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Stautup:コロナ禍を経て、より強くなるインド・スタートアップエコシステム

Quartz Japan読者の皆さん、こんばんは。今日は特別なニュースレターをお届けします。先日開催したウェビナーシリーズ「Next Startup Guide」第7回のダイジェスト版とともに、第8回の詳細もお知らせします。

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ウェビナー第7回レポート

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Quartz Japan読者の皆さん、こんばんは。今日は特別なニュースレターをお届けします。先日開催したウェビナーシリーズ「Next Startup Guide」第7回のダイジェスト版とともに、第8回の詳細もお知らせします。

Image copyright: REUTERS/AMIT DAVE
このニュースレターは、現在、期間限定で配信から24時間、ウェブ上で無料で閲覧できます。ニュースレター末尾のボタンからぜひシェアしてください。

Quartz Japanのウェビナーシリーズ「Next Startup Guide」は、世界の第一線で活躍するベンチャーキャピタリストをゲストに迎えて毎月開催しています。

今日のニュースレターでは、月曜夕方に月2回のペースでお届けしている「Next Startup」のナビゲーター久保田雅也さんとともにお届けしたウェビナーの内容を、読者の皆さんと共有します。

今回お届けするのは、5月27日に開催した第7回の内容です。Incubate Fund Indiaの村上矢さんをゲストに迎え、コロナ下のインドのスタートアップシーンを語り尽くしていただきました。

ウェビナーが開催された5月27日は、世界でも広く報じられた悲劇的な第2波から抜け出そうとしていたまさにその瞬間。当日は、これまでのウェビナー同様に村上さんが注目する「次なるスタートアップ」も挙げていただきましたが、本ニュースレターではとくにスタートアップの連携にフォーカスした内容に編集を加えています。

ウェビナーで使用したスライドは、PowerPoint版PDF版をそれぞれダウンロードしていただけますので、村上さん注目のスタートアップ2社の詳細はそちらでぜひチェックしてみてください。また、ウェビナー第8回は6月24日(木)に実施します。鈴木隆宏さん(Genesia Ventures)をゲストに、インドネシアから次々輩出されるグローバルユニコーンの現実に迫ります。Quartz Japanのメンバーシップ読者の皆さんは無料でご参加いただけますので、ふるってご参加ください! お申込み・詳細はこちらのリンクからどうぞ。

それでは、以下、村上さんと久保田さんが繰り広げたトークのエッセンスを、どうぞお楽しみください! なお、記載されている情報はウェビナー当日の5月27日時点のものです。

村上矢(むらかみ・なお) University of Illinois at Urbana-Champaign(政治学専攻・歴史学副専攻)卒業。野村證券グループの東京およびニューヨーク拠点にてIT・インターネット領域のスタートアップを担当し、多くの企業をIPOへと導く。2014年にインドへと移り、現地にてスタートアップ立ち上げを経験。2016年にIncubate Fund Indiaを設立し、ジェネラルパートナーに就任。Twitterアカウントは@nao_IFI
久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、2014年、WiL設立の際にパートナーとして参画。Quartz Japanのニュースレター連載「Next Startup」では、毎回世界の注目スタートアップを取り上げているNewspicksプロピッカー。Twitterアカウントは@kubotamas

cannot be ignored

問われる存在感

村上(以下M) 昨年3〜5月の第一波と、今年3月末〜4月の第二波では、完全に温度感が違いました。第二波では個人的な知り合いが入院したり亡くなったり、あるいは投資先でも社員の3分の1から半分が新型コロナウイルスに感染しているというケースがいくつもありました。投資先のファウンダーも、ほぼ半数が罹患していましたね。

久保田(以下K) そんなに。

M インドでのコミュニケーションでは「WhatsApp」がよく使われています。ぼくも家族や投資先など、グループを使いわけていますが、タイムラインは一時期、コロナ関連の情報で埋め尽くされていましたね。誰かのパルスオキシメータの数値が低下しているから集中治療室の空きがあれば教えてくれというメッセージが届いて、この病院に空きがあったと伝えても、時間をおかずに、残念だけどすでに亡くなってしまったというやり取りが流れてくる……本当に厳しい状況でした。

とはいえ、いま(5月27日時点)は、完全にピークアウトしています。厳しい状況であることは変わりませんが、落ち着いてきています。感染がかなり急速に拡大したように、一気に元に戻っていくのかもしれません。

──インドへの支援をみると、とくに海外企業の動きが盛んで、いわゆるGAFAMも率先して酸素や人工呼吸器などの物資を送るなどしています。かたや日本企業はというと、目立った支援活動がないように思えます。

M 全くやっていないわけではないですが、しかし、やはり規模が違います。GAFAMやZoomなどテック企業に限らず、欧米の大企業が資金の面でも物資の面でも機動的に動いている様は見てとれます。

K グローバルのテックジャイアントといえば、インドに開発拠点をもっていることがよく知られています。そうした背景も影響していますか?

M ええ。彼らは、これからの10年、20年、30年を考えたときにインドが重要な拠点であり続けることを認識しています。だからこそ、インドが深刻な状況にあるときにサポートしない選択肢はない、という判断をしているんでしょう。本来であれば、いまこそ日本企業も率先して支援し、自身のプレゼンスを上げるいい機会だったとも思います。残念ながら、そうしたアプローチはあまり見えてきませんでしたね。

K 考えてみるとグーグルもフェイスブックもアマゾンも、元々スタートアップですよね。起業家がいまもリーダーシップをとっているようなファウンダー主導の企業の動きが、有事で際立っているんでしょうか?

M そうですね。CEO自らがTwitterなどで発信していますが、やはり動きが早いですよね。とくに、グーグルやマイクロソフトのCEOはインドで育ったインド人。おそらく彼らからすると、もっとやりたいくらいの気持ちなのではないでしょうか。有事の際は、合議性ではどうしても物事が進まないもので、スタートアップ的なやり方がプレゼンスを発揮している印象があります。もちろんそこに何らかのプランがあるのかもとも感じます。

Being mission-driven

課題ドリブンの国

──海外に限らず、インド国内の企業も自ら動いているようですね。

M ぼくらも投資先とほぼ毎日話をしていますが、彼らの迅速な動きには、心底頭が下がる思いです。「やるべき」と決めたときのインド企業の動き方は、DNAレベルで刻まれているのではと思うほどです。

M 大企業はもちろん、例えばいわゆるマッチングアプリのスタートアップが自社のシステムを使い、血漿提供者と患者とをマッチングする仕組みを一夜にしてローンチしてしまう。そういう動きを見ていると、インドのよさがすごく出ていると感じますね。

K インド人の、自分を犠牲にしても社会が向き合っている課題に対して汗をかくという姿勢がクリアに見えていますね。

M ぼくは7年間インドで暮らしてきましたが、インド人は、見返りを考えずに自分の身の回りにいる人を助けていくことを、空気を吸うようにできる。そんな国民性は、世界中探してもここにしかないと思いますね。

K インドの国民性といえば、自己主張が強い印象もあります。

M インドは宗教もバラバラで、食べているものも違えば、喋っている言語も60以上というカオスな国。それを一党独裁などではなく民主主義でまとめようとすると、どこかで軋轢が生まれ、トラブルも起きます。だからこそ自己主張が強い国民性も生まれるのだと思いますが、それと同時に、社会としてまとまっていくために許し助け合うという精神が、インドの根底には流れているのだと思います。

K なるほど。

M 市民レベルの助け合いの精神が企業レベルでも浸透していて、今回、有事にあたって顕在化したといえるのでしょう。ぼくらの投資先も、自分を犠牲にして24時間、365日働いてでも周りを助けようとする動きをしていますが、なかなかできることではないと思いますね。自分の給料をすべて返上してでもやる、みたいなことを、やっぱりやるんです。

K インドのように競争の激しい市場で、ましてやコロナの混乱で、まずは自社が生き残るのが先決、みたいな状況だったかと。

M ええ。

K だからこそ、彼らはどんな心持ちで取り組んでいるのでしょうか?コロナ後に伸びそうな事業機会を見つけようという狙いもあるのか、あるいは本業がありつつ、ただただ空いた時間でこの新たな社会課題に取り組んでいるのか……。

M ぼくらが直接やり取りしているスタートアップをみていると、後者の姿勢が多いようです。そもそも自分たちの事業の可能性を信じてスタートアップを始めているからこそ、その信念が揺らぐことはないんですね。ただ、自分たちが取り組む事業の延長で助けられる人がいるのであれば、お金を取るでもなくサポートしよう、と。そして、そのために時間が必要なんだったら俺が寝なきゃいい、と。

K なるほど。

M そんなファウンダーの決定を、従業員も受け入れているようです。それを理由に会社を辞めていく社員は、少なくともぼくらの投資先を見る限りひとりもいません。企業として一体感が出ていると感じます。

K そこに、インドのスタートアップ特有の「課題ドリブン」な姿勢が見えてきますね。なんのためにスタートアップをやっているか──特にインドみたいな国では目の前の課題を解決するために起業しているわけで、とてつもない課題が降りかかったときにも無視はできないということでしょうか。

M ええ、間違いなく。コロナ禍が起きなくとも、社会課題が顕在化している国ですからね。だからこそ、いま、世界規模の社会課題をしっかり解決できるビジネスをつくれば、ビジネスとしても大きくなるはずだという発想で動き出している人たちもいますね。

next stage of india startups

スタートアップが支える

──そうしたスタートアップの具体的な例として、「ACT Grants」のことを教えていただきたいのですが、これはなんとも説明が難しい座組ですね。

M ええ。単一の企業ではなく、慈善団体とでもいえばいいでしょうか。世界的にも、あまり類を見ない団体だと思います。

創業年:2020年
創業者:インドのスタートアップエコシステムのリーダー達(VC・ユニコーンの創業者など)
資金調達総額:$51.4M
主要VC: Sequoia、Accel、Nexus、などをはじめとしたインドで活躍する主要VCの多くが参画
事業内容:新型コロナと戦う先進的な取り組み/事業をスタートアップ的な視点でサポート/事業化やスケール化のアドバイスや寄付による資金提供

M ACT Grantsが立ち上がったのは、2020年の第1波のタイミングでした。状況が次第に厳しくなるなかで、主要VCの創業パートナーやユニコーン創業者をはじめとする、インド・スタートアップエコシステムのキーパーソンたちが集って始まった団体です。コロナ下では酸素濃縮機を配るようなプラクティカルなものから、コロナ禍と戦うために必要なビジネス/事業アイデアのための資金提供までお金が動いています。Act Grantsは寄付金を集め、それを資金にさまざまな事業を展開しています。通常は競合だったりするようなユニコーン創業者やVCが集まり、みんなで知恵を出し合ってコロナ禍を乗り越えようとしているんですよね。

K たしかにユニークですね。

M 寄付活動もしていて、最近は約55億円を集めて酸素濃縮機を配布しています。それも、集めた寄付金で酸素濃縮機を購入して配るだけではなく、航空会社エア・インディアやアマゾンと連携し、数少ない酸素濃縮機を海外からどう輸入するのか──どんなペーパーワークをしてどうすれば通関を早く通過できるのか、スキームを組んで取り組んでいます。海外にもネットワークをもっている人たちが民間の大企業を巻き込み、大規模な動きをしていますね。

K Act Grantsの各プロジェクトはいずれも民間主導で実行されているとのことですが、一方で政府はどんな役割を果たされているんでしょうか。日本ではワクチンの遅れなどで行政はボコボコに批判されていますが、インドでは批判する前に民間が率先して動いている印象を受けます。

M おっしゃるとおりですね。政府の取り組みを批判している方もいますし、そうでない方もいる。政府の取り組みに対する良し悪しの評価はぼく自身できかねる部分があります。ただ、批判したところで、感染者が増えていく状況に変わりはありません。「批判はあとで」という姿勢なのだと思います。

日本とは比べものにならないほど多様性のある国で、人口も多くて、貧富の格差も大きいインドでは、地方も中央も、行政だけに頼っていると取り溢される人が出てきます。ならば民間が動くしかない。周りに苦しんでいる人がいて、その一方で金銭的にも社会的にも上位にいるVCの投資家やユニコーン創業者がいるのなら、後者の人たちはもっているお金や知恵を全部投下して、国の危機に立ち向かうべきだという動きがあたりまえに起きているんですよね。

K 議論や批判をするより前にアクションする、という。

M そうですね。そのなかでは当然、うまくいくものもいかないものありますが、一つひとつを個別に取り沙汰していると状況は悪化する一方です。「可能性のあるものが目の前にあるならば、まずはお金もつけてサポートしてみよう」という姿勢なのだと思いますね。

K そうした国や経済界を巻き込む流れをつくっているのが、政府や経団連的な大企業の組織ではなく、スタートアップである、と。

M ええ。Act Grantsはまさにその流れを象徴するイニシアティブだといえますね。これはコロナ禍以前から感じていたことですが、インド政府のスタートアップに対する期待値は、日本とは比べものにならないくらい大きいです。実際に政府は、スタートアップがしっかり伸びて既得権益に立ち向かう動きを後押ししていましたが、一方のVC/スタートアップ側にも、自分たちが「次のインド」を担っているという思いは非常に強いですね。

K アメリカでは昨年、起業数が過去最高を記録したそうです。コロナで噴出した新たな社会課題が起業ネタにつながった、という事だと思いますが、そこにインド人の「課題が困難なほど燃え上がる起業家精神」がかけ算されると、末恐ろしさすら感じますね。そしていま、コロナの影響は次第に収束に向かっているわけですよね。

M ええ。

K コロナを経て、インドが一回り、二回りと強大なスタートアップ大国になっていく気がしますね。

M  ぼくらが投資をしているShopKiranaは、インド国内に900万軒以上あるパパママショップのサプライチェーンをディスラプトしているスタートアップですが、彼らはコロナ以前から、右肩上がりで伸びていました。コロナ禍が起き、ShopKiranaはいったんグロースへの投資を止めるという判断を下したのですが、以後1年半くらいの間、収益性の改善に時間を費やし、実際に収益性が4倍も改善したんですね。

K コロナがさらに筋肉質な利益体質に変貌させたと。

M コロナ禍を抜け出せば、彼らはまたグロースに投資することもできるでしょう。資金調達もしやすくなるはずです。ShopKiranaに限らず、このコロナ禍で事業の本質的な部分を見直して、筋肉質になった会社は多いと思います。これからエコシステムとしてより強固なものが構築されていく未来の姿は、容易に想像できますね。

次回ウェビナー第8回は6月24日(水)12:00〜の開催。インドネシアのスタートアップシーンを特集します。詳細およびお申込みはこちらから!

(編集:年吉聡太)

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