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Space:#4 目指せ、衛星データのサブスク化

地球外生命体の経済的可能性を伝える週刊ニュースレターへようこそ! 今週も、宇宙ビジネスのいまをお届けします。

Image copyright: Virgin Galactic livestream
Astronaut and test-customer Richard Branson.
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

Quartz Japan読者のみなさん、こんばんは。地球外生命体の経済的可能性を伝える週刊ニュースレターへようこそ! 今週も、宇宙ビジネスのいまをお届けします。

🚀 Space Business Insight

ESGのバックエンド

ここ最近の宇宙ビジネスで一番ホットなニュースは、リチャード・ブランソンジェフ・ベゾスの楽しいサブオービタル飛行、ではありません衛星画像データサービスを手掛けるプラネットPlanetが、特別目的買収会社(SPAC)でdMY・テクノロジー・グループに買収された後、株式公開を決定したことです。

プラネットは、上場した宇宙関連企業の中では最も成熟した企業で、昨年の収益は1億1,400万ドル(約125億5,000万円)を超え、SPAC方式で上場した同じような企業から頭一つ抜けた存在感を示しています。軌道観光のヴァージン・ギャラクティックの23万8000ドル(約2,620万円)、衛星画像処理のスパイアの2,900万ドル(約32億円)、ロケットメーカーのロケットラボの3,500万ドル(約38億5,000万円)をはるかに上回ります。

プラネットが最も力を入れるのが、宇宙ビジネスの主流化です。同社は、低コストで地球全体の画像を毎日撮影する「プラネットスコープ衛星」を何百機も打ち上げた事ばかりが世間から注目されることを懸念し、衛星運用会社ではなく「データ会社」として再出発してから2年が経過しました。より高精細な画像を撮影するための大型衛星の運用も行っています。

CEOのウィル・マーシャル(Will Marshall)は、Quartzに次のように語っています。「当社のサービスはバックエンドです。人びとに衛星を販売するのでなく、情報を提供しているのです。わたしたちのビジネスは、一見するとデータとソフトウェアビジネスに見えます。昨年のプラネットスコープ事業の売上総利益率は約62%でしたが、これにはプラネットスコープ衛星の減価償却費が含まれています。ほとんどの衛星会社は、衛星のコストを除いた成長率がマイナスなのに、です」

2010年創業のプラネットは、CEOのマーシャルと同社の最高戦略責任者であるロビー・シングラー(Robbie Schingler)と、現在ベンチャー企業DCVCのパートナーであるクリス・ボシュイゼン(Chris Boshuizen)によって共同設立されました。3人ともNASAに勤務していた同僚で、小型衛星の技術を民間で活用するチャンスがあると考えたのです。しかし、「技術」はビジネスモデルではありません。同社は、衛星情報をすでに利用している組織だけでなく、利用していない組織にもデータを役立ててもらう方法を考えることにしました。

その結果、同社の現在の顧客のうち防衛・諜報機関の割合は4分の1に止まり、最大の取引先が農業関連企業であるというのは実に興味深いことです。今年4月にプロダクト&ビジネス部門のトップに就いたケビン・ワイル(Kevin Weill)は、Twitter上の大量のデータを広告主にインサイトとして販売することに貢献した人物です。マーシャルは同社を、金融市場ではなく地球に関するデータを扱うブルームバーグ端末のようなもので、魅力的なサブスクリプションベースのビジネスモデルであると考えています。

ひょっとすると、ブルームバーグ・ターミナルのユーザーもそう思っているかもしれません。プラネットが株式市場に登場した背景には、投資家が企業に導入を求めるルール──「ESG投資」の台頭があります。世界最大級の資産運用会社ブラックロックは、グーグルやセールスフォース創業者マーク・ベニオフとともに、プラネットのSPAC取引に参加したエンジェル投資家ですが、プラネットを上場させるSPACを主導した投資家のニッコロ・デ・マシ(Niccolo de Masi)は先週、「ブラックロックは、ESGスコアを追跡していない企業は本当の意味で投資可能な企業ではないと言っている」と明かしたのに続けて、「プラネットは、企業がそれを行う手助けをしてくれる」と、そのポテンシャルを評価しました。

「世界はプラネットのサービスを必要としているし、わたしたちはそのニーズの高まりを感じています。新型コロナによる不況から、アフターコロナの新しい経済への移行、すべての人がオンラインサービスで生活を回そうと切り替えが進んでいるし、すべての産業が持続可能な経済に切り替えようとしていることです」と、マーシャルは言います。

「わたしたちのデータは、これらの企業にとって非常に重要なものです。脅威が迫っていることを察知し、根本的な効率化に乗り出さなければ競争力を維持できない企業や、規制強化を行う政府は、プラネットのデータなしには手に負えません。なぜなら、すべての企業はESG目標を測定し、すべての国が排出量を測定しているから」と説明します。

プラネットは、通常の基準では「まだリスクの高いテクノロジー企業」です。現在は成長のための投資を行っており、2025年までは収益化しない見通しです。投資家にとっての懸念は、同社の1億4,700万ドル(約162億円)の負債かもしれませんが、これは今回の上場で調達した資金の一部で償却されます。ほかの資金の多くは、顧客基盤を拡大するための営業担当者や、顧客のためによりよいツールを開発するためのソフトウェアエンジニアの人材確保に充てられるようです。現在、プラネットの衛星群はほぼ整備されていますが、数年ごとに新しい宇宙船を導入し、継続的に更新する必要があります。

目標は、「普通の」デジタルスタートアップのように、プラネットをスケールアップさせることです。これは、宇宙活動を促進するための斬新な新製品やインフラの試験ではありません。それは、宇宙で集めたデータが、携帯電話やGoogleの検索で集めた情報と同じくらい価値があるかどうかのテストです。つまり、宇宙ビジネスは普通のビジネスなのかどうか、ということです。

🌘 IMAGERY INTERLUDE

写真でひとネタ

米ミドルベリー大学の付属機関、ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのアナリストが、中国で弾道ミサイルの大規模サイロが新たに建設されていることを発見し、商業衛星画像の重要性が改めて強調されました。次に重要なのは衛星レーダーで、サイロを建設する際のカバーを含む、いくつかの構造物の内部を確認することができるそうです。オープンソースのデータを分析するインテル・ラボのアナリストが、この画像に注釈をつけてくれました。この画像では、発射場の掘削に使われているテントの中にある硬い「何か」が写っています。

Image copyright: Capella/Intel Lab

🛰 SPACE DEBRIS

宇宙ビジネスのいま

Image copyright: Virgin Galactic livestream
Astronaut and test-customer Richard Branson.
  • 詐欺疑惑のモメンタス、和解。今年、ナスダックにSPAC方式で上場した宇宙輸送スタートアップのモメンタス(Momentus Space)。株式公開とスペースタグ(中継軌道と宇宙ステーションの間の連絡用ロケット)の打ち上げを夢見ていた彼らの武勇伝は、モメンタスとその投資家たちが詐欺容疑を解決するための和解金として800万ドル(約8億8,000万円)を支払い、新たな展開を見せています。米国の安全保障に関わる疑惑で物議を醸したロシア人創業者のミハイル・ココリッチ(今年1月に辞任)は、この和解に参加せず、米証券取引委員会(SEC)の捜査対象になっています。現在スイスにいるココリッチ氏は、自身にかけられた詐欺疑惑について否定しています。ココリッチ氏がアクセス権限のない(アメリカ市民でも永住者でもない人はテクノロジーへのアクセスが輸出の一形態と見なされる)、制限された技術にアクセスしたことに対する連邦政府の調査については昨年11月にニュースレターでお伝えしています。皮肉なことに、モメンタスの問題は、彼らの技術があまりにも重要で米国民以外が利用するのは危険と判断されたことが発端なのに、肝心の「重要な技術」はことごとく機能しなかったのだ……。
  • ブランソン、宇宙へ。米ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)創業者、リチャード・ブランソンは7月11日、同社のロケット飛行機で宇宙に行きました。ロケットが定期運航される前に乗るという約束を守るためです。定期運行がいつ始まるか具体的な日程はまだ明らかにされていませんが、ブランソンの「宇宙旅行への賭け」がいかに報われたか、これをアピールする価値はあるでしょう。ギャラクティック社が2019年に上場した後、ブランソンはパンデミックで苦境に立たされたビジネスを強化するために十分な株を売却し、今でも23億ドル(約2,540億円)相当の株を保有しています。さらに同社は新たな株式を売り出し5億ドル(約551億円)を調達。コンスタントにサブオービタルツーリズム(軌道下観光)を実施するという目標に向かって着々と歩みを進めています。
  • ベゾスの宇宙旅行。7月20日、アマゾンのCEOを退任したジェフ・ベゾスがニュー・シェパードに乗り、宇宙に向かいました。ベゾスの兄、そしてNASA在籍時に飛ぶチャンスを与えられなかった82歳の飛行士、ウォーリー・ファンク(Wally Funk)など同乗者を含む計4名が打ち上げられました。また、ブルーオリジンの慈善団体「クラブ・フォー・ザ・フューチャー」に2,800万ドル(約31億円)を支払って、この宇宙旅行に参加した乗客1名の身元については、明かされていません。ブルーオリジンは、この謎の乗客が支払った代金のうち1,900万ドル(約21億円)を宇宙に関連するsあまざまな非営利団体に寄付します。これは、特に航空宇宙産業に縁遠いグループを取り込むために活動している団体にとっては喜ばしいことです。しかし、今回のベゾスの宇宙行きに対し、世間はほぼ否定的な見方をしています。その点から言えば、ブルーオリジンが取り組む、この新しい宇宙開発モデルが我々にとってなぜ重要なのかを一般向けに説明する貴重なチャンスをやすやすと無駄にしているように思えます。
  • アマゾン、最後の宇宙FAANG? フェイスブックのワイヤレスインターネット専門家12人以上がアマゾンに移り、地球低軌道(LEO)に約3,000機の衛星群を投入する世界規模の衛星コンステレーション計画「Project Kuiper(カイパー)」に加わります。この取引は、大手デジタル企業が宇宙ビジネスに手を出す難しさを浮き彫りにしています。フェイスブックやグーグルは、人工衛星の打ち上げや運用に向けて多くの取り組みを行ってきましたが、それらのプロジェクトは終了。おまけにアップルの人工衛星計画の噂も途絶えています。そうなると、アマゾンは独自の衛星プロジェクトを持つ最後のインターネット企業ということになるかもしれません。

(翻訳:鳥山愛恵)

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