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Need to Know:ランジェリーのナラティブ

リアーナ率いるランジェリーブランド・サヴェージ×フェンティの成功の背景にあるのは? ランジェリーを取り巻く歴史、社会の動きや、「女王」の失墜について知るべきことをまとめました。

A person drops their underwear.
Image copyright: Giphy
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

つい先日、IPOを検討しているとの報道も出たリアーナ率いるランジェリーブランド「サヴェージ×フェンティ」(SAVAGE X FENTY)。2018年の創業からたった3年で10億ドルの評価を得るにいたった同ブランドは、今年1月、初の実店舗がラスヴェガスにオープンすることを発表しています

サヴェージ×フェンティのビジネス的な成長は、「下着」についてのナラティブを再構築したことによる成功を体現しているといえるでしょう。

いま、社会的ムーブメントとしての「ボディポジティブ」には第3の波押し寄せています。この10年間で、メディアやECサイト、店舗に掲げられたバナーを飾るランジェリーモデルは、その人種も体型もジェンダーも多様になりました。かつて、そのほとんどが白人で細身だったことを忘れてしまいそうになるほどです。

この変遷は、ヴィクトリアズ・シークレットの(ミソジニーで腐り切ったリーダーの)失敗から続く一連の流れとも捉えられます。世界で最も名の知れたランジェリーブランドの、遅すぎたイメージ刷新が果たして成功したかどうかはともかく、レース界の巨人(ヴィクトリアズ・シークレットはいまでも米国最大の売上を誇ります)は女性の地位向上がビジネスにとって不可欠であることを認めざるをえなかったのは事実です。

では、ボタンを外してみましょう。

BRIEF HISTORY

ランジェリー小史

  • 1390~1485年:女性が「ブレストバッグ」(breastbags)をつくり着用していた。考古学者がオーストリア・レングベルク城で最古のものを発見している
  • 1700年代:「ステイ」(stays)と呼ばれる鯨骨のコルセットが女性の日用品に。砂時計型がこの時代の理想的な体型として定着
  • 19世紀半ば:夜会服の中央にボタンやスナップがつけられるように(「エンベロープ・シュミーズ」[envelope chemises])
  • 1912年:マドレーヌ・ヴィオネがヴェルサイユにメゾンをオープン。ヴィオネはコルセットをバイアスカットし、ナイトガウンに流れるような動きを与えた
  • 1935年:米百貨店シアーズのカタログに史上初の「ブリーフ」が掲載
  • 1941年:円錐形の「パーマリフトブラジャー」(通称「弾丸ブラ」)が発明される
  • 1964年:ルイーズ・ポワリエが「ワンダーブラ」を開発し、初年度に1億2,000万ドルを売り上げる
  • 1977年:ロイ・レイモンドがヴィクトリアズ・シークレットを創業
  • 2005年:米バージニア州で、パンツやスカートから下着を見せた人に罰金を科す法案をテスト(失敗に終わる)
  • 2011年:ティンクス(Thinx)が生理用下着を発売
  • 2018年:リアーナが、さまざまな体型や人種をレペゼンするランジェリーをつくることを目的に、サヴェージ×フェンティを立ち上げ
  • 2019年:キム・カーダシアンがシェイプウェアやルームウェアのブランドSkimsを立ち上げ(当初は「Kimono」というブランド名になる予定だった)
  • 2021年:ヴィクトリアズ・シークレットが大規模なリブランディングを開始。女性の外見よりもその功績にフォーカスする内容

THE WAY WE 🩲 NOW

ラベルを付け替えよう

A man folds a pair of underwear.
Image copyright: Giphy

ランジェリー(lingerie)の語は、フランス語でリネン製品を意味するラーンジュ(linge)に由来します。ブラジャーはもちろんバスローブも含み、シルク、コットン、ポリエステルなど素材もさまざまです。

ランジェリーは「親密なもの/秘されるもの」として表現されることが多い一方で、公然の場で見かけることも少なくありません。1960年の映画『百万長者』でソフィア・ローレンが着用した黒いコルセット、1983年の映画『リスキー・ビジネス』でトム・クルーズがダンスを披露した下着姿、1990年の「ブロンド・アンビション」ツアーでのマドンナのコーンブラも印象的です。

ランジェリーはモノであると同時にイデオロギーでもあるといえます。20世紀初頭に活躍した作家バロンヌ・ドルシャン(Baronne d’Orchamps)は、著書『Tous les Secrets de la femme』(「女性の秘密のすべて」の意)において、「女性らしい下着の官能的な力に匹敵するものはない」と書いています。しかし、あまりにも長い間、その官能的なパワーは、実際にそれを身につける人以外を満足させるためにマーケティングされ、販売されてきたのです。

21世紀のいま、CUUPThird LoveなどといったD2Cブランドが、快適性や機能性だけでなく、インクルーシヴィティを求める声に応えて急成長しています

BY THE DIGITS

数字で見る

  • 3,254億ドル:2025年における世界の下着業界の予測規模
  • 610億ドル:中国の下着市場、アジアはランジェリーで最も成長率の高い市場
  • 1.5億ドル:Savage x Fentyの2020年の推定売上高
  • 200%:2019年から2020年にかけてのSavage x Fentyのランジェリー収益の増加分
  • 54億ドル:ヴィクトリアズ・シークレットの2020年の売上高
  • 28%:ヴィクトリアズ・シークレットの2019年から2020年にかけての収益減少額
  • 470万人:サヴェージ×フェンティのInstagramアカウントのフォロワー数
  • 7,150万人:ヴィクトリアズ・シークレットのInstagramのフォロワー数(2022年2月時点)

TAKE ME DOWN THIS 🐰 HOLE!

ヴィクトリアはまだ女王

細分化されつつあるランジェリー市場ですが、こと米国における市場規模・売上高について言えば、ヴィクトリアズ・シークレットが依然としてトップとして君臨しています

しかし、同社の王冠が傾きかけているのもまた事実。2020年12月の米国女性インティメイトアパレル(インナーウェア)市場におけるヴィクトリアズ・シークレットのシェアは19%で、2015年の32%から著しく低下。シェア16%のヘインズブランズ(Hanesbrands)が間近に迫りました

親会社であるエル・ブランズ(L Brands)のCEOとして君臨してきたレス・ウェクスナーが退任したこと(2020年)や、「エンジェルズ」の刷新、大坂なおみやパロマ・エルセッサーらをロールモデルとして起用した新プロジェクト「VSコレクティブ」、あるいは乳房切除ブラの新ラインなどが同社の失ったものを取り戻す契機となったかどうかは、まだ判断できないところです。

QUOTABLE

こんなことばも……

「ランジェリーの本質と姿勢は、すべて提案にある」

──フランス人デザイナーのシャンタル・トーマス(ファッション工科大学での展示からの引用)

UNHOOKED FROM REALITY

フィット感は誰のモノ

Three women perform motions with their hands on top of their heads.
Image copyright: Giphy

今日、わたしたちが思い浮かべるランジェリーの多くは「見た目」を変えたいという衝動から生まれたもので(コルセットやガードルなどを思い出してみてください)、「ありのままの姿を称える」ものではありません。

エドワード王朝時代、とくに1890年代後半から1910年代にかけて、女性たちが夢中になったのは「モノボゾム」スタイルでした(Monobosom:monoは〈単一〉、bosomは〈胸〉の意)。コルセットがウエストをきつく締め上げ、S字型のシルエットを実現していたのです。

ランジェリーブランドは長い道のりを歩んできましたが、その極めつけがボディポジティブ運動です。黒人や少数民族の女性たちが主導するこの運動は、いまも拡大しています。しかし、彼女たちが「セクシー」を再定義しようとすればするほど、商品化の落とし穴から逃れられずにいるのもまた事実です。

モデルで作家のステファニー・イエボアは2020年、『Vogue』に次のような文章を寄せています。曰く、「わたしたちは、この運動がプラスサイズへの賛美と祝福に捧げられてきた過程を見てきたが、いまでは『許容できる程度に太っている』女性、つまり、極端な砂時計型をした美しい女性で、白人か明るい肌の持ち主で、小さなウエスト、大きなヒップ、高い頬骨をもつ女性が中心となっている」。

キム・カーダシアンが発表したSkimsをはじめとするシェイプウェアブランドの存在もまた、ボディポジティブムーブメントをさらに複雑にしています。これらは、ファットフォビア(脂肪恐怖症)が蔓延する世界を変えようとする取り組みの数々と逆行しているのではないでしょうか。そして、信じられないかもしれませんが、ボディポジティブムーブメントは、いまだ男性を排除してもいるのです。

ONE 👗 THINGS

ちなみに……

A women in colonial clothes walks outside
Image copyright: Youtube

18〜19世紀の女性にとって「服を着る」のは……あまりに複雑な作業だったようです。ペチコートの下に着用したのはケミーズ、ガーター、ステイ、バムロール、タイオンポケットなどなど……。

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