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Startup:観葉植物アプリが地球を救う──Greg

月曜夕方にお届けしているこの連載では、各回ひとつの「次なるスタートアップ」を紹介しています。今週は、地球に優しいだけでなく次世代の成功のヒントが詰め込まれたサービス「Greg」を取り上げます。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Deep Dive: Next Startups

次のスタートアップ

[qz-japan-author usernames=”masaya kubota”]

Quartz読者のみなさん、こんにちは。月曜夕方にお届けしているこの連載では、各回ひとつの「次なるスタートアップ」を紹介しています(これまでの配信記事はこちらから)。今週は、地球に優しいだけでなく次世代の成功のヒントが詰め込まれたサービス「Greg」を取り上げます。

Image copyright: PHOTO VIA GREG
Greg
・創業:2020年
・創業者:Alex Ross
・調達総額:540万ドル(約5億9,000万円)
・事業内容:植物育成サポートアプリ

PLANTS MARKET IS BOOMING

観葉植物、爆売れ

家で過ごす時間が増えて、観葉植物の売れ行きが好調です。日本でも多くの人がコロナ前に比べて家にグリーンを飾りたい欲求が高まったという調査結果も出ています。都心でも、鉢物や大ぶりの「枝」を抱えた人をよく目にするようになりました。

キャンプやグランピング、アウトドアレジャー人気の高まりも、密を逃れるのはもちろん「緑を求めて人間は動く」という理屈があることを思えば、観葉植物人気も同じ文脈で理解できます。レジャーよりも手頃に、安価にグリーンに触れる手段として観葉植物が魅力的な選択肢であることは頷けます。

また、コロナ禍に癒しを求めてペットを飼い始める人も増えました。植物に比べ、動物は圧倒的に手間がかかるし、賃貸物件ではなかなか難しい一方で、植物は騒音や臭いの心配もありません。さらにはSNSで「映え」まで狙えるとあって、有名女性誌ではガーデニングアイデアをシェアするInstagramアカウントの企画が組まれるほど盛り上がりを見せています。観葉植物はコロナ時代に現実的に手の届く癒しとして、確実に勢力を拡大させているのです。

WHO IS GREG

Gregとは?

観葉植物の人気が高まるなか、爆伸中のサービスがGregです。動物に比べて気軽に手が出せるとはいえ、植物も生き物です。水をあげる量や日光に当てる時間などが間違っていれば枯れさせてしまうわけで、観葉植物を健康に育てるためには知識も必要になります。

Gregは簡単に言うと観葉植物の育成をサポートするアプリで、想像以上のケアを提供してくれます。植物の種類ごとに水やりの量やタイミング、日光の浴びせ方(直射日光がいいのか、カーテン越しがいいのか)、風の当て方(窓の側の自然風が望ましいのか、エアコンの風もOKか)など、アプリが細かくアドバイスしてくれます。

Image copyright: PHOTO VIA GREG

ユーザーの居住エリアを登録すると、その地の天気や気温に応じてアドバイスが変わります。水やりのタイミングや頻度、植物を置くべき窓からの距離など、住む場所ごと、季節ごとに最適な手引きが示されます。単なるリマインダーアプリの域を超えており、初心者でも安心して植物を育てることができます。

コミュニティ要素が充実しているのもGregの特徴です。ユーザーは自分の育てた植物の写真を投稿して、他のユーザーとコミュニケーションをとることができます。投稿は35万を超え、ギャラリーのように美しい写真が並ぶタイムラインに「いいね」やコメントが付きます。まさに、“Come for the tool, stay for the network”というC向けサービスの王道をいく設計です。

Image copyright: PHOTO VIA GREG

自然にコミュニケーションが生まれ投稿が増えるに従い、植物の生育データも蓄積されます。それに連動してGregの機械学習の精度は上がり、育て方アドバイスの質は向上する。ユーザー、植物、そしてGregにとっても利益が生まれ循環する、「三方よし」な仕組みです。

POTENTIAL OF THE PLANT BUSINESS

植物ビジネスの可能性

観葉植物への熱狂はコロナによって生まれた現象のひとつでもありますが、実はビジネス的にも優れた領域です。

ペットも植物も「育てる」ものは、一度ユーザーの手に入ると寿命の続く限りマネタイズ機会が発生します。植物であれば、土や肥料、栄養剤のサブスクリプションは当然として、鉢や花瓶など関連するインテリアに凝りはじめるとキリがありません。メディアを入り口にしつつ、コマース的に継続性のある、ポテンシャルの高い領域です。

おまけに植物自体の生産に原価は大してかかりません。仮に在庫を抱えてしまったとしても、動物の場合とは違い処分にあたって地球環境を破壊することもないでしょう。

この可能性ある領域には投資家も目を光らせており、5月末、Gregはシードラウンドで540万ドル(約5億9,000万円)の資金調達を実施したことを発表。ファーストラウンドキャピタル、インデックス・ベンチャーズ、Tinderの前CEOであるElie Seidman(エリー・セイドマン)といった、ピカピカのVCやエンジェル陣が支援しています。

SOLVING SOCIAL PROBLEMS

社会課題の解決へ

さらに興味深いのは、Gregが「B corp」(ビーコープ)認証を取得している点です。

Image copyright: PHOTO VIA TWITTER/@BCorporation

B CorpとはPublic Benefit Corporationの略で、株主だけではなく、従業員や顧客、社会や環境に対して便益を生み出す「社会課題企業」の証です。欧米を中心に広がりを見せており、パタゴニア(アパレル)やガーディアン(メディア)、レモネード(家財保険)など、業界問わず3,821社が取得しており、ビジネスの成功を再定義するものとして認識されています(日本で取得している企業は6社)。

Gregの創業者のAlex Ross(アレックス・ロス)はTinderでコミュニティエンゲージメントを統括するエンジニアとしてアプリの成長を支えた人物です。

Image copyright: アレックス・ロス PHOTO VIA TWITTER/@AreteRoss

彼は「植物は地球の仕組みを理解するためにとても優れている」と言い、この先、社会がよりよくなるためには生態系、植物、食料システムの3つの仕組みを人びとが理解する必要があると信じてGregを創業したそうです。

観葉植物アプリのGregのパーパスが社会課題の解決であるという事実は、いまやどの企業もSDGsやサステナビリティと無関係ではなく、誰もが、どの立場からも、貢献余地のあるアジェンダであると気づかせてくれます。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。Twitterアカウントは @kubotamas

連載「Next Startups」では、これまで精子バンクからライブコマース、暗号資産まで多くのテーマを扱ってきました。各回ごとに最先端のスタートアップの動向をキャッチアップできる過去アーカイブ一覧はこちらから。

Cloumn: What to watch for

「棺桶」で癒せ?

Image copyright: PHOTO VIA YOUTUBE/Jacob Manning
アマゾンが従業員向け瞑想ボックス「AmaZen」を設置すると発表したのは先月末のこと。3億ドル(約330億円)を投じて従業員の心身の健康を改善するプログラム「WorkingWell」の一環として、激務の倉庫従業員が就業中に疲れを癒せるよう、マインドフルネス動画を見ながら瞑想できる1人用のブースを設置しました。
聞こえのよい話ですが、同社公式アカウントが「AmaZen」を紹介する動画をTwitterに投稿したところ、批判が殺到。すでに投稿は削除されましたが、「AmaZen」を見た人からは「まるで棺桶」「簡易便所の方がまだいい」といった手厳しいコメントがつきました。海外メディアも「(ジェフ・ベゾスは)薄給の従業員に対し、なんたる恩知らず」という見出しで皮肉たっぷりにこの件を報じています。
それもそのはず。4月6日に米誌フォーブスから発表された2021年版世界長者番付でベゾスは4年連続でトップの座を維持。コロナ禍でEC需要が高まる前から問題視されていた倉庫従業員らのブラックな労働環境は、膨らむ需要でさらに深刻なものに。その結果、アマゾンの利益はこの1年で約3倍に膨れ上がったわけですが、それを支えた倉庫スタッフへの還元の仕方が「まるで棺桶」とは考えものです。対峙すべきは、瞑想ボックスを導入しなければならないほどの労働環境そのものでしょう。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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