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Company:NFT市場「OpenSea」の大きな矛盾

NFTマーケットプレイス「OpenSea」。世界最大を誇るその規模ゆえに「Web3」の理想とは反する存在へと変化しつつあります。その設立の歴史や、蔓延る詐欺行為までを解説。

OpenSea
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

あなたが世界的に有名なポップミュージシャン、ジャスティン・ビーバーだとしましょう。R&B路線を押し出した最新アルバム『Justice』もヒットしたようで、稼いだお金でいま、何かものすごく高価なものを買いたいと考えています。

ただ、ダイヤモンドを散りばめた「ファミリー・ガイ」のキャラクターの特注ネックレスなどではなく(まあ確かに、あれは誰も欲しくないでしょう)、気が利いていて洗練されている何か……となると、答えはひとつ。グレーのTシャツを着て無精髭を生やしたサルのデジタル画像、ですよね。

でも、そんなものどこで買えるのでしょうか。本物のビーバーは、「OpenSea」で129万ドル(1億4,836万円)を払ってサルのJPEG画像を購入しました。

Justin Bieber's bored ape NFT

ピアツーピア(P2P)の非代替性トークン(NFT)のマーケットプレイスであるOpenSeaを運営するのは、同名の米企業、オープンシー(OpenSea)です。

そもそもNFTとは、簡単に言えば「ブロックチェーン技術で成り立つバーチャルな『もの』の所有権」のことで、暗号通貨から派生して誕生し、暗号通貨で取引することも可能です。NFTは実際にはブロックチェーンに記された文字列に過ぎませんが、デジタルのトレーディングカードやゲームの仮想キャラクター、JPEGのアート作品などを表しています。

2017年に開設されたOpenSeaは、この1年ほどでビーバーを含む何万人ものNFTコレクターが利用するプラットフォームに成長しました。昨年12月のNFTのマーケットプレイスでの取引高は総額27億ドル(3,105億ドル)に上りますが、市場調査会社Blockのデータによれば、OpenSeaはこの84%に相当する22億ドル(2,530億円)を占めているのです。NFTの取引プラットフォームにはほかに「Nifty Gateway」、「Magic Eden」、「Solonart」などがあり、残りの5億ドルを分け合っています。また、Dune Analyticsによると、OpenSeaの1月の取引高は50億ドル(5,750億円)と自社の月間記録を更新しました。

皮肉なことに、オープンシーの成功によって、暗号通貨を支持する人たちが提唱するWeb3」というビジョンの矛盾が露呈しています。Web3では、オンラインでの権力、言論、金銭のやりとりを分散管理することが可能になります。つまり、現在はアルファベットやアップル、アマゾン、メタといったビッグテックに実質的に支配されているインターネットが完全に様変わりする、といわれています。

しかし、オープンシーはベンチャーキャピタル(VC)が出資する大企業で、NFTの取引にはAPIプロバイダーや暗号通貨のウォレットなど中央集権型の企業が提供するサービスが必要になります。優れたビジネスではあっても、それ自体が暗号通貨の根幹を成す哲学に反しているのです。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 47万1,000人:OpenSeaの月間ユーザー数
  • 70人: 2022年2月時点の従業員数
  • 2.5%:プラットフォームの利用手数料
  • 133億ドル(1兆5,296億円):現在の評価額
  • 50億ドル(5,750億円):1月の取引高
  • 22億ドル(2,530億円):NFTアートでも特に有名な「CryptoPunks」シリーズの作品の取引高
  • 2億6,100万ドル(300億1,721万円):2022年1月13日に記録した1日の取引高

A BRIEF HISTORY OF OPENSEA

オープンシーのこれまで

2017年12月:OpenSeaのベータ版が運営開始

2018年1月:エンジェルラウンドでYコンビネータ(Y Combinator)から資金調達

2018年12月:デジタル資産の取引プラットフォームを運営するアトミック・バザール(Atomic Bazaar)を買収

2021年3月:バンクシー(Banksy)がOpenSeaでNFT作品を販売

2021年4月:シリーズAラウンドでアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)から2,300万ドル(26億4,519万円)を調達

2022年1月:シリーズCラウンドで評価額が133億ドルになる

2022年1月:分散型金融(DeFi)のウォレットを提供するダルマ・ラボ(Dharma Labs)を買収

DIRTY ROTTEN SCAMMERS

NFTは詐欺でいっぱい?

OpenSeaはNFTの取引プラットフォームとしては最も有名ですが(例えば、Twitterで自分が持っているNFTアートをプロフィール画像に設定するにはOpenSeaのAPIを使うようになっています)、だからと言って詐欺と無縁というわけではありません。これまでに下記のような問題が報告されています。

  • NFTアートの有名作品を過去の安い販売価格で不正入手して高値で転売するという詐欺で多額の被害が出る
  • 無料のツールを使って作成されたNFTアートの80%は盗用。オープンシーは無料ツールによる作品の出品は50点までという制限を設けたが、ユーザーからの抗議でこの措置は撤廃された
  • オープンシーの公式のDiscordサーバーで、従業員になりすました詐欺師によって作品が盗まれる
  • 実際の従業員「内部情報」に基づいて取引を行う。これはプラットフォームの規約に違反している

こうした詐欺や不正を防ぐのが難しいのには、以下のような理由があります。

  • 暗号通貨とNFTは当局の規制対象となっていないため、コレクターに対する約束が履行されなかったり、いわゆるインサイダー取引があっても違法とはみなされない
  • OpenSeaのアカウントには本人確認がされていないものもあり、NFTの販売者の素性がわからないことも多い
  • ブロックチェーンでのトランザクション(取引)は恒久的かつ不可逆的で、不正であっても取引が成立してしまえば手遅れ

ONE 🙃 THING

ちなみに……

OpenSeaはNFT取引で市場をリードしていますが競合がいないわけではもちろんありません。DappRaderのデータによると、新興サービスの「LooksRare」が取引を増やしているようです。ただ、LooksRareはウォッシュトレード(wash trade)と呼ばれる取扱量を多く見せるための偽の取引が多いと報じられています。

Image copyright: Lookspare

一方、暗号資産取引所大手コインベース(Coinbase)がNFTビジネスに参入することを明らかにしており、こちらはさらに大きな脅威となりそうです。コインベースの提供するマーケットプレイスでは、管理に専用のウォレットが必要な暗号通貨だけでなく、クレジットカードでNFTアートが購入できます。ユーザーフレンドリーではあるにしても、分散型であるべきWeb3という観点からはショックな動きではないでしょうか。

今日の「The Company」ニュースレターは、Scott Nover(NFT懐疑派)がお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

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