自転車利用者が50%以上急増しているといいます。ロックダウン解除後にパリ中心部を貫くリボリ通りを訪れると、それまで許されていた自家用車の通行が禁止となり、“自転車天国”と化していました。

現在のリボリ通りには、自転車レーンが設置されている。

2015年以降、パリ市長のアンヌ・イダルゴがパリを「世界の自転車の都」にするため、1億5,000万ユーロの予算を立て、自転車の使用増加に取り組んできました。さらに、仏政府は自転車の修理に50ユーロの補助の発表もしています。

Image copyright: パリにある自転車のリペアショップ REUTERS/CHARLES PLATIAU
パリにある自転車のリペアショップ。REUTERS/Charles Platiau

同様に、ドイツやイギリス、ベルギーなどでも自転車利用者が増えたといわれています。また、ミラノでも今後、中心地を含む約35㎞の自転車道・歩道を拡張すると発表されています。

こうした政策の先駆者と言われるのが、オランダの北部の都市、フローニンゲン。1970年代に、自転車道の整備が進められて以来、市民の3分の2が自転車通勤をしています。それ以降、環境改善を目指す他の都市のモデルと称されています。

By myself

消費者が管理する

前出の国の政策だけでなく、ロックダウン中に環境の改善を目の当たりにした市民の「自然」への関心も、より高まっています。マーケティング・リサーチ会社IpsosMoriが今年4月に実施した調査では、世界中の回答者の70%以上が「長期的に、環境問題はコロナ危機と同様に深刻だと思う」と答えました。

セントトーマス大学ミネソタ校の心理学教授であるエリーズ・アメルは、英BBCの記事の中で、消費者と環境活動の関連性についてこう指摘しています。「実際に自分で起こした変化を目の当たりにすることができたとき、目に見えないものが可視化したときに人々の行動は変わります」

私たちは環境問題に気を遣ってエコバッグを持ったり、プラスチック製品を排除する、リサイクル製品を使うといった日常的な行動はできていても、なかなか可視化できていません。しかし、消費者自身が「可視化し、管理する」ことで、さらに行動に変化を生み出すことができるのです。それをサポートするのが、アプリを使用した可視化です。

たとえば、日々の自分の行動がどれくらいCO2を排出しているかグラフにまとめて可視化してくれるアプリ「Oroeco」や、ユーザー同士の物物交換のマッチングを促進し、新品を購入しないことで排出しなかったCO2を計算してくれるアプリ「TradeMade」が注目を集めています。

Image copyright: COURTESY OF TRADEMADE
TradeMade

また、フィンランドのフィンテック・スタートアップEnfuceが2019年にローンチしたアプリ「My carbon action」は、まるで銀行口座の支出額を管理するように、消費者が買い物時のCO2排出量をスマホで管理することができます。

このアプリは、同社が連携する銀行のクレジットカードを使用して消費者が買い物をした際や、提携する商店でキャッシュレス支払いをした際に、購入した商品のCO2排出量を推定で計算してくれます。同時に、「シャワー時間を短く」、「肉を1週間3回までに」など、CO2排出を削減するための日常生活に関するアドバイスが表示されます。

Image copyright: 支払いから、CO2排出量を推定するアプリ「My Carbon Action」の画面
支払いから、CO2排出量を推定するアプリ「My Carbon Action」の画面。

データの正確性に関しては、銀行と提携している場合、ユーザーが事前に回答した生活習慣のアンケートから、購入した商品を推測し、CO2排出量を計算。たとえば、菜食主義のユーザーがスーパーで1,000円を支払うと、そのうち500円が野菜で500円が家庭用品だと、システムが予測します。一方で、商店と提携している場合、各商品のデータ(生産地、商品情報)などの細かいデータをもとに、計算する仕組みです。

さらに、銀行と提携することで、既存の銀行の利用者用アプリにもMy Carbon Actionの機能がアップデートされるため、大多数のユーザー拡大を見込めると言います。

同社のビジネス開発部長のイロナ・キヴィマキは、「キャッシュレス決済に成功しているフィンランドという土壌も、こうしたサービスが広まりやすい理由」だと言及します。

キヴィマキは、アプリMy Carbon Actionを通し、社会で実現したい目標を、こう語ります。「ユーザーに、毎日の自分自身の行動が環境に与える影響に関して、意識を高めてもらいたいです。それが実現することで、ユーザーの日常において、持続可能な選択肢をもっと増やしていってほしい、と願います」

英エコノミスト誌は、未来のシナリオを予測する「The World If…」という特集を組み、2030年には、このような消費者によるCO2排出量の管理が主流になる可能性があると予測しました。さらに、将来的には、セレブリティがInstagramにCO2排出量を写真と共に投稿するようになり、プライベートジェット使用などの環境に悪影響な行動を投稿する人々はますますバッシングを受けるだろうと推測しています。

Image copyright: IMAGE VIA INSTAGRAM@LEONARDODICAPRIO
Leonardo DiCaprio and Greta Thunberg via Instagram

今後、CO2排出削減という目標が、デジタルツールを利用して消費者のライフスタイルに入り込み、定着することで、官民ともに、より積極的に温暖化対策に取り組めるようになるのかもしれません。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 厳しいエンタメ業界。チケット転売会社のStubHubが、世界中のオフィスを閉鎖、または縮小することを発表しました。まず、アジア太平洋地域とラテンアメリカ地域でのオフィスを閉鎖する可能性を示唆しています。StubHubは2007年にeBayに買収され、今年に入り、競合でもあったviagogoに40億5,000万ドル(約4,400億円)買収されたばかりでした。
  2. ポッドキャスト、好調。Spotifyのリスニング時間がパンデミック前と同じレベルに復活したことが、最新の決算発表で分かりました。ウイルスの広がりが明らかに鈍化している地域での回復が最も強いと報告したほか、ポッドキャストの全体的な聴取時間が2倍以上になったと述べています。なお、有料購読者は増加しているものの、Spotifyは全体で3億5600万ユーロ(約440億円)の損失を計上したとThe Wall Street Journalが報じています。
  3. マスクは子どもにとって危険? “ママインフルエンサー”から広がる子どもへの「マスク着用反対」のプロパガンダが広まっています。2万7,000人のフォロワーをもつ、反ワクチン派のジョディ・メシュクは、子どたちの顔を漫画にしたグラフィックに「Un-mask our kids. Let’s talk mom to mom.」と投稿。マスクを着用することよる危険性について多くの誤った主張が含まれ、物議を醸しています。
  4. 貴重な屋外スペースを最大限に活用。ニューヨーカーの夏休みは、パンデミックの影響もあり、家で過ごすことが多くなりそうです。Porch.comの最近の調査によると、COVID-19の流行が始まって以来、リフォーム業者の61%が庭やパティオなどを改装していることが分かりました。快適に家で過ごすことができるよう、より工夫してアメニティを揃えているようです。

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Quartz JapanのPodcast最新エピソードで、“子育て世代の新しい環境づくり”を目指す88PROJECTの林理永さんとの対話をお楽しみください。

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