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Forecast:世界の「15分配達」まるわかり

ヤフージャパンも参入した「15分配達」、クイックコマースとは? 業界の動きや世界のプレイヤー、VCの目配せは? そして、そもそも「利益が出るのか」? 今後の見通しもお伝えします。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

2001年、ウェブバン(Webvan)という企業が経営破綻を申請しました。ウェブバンはインスタカート(Instacart)のような食料品の宅配サービスの先駆者で、創業からわずか3年で消滅したためにインターネットバブルの象徴となりましたが、これまでのような食料雑貨店はもはや求められていないという予想は正しかったようです。

それから20年後、COVID-19の感染拡大のために世界各国でロックダウンが始まり、食料品店や小売店は史上初めて、大量の宅配を行うようになっています。マッキンゼー(McKinsey)のデータによると、米国のEコマースにおける食品および日用雑貨の割合はパンデミック前は3〜4%に過ぎませんでした。しかし、この数字は向こう3〜5年で14〜18%に達する見通しです。

日用雑貨の宅配が急速に普及した結果、さらなる利便性の追求が始まっています。最近では15分という超短時間での配達が広まっており、ジョーカー(JOKR)ゴリラス(Gorillas)といった「クイックコマース(Qコマース)」と呼ばれる即配サービスを提供するスタートップが増えているのです。

ウーバー(Uber)ドアダッシュ(DoorDash)などフードデリバリーを行う企業も、独自のサービスに乗り出しました。また、大手スーパーマーケットチェーンのクローガー(Kroger)ターゲット(Target)は外部の宅配プラットフォームと提携を結ぶか、もしくは自力で短時間での配達を始めています。ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)の親会社で物流の巨人であるアマゾンですら、配送時間の短縮に取り組んでいるのです。

小売業界専門の調査会社コアサイト・リサーチ(Coresight Research)によると、米国のQコマース市場は今年、最大で250億ドル(約2兆8,500億円)規模に拡大する見通しです。ドアダッシュで新規ビジネスを担当するフアード・ハノン(Fuad Hannon)は、「より便利で、より安く、より速くという消費者の要求は今後も強まっていくはずです」と話しています。

食料品や日用雑貨は定期的かつ継続した需要が見込めるため、Eコマース業界ではこの分野に注目が集まっています。即配アプリの利用が増えれば、宅配事業を展開する他の企業が参入したり、スーパーなど小売業者が独自のサービスを始めるといったことも起こるでしょう。

言い換えれば、食品や日用品のQコマースを制する者はオンライン販売の世界での存在感を増し、やがてはアマゾンのようなEコマースの巨人とも競争できるような大企業に育っていく可能性もあるのです。

QUOTABLE

こんな声も……

「食品や日用雑貨の宅配? 無理でしょうね」

──ハーバード・ビジネス・スクール助教授でマーケティングの専門家ジョン・デイトン(John Deighton)。2001年に行われたウェブバン破綻についてのインタビューでの発言

THE PLAYERS

業界の動き

  • 食品小売業者:従来型のスーパー大手や食料雑貨店はテック化を加速しています。クローガーは自動運転技術を開発するニューロ(Nuro)と組んで「無人車による配達」を拡大するほか、オハイオ州に自社初となるダークストア(宅配サービス専用の拠点)を開設すると発表しました。一方、スーパー最大手ウォルマート(Walmart)は、配達員が玄関先でなく家の中まで商品を運んでくれる「インホーム(InHome)」サービスの利用可能な地域を増やしていく方針です。小売業者は、事前注文したものを指定の場所で受け取れるセルフピックアップなど多彩なサービスを提供するようになっています。
  • 宅配プラットフォームインスタカート(Instacart)やウーバードアダッシュなどすでに宅配ネットワークを構築している企業は、Qコマースに進出したり、大麻アルコールなどの配達を始めるといった動きをみせています。宅配プラットホーム各社は小売店で売られている商品を配達するだけで、自らは在庫管理などは行いませんが、インスタカートは昨年7月、配達時間の短縮に向けてスーパー専用の配送拠点を設けることを検討していると明らかにしました。
  • 即配のEコマースジョーカーゴリラスゴーパフなどのEコマース企業は、食料品や日用品を15分という超短時間で配達する即配サービスを展開しています。ゴーパフは米国と世界で600カ所近くの小規模配送拠点を保有し、最近では自社のプライベートブランド(PB)も立ち上げました。
  • アマゾン:Eコマースの巨人は英国でインスタカートに似たビジネスを立ち上げると報じられています。地場のスーパー2社と提携し、配達部門アマゾンフレックス(Amazon Flex)のドライバーが注文と同日の配達を行うようです。アマゾンは昨年9月、一部地域でプライム会員からも配送料9.95ドル(約1,130円)を徴収する方針を明らかにしており、配達で赤字を出さないための経済学的探究は続いています。

CHARTED

チャートでみる

市場調査会社ピッチブック(PitchBook)のデータによると、Qコマース分野へのベンチャーキャピタル(VC)の出資額は、2021年1〜9月には39億8,000万ドル(約4,540億円)に達しています。

ONE BIG QUESTION

ここでひとつ疑問が……

Qコマースで利益を出すことは可能なのでしょうか?

即配ビジネスには巨額の資金が集まっており、例えばフィラデルフィアに拠点を置くスタートアップのゴーパフ(Gopuff)の評価額は150億ドル(約1兆7,120億円)に達しています。しかし、この分野で黒字化した企業はまだ存在しません。収益性はどうなのかという問いに対し、フードデリバリーで米最大手のドアダッシュのハノンは、自分たちは「成功の見込める経済モデル」のビジネスにしか手を出さないと答えています。

マッキンゼーのパートナーでインスタカートの経営幹部を務めたこともあるヴィシュワ・チャンドラ(Vishwa Chandra)は、15分の宅配で利益を出すには「密集していること」が必要だと話します。つまり、人口密度が高いエリアであれば、その近くに配送センターを配置すればいいのです。

マッキンゼーの試算によれば、世界の450都市、および大都市が多く食品のオンライン販売市場を支配している中国では、Qコマースで収益が見込めます。一部の企業は、利益を上げるためにサプライチェーンを拡大したり、デジタル広告の強化に取り組んでいるようです。

デロイト(Deloitte)で米国の小売部門を率いるロッド・サイズ(Rod Sides)は、「わたしは食料品の販売は非常に難しいビジネスだと考えています」と述べます。「利益率が低いので、小売業のなかでも運営と管理が一番困難かもしれません。それに商品がだめになってしまうこともあるので、この点でも大変です」

宅配プラットフォームは、どうやって小さな倉庫にさまざまな種類の生鮮食品や冷凍食品を保管していけばいいのかを考えなければならないと、サイズは言います。また市場アナリストは、特殊な商品であろうと医薬品や酒であろうと、注文1件当たりの金額を上げるためには取り扱う商品の数を大幅に増やしていく必要があると指摘しています。

🔮 PREDICTIONS

今後の見通し

食料品の宅配は誕生して間もないサービスですが、ロンドンに拠点を置く市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)で食品・飲料関係を担当するマイケル・シェイファー(Michael Schaefer)は、宅配の新時代の幕開けにより、食料品店とレストラン、さらには自動販売機まで線引きが曖昧になっていくだろうと説明します。

ネットでものを販売する企業は差別化を図らなければならないため、消費者にとっては、当日、1時間以内、15分以内など配達の選択肢が増えていくでしょう。品揃えもよくなることが期待できます。しかし、人員確保や物流の拡大といった問題が引き続き大きな障害になるはずです。

今月はじめ、ドアダッシュの最高経営責任者(CEO)トニー・シュー(Tony Xu)がメタの取締役に就任したことが明らかになりました。今後はデリバリー企業も何らかのかたちでメタバースに参加していくのかもしれません。結局のところ、宅配は物理的な世界とデジタルが絡み合っている分かりやすい事例のひとつなのです。

ONE 🍕 THING

ちなみに……

ドミノ・ピザ(Domino’s Pizza)が「30分でお届け、遅れたら無料」という広告を始めたのは、1979年のことでした。ただ、配達員による危険な運転が増えるとして、消費者グループが長年にわたる反対運動を展開した結果、このルールは1993年に廃止されています。ドミノが最終的にキャンペーンを止めると決断したのは、1989年に同社の配達の車にはねられた女性が起こした裁判で、ドミノに損害賠償75万ドル(8,540万円)に加え、懲罰的な意味で7,800万ドル(88億8,000万円)の支払いを命じる判決が出た翌週のことでした。

今日のニュースレターは、Michelle Chengがお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

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