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Need to Know:量子コンピュータは今…

量子コンピュータについて、今起きていることをまとめました。何ができるの? これまでと何が違うの? 誰がつくっていて、誰がお金を出しているの? 各国政府は、どう向き合っているの?

Closeup of a motherboard
Image copyright: Alexandre Debiève
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

量子コンピュータ。SFの世界であれば、タイムトラベルや異世界モノのカギとして登場します。現実の量子コンピューティングは、「コンピュータの次の大発明」であり、「暗号技術の終焉を意味するもの」、「金融、医療などあらゆる産業における革命のきっかけ」となる可能性を秘めたテクノロジーです。

政府や各企業、ベンチャーキャピタル(VC)が、このテクノロジーの開発に数十億ドルを投じています。ただし、まだ創成期にあります。量子コンピュータにはいまだ誤差も多く、大規模な商業的有用性は証明されていません。

ドイツでは1月に量子コンピュータの研究開発コンソーシアム発足し(州政府が打ち出した新型コロナ禍の景気対策に基づく)、今月8日、カナダの量子コンピュータ企業のディー・ウェイブ・システム(D-Wave Systems)はSPACを利用した上場計画を発表しています。

さて、量子コンピュータは、いったいいつ、その可能性を発揮するのでしょうか。

Why does it matter?

何ができるの?

シリコンチップは、小さくしようにも限界があります。それはつまり、いまあるコンピュータがデータを処理する速度には限界があることを意味します。

一方の量子コンピュータは、研究者によると、古典コンピュータ(比較のために、いまある一般的なコンピュータをそう呼びます)が何万年もかけて解くような複雑な問題も解けるといわれています。

暗号解読にはじまり、分子挙動シミュレーションや複雑な最適化問題の解決、モンテカルロシミュレーションの高速化といったさまざまが実現するといわれていますが……、可能性としては、より個別化された医療より効率的なバス路線自動運転車のためのより高度なアルゴリズムなどが考えられます。

How does it work?

何が違うの?

そもそも「量子」とは、物理学において用いられる、あらゆるものの最小単位のことです。自然界で観察される現象は、そのほとんどが古典物理学で説明できます。しかし、原子や素粒子レベルとなると、そのルールは変わります。こうした小さなスケールの粒子は、量子論において次のような振る舞いをするとされています。

  • 重ね合わせ(量子重ね合わせ):量子は、同時に2つの異なる状態/位置にあるように見えることがある
  • もつれ(量子もつれ、量子エンタングルメントとも):量子は、分離した状態でも互いにリンクし作用しうる

量子コンピュータは、こうした性質をコンピュータに応用したものです。例えば、古典コンピュータでは、「1」か「0」のどちらかの情報を表す古典ビットを利用しています。一方、量子ビットはその両方を同時に扱うことができるため、量子コンピュータは飛躍的に高速な計算が可能になります。

しかし、そのエキサイティングな特性は、同時に障害も生み出します。上に挙げた「重ね合わせ」や「もつれ」状態を維持するには、超低温(マイナス273度)かつ安定した状態が必要です。少しでも干渉されるとエラーが発生するため、量子コンピュータが十分に機能する環境を構築するのは非常に困難で、コストも高くつくのです。

What do they look like?

どんな形なの?

量子コンピュータの見た目は、「巨大な冷蔵庫の中に収められた、ワイヤーやチューブが複雑に絡み合った何層ものシャンデリアのような形」といえばいいでしょうか。例えばIBMのコンピュータは、9×9フィート(約2.7メートル)のガラスケースに収められて冷却されています。

こうした特殊な装置が必要なため、量子コンピュータの価格は途方もなく高額になります。ボストン・コンサルティング グループで量子コンピュータの研究を率いるジャン-フランソワ・ボビエ(Jean-François Bobier)は『CNET』の取材に対し、量子コンピュータの使用には、従来のクラウドコンピューティングの倍となる、1時間あたり3,000〜5,000ドルのコストがかかると説明しています

Image copyright: IBM

Who’s buying?

誰が買うの?

クライアント企業は、量子技術ソリューション導入に関心をもっているものの、実際に何に使うかはまだ検討段階にあるようです。法律事務所Young Basile Hanlon & MacFarlaneの特許代理人であるエリオット・メイソン(Eliott Mason)は次のように語っています。

「企業は、実際に現実に使えるものになったときに備えて、試しておこうと考えているのです。彼らは、将来実証されるかもしれない仮説のために試していると同時に、近い将来に可能性があるものとして扱っています……彼らは、それがささやかなものでしかなかったとしても、量子コンピュータによってもたらされる利点を得ようとしています」

Quote

こんな発言も……

「いまはまだ未知数です。この分野についても、このテクノロジーについても、そして今後の商業的な見通しについても、まさに『Wild West』といったところです」

──ボブ・ソレンセン(Bob Sorensen、ハイペリオンリサーチ リサーチ担当上級副社長)

Who’s working on it?

誰がつくっているの?

量子テクノロジーにブレイクスルーをもたらそうとしているのは、新規参入というよりは既存のプレイヤーです。

Venture capital is excited

VCは盛り上がっている…

2021年、量子スタートアップに注ぎ込まれたVCマネーは約15億ドルで、過去3年間の合計を超える規模となりました(ただし、同じ年、この分野だけでなく全体の投資額が軒並み記録を塗り替えています)。

前出のソレンセンは、「現段階での研究開発も将来の見通しも、すべて収益が約束されているわけではありません。投資は、将来の収益に対する期待から来るものです」と説明します。

しかし、量子コンピュータの進歩のスピードは決して速くはありません。大きなブレイクスルー、高速なペースに慣れているVCが興味を失い、資金を引き上げてしまうという懸念もつきまといます。

More checks are being cut

お金も動いている

量子コンピュータに注力する企業は、巨額の資金調達を行い、あるいは10億ドル規模の上場を果たしています。2021年だけでも……

  • PsiQuantum(米国)がシリーズDラウンドで4億5,000万ドルを調達。時価総額は31億5,000万ドルに達した
  • 量子网(Guoke Quantum Communication Network、中国)は15億元(約271.4億円)を調達
  • ザナドゥ(Xanadu、カナダ)が1億ドルを調達
  • ケンブリッジ・クオンタム(Cambridge Quantum、英国)がハネウェル(Honeywell)の量子コンピューティング部門と合併し、Quantinuumを設立
  • イオンキュー(IonQ、米国)がSPACで上場。時価総額は20億ドルに
  • リゲッティ・コンピューティング(Rigetti Computing)が15億ドルで続く

Governments are investing

政府も投資している

量子コンピュータは、軍事的にも産業的にも大きな可能性を秘めています。世界各国の政府は、研究のために数十億の予算を組んでいます。

  • 中国:前出のソレンセンによると、「国家安全保障のための資金提供」を中心に、量子通信の開発でリードしている
  • 米国:国家安全保障と産業の双方で政府が研究に携わっている。また、VCを通じて量子コンピュータ産業を育成
  • EU:経済的利益を重視。EU全域において、商業活動に資金を提供するプログラムを通じて研究を奨励している

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