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Company:倉庫の王者、プロロジスを研究する

物流不動産が、ECの活況とサプライチェーン崩壊で脚光を浴びています。その世界第一位企業、プロロジスについてまとめました。刺客、ブラックストーンとの戦いも始まろうとしています。

Prologis
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

プロロジス(Prologis)はサンフランシスコに本社を置く物流不動産会社です。誰もが認める業界の王者で、世界の4大陸で10億平方フィート(9,300万平方メートル)相当の貸し倉庫を保有しています。数千社に上る顧客にはアマゾンも含まれており、同社にとってプロロジスは配送センターの賃貸で最大の取引相手です。

昨年までは、プロロジスと競えるような企業は存在しませんでした。しかし最近になって、ブラックストーン(Blackstone)やコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)といった大手投資ファンドが相次いでこの分野に参入し、倉庫物件を買い漁ってポートフォリオを構築しつつあります。プロロジスは2011年に業界首位となって以来、この地位を維持してきましたが、初めて他社からの激しい追い上げを受けているのです。

競争激化の背景には新型コロナウイルスのパンデミックがあります。人びとが家から出られなくなったためにオンラインショッピングの利用が拡大したことに加え、サプライチェーンの混乱により企業は在庫を増やす傾向にあり、このため物流不動産の資産価値が高まっています。

この競争に勝利する者は、活況を呈するEコマース分野に必要なインフラを提供することで巨大な利益を得ることになるでしょう。また、物流不動産の賃料は消費者がネットで購入するものすべての価格に影響を与えることになります。

Image copyright: Reuters

CHARTING THE US WAREHOUSE MARKET

米国の倉庫市場のいま

不動産需要を測る指標のひとつに「ネットアブソープション(吸収需要、Net Absorption)」があります。

これは特定の期間に賃貸契約が結ばれていた物件の総延床面積から空き室になった物件の面積を引いたもので、数字が大きければ不動産市場の全体的な稼働率が高いことになります。米国では昨年、倉庫を含む物流不動産のネットアブソープションが過去最高を記録しました。

倉庫の着工件数は急増していますが、供給は需要に追い付いていません。プロロジスによれば、米国の倉庫空室率は2021年第3四半期に3.9%と過去最低を記録し、物件は「実質的に品切れ状態」にあります。このため倉庫不足が懸念されており、賃料は昨年7月から9月までだけで7.1%上昇しました。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 2,150億ドル(約24兆9,400億円):プロロジスが保有する物流不動産の総評価額
  • 5,800社:顧客数
  • 13%:アマゾンの配送センターのうちプロロジスが保有する物件の割合(2017年時点)
  • 19カ国:事業展開する国の数
  • 2兆2,000億ドル(255兆2,200億円):保有する倉庫に置かれた物品の経済的価値の総額(2020年)。プロロジスの試算によれば、事業展開する地域全体の国内総生産(GDP)に3.5%寄与した

PERSON OF INTEREST

革命とバブルを経て

プロロジス最高経営責任者(CEO)のハミード・モガダム(Hamid Moghadam)はイラン出身で、父親は不動産開発の仕事をしていました。モガダムはイランが経済成長の只中にあった1960年代にテヘランで育ち、16歳のときにマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学して土木工学を学び始めます。当初は帰国して不動産分野で働くつもりでしたが、MITでの修士課程を終えてスタンフォード大学でMBAを始めようとしていた1978年イラン革命が起きたのです。

欧米で受けた教育とそれによる価値観を身につけていたモガダムは、いまのイランには戻れないと直観。1983年にサンフランシスコでAMBプロパティー・コーポレーション(AMB Property Corporation)という不動産会社を立ち上げ、機関投資家と契約を取り付けてオフィス物件やショッピングセンターに投資する仕事を始めました。1990年代には、世間がインターネットバブルに沸く中、モガダムはEコマースこそ買物の未来だと考え、オフィス物件などをすべて売却して倉庫や配送センターといった物流不動産に集中するようになります。

なお、モガダムは当時、破綻したオンラインの食品宅配会社ウェブバン(Webvan)かアマゾンに投資する機会があり、結局はウェブバンに500万ドル(5億8,000万円)を出資しました。モガダムは後に「エコノミスト(The Economist)」とのインタビューで、「投資する会社は間違えたが方向性としては正しかった」と話しています。

AMBはそれから10年で物流不動産業界の主要企業にまで成長しました。そしてリーマンショックの影響が色濃かった2011年には、経営悪化した同業のプロロジスを買収し、新たなブランドで世界最大手に上り詰めます。プロロジスは最大顧客であるアマゾンの成功も手伝って、今後も事業拡大を続けていくでしょう。

Image copyright: 2016年6月、李克強首相との会談の際のモガダム REUTERS/Wang Zhao

QUOTABLE

こんな発言も……

「わたしたちはポケットに金が入っている人がたくさんいる市場に集中する。銀行強盗をするのは、銀行には金があるからだ。では消費はどこに存在するだろう? それは人間がたくさんいる場所だ」

──ハミード・モガダム(人口密度が高く裕福な都市の中心部に近い場所に倉庫を設けるというプロロジスの戦略について)

A BATTLE OF TITANS

刺客、ブラックストーン

プロロジスが合併によって世界最大手に躍り出た2011年には、ブラックストーンはちょうど工業用不動産の取得に乗り出したばかりでしたが、その後の10年間で積極的な買収攻勢を進めてきました。同社の不動産部門を率いるケン・キャプラン(Ken Caplan)は2019年、ブラックストーンにとって倉庫は「最も確信をもてるグローバルな投資テーマ」だと述べています。

ブラックストーンが保有する倉庫物件の延床面積は約9億5,000万平方フィート(8,825万平方メートル)に達しており、プロロジスに迫りつつあります。この分野でトップに君臨してきた企業と、世界最大規模のプライベートエクイティ(PE)ファンドとの戦いが始まろうとしているのです。ブラックストーンは倉庫事業について、他の事業からのデータを投資決定に活用できるために有利な立場にあると主張します。

ブラックストーンはバイオ分野の研究からデジタル決済、自律型ロボット、発電設備、モーテル、デートアプリ、シーワールド(SeaWorld)やレゴランド(Legoland)といったテーマパークまで、ありとあらゆるものに投資しています。キャプランは「ブラックストーンはビジネス全体をグローバルなつながりのなかで管理しており、市場全体や自社のポートフォリオで何が起きているかを常に把握しています」と言います

プロロジスはこれに対し、競合が市場参入する前に取得した物件によって今後も優位な立場を維持していけると考えているようです。同社で戦略と市場分析を担当するクリス・カートン(Cris Caton)は、「ネットで見つかるような新規物件は市街地から遠く、既存の物件と比べて競争力に欠けます」と指摘します。

各社の競争は続いていますが、市場は急速に拡大しつつあり、複数のグローバル企業が共存するだけの余地は十分にあります。ただ今後も、富裕層が多く住む都市の中心部にある倉庫を誰が手にするかを巡って激しい戦いが繰り広げられていくはずです。

ONE 🌆 THING

ちなみに……

プロロジスは大都市の中心部にできるだけたくさんの倉庫を設けるという戦略を掲げており、他社に先駆けて多層階倉庫の設計・建設を進めてきました。また、使われなくなった建物の配送センターへの改装でも多くの実績があります。

今日の「The Company」ニュースレターは、Nicolás Rivero(積ん読の置き場に困っている)がお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

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