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Startup:個人に投資する、新たなソーシャルメディア

月曜夕方にお届けしているこの連載では、毎週ひとつ「次なるスタートアップ」を紹介しています。今週は、投資とSNSが融合した新たなプラットフォーム「BitClout」を取り上げます。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Deep Dive: Next Startups

次のスタートアップ

[qz-japan-author usernames=”masaya kubota”]

Quartz読者のみなさん、こんにちは。月曜夕方にお届けしているこの連載では、毎週ひとつ「次なるスタートアップ」を紹介しています。今週は、投資とSNSが融合した新たなプラットフォーム「BitClout」を取り上げます。

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3月中旬に正式にローンチされた「BitClout」。暗号資産を通じ個人の「評判」を売り出すことができるサービスで、わずか1カ月で2億2,700万ドル(約274億円)相当のビットコインがプラットフォームに流入し、世界中で話題になりました。

強烈なインパクトをもたらしたBitCloutですが、その不透明な仕組みに疑惑の声も上がっています。

Image copyright: BITCLOUT
BitClout
・創業:2020年
・創業者:Nader Al-Naji(推測)
・調達総額:1億6,000万ドル(推測)
・事業内容:投資とSNSが融合した新たなプラットフォーム

WHO IS BitClout?

BitCloutとは

BitCloutは「個人に投資できる新しいSNS」です。アカウントをつくりビットコインをデポジットすれば利用開始です。いまアカウントを取得すれば、最初に8ドル分の$BitClout(BitClout内で使える通貨)をもらえるので試してみるのもよいでしょう。ただ現在のキャンペーンを除いては、基本的にはビットコインを持っていないとBitCloutを使うことはできません

ビットコインを$BitCloutに持ち替えると、セレブやインフルエンサーなど著名人のコイン(クリエイターコイン)を選んで購入することができます。$BitCloutはビットコインと同様に、ブロックチェーン上で管理されています。$BitCloutは100万枚発行されるごとに価格が2倍になり、発行上限は最大1,900万枚と定められています。

Image copyright: 公開されているBitCloutのホワイトペーパー PHOTO BIA BITCLOUT

クリエイターコインの価格は株式市場のように、買いたい人が多ければ上がり、売りたい人が多ければ下がります。企業が成長することを期待して株式を買うように、やがてそのクリエイターが有名になって影響力が増すと思えばその人に「投資」することで、将来の値上がり益を享受できます。かつて日本でも話題になった「VALU」に似た仕組みと言えます。

BitCloutにログインすると、クリエイターコインの価格の人気ランキングが目に留まります。現在のトップはイーロン・マスク(時価総額2,500万ドル)で、アリアナ・グランデやジャスティン・ビーバーのコインも取引されており、思わず買いたくなるラインナップです。

実はこれらは、Twitter上の1万5,000人の有名人のプロファイルを使って勝手につくられたアカウントです。つくられた方の有名人は、BitCloutに参加したければアカウントに付与されたパブリックキーをつけてTwitter上でツイートすると、本人が認めたとしてアカウントがアクティベートされます。フォロワーがBitCloutの存在を知って、BitCloutを訪れる。有名人の影響力を使って拡散する仕組みが内包されています。

Image copyright: BitCloutが作成したイーロン・マスクのアカウント

BitCloutの実態は不明ですが、会社形態ではなくビットコインのようなオープンソースのブロックチェーンプロジェクトとされています。創業者も不明ですが、ステーブルコイン「Basis」(ベーシス)を創設したナデル・アル=ナジ(Nader Al-Naji)ではないかと見られています。

Image copyright: トークン・サミットのイベントで登壇したナデル・アル=ナジ PHOTO BIA YOUTUBE

サービス開始直後にもかかわらず、この世界観に魅了されたVCやエンジェルが群がっています。Sequoiaやa16zなどの有力VCに加え、個人投資家のチャマス・パリハピティヤやザッカーバーグの因縁の相手であるウィンクルボス兄弟などから、ビットコインで1億6,000万ドル(約174億円)の資金提供を受けたと言われています。

WHY IT’s SO POPULAR

魅惑の理由

BitCloutが話題を呼んでいるのは、最近盛り上がりを見せていた複数のムーブメントが詰め込まれたサービスであるからです。

まず、クリエイターエコノミーの文脈です。NFTは作品ごとですが、BitCloutの投資対象はクリエイター個人そのものです。クリエイターを早くから応援し、支えた個人に何の経済的還元もなかったこれまでに対し、BitCloutなら熱狂的なファンはクリエイターに投資して、部分的に所有することができます。

また、クリエイターに投げ銭できる有料の「いいね」や、コイン保有者限定のDM送信やトーク会、有名人に有料でリツイートしてもらう機能など、ファンエンゲージメントとマネタイズを促進します。またクリエイターコインの売却額の一定比率はクリエイターに還元されるなど、クリエイター本位なSNSです。なお、この還元率は自由に設定することができます(通常は10%)。

次に、投資の民主化の文脈です。「人の信用に投資」するBitCloutは「ソーシャルカレンシー」という新しいアセットクラスを創造したと言えます。ベンチャー投資もアーリーステージなら、投資対象の価値はほとんどが「人」。ロビンフッド革命やクラウドファンディング、SPACの流行など、個人に投資が身近になるなかで、BitCloutは「人」への投資という一部のエンジェル投資家に限られてきた市場の民主化と言えます。

最後に、ブロックチェーンの文脈です。分散型組織が運営を担い、オープンソースなため特定組織の営利に貢献しない前提のプラットフォームです。マネタイズも$BitCloutを通じた手数料なので、個人情報を垂れ流すことはありません。強大になり過ぎたFacebookやGoogleのような中央集権型プラットフォームへのアンチテーゼとして、新たな分散型SNSのあり方を示しているとも言えます。

Image copyright: FLICKR/BEATINGBETTING

PROBLEMS AND OPPORTUNITIES

問題は山積み、でも…

とはいえ、BitCloutには幾つか問題点も指摘されています。

まず、1万5,000人の有名人のBitCloutのアカウントを勝手につくった点。面白がってアカウントをアクティベートした有名人もいますが、なかには勝手に自分のプロフィールが流用され、その価値が売買されているという事実に怒る人や、集団訴訟を呼びかける弁護士もいます。

次に、BitCloutに投じたビットコインが引き出せない点。値上がり益を得ても、現在はBitCloutの外に出すことができません。これは$BitClout価格を維持するための仕様と見られており、いずれ引き出せるようになる見込みですが、いつになるかは不明です。

そして、大手VCなど初期に資金提供した投資家に、大量の$BitCloutをいまの100分の1以下の価格で配布した点。$BitClout価格は発行枚数に応じて自動的に値上がりする仕様になっており、初期に配布を受けた投資家の膨大な利益を賄うのは後参の一般人です。またBitCloutはオープンソースを主張しますが、コードが公開されていないなど不透明な部分が見受けられます。

Image copyright: Bitcloutの改良版があったら投資したいと呟く、著名投資家のツイート

ツッコミどころも多いBitCloutですが、一瞬にして世界を魅了したそのコンセプトや世界観は革新的で、次世代のソーシャルプラットフォームのあり方を示唆していますBitCloutの今後の進化に期待したいところですが、様々な対抗サービスが登場し、次世代のSNSの覇権を握る戦いを経て、新たな市場が開かれていく。ひっそりと産声をあげたこの新サービスへの熱狂は、ビッグテックの限界とプラットフォーム交代への人々の期待のあらわれかもしれません。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。Twitterアカウントは @kubotamas

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Cloumn: What to watch for

Zoom疲れに性差

スタンフォード大学とスウェーデンのイェーテボリ大学の著者による新しい研究によると、女性は男性よりも、いわゆる「Zoom疲労」を感じる可能性が高いそうです。Zoomミーティングの経験に関する約1万600人を対象にした調査から、男性の20人に1人と比較して、女性の7人に1人が、ズームコール後に「非常に強い」疲労感を感じていることが明らかになりました。
その理由は、研究者たちが「鏡の不安」と呼ぶ「社会的相互作用の間に遍在する鏡として機能するビデオ会議での自己観察によって引き起こされる」自己意識の感覚に帰着するといいます。それではなぜ、ビデオカメラで自分自身を見ることで、これほど大きな感情的な壁ができてしまうのでしょうか。心理学者タラ・ウェルは、「わたしたちは皆、問題や欠点、欠陥や失敗を見つけるために配線されています。数分以上自分自身を見ていると、自分たちに悪い部分を発見します」と説明します。
これらの傾向に対抗するために、ウェルはミラー瞑想を勧めています。まず、鏡の前に1日10分間座ること。ウェル曰く、「自分自身で『いま』に注意を向けてください。それから、あなたが新しい方法で自分自身を見ることにオープンであるというオープンな意識を持ってください。あなたは、あなたが必ずしも何を見ようとしているのかわからないことにオープンです。そしてあなた自身に対して親切な意図をもってください」。
もう1つ、確実な方法は、ズームでセルフビューを無効にすることです。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)


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