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(last) Weekend:全米混乱!「5G」狂騒曲

米国が乗り遅れた5G。シリコンバレーにも影響が出ています。その裏側で、いったい何が起きていたのか? その理由は? また、これからどんな変化が起きうるのかを、まとめました。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

先週、米国人は、自分たちの国が「アメリカ例外主義」そのものといえる状況に陥る瞬間を目撃することになりました。フランス、韓国、日本、その他の多くの国々が5Gモバイルネットワークを立ち上げる前に解決したことを、米国は解決できませんでした──まさに、米国は先進国の「例外」となってしまったのです。

米連邦航空局(FAA)と米通信大手のベライゾン(Verizon)、AT&Tには、「Cバンド」周波数帯域を使った5Gネットワークが航空機の計器に干渉するかもしれない、という問題を解決するために、数年間の猶予が与えられていたはずでした。

しかし、検討に追加の時間を費やしても、さらに空港周辺にサービス除外区域を追加しても、航空業界の準備は整いませんでした。航空機は特定の空港を避けるためにスケジュールの変更を余儀なくされ、何百ものフライトが全面的にキャンセルされました。規制当局の計画性のなさと、業界のリーダーたちの無能さが露呈したのです。

Image copyright: Reuters / Octavio Jones

通信事業者は、航空会社の要望に対して頑固になりすぎているのでしょうか? それとも、航空会社の行動が遅すぎたのでしょうか? もしくは、米国の航空規制当局であるFAAと電波規制当局である米連邦通信委員会(FCC)は、人びとの安全を確保することや重要な経済インフラを整備することよりも、縄張り争いを重視していたのでしょうか? この三つ巴のチキンレースで責任の所在を明らかにしようとするのは、ちょっとしたロールシャッハ・テストのようなものです。

これらの通信事業者は、米国政府によって認可された方法で、米国政府が販売した周波数で、新しいモバイルネットワークを構築するために何兆ドルもの投資を行っています。これらのネットワークは、米国の経済や安全保障、国際競争力の未来にとって非常に重要なものです。また、5Gネットワークの提供によって、大多数の米国民が極めて高速で信頼性の高いインターネットにアクセスできるようになるのです。

一方の航空会社は、航空機や施設に数十億ドルの資金を恒常的に投入しています。航空会社は高度に規制された環境で運営されており、その安全性を保証するために、政府による機器の認証に依存しています。いまや、人とモノの移動を担う航空業界は、米国経済にとって不可欠なものとなっています(ただし、富裕層によって利用されることが多く、貧困層が利用することはほとんどありません)。

では、航空会社とその乗客に不便を強いることは、政府の承認を得た革新的な技術の提供を阻止するだけの理由となるのでしょうか? あるいは、「正義」の問題として、米国はもはや、インターネットの品質や速度、価格をめぐる競争の機会(これらは、いずれも貧しい地域には存在しないものです)を米国人から奪うべきではないのでしょうか? それは、米国が決して行うべきではない選択です。

THE BACKSTORY

変化のウラ側で

  • 2018:米航空機大手のボーイング(Boeing)と米航空機パイロット協会(ALPA)は5Gの安全性に懸念を表明。国連の国際民間航空機関(ICAO)は、各国が航空機の高度計への影響をテストした後にのみ、Cバンドネットワークを配備するよう勧告しています。
  • 2020:FCCは、5G関連施設が航空機の高度計に干渉することはないと判断し、Cバンド周波数を無線通信事業者にオークションで売却しました(FAAによると、オークションに先立ち、安全性への懸念を示す書簡をFCCに送りましたが、別の政府機関が書類を誤って処理したため、書簡はFCCの記録に掲載されませんでした)。
  • 2021:オークションから約21カ月後、FAAはようやく航空会社、航空機メーカー、高度計メーカーに、どの高度計がリスクにさらされる可能性があるのか、データを集めるよう要請し始めました。
  • 2022:FAAは、集めたデータを急いでふるいにかけ、必要な規制上の承認手続きを済ませるため、その間、5Gサービスの提供開始を遅らせるよう、たびたび要請しています。

ENGINEERING INTERLUDE

米国版5Gの違い

無線通信事業者がよく指摘するように、他の40カ国ではすでに、空港での混乱を引き起こすことなく、何らかのバージョンのCバンド5Gネットワークが展開されています。しかし、FAAは、米国の5Gネットワークは、そのユニークな設計ゆえに、飛行の安全性にさらなる課題をもたらすと主張しているのです。

📶 より強い信号。カバー範囲を広げるために、特に地方では、米国の5Gタワーはフランスの5Gタワーに比べて2.5倍もの強力な無線信号を流すことが許されています。

📡 アンテナの角度。米国は他の国と異なり、航空機への影響を軽減するために、無線通信事業者に5Gアンテナを地面に向けて設置するよう求めていません。

📻 高い周波数。米国は最終的に、無線通信事業者が5Gに最大3.98ギガヘルツの周波数を使うことを許可する予定です。このため、米国の5Gバンドは、航空機の高度計が使う周波数帯(4.2〜4.4ギガヘルツ)に近いものになります。

🛫 空港の「緩衝地帯」は狭い。米国の5Gサービス向けの緩衝地帯は、航空機が滑走路に到着する直前の20秒間を、信号による干渉から保護するよう設定されています。これに対し、フランスの5G緩衝地帯は、96秒間、航空機を保護します。

WHAT TO WATCH FOR NEXT

これから注目すべきこと

  1. FAAが高度計の認可を完了する。1月20日までに、米規制当局は、米国の民間航空機の78%に相当する13機種の高度計について、5Gタワー付近での運用を許可しました。今後数日間で、FAAはより多くの航空機が運航を再開できるよう、高度計の残りのモデルの多くを認可する見込みです。
  2. 航空会社が不具合のある機器を交換する。いくつかの航空機の機種では、FAAが完全に許可していない高度計を使用しています。規制当局は、航空機が5Gタワー付近の悪条件下での着陸を再開するには、これらの高度計を「改修または交換する必要がある」と述べています。
  3. AT&TとベライゾンがついにCバンド5Gを展開する。無線通信事業者2社は、最新のスマートフォン利用者に、これまでよりもはるかに速いスピードを提供できるようになる新しい5Gネットワークについて発表する時期を遅らせました。しかし、今後数週間で、米国の数百の都市で、ようやく新しいネットワークの提供が始まることになります。
  4. 空港の緩衝地帯は今後も残るのか? AT&Tとベライゾンは、7月5日まで空港周辺に5G緩衝地帯を設定し続けることに合意しましたが、この緩衝地帯を恒久的に残すかどうかについては、まだ明言していません。この判断は、空港周辺の住民やそこで働いている人が、Cバンド5Gの恩恵をフルに受けられるようになるかどうかに影響するでしょう。

ONE IRONIC THING

皮肉なことに…

米シリコンバレーのいくつかの企業の敷地内では、Cバンドのサービスを完全な形では享受できない見通しです。オラクル(Oracle)、インテル(Intel)、イーベイ(eBay)、エヌビディア(NVIDIA)の各オフィスの敷地は、少なくとも部分的に、カリフォルニア州サンノゼのノーマン・ミネタ空港を囲む緩衝地帯にあたるためです。ペイパル(PayPal)に至っては完全に低電力エリア内にあり、同社がスポンサーを務めるサッカースタジアム、ペイパルパーク(PayPal Park)は完全にサービス提供除外区域となっています。

今日のニュースレターは、Nicolás Rivero(テックレポーター、5Gサービスの開始を待ちわびている)とDavid Yanofsky(シングス・エディター、4年モノの携帯を使用中)がお届けしました。

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