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キッズテックがコロナ時代の家庭を救う:Startup

今回のY Combinator(Yコン)でひときわ目についた、キッズテック。子どもをもつ家庭にとっては、学校に行かなくなった子どもを家でどう過ごさせるか、ロックダウン期間に頭を悩ませる問題でした。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Monday: Next Startups

次のスタートアップ

毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートでお届けする、「次なるスタートアップ」の最新動向。今日は、8月のYコン・デモデイを特集したシリーズの第4回です。

Image copyright: REUTERS/CAITLIN OCHS

例年とは打って変わり、今回のY Combinator(Yコン)でひときわ目についた、キッズテック。子どもをもつ家庭にとっては、学校に行かなくなった子どもを家でどう過ごさせるか、ロックダウン期間に頭を悩ませる問題でした。

TikTokを“切り取る”エドテック」「“貧困脱出”フィンテック」「リモートワーク・テックの大ブーム」に続いてお送りするYコン特集の第4弾では、キッズ・テックで注目の3社を紹介します。

① SENIOR TECH VIA GRANDCHILDREN

孫経由のシニア市場

Together
・創業:2020年
・創業者:Enrique Rodriguez
・調達額:不明
・事業内容:祖父母と孫向けインタラクティブチャット
Image copyright: TOGETHER

日本でもスマホで撮った子どもの動画と写真が実家のテレビに送れる「まごちゃんねる」というサービスがありますが、対面での接触が敬遠される今、離れて暮らす祖父母と孫とのコミュニケーションを埋めるテックが盛り上がりつつあります。

スペインのバルセロナに本社を置くTogetherは、まさにそのニーズを満たすサービスを携えてYコンのピッチに登場しました。

「Together」は祖父母と孫をつなぐビデオチャットです。ただ、単に回線をつないでその後の過ごし方をユーザーに丸投げするのではなく、祖父母と孫が一緒に楽しめる仕組みが備わっています。

例えば、祖父母が孫に読み聞かせをする機能、オセロなどの簡単なゲーム、足し算や引き算程度の教育コンテンツなど、オンライン上で大人と子どもが共同で取り組み、時間を過ごせる仕組みです。高齢者がコロナ感染で死亡リスクが高いとされる現状では、孫と祖父母のリアルの対面も憚られます。

Image copyright: YOUTUBE/BITWISE SOFTWARE

Togetherのうまいところは、高齢者と幼児のコミュニケーションが弾むコンテンツを載せたところでしょう。単にチャットでお互いをつなぐだけでは共通の話題もなく、デジタルでは気が散って会話も弾みません。親にとっても、祖父母とチャットしながら読書や勉強をして過ごすのは安心感があります。

そしてTogetherのビジネスの先には、“老人の孫に対する消費”を見据えたマネタイズが、透けて見えます。

貯金好きの日本人の平均相続金額はなんと2,000万円以上。せっせと貯めても使い切れずに死んでいくのが実態です。1,800兆円にも上る日本の個人金融資産の6割は高齢者の手にありますが、「孫へのプレゼント」に勝る使い途はありません。“孫向けEC”に加えて、進学や留学など大きな消費を差し込める可能性もあります。

キッズ向けに見せかけて、財布は高齢者に向けたビジネスモデル、という点で秀逸です。

② THE FUTURE OF MICROSCHOOLS

マイクロスクールの未来

Ilk
・創業:2018年
・創業者:Brian Park, Jake Harding, Malea Gadoury
・調達額:12万5,000ドル(約1,300万円)
・事業内容:マイクロスクールの運営
Image copyright: ILK

続いて紹介するのは、新たな教育のかたち、「マイクロスクール」を提供する「Ilk」です。

マイクロスクールとは、近所で声を掛け合い、誰かの家や施設で少人数で勉強したり子どもの世話をする寺子屋的グループを指します。パンデミックによる休校措置が続くアメリカで、自然発生的に生まれました。指導や管理は本物の教師(チューター)に依頼され、全米で失職した何千人もの教師の新たな収入源でもあります。

Ilkは、マイクロスクール を使いたい家庭と教師をつなげ、グループをつくってくれるサービスです。5歳未満の未就学児を対象とし、育児を共有したい2〜5世帯のグループをマッチングします。

マイクロスクール と言えば、Uberの初期の投資家として大成功を収めた著名投資家のJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)も信者として知られています。ジェイソンはマイクロスクールはコロナ下の一過性のものではなく教育の未来であり、出資も考えたいと発言しています。

Image copyright: ジェイソン・カラカニス YOUTUBE/THIS WEEK IN STARTUPS

有名投資家までもが注目するマイクロスクール 。しかし、その本質は「ご近所コミュニティ」の形成にあることが、透けて見えてきます。Ilkも、そのサービスの実態は子どもではなく家族同士をマッチングすることにあります。

コロナで進んだ在宅勤務で、生活エリアの中心がオフィスではなく自宅になったという人も多いでしょう。これまで無関心でいられた“ご近所”の重要性が増しています。

小さな子どものいる家庭にとって、子ども同士の付き合いがそのまま家族同士の付き合いになります。Ilkのサービスでも、やんわりと価値観や年収などを聞かれ、経済環境や価値観の合うファミリーとマッチングしてくれます。

子どもをつなげると見せかけて、家族同士のつながりを生む、「ご近所付き合い組成サービス」とも言えるIlk。表面的なニーズの先にある、より深い課題を突いていると言えます。

Image copyright: ILK

ところで、近所や家まで来てくれる先生が、そんなに簡単に見つかるものでしょうか? 世の中にはすでに優れた教育コンテンツが溢れています。ベストな授業をする教師の動画があれば、“教える”だけであればそれを使う方が効果的でしょう。

一方、学習の進捗管理やモチベーションアップなど、子どもを“支援する”という役割は不可欠です。教師に求められるスキルも変わり、「いい先生」の定義も変わります。教員免許の有無に関係なく、誰もが「先生」になれる可能性があるのです。

マイクロスクールのトレンドが指し示す未来、それは先生や学校の役割の「教える=Teach」から「伴走する=Coach」への進化、そして教師という職業の民主化と言えます。

③ BOOMING EDUCATIONAL VIDEOS

キッズ版Netflix

Tappity
・創業:2018年
・創業者:Chadwick Swenson, Lawrence Tran, Russ Nickel, Tanner Swenson
・調達額:12万5,000ドル(約1,300万円)
・事業内容:子供向け動画プラットフォーム
Image copyright: TAPPITY

最後に取り上げる「Tappity」は、4〜10歳の子ども向けに100以上の番組を配信する動画プラットフォームです。歴史やサイエンスを深掘りした、子ども向けのオリジナルの知育番組を提供しています。

パンデミック中に、暇を持て余した子どもが1日中YouTubeやNetflixにハマる様子に辟易し、子どもが関心をもってくれて、かつ何かためになりそうなツールを探した親も少なくないのではないでしょうか。

Tappityのアプリを開くと、アカデミックなトピックの番組が並びます。出演する俳優たちは子どもが興味を抱くよう少し大げさに演じ、子どものためのコンテンツづくりが徹底されています。

Image copyright: イーロン・マスクも登場 TAPPITY

創業者兼CEOのChadwick Swenson(チャドウィック・スウェンソン)によると、Tappityのユーザー数はパンデミック中の2カ月で300%増え、1,000万以上の番組が視聴されたそうです。

面食らったのが、月額1,600ドル(約17万円)というサブスク料金。年間だと8,000ドル(約84万円)にもなります。最初の30レッスンは無料ですが、その後は有料になります。

Image copyright: TAPPITY

一見あり得ない価格に思えますが、考えてみると、このサービスの本質は落ち着いた一人の時間が確保できる親の時間価値とも言えます。

アメリカのプライベートスクールの学費は年間で2〜3万ドル(200万円〜300万円)かかりますが、パンデミックで学校そのものがシャットダウンした状況で、家で授業の代替をこれで済ませられるとしたら、高くないと思える人もいるのかもしれません。

降って湧いたコロナ危機は社会全体、家族全体の生活様式を変えました。遠くに離れて住む祖父母、近所で同じ課題を抱えるファミリー、同じ空間で仕事を余儀なくされる両親。あらゆる人たちを取り巻く環境が変わったなかで、キッズのその周辺に、見えない新市場が生まれてきています

キッズ向けのサービスに見せかけて、周囲の大人を顧客に、提供価値を子どもの周辺にずらすという視点は、アフターコロナのキッズ向けサービスに必須なものなのかもしれません。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 評価額ほぼ倍に。クレジットカードなしの後払い決済サービスを展開するスウェーデン発のユニコーン、Klarna(クラーナ)は、Silver Lake Partners(シルバーレイク)が主導する投資ラウンドで6億5,000万ドル(約680億円)を調達。評価額を55億ドル(約5,700億円)から106億ドル(約1兆1,000億円)にほぼ倍増させました。
  1. 家庭でのPCR検査へ前進。医療機器スタートアップのVisby Medicalは9月17日、米食品医薬品局(FDA)から新型コロナウイルスPCR検査キットの緊急使用許可を取得しました。手のひらに収まる小型のキットに、採取した鼻腔ぬぐい液を挿入すると30分で結果が得られます。最終的には家庭で使えるよう手頃な価格で一般消費者向けに販売したいと意気込みます。
  1. 1,000人解雇。けれども1万2,000人採用します。8月下旬に従業員1,000人の解雇計画を発表したセールスフォースCEOのマーク・ベニオフは先週金曜日のツイートで、来年1万2,000人を雇用する方針を明かしました。先月の解雇計画については、ビジネス優先事項にもはやマッピングされない複数のポジションを廃止するとした一方で、今回のコロナ禍によってリモートワークとEコマースをサポートする同社のオンラインビジネスソフトウェアの需要は大きく伸びました。
  1. Windows Serverに警報。米国土安全保障省傘下のCISA(サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁)は、Microsoftのサーバーに深刻な脆弱性が含まれていたことを受け、9月18日に緊急警報を発しました。Microsoftの8月の月例パッチで報告された「Zerologon」と呼ばれる脆弱性は最も深刻度の高い「クリティカル」の部類に入ります。今年CISAが発行した緊急警報としては3例目です。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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