Skip to navigationSkip to content

Obsessions:なぜなに? DAOの基礎知識

話題の「DAO」をひと言で言うと?/DAOの長所・短所/DAOができるまでの歴史/DAO初心者(ただし興味あり)に向けた3つのアドバイス。

photo illustration of a board room blurred out with code
Image copyright: photo-illustration by Quartz
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

それは「CEOのいない、株主によって所有・経営される会社。さらにそのルールやガバナンス、企業の基本的な機能までもがコード、特にブロックチェーン技術によって規定され自動化されている会社」。あるいは、こんな意見もあります。テックジャーナリストのライアン・ブロデリックは自身のニュースレター「Garbage Day」で次のように書いています──「カスタム暗号トークンを購入しないと参加できないインターネットコミュニティのことを、必要以上に難解に表現しているもの」。

テック業界で(とくに金融部門を中心に)人気の「分散型自律組織(DAO)」ってなんだ?と訊かれたなら、以上が基本的な答えといえるでしょう。ただし、DAOのあり方は、単に企業の構造うんぬんの話を超えています。DAOの台頭は、企業のみならずインターネット全体、ひいては社会全体のコミュニティ運営のあり方を大きく変えていくだろうと、DAOを推す人たちは考えているのです。

How it works

DAOの仕組み

DAOをひと言で言うなら、「ブロックチェーン技術に支えられたフラットな組織」です。DAOとして機能する組織の種類は実に多岐にわたっており、開発者集団(Gitcoin)やベンチャーファンド(The LAO)、ゲームギルド(Yield Guild Games)、ソーシャルコミュニティ(FWB)なども存在しています。それらに共通しているのは、トップダウンではなくヒエラルキーもない、メンバーが主体となって運営されていること。

現時点で確認できるDAOの多くは、経済的なミッションのもと運営されています。例えば、PleasrDAOやThe LAOは、投資家の資金をプールしてデジタルアート作品やスタートアップに投資しています。

一般的に、これらDAOに暗号通貨や現行貨幣を出資すると、引き換えにトークンを受け取りコミュニティの意思決定における議決権を与えられることになります。ブロックチェーンインフラ企業FigmentのCEOであるLorien Gabelは、先月ニューヨークで開催された暗号カンファレンス「Mainnet」で次のように述べています。

「まるで、お互いを知らない(そして好きでもない)1,000人が、DiscordチャンネルやTelegramなどを介して、毎日ボードミーティングを行っているようなものです……見ている分には驚かされることも多々ありますが、(実際の運営には)多くの時間と労力が必要となります」

DAOの規約には「自動支払い」や「特定の投票構造」など、運営する上で必要なプロトコルが含まれていますが、これらはブロックチェーン上にエンコードされています。自動的に実行されるため、誰かひとりの思いつきでルールが変わることはありえません。こうした自動化の仕組みを支えているのが、「スマートコントラクト」です。開発者は、契約や取引の条件を規定するプログラムを書きます。スマートコントラクトは基本的に〈if-then構文〉で構成されており、例えば、契約者が契約書に書かれた条件を満たすと、自動的に仕事の報酬を受け取ることができる仕組みになっています。

また、他の暗号技術と同じように、確固たるガイドラインは存在しません。現在進行形のプロジェクトの多くでDAOのフレームワークが試されていますが、ルールをどのように設定するかは、グループによって異なるようです。

DAOを支持する人たちにとって重要な点は、自分たちの組織が「Web3(web 3.0)」のビジョンにどうフィットするかということです(いわゆるWeb3とは、ユーザーが自分のデータを所有し、単一の企業が独占的な影響力をもたない分散型のインターネットのビジョンのこと)。

A short history of DAOs

DAOの歴史を、さっと

〜2013年:コンセプトが顕在化する

2008年にビットコインが誕生して以来、インターネットの、それもニッチなコミュニティでDAOのもととなるコンセプトが議論されるようになりました。「DAO」ということばそのものが登場したのは、2013年。この年の『Bitcoin Magazine』誌上で、投資会社Invictus Innovationsの共同創業者Dan LarimerとEthereum(イーサリウム)の創業者Vitalik Buterinが、自らの組織を「decentralized autonomous corporations」と紹介。

2016年:最初の実験、そして失敗

2016年、最初のDAO、その名も「The DAO」が、イーサリアムで立ち上げられました。The DAOは、投資家主導のベンチャーキャピタルファンドで、1万8,000人の投資家がクラウドソースで投資判断を行うというものでした。DAOは1億5,000万ドル相当のエーテル(イーサリアム固有の暗号通貨)を集めましたが、ハッカーがコードの脆弱性を突いて約5,000万ドルを盗み出します。イーサリアムのコミュニティは、投票によってイーサリアムのブロックチェーンを「フォーク」化し、ブロックチェーンをハッキングが起こる前に「リセット」して資金を取り戻すことに成功しました(ハッキングの記録が残っている元のブロックチェーンは、現在「Ethereum Classic(イーサリアムクラシック)」と呼ばれています)。

2016年〜現在:プラットフォームの登場

上記のハッキングにもめげず、同じ年にはAragon、Moloch、DAOstack、Colonyなどといった“DAO-as-a-service”スタートアップが早くも登場。これらのプラットフォームでは、(The DAOと異なり)手動でコーディングすることなく独自のDAOを形成でき、プロセスも合理化され、エコシステムが軌道に乗りました

いまではDAOを構築し立ち上げることが、さらに容易に。さらに「分散型金融(DeFi)」や「NFT」が多くの支持を獲得し、大きな盛り上がりを見せています。2021年年初、4億8,000万ドル規模だったDAOは、いまでは100億ドルを超える規模に。VC界の重鎮Andreessen Horowitzは推進派の筆頭で、8月にDAOの立ち上げを支援するブロックチェーンスタートアップSyndicateに2,000万ドルを出資。22億ドルのファンドも立ち上げています。

DAOs as company structures

会社組織としてアリ?

長所

  • ミドルマン(中間者)がいない。あらゆるDAOは、メンバーが主体となって運営されています。スタートアップをはじめとするさまざまな投資において、銀行やジェネラルパートナーといった第三者機関を経由する必要がありません。
  • 透明性が確保されている。参加者すべてが組織のプロセス/意思決定にアクセスし、影響力を行使できます。

短所

  • 効率が悪い。各種の決定には、コミュニティによる投票が必要。ただし、代表者を選ぶことができるシステムも存在しています。
  • トークンの価値が変動しやすい。組織に対する信頼が失われると、トークンの価値が急落し、組織がもっていた資金プールが無価値になる可能性も。インセンティブ構造の設計を誤ると、いたずらに投機家を惹きつけ、コミュニティの価値を下げてしまう可能性があります。
  • 権限が一元化される危険性も。とくに資金調達の初期段階において、「ガバナンストークン」が初期の資金提供者に集中しがち。結果、プロジェクト本来の目的が損なわれる可能性があります。

What’s next?

次に何が起こるか?

DAOマーケットはまだ初期段階にあります。エコシステムが拡大し、メインストリームとなる前に、DAO支持者や他のステークホルダーは次のような疑問に答える必要があるでしょう。

  • コミュニティの成長について。組織が存続するには、コミュニティの参加が不可欠です。公平かつ利用しやすい方法で、参加者をどのように募集し、維持するのか。どのようにして積極的な貢献と参加を促すのか? また、プロジェクト間で人の行き来があった場合、組織のナレッジがどのように引き継がれるかも解決されなければなりません。
  • ガバナンス構造について。コミュニティを運営する上で最も効果的な方法とは、いったいどんなものでしょうか。例えばネット掲示板のRedditでは、モデレーターが手に負えないユーザーやヘイトスピーチなど、多くの問題に直面しています。さらにそこに金銭が絡めば、まさに“騒乱のレシピ”状態。前出のFigmentのCEOであるGabelは、次のように述べています。「ガバナンスは驚くほど混沌としています……ここはまったく新しい世界で、ガバナンスがどのようになるのかもわからない、本当に初期の段階にいるといえます」
  • 行政からの規制について。OpenLawの創設者であるAaron Wrightは、「法律が消えることはない」と語っています。米証券取引委員会(SEC)はすでに未登録の証券を販売したとして多くのブロックチェーンプロジェクトを取り締まっており、中国では暗号取引とマイニングが全面的に禁止されています。一方で、最近、米ワイオミング州ではDAOをLLC(合同会社)として認める画期的な法案が可決され、DAOの法的保護が強化されました。

Some advice

DAO初心者への…

“ブロック”と“ツール”があったとしても、それらをどのように展開し、適切に維持するかはいまだ答えがみえていません。

GitcoinのDAOについてのレポートの中で、Yalor Mewnはこう記しています。「わたしが思うに、DAOは不定形の進化の過程にあって、実際のところ社会にどのような影響を与えるかはまだわからない……個人に力を与え、コミュニティを活性化し、過去のテクノロジーが通った道を乗り越えるためのツールとして、わたしたちはDAOに大きな期待と願望を寄せている。しかし、現時点で誰もができる最善の方法は、両手を挙げて参入し、これらの組織が足場を固めるのを手助けすることだろう」

では、DAOに参入しようとしている人へのアドバイスは? イチにリサーチ、ニにリサーチ、とにかくリサーチすべしということに尽きます。コミュニティを左右するのは、人とミッションなのですから。

  • 最初にすべきことは? ウォレット(MetaMaskやRainbowが人気)をセットアップし、エーテルはじめ、興味のあるブロックチェーン固有の他の暗号を購入してみましょう。
  • 慣れたら、自分が求めるものと一致しそうなDAOを見つける。最も簡単な方法は? crypto系の Twitterリストを見るようにして、各プロジェクトの説明や分析を読むこと。Discordコミュニティに参加するのもいいでしょう。
  • “場”をよく観察しましょう。すぐにDAOに飛びつく必要はありません。それがDAOであろうとなかろうと、なにか特定のコミュニティに参加してそこで活動する動機となるのは、ミッションと人であるべきですから!

最後に。Gitcoinの創設者であるKevin Owockiは、参加したウェビナーで次のように語っています。「暗号経済に集中する前に、バイブスに集中しようぜ!Focus on the vibes before you focus on the cryptoeconomics)」

🎧 Podcastでは「お悩み相談 グローバルだけど」の最新話を公開中。お悩み・お便りはこちらから。AppleSpotify

👀 TwitterFacebookでも最新ニュースをお届け。

👇 のボタンから、このニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。ニュースレターの転送もご自由に(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。

こちらはQuartz Japan会員限定の有料ニュースレターコンテンツです

米国発の経済メディア「Quartz」の日本版では、いまビジネスパーソンが知るべき最新グローバルニュースを平日毎日、メールボックスにお届けしています。
  • 毎朝グローバルニュースが届く・読む新習慣
  • 夕方・週末は世界のビジネストレンドを深堀り
  • 英語版を含むウェブ上の全記事が読み放題