Impact:気候変動テックをブームで終わらせないために

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Deep Dive: Impact Economy

気候テックの衝撃

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気候変動に立ち向かう「クライメイト・テック(気候変動テック)」。本日のニュースレターでは、その可能性について、改めて知っておきたい過去と現在地についての論考をお送りします。

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Image: Tsjisse Talsma for Quartz

その日、ピーター・ラインハルトが案内してくれたのは、サンフランシスコのゴミゴミした一角にある産業事故の跡地のような場所でした。

そこで目にしたのは、解体途中のプロパンタンクや鉄製エアロックに重機、そしてアーモンドの殻。うずたかく積み重なった鉄パイプの横に置かれた60ポンド袋のアーモンドの殻が、カリフォルニア・セントラルバレーから運ばれてきたほかの廃棄物と一緒に焼却されようとしていました。

廃棄物は過熱される過程で、水素をはじめとするガスが発生します。そしてそれこそが、ラインハルトのスタートアップCharm Industrialが目指すもの──植物を化石燃料の代わりとするゼロカーボンの未来、なのです。

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マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の航空宇宙エンジニアであるラインハルトは、10月初旬にデータ会社Segment.ioを約32億ドルで売却しましたが、このあらたな構想については、数カ月前までうまくいくかどうか懐疑的でした。それまでの2年間、彼は週のうち土曜を使ってバイオサイエンス領域についての調査こそ幾度も重ねてきましたが、果たしてこれが利益を生むのかというポイントで行き詰まっていました。しかしいま、彼はそれを証明しようとしています。

「何もつくらないまま失敗する確率だけを減らすなんてことは、できませんからね」。Charmの敷地を歩きながら、彼は言います。

もしスケールしたなら、彼らは2つの方法で温室効果ガス排出量を削減できることになります。まず、二酸化炭素を多く含むオイル状の物質を合成して地下深くに貯蔵し、大気中から二酸化炭素を取り除くこと。そして、さらにこの物質を水素に精製し工業炉の燃料として使用すること。バイオマスを原料としているため、大気中への炭素排出量はゼロになるというのが、Charmの描く絵図です。そしてこれは、たんなる理論上の話ではありません。Charmは、最初の顧客としてShopifyStripeの2社と契約を交わしています。

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「すべてを脱炭素化する」というアイデアを信じているのは、ラインハルトだけではありません。シリコンバレーにいる何百人ものスタートアップ創業者が、それを信じています。少数ではあるものの、情熱的な創業者やエンジニアがテスラのような企業や、あるいは大手テック企業を飛び出し、「この世代最大のチャンス」と呼ぶクライメイト・テック(気候変動対策テクノロジー)に狙いを定めています。

もっとも、これはいまになって初めて起きた現象ではありません。約10年前、人びとは「クリーンテック」と呼ばれる再生可能エネルギーブームに熱狂しました。スタートアップはベンチャーキャピタルを大きく動かしましたが、支払い能力のある企業はほとんどなく、結果として何十億ドルもの損失が発生することになりました。

しかし、いま気候変動対策ファンドは再燃しています。何十億ドルもの資金がこの分野に戻ってきています。Charmはその大きな恩恵を受ける企業のひとつかもしれません。PitchBookによるとCharmはエンジェル投資で350万ドルを調達していますが、彼らの世界規模の野望を実現するためには、さらに数億ドルの資金が必要です。

シリコンバレーはこの新たなブームを迎えていますが、投資家はまだナーバスなままです。「多くのベンチャーキャピタリスト(VC)が視察に来てくれましたが」。ラインハルトは試験運転を重ね汚れた什器の横に立って言います。「彼らはとても臆病ですね。もっともぼくがVCでも気弱になるでしょうけれど」

Climate bust 1.0

かつて通った道

ジョン・ドーア(1951年生まれ、米国人VC)が2007年に行ったTEDトークほど、当時のブームの楽観主義を象徴するものはないでしょう。著名なベンチャー企業クライナー・パーキンス(KPCB)のパートナーである彼はステージに上がり、夕食時に幼い娘と地球温暖化について会話したときのことを語りました。「娘はわたしに向かってこう言いました。『パパ、あなたの世代がこの問題をつくったんだから、なんとかしなくちゃ』。あの夜、わたしの中ですべてが変わったんです」

当時、KPCBは、クリーンテック・ブームの旗手というべき存在でした。同社は数十社に対して6億3,000万ドルを投資。パートナーの半数が、ドーア曰く「6兆ドル規模のビジネスになる」と予測した企業をターゲットにしました。

彼はTEDの聴衆に向かってこうも語っています。「インターネットの黎明期を覚えていますか? グリーンテクノロジーは、インターネットよりも壮大です。21世紀最大の経済的機会になるかもしれません」

そう口にしたのは、ドーアだけではありません。ほかにも幾人もの投資家からも何十億ドルもの資金が集まり、気候変動に関わる事業には政府の支援も導入されました。2009年、米国ではバラク・オバマが大統領に就任し、民主党が与党に。排出量を削減するための重要なステップとなる「カーボンプライシング(炭素排出量への価格付け)」が導入されることになりました。太陽光発電や再生可能エネルギーのコストが急速に低下し、石油・ガス会社は、いますぐ二酸化炭素排出ゼロのエネルギーを提供するスタートアップを買収すべしとされていました。シリコンバレーは世界を変えながら一攫千金を狙える、そんな場所になろうとしていたのです。

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ただし、それは実現しませんでした。2006〜2011年の間に250億ドル以上のベンチャー資金を投じて立ち上げられた100社以上の新エネルギー企業のうち、半分以上が失敗に終わったのです。成功した部類に入る企業の中にも、燃料電池を手がけるBloom Energyのように、上場までに15年以上を要した挙げ句いまだ安定した利益を上げられない企業もあります。

わかったのは、エネルギー関連のスタートアップ企業は、ソフトウェア関連のスタートアップ企業とは動きが異なるということ。そして、テック関連の投資家は大規模なインフラプロジェクトへの投資に不向きだということでした。タイムラインは遅く、成長にはコストがかかります。化石燃料産業もエネルギー移行に反対の姿勢をとっていました。

スタートアップは、政治と経済の両面で不利な状況に置かれていました。米国史上最大の気候変動対策法案「米国クリーンエネルギー安全保障法」は、下院を僅差で通過したものの2009年には上院で否決され、温室効果ガスのキャップ&トレード制度への期待も打ち砕かれました。中国が安価なソーラーパネルを市場に投入し、シリコンベースの太陽電池モジュール生産における米国のシェアも下落。1995年に40%だった米国のシェアは、ほんの10数年後、わずか4%にまで落ち込んでいます。

最後の一撃となったのが、フラッキングです。水圧破砕と呼ばれる掘削技術のおかげで天然ガスの生産量が急増し、2008年に1,000立方フィートあたり13ドルだったその価格は、1年後には4ドル(最終的にはさらに下落)まで下がり、風力や太陽光はまったく魅力的でなくなってしまいました。

いうなれば、紛うことなき嵐のよう。MIT Energy Initiativeが行った調査によると、2011年のクリーンテック部門は「荒廃状態」。VCがこの分野に250億ドルを投じたものの、その半分以上が消えてしまったとしています。2007年以降に出資を受けたクリーンテック企業のうち90%以上が初期投資を回収できず、損益分岐点に達したスタートアップ企業の割合はほかのどの分野よりも低いものでした。成功した場合でも、初期の収益はソフトウェア・スタートアップとは比べものにならないほどでした(MITのレポートは、「ハイリスク・ローリターン」と結論づけています)。

そして生じた金融危機。投資家はその後、何年にもわたり、ソーシャルメディアやクラウドサービスといった安全な場所に逃げていったのです。

This time is different?

「前」とは違う?

時代は変わり、かつてのブームが「クライメイト・テック」と名を変え、戻ってきました。

PWCによると、2019年のベンチャー投資では、1ドルあたり約6セントがクライメイト・テックに投じられたといいます。この分野は幅広く、データセンターのエネルギー効率化アルゴリズムから電動飛行機に至るまで拡大しています。同年、500社以上のクライメイトテック企業が投資家から100億〜160億ドルを集め、そのほとんどが米国、中国、欧州からの資金でした。

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この熱狂を支えているのは、巨大な市場への信頼です。世界経済の脱炭素化が「21世紀最大の経済機会」になるというドーアの言葉は、おそらく正しかったのです。ただ、彼はそのタイミングを誤っていたのです。

2006年当時、国家にも企業にも、カーボンニュートラルの目標を設定するような動きはありませんでした。しかし現在、状況は逆転しています。20カ国がネットゼロの目標を設定しており(EU日本、そして世界最大の温室効果ガス排出国である中国も発表)、さらに120以上の国が目標達成に向けて取り組んでいます。すべての主要排出国が将来的に何らかのかたちでカーボンニュートラルを採用する可能性があり、EUの炭素国境税のような提案は、世界貿易のルールを塗り替えるものとなるでしょう。

産業界に目を向けると、この動きがさらに加速化していることがわかります。企業の排出目標を追跡する非営利団体Science Based Targetsによると世界の主要企業300社以上が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを約束し、フォーチュン500企業の4分の1が気候変動に関する目標を公表しています(2015年から4倍に増加)。金融機関は、化石燃料からの撤退を始め、企業に気候変動リスクの開示を求めています。サステナビリティNPOのCeresによると、29兆ドルの資産を運用する200近くの機関投資家が、米国の温室効果ガス排出量上位企業の幹部に対し、平均温暖化を摂氏2度未満に抑えるというパリ協定の目標に合わせて事業を調整する計画を開示するよう指示しています。

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そこで生じる疑問がひとつ。この転換期において、シリコンバレーはどのような役割を果たしているのでしょうか?

その答えのひとつとなるのが、イノベーションを「購入」する顧客としての役割です。Googleは9月14日、大手企業として初めて、2030年までにすべての事業を24時間カーボンフリーのエネルギーで運営することを発表しました。Amazonは6月、2040年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しました(創業者が設立した100億ドルのBezos Earth Fundに加えて、20億ドルの基金を設立しています)。また、MicrosoftとAppleも同じく、です

一方で、カリフォルニアのテックシーンには、新しいテクノロジーを開発するよりも、既存の排出削減技術に資金を投入することこそが最も効果的であると考える人もいます。太陽電池開発会社SunEdison、持続可能なインフラに出資するGenerate Capitalの創業者ジガー・シャーはそのひとりですが、彼は、「気候変動をよい方向に導くためにシリコンバレーにできることは、実はほとんどない」と言っています

確かに米国のベンチャーキャピタルの、資金調達のパイ全体に占める割合はまだまだ限られています。2018年時点では、プライベートエクイティの総取引額1兆4,000億円のうち、わずか1.2%に過ぎません。しかし、ネット・ゼロ・エミッションを達成するためには、ベンチャーキャピタルと優秀な起業家が鍵を握っていると考える人もいます。アトランタ連邦準備銀行が2019年に発表したワーキングペーパーでは、「小さく生まれ、小さくとどまり、イノベーションも少ない」ほとんどの企業とは異なり、ベンチャー企業にはケタ違いの影響力があるとする研究者の主張が紹介されています(ベンチャー企業がなければ、米国の年間経済成長率は1.8%ではなく1.3%にすぎないとされています)。テスラのようなブレイクした成功例はあくまで例外的なものなのか、それともクライメイト・テックにおいても同様のスタートアップが生まれるのかは、未知数です。

Financing revolution

ファイナンス革命

Urban Usの共同設立者ショーン・エイブラハムソンは、気候変動に備えて都市整備を行おうと投資家の説得に苦労したのをよく覚えています。それはほんの3年前のことでした。

「最初に受けた質問は『これは真面目な金融投資の話なのか』というものでした」「ことばにするとどうもクレイジーに聞こえますが、このビジネスがどれほどの規模になるのかをいざ計算してみると、決して小さい数字ではないのです」。Urban Usは家庭用バッテリーからラジエーター改修までさまざまなスタートアップに出資していますが、それらは10億ドル規模の企業に成長するとみています。

Urban Usのもとには、まったく新しいタイプの資金提供者が現れています。彼らが埋めるのは、いわゆる「messy middle」(無秩序な中間地点)と呼ばれる資金調達のギャップです。Googleは確かにガレージで設立されたのでしょう。しかし、ハードウェアやエネルギー関連のスタートアップには、より多くの資金と時間が必要です。そして実際に、十数年前のブームの際には何百もの有望な企業が、有望なプロトタイプを開発し成長させるのに必要な資金を確保できず、身動きがとれなくなっていました。

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そこでいま現れたのは、2種類の投資家像です。

まずひとつめは、エンジェル投資家ファミリーオフィス、そして慈善団体です。彼らは大学の研究室やエネルギー省(DOE)など政府機関から有望なテクノロジーを譲り受け、初期段階からの支援を実施しています。そのうちのひとつが、DOEのムーンショットファクトリーでプログラムディレクターを務めていたイラン・ガーが2015年に設立したActivateです。同社はテクノロジーを研究室から市場に送り出すことを目的としています(彼らが手がける高断熱ガラス機械学習による省エネアルゴリズムなどは、例えば発電所やオフィスビルの壁の奥深くに眠っているため、ほとんどの人が目にすることはありません)。Activateは、DOE、カリフォルニアエネルギー委員会、米軍、ムーア財団などの支援を受けて応用研究開発アクセラレーターとして機能し、これまでに55社の企業を“卒業”させています。

「シリコンバレーの、とくにアーリーの投資家は、この手の気候変動のイノベーションには一顧だにしません」と言うイラン・ガー。「初期の気候変動イノベーションは、行政が取り扱うのに適さなければ、リターンも見込めません。まさに投機的な資金を必要としているのです」

Activateは、Elemental ExceleratorやPrime Capitalと同様に、連邦政府の研究資金の不足分(年間800億ドル)を補いうるでしょう。また、投資銀行UBSの調査によると、ファミリーオフィスのポートフォリオの39%が「持続可能性」への投資だといいます。そして、Urban USのようなベンチャー企業が、そのバトンを受け取るのです。

もうひとつ挙げられる投資家像が、ベンチャーキャピタルとプロジェクトファイナンスのハイブリッドです。Ultra CapitalやGenerate Capitalといった新しい投資会社に代表されるように、このアプローチは「鉄を地面に置くこと」に優れています──これらの投資会社は、企業の株式に投資するだけでなく、工場や施設を建設し、所有し、運営するのです。これにより、比較的小規模なスタートアップでも、数千万ドルから数億ドルのプロジェクト開発費を、従来の資本が手を出す前に調達できます。

Culture shift

カルチャーシフト

 「起業家たちは、人生をかけて何か意味のあることをしたいと思っています」。気候変動関連のスタートアップに出資している非営利団体Elemental ExceleratorのCEO、ドーン・リッパートはそう言います。

彼女が着目するのは、スタートアップが長年培ってきた専門知識──マーケティングパートナーシップスケールアップといった思考です。「気候変動対策の分野に不足していたのは、優れた会社を設立する人材です。そこにこそ、シリコンバレーと気候変動が融合する醍醐味があります。シリコンバレーは、アイデアをスケールアップする方法を知っているのですから」

同じことを、Airbnb、Stripe、Instacart、Dropboxなどが卒業生として名を連ねるトップアクセラレーターのY Combinatorも考えたようです。YCのパートナー、グスタフ・アルストロムは、こうも言います。「『自分の人生のミッションはこれしかないとわかった』と言う創業者たちがいます。そして、こう言わしめるカテゴリーは、ほかにそう多くはありません

気候関連スタートアップを始めた理由をその創業者たちに聞いてみると、ほとんどの人が「無視できなくなった瞬間を思い出す」と言います。SpaceXのエンジニアで、エネルギー貯蔵のベンチャー企業設立を目指しているオシ・ヴァン・デッセルにとっての「その瞬間」は、2017年に発生した大規模な山火事でした。「この問題は放っておけば解決するものではないと気づきました」と彼は言います。「多くの賢い人たちがこの問題に取り組んでいると思っていたけれど、実際にはそうでないと気づいたのです」

同じ年、地熱発電会社Fervoの創業者であるティム・ラティマーはBHPの石油エンジニアとしてテキサス州西部のオイルパッチに勤務していました。その年、ヒューストンを襲ったハリケーン「ハービー」は壊滅的な洪水をもたらしました。「これは明日の問題ではなく、今日の問題だと気づきました。気候変動について学べば学ぶほど、自分のキャリアのすべてを石油を採掘することに費やしたくないと思うようになりました」

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こうした創業者たちはさまざまなコミュニティをつくっていますが、なかでも人気なのが、ジェイソン・ジェイコブスが2018年12月に始めたポッドキャスト(およびSlackコミュニティ)「My Climate Journey」です。フィットネス・トラッキングのスタートアップを売却したのちに何をすべきか悩んでいたジェイソンは、気候変動対策に関する自分の疑問に答えたいと思い至りました。彼はポッドキャストで学者や政府関係者、エンジニアに問いを投げかけ、「My Climate Journey」は聴衆を獲得していきました。投資家や起業家からもアドバイスを求められるようになりました。いまでは何百人もの投資家や起業家がSlackでアイデアを交換し、ジェイコブスのエンジェルファンドは年に十数社の気候関連のスタートアップ企業に投資しています。

Is Silicon Valley the answer?

答えはどこにある?

 彼らの使命感とその熱意は、十数年前のTEDでのドーアの講演を彷彿とさせます。状況は確かに当時とは変わってはいるものの、現在のクライメイト・テックにおける楽観主義は、ともすれば「クリーンテック2.0」とでも呼ばれて同じ隘路に陥る危険性を孕んでいます。そうなれば、スタートアップやそれらの評判が打ち砕かれることにもなりえます。

VCの中には、自らのモデルがいまの時代に求められるものではないと認める人もいます。気候変動投資家のトミー・リープは、とあるソーシャルキャピタルの創業者が気候変動技術への投資を数十億ドル規模で約束した際に、次のように指摘しています

「地球にとって最も効果的な『投資』は、彼が求めるようなリターンを得られませn。アマゾンが燃え、ボルネオ島の熱帯雨林がパーム油のために破壊されています。これらの重要な生きた生態系を保護することこそが最優先事項であるべきです……わたしたちがここにたどり着いた方法では、自らを救うことはできないと思います」

Generate Capitalで大規模なインフラプロジェクトを支援しているシャーのような人たちが真に必要だと考えているのは、風力発電や太陽光発電、バッテリーやメタンガス消化装置など、安価で実用可能な技術をできるだけ早く拡大することです。「シリコンバレーはあまりにも近視眼的すぎる。彼らは“イノベーション”と“金”のことしか考えていません」

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クライメイト・テックが越えるべき大きな障壁のひとつが、従来の投資家に財布を開いてもらうことだと彼は主張します。気候変動に関する政府間パネルによると、地球を安全な気候軌道に乗せるためには、2050年までに年間3.5兆ドルを費やす必要がありますが、わたしたちが費やしているのはその約20%にしか過ぎません。シャーが2003年にSunEdisonを設立しソーラーパネルから事業を始めたように、気候関連の投資を他のアセットクラスと同等に魅力的なものにするためには、ビジネスモデルを証明する必要があります。シャーはGenerate Capitalで10億ドル以上の資金を調達し、排出量削減効果が実証されたテクノロジーに大規模な投資を行っています。「他のものはすべてノイズだ」と、シャーは言います。

しかし、Urban Usのエイブラハムソンのような投資家は、シリコンバレーを見限ってはいません。彼は、ベンチャーモデルが必ずしも気候変動対策に適しているとは限らないことに同意していますが、そこには確かに、(数十億ドル規模の)サクセスストーリーも存在しています。Tesla、Nest、Beyond Meat、Impossible Foods、Amply、Sunrun、NextEraなどがそうです。

必要なのは、シリコンバレーが得意とする「実験」と「スピード」だとエイブラハムソンは言います。「地図に『ここにドラゴンがいる!』と書かれているのに、まだ誰かに探ってもらいたいと思っているようなものです」と言うエイブラハムソン。「最良の方法は、ちょっと狂っているくらいの人を見つけて、援助し、幸運を祈ることです。わたしたちはそうやってうまくやってきたはずですよね」

この原稿の原文初出は、2020年11月9日です。

(翻訳・編集:年吉聡太)


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