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Need to Know:ミーム株に新展開

ミーム株、再燃。と同時に、個人投資家の動きについて新しい展開を示唆する動きもみえてきました。毎週水曜は、世界のビジネスの風向きを変えようとしているモノ・コト・ヒトを取り上げています。

Image copyright: REUTERS/Carlo Allegri
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

毎週水曜夜のニュースレター「Need to Know」は、世界のビジネスの風向きを変えようとしているモノ・コト・ヒトをひとつ取り上げ、「いま知るべきこと」をまとめるシリーズです。

近年、個人投資家による株式売買リテール取引)が脚光を浴び、多くの人が投資を身近に感じるようになりました。

調査によると、これら新たな個人投資家には若年層が多く男性や白人の割合が比較的少ないことが分かっています。住宅を購入するかどうか、あるいは退職後に備えた貯蓄に悩む若い投資家が、リテール取引やあるいは暗号通貨など「リスク資産」への投資の需要を押し上げているともいわれています

昨年1月のことを思い出してみてください。ミーム株急騰に際しては、こうした個人投資家の動員力も注目されましたが、そのありようには、諸手を挙げて賛成するわけにもいかない事情も生まれています。というのも、リテール取引は手っ取り早く儲けることに集中するあまり、投資家に自己反省を促さないことがよくあるのです。

英国では個人投資家が、制裁を受ける直前のロシア企業に猛然と投資をスタートしましたが、現時点では、それらの株の調子はあまりよくはないようです。

By the Digit

数字でみる

  • 85%:個人向け取引掲示板を追跡しているヘッジファンド(Bloomberg Intelligenceの調査による)
  • 2,500万人:2020〜21年の2年間で新規開設された個人投資家の証券会社口座
  • 2,920億ドル:2021年に個人投資家が購入した株式と上場投資信託(ETF)の時価総額。2019年の7倍に及ぶ
  • 32%:酒に酔って取引したことがある投資家の割合(Magnify Moneyの2021年8月の調査による)
  • 66%:感情にまかせて取引をし、あとで後悔したことがあると回答した投資家の割合
  • 835億ドル:2022年2月に米国の投資家が有価証券を担保に引き揚げた信用債務の総額

Retail brokerage apps

アプリでできること

A person dressed as Robin Hood shoots an arrow at another person in a theater scene.
Image copyright: Giphy

調査会社のVanda Researchによると、2022年現在、個人投資家による取引は、日平均で13億ドルに上ります。2021年初頭にはGamestop株が大ブームとなり(そのブームにこの3月下旬から復活の兆しも)、「ロビンフッド(Robinhood)」をはじめとする個人向け証券アプリも巨額の利益を上げました(ただし、その急成長が決してサステイナブルではないことも明らかになっています)。

こうした個人向け証券会社は、個人取引をゲーム化していると批判浴びてもいます。批判の中で、例えばRobinhoodは、投資家がアプリ上で株式取引を完了したときの紙吹雪が降るグラフィックをアプリから削除するに及びました。

また、株式と並ならんで暗号通貨取引の人気も高まっています。Robinhoodと「イートロ(eToro)」は、ユーザーが同一プラットフォームで暗号/株式の両方を取引できるようにしているほか、FTXやBitstamp USAなどの暗号取引所では、株式取引の機会を提供することが検討されています

Brief History

個人投資の歴史

1950年台:米国で個人投資家が共同で株式を売買する投資クラブが出現

1971年:全米証券業協会(NASDAQ)が設立され、個人投資家にも株式取引が開放される。

1975年:米国証券取引委員会(SEC)が手数料を自由化

1987年:10月19日のニューヨーク株暴落を受け(ブラックマンデー)、SECは小口取引を優先する小口注文システム(SOES)を創設

1990年台:電子取引プラットフォームの登場とドットコム時代の到来により、デイトレードが本格化

1997年:電子取引により個人投資家が新規株式公開(IPO)に参加しやすくなり、個人トレーダーがドットコムブームを後押し

1999年:SEC委員長のアーサー・レビット(Arthur Levitt)が、個人投資家は7,000人いると議会で説明

2000年:SOESの小口投資家に対する優位性が解消

2019年:金融サービス会社チャールズ・シュワブが手数料をゼロに。オンラインブローカー間の価格競争に突入

2021年:個人投資家がGamestopの割安株にいっせいに投資し、一方でヘッジファンドは大きな損失を出す

The first true meme stock company

ミーム銘柄の生存戦略

Gamestopと並ぶ代表的なミーム株が、北米で300を超える映画館を運営するAMCエンターテインメント(AMC Entertainment、以下AMC)です。そのAMCは先月15日、鉱山開発会社のハイクロフト・マイニング・ホールディング(Hycroft Mining Holding)に2,790万ドル(約34億円)を投資し株式の22%を取得すると発表しました。

ハイクロフトは2020年の特別買収目的会社(SPAC)ブームに乗って上場しましたが、AMCの投資時の取引価格はわずか1株1.07ドルでした。しかし、資金投入の動きが話題になり、2日時点でその株価は1株2.16ドルまで上昇しています。

AMCの事業を映画館ビジネスとして考えるなら、もちろん、この取引には意味は見出せないでしょう。採掘場を手にすることで、映画館ビジネスの進化が促されるとはとても思えないからです。しかし、AMCを「ミーム株」として捉えてみると、どうでしょう。この取引があるひとつの意味をもち始めます。

AMCのCEO、アダム・アーロン(Adam Aron)は、3月28日のインタビューで、ハイクロフトの買収について、「われわれは、1年前のAMCとまったく同じような会社を見つけた」と述べています。「その会社は素晴らしい資産をもっていたが…資金繰りに苦しみ、流動性の問題を抱えていた」。AMCの投資から2週間で、ハイクロフトは1億9,500万ドル(238億円)を調達しました。

アーロンのコメントが示唆するのは、AMCのコアコンピテンシーは、もはや映画のチケットとポップコーンを売ることにとどまらない、ということ。AMCはいま、バランスシートをミーム化するビジネスを展開しているのです。

昨年はAMC自らがその対象でしたが、今年はAMCがハイクロフトのような負債を抱えた企業を買収し、ネット掲示板「Reddit」を愛用するひとびとのファンクラブに株を買ってもらい、資本を注入し、成功への道を提供するのです。これは、資金調達の「フィクサー・アッパー(修理屋)」ともいえるモデルです。

Gamestopは、いまだ2021年のミーム株ブームに身を委ねていますが、それが長続きするとは限りません。AMCは、ミーム株というステータスを完全に受け入れ、それを外部投資戦略として活用した最初の企業であることはほぼ間違いないでしょう。

THE BACKSTORY

AMCの裏側

  • パンデミック前から、AMCは苦境に立たされていた。映画館の入場者数は減少し、ストリーミングサービスが長編映画に投資する一方、AMCは映画のサブスクリプションサービスを提供していたムービーパス(Moviepass、すでにサービス停止)との戦いに突入していました。(パンデミック突入後の)2020年末には、ほとんどの映画館が稼働しなくなり、AMCは生き残りのための最良の選択肢として、破産申請を検討していました。
  • 会社を支えたのは、個人投資家だった。AMCは2021年1月に9億1,700万ドル(約1,100億円)を調達しました。これは、ゲームストップがミーム株ブームを巻き起こすわずか数カ月前のことです。その直後、個人投資家がAMCに群がり、株価を急騰させました。しかし、ゲームストップとは異なり、AMCは新株発行を繰り返し、株価を下げながら、この熱狂に乗って資金を調達してきたのです。
  • そして、不思議な状況に。AMCは現在、個人投資家が株の65%を所有しており、彼らが団結すれば会社の運命を左右することも可能です。昨年7月には、AMCが増資の承認を求めようとした重要な投票の実施が、個人投資家たちによって阻止されました。投資家から親しみを込めて「シルバーバック」と呼ばれるアーロンは、ミームファン層にアピールしようと努めてきました。AMCは株主にポップコーンを無料で提供し、食料品店でもポップコーンを販売する計画を発表、映画のチケット購入では暗号資産(仮想通貨)が使えるようにしました。いま、アーロンの数時間に及ぶ決算説明会では、個人投資家との質疑応答に時間が割かれています。

WHAT TO WATCH FOR NEXT

AMCのこれから

  1. さらなる「変革的なM&A」が求められる。アーロンは、株主から、AMCの映画館事業を改善するだけでなく 「変革的なM&A」案件を行うよう求められている、と話します。アーロンはロイター通信の取材に、「われわれの株主は、『自分たちが託した資金で何かエキサイティングなことをしてくれる』という明確な期待を持って、われわれに資金を提供してくれたのだ」と語っています。
  2. AMCの株価のゆくえは不透明。いまのところ、すべての「興奮」は実を結んでいます。AMCの株価は、ハイクロフトとの取引以降、数日間で1株約14ドルから25ドルに上昇しました。しかし、AMCが行うすべての取引を、そのメリットの有無にかかわらず、株主は気に入ってくれるのでしょうか?
  3. 本業の苦戦は続きそう。映画館ビジネスは、特にパンデミックで映画館での公開期間が短縮された影響で、いまでも苦戦しています。AMCが収益の多様化を図ろうとすることは当然ですが、金や銀の採掘が彼らの投資先になるとは誰も想像していなかったでしょう。
  4. 個人投資家の動きはさらに活発に。個人投資ブームはまだまだ健在で、アマゾン、テスラ(Tesla)、アルファベット(Alphabet)といった大企業も注目しています。これらの企業は最近、株式分割を発表しており、各社の株価は個人投資家にとってより魅力的なものになるでしょう。Gamestopでさえ、3月31日に株式分割を発表しています。
  5. アーロンのTwitterアカウントにも注目。AMCのCEOが「シルバーバック」として個人投資家に親しまれているのには、理由があります。アーロンは個人投資家たちに直接、彼らの言葉で語りかけているのです。他の企業幹部がAMCを成功に導いた要素にならおうとするなか、アーロンと彼のツイートから学べることがあります。
Image copyright: VIA TWITTER

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