
ジンバブエとナイジェリアで、新たなデジタルサービス税が導入されます。ネットフリックスやグーグル、アマゾンなどのテック企業に課税する計画を発表しました。パンデミック中のアフリカでは、各国政府が目減りする歳入を増やすべく、デジタル決済やモバイルマネー利用への課税を打ち出しています。
しかし、アフリカにおけるデジタルサービス税は、批判の的となってきました。
金融規制・包摂センター(Cenfri:Center for Financial Regulation and Inclusion)のシニアリサーチアナリストであるキン・ムンガイ(Kin Mungai)もそのひとり。彼は、Eコマースやフィンテックプラットフォームの黎明期に課税することはプラットフォームの成長と実装にとって逆効果だと指摘しています。
「デジタル決済やEコマースを促進するのは重要だが、いまはまだ、アフリカ諸国のほとんどで国民がやっとEコマースを知り始めたような状態。デバイスは入手しづらく、ネットもつながりにくかったりコストが高かったりする」

新たにデジタルサービス税を導入することになったナイジェリアの財務大臣ザイナブ・アーメド、国内でサービスを展開する国外デジタル企業に対して、売上高の約6%の税を課す計画を明らかにしました。ジンバブエもまた、YouTubeなどのグローバルなコンテンツサイトやFacebookなどのプラットフォームの広告主、Eコマースへの課税を始める予定です。
アフリカ諸国ではオンラインストリーミングやデジタル広告、Eコマースなどのデジタルサービスへの課税が強化されていますが、そのほとんどは付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)というかたちで課税されています。
ウガンダは、国家財政を強化するためにデジタル課税を打ち出していますし、すでに暗号通貨による取引や投資に課税している南アフリカも、さらなる課税を計画しています。
また、ケニアの歳入庁のウェブサイトには「デジタルマーケットプレイスを通じて提供されるサービスからケニアで派生または発生した所得に支払われる」デジタルサービス税(DST)に関する告知が掲載されました。ここでの「デジタルマーケットプレイス」とは、「電子的な手段により商品やサービスの買い手と売り手が直接やりとりできる」プラットフォームと定義されています。
カメルーンも、請求がカメルーンで発生したサービスに対する課税を導入しています。しかし、YouTubeやFacebookのコンテンツクリエイターの中にはカメルーン国外で収益を上げている人もいるので、政府が電子商取引税やデジタル課税を効果的に実施することが難しいという複雑な事情もあるといいます。
STORIES THIS WEEK
今週アフリカで起きた事
- ナイジェリアでは、個人向け投資アプリブーム。シリコンバレーのRobinhood(ロビンフッド)の株価は低迷し続けていますが、一方、ナイジェリアでは類似アプリ(Trove、Chaka、Bamboo)が規制の問題を乗り越え、ブームを起こすべく動いています。つい先日増資したBambooについては、このあと詳しくお伝えします。
- …一方、モロッコではEコマースが急成長。2020年初頭にEコマースブームが起きたモロッコ。その後、アフリカ大陸で最も長く厳しいロックダウンは国民の間にEコマースの利用を定着させ、外出ができるようになったいまも目覚ましい成長を遂げています。
- クーデター未遂の原因はコカイン? 西アフリカのギニアビサウで大統領と全閣僚の殺害を狙ったクーデター未遂事件が起きました。アフリカではこの1年あまりで軍によるクーデターがたびたび起きていますが、今回のギニアビサウでのクーデター未遂は麻薬密輸組織によるものだったといいます。
CRYPTO ADOPTION IN AFRICA
チャートでみる

世界最大の暗号通貨取引所であるBinance(バイナンス)が、セキュリティ強化と詐欺防止を理由にナイジェリア人281人の個人アカウントを停止しました。これを受け、締め出されたユーザーがボイコットを呼びかけています。ナイジェリアでは2021年に仮想通貨取引の禁止措置が取られましたが、依然として暗号通貨の人気は高まっています。
DEALMAKER
今週のディールメーカー
- エジプトのEコマース企業であるBrimoreが、国際金融公社(IFC)と米国のEndure Capitalが主導するラウンドで2,500万ドル(約28億7,389万円)を調達しました。2017年に設立されたBrimoreはモバイルアプリベースのショップを開設できるサービスを展開しており、同社のプラップフォームで商品を販売している7万5,000人のうち74%が主にエジプトの農村部に住む女性だといいます。
- これまでブロックチェーンプラットフォーム上でメディアやゲームなどを構築してきたNestcoinが、セリーナ・ウィリアムズの投資会社Serena Venturesを含む多数の投資家から645万ドル(約7億4,163万円)を調達しました。Nestcoinはナイジェリア人を中心としたチームが2021年11月に創業したばかりですが、すべての製品においてグローバル展開を視野に入れています。
- 個人向け投資アプリを運営するナイジェリアのBambooが、米国のTiger GlobalとGreycroftが主導するラウンドで1,500万ドル(約17億2,473万円)を調達しました。Robinhoodをきっかけに世界で人気を博した「個人投資者向けの端株取引モデル」を採用したアプリはアフリカでも増えており、Bambooもそのひとつです。2020年1月にナイジェリアでリリースされたBambooは、2022年後半にガーナへの進出も狙っています。
SPOTLIGHT ON AN INNOVATOR
アフリカンイノベイター

ジンバブエ出身のミュージシャンであるベリタ・クマロは、アフリカの女性たちが音楽で持続可能なキャリアとビジネスを築けるようにと、2021年に「Women of Music Business」を設立しました。
現在30歳の彼女はこれまでのキャリアのなかで、音楽業界で働く女性が男性よりも不公平な契約や低賃金といった搾取に遭いやすいという事実を目の当たりにしてきました。Sony Music AfricaやWits Business School、Southern Africa Trustとのパートナーシップにより、Women of Music Businessは女性のアーティストやクリエイター、マネージャーに対して財務管理や慈善活動、社会投資に関する教育を提供しています。
Quartz Africaの「Innovators 2021」リスト(英語)では、クマロをはじめとするアフリカの女性イノベーターたちの先駆的な取り組みを紹介しています。
OTHER THINGS WE LIKED
その他の気になること
- COVID-19に着想を得たアーティスト。人びとのパンデミックへの意識を高めるために作品を制作しているジンバブエの彫刻家について、『The Guardian』が伝えています。
- アリウ・シセ、三度目の正直。『New Frame』が2002年にチームキャプテン、2019年に監督としてアフリカネイションズカップ(AFCON)に参戦し敗れたアリウ・シセを紹介しています。多くの批判を受けながらも、彼は2022年大会で見事優勝を果たしました。
- デジタルIDへの転換。ナイジェリアではIDカード番号をデジタル・トークンに置き換える計画が進んでいます。『Techcabal』が詳述しています。
- 総合格闘技王者の情熱。ナイジェリア出身のUFCチャンピオン、カマル・ウスマンが『GQ』でそのあくなき野心について語っています。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、Sauti Sol(ケニア) feat. Soweto Gospel Choir(南アフリカ)による「Brighter Days」を聴きながらお届け。翻訳・川鍋明日香、編集・年吉聡太でお送りしました。
💎 毎週木曜夜は、この1週間アフリカで起きたことを総まとめ。あらたな市場、あらたな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。
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