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Africa:大陸の海運を変えるJestream

アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

2021年10月、ロサンゼルスやロッテルダム、深センの港はコンテナ船が入港を3〜12日も待つような異常事態に陥りました。この遅延はパンデミックによるものですが、ことアフリカにおいて、貿易の遅延はいまに始まったことではありません

ナイジェリアを例に考えてみましょう。アフリカ最大の経済大国であるナイジェリアは、精製された原油からロシア産の小麦タイプライター中国製の爪楊枝まで、大小さまざまな商品を輸入しています。ただし、問題は輸入品そのものではなく、ラゴスのアパパ港にあります。その混雑具合で悪名高いこの港では、船の入港から荷揚げ完了までに1カ月以上かかるのです。

さらに、2020年以降、アパパ港からラゴス市内にある倉庫への輸送費は40フィートコンテナあたり4,000ドル(約49万円)以上とも言われています。これは、米国からナイジェリアへの輸送費とほぼ同額。そして、これにより最終的に損失を被るのは、商品に必要以上のお金を払うことになるナイジェリアの家庭なのです。

アフリカではトーゴの深水港やモロッコのタンジェMED港など、近代的な港も栄えています。しかし、多くはアパパ港と同様の状況にあります。さらに、アフリカは通関までの待ち時間が世界一長いともいわれています。非効率性を改善するには、税関の通関手続きにおける透明性も必要です。

こうした問題は、行政だけで解決できるものではありません。いま、アフリカの海運業をテクノロジーによって刷新しようとしているスタートアップが求められています。

CHEAT SHEET

業界・虎の巻

  • どんな可能性が?:人口10億人以上を擁するアフリカは輸出入業者にとっての一大市場であり、輸送プロセスがよりわかりやすくなれば、世界の国々との間でいまより各段に多く物のやりとりがされるようになるでしょう。
  • 課題は?:アフリカが国際貿易で競争力を得るのを阻んでいる大きな足枷はキャパシティと文化です。港湾のキャパシティ向上には、年間480億ドル(約5兆9,664億円)もの投資を行なってインフラの格差を解消する必要があります。その一方、汚職を生む不透明な税関手続きを変えれば、大規模な投資に比べて短期的に成果をあげることができるでしょう。
  • ロードマップは?:アフリカの海上貿易が抱える問題を解決するには、まず書類の提出や貨物検査といった基本的なプロセスにおける透明性の向上と、貨物輸送のリアルタイムでの可視化などが必要となります。企業間信用や内陸部にいるトラック運転手へのアクセスといった付加価値をもつサービスがあればさらに物事が円滑に進みますが、サプライチェーン全体で責任を果たさなくてはならないのは行政機関です。
  • ステークホルダーは?:主な発言権をもっているのは政府の規制当局ですが、アフリカ貿易の未来は貿易業者や伝統的な貨物輸送会社、そしてシリコンバレーの支援を受ける新進のテックスタートアップの協力を得られるかどうかにかかっています。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 5,000個:2021年にナイジェリアの港で放棄されたコンテナの数。こうしたコンテナは混雑の一因となります
  • 900万個:アフリカ最大の港であるモロッコのタンジェMED港に入る20フィート海上コンテナの数
  • 1億3,200万トン:2030年までにアフリカの船舶で輸送されると見込まれる貨物の総重量
  • 10%:アフリカの港に向かう船舶の減少率(2020年と21年を比較/トン換算)
  • 4%:世界のコンテナ取扱量に占めるアフリカの割合(2020年)

THE CASE STUDY

ケーススタディ

Image copyright: the gateway port in Apapa, Lagos, Nigeria REUTERS/Temilade Adelaja
  • 企業名:Jetstream Africa
  • 創業年:2018年
  • 本社所在地:40名弱の社員がガーナで働いているほか、ナイジェリアでも事業を展開。また南アフリカや中国、米国、ヨーロッパに代理店をもつ
  • 創業者:Miishe Addy、Solomon Torgbor
  • 時価総額:非公開

ミーシェ・アディ(Miishe Addy)とソロモン・トルグボール(Solomon Torgbor)がJestreamの基盤となるアイデアの実現に取り組み始めたのは、ふたりがガーナのメルトウォーター・テクノロジー起業スクール(MEST)で出会ったときのことでした。ふたりはコンテナ1本に満たない貨物である「LCL貨物」に関するデータを集約することから始め、のちに海運業界のさまざまなプレイヤーが透明性をもって協力しあえるようにするためのサプライチェーン管理ソフトウェアを構築しました。

Jestreamは通関業者やフォワーダー(自らは輸送手段をもたず、荷主と直接契約して貨物輸送を行う事業者)、海運業者、航空会社、コンテナターミナルをオンラインで結び、状況の可視化を実現しています。同社のシステムでは、荷主がモバイルマネー銀行振込で支払いを済ませると即座に貨物が引き渡されます。料金はコンテナ単位やキログラム単位になっていて通関手数料は一律。ただし、発送する商品の価値に応じて手数料がかかります。「プロセス全体を合理化する技術を構築して、可能な限りの自動化をおこなっています」とアディは言います。

とはいえ、あらゆることが自動化できるわけではありません。例えば税関検査は手作業でおこなわれており、混雑状況をさらに悪化させています。しかし、Jestreamやその競合他社は貿易業者に輸送プロセスをスピードアップするツールを提供することにより、スピード感とプロフェッショナリズムに寄与できればと考えているのです。2020年にベンチャーキャピタルから300万ドル約3億7,290万円を調達した同社は、多国間の物流の分野で「アフリカのフィンテックにおけるFlutterwaveのような存在になる」ことを目指しているとアディは言います

Flutterwaveが企業への融資に参入しているように、Jetstreamもまた港の効率化という壮大なサービスを運用するなかで、商品の決済のために資金を必要としている貿易業者に融資を行なっています。アディによると、2021年8月から2022年3月までに合計570万ドル(約7億851万円)の融資を分配したということです。平均融資額は2万8,000ドル(約348万円)で月利は2%から4%、平均期間は45日となっています。アディ曰く、今後も融資の規模を拡大するためにJetstreamは2022年4月に借入によって1,000万ドル(約12億4,300万円)を調達したということです。

IN CONVERSATION WITH

キーパーソンの発言集

Stylized image of Miishe Addy

ミーシェ・アディはJetstream Africaの最高経営責任者(CEO)です。同社を共同設立する以前、彼女はガーナの起業家養成学校兼スタートアップインキュベーターのMESTで講師やアドバイザーやBain & Companyの戦略アナリストを務めていました。以下、アディとのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

  • Jetstreamがもたらす価値について:「決済処理やサプライチェーンに潜む問題の発見、倉庫作業のスケジューリングなどをより迅速にできれば、ビジネスで大きな違いが生まれます」
  • アフリカの貿易物流に訪れている変化について:「アフリカが現地生産にもっと投資するようになり、スケールメリットによって地元の農家や工場がベトナムやインドネシアに対抗できるようになれば、より多くの輸入業者が海外ではなくアフリカ内のサプライチェーンを多様化させるようになり、地元のサプライヤーからより低価格で安定した供給を受けられるようになるでしょう。一朝一夕にはいきませんが、そうなると信じています」
  • 成長について:「2028年までにアフリカ大陸のすべての主要港で事業を展開します」

LOGISTICS DEALS TO 👀

注目すべきディール

  • 貨物管理を手がけるナイジェリアのスタートアップMVXは、2021年8月のシードラウンドで130万ドル(約1億6,159万円)を調達しました。Kepple AfricaやThe Continent Venture Partners、Founders Factory、Launch Africa、Capital Oakなどが投資家として名を連ねています。MVXはOui Capitalから10万ドル(約1,243万円)のプレシード資金を調達し、2019年に創業しました。
  • ケニアを拠点とするスタートアップのSoteは、2020年11月に300万ドル(約3億7,290万円)の調達に成功しました。このラウンドはMac Venture Capitalが主導し、Acceleprise、Consonance Capital、Backstage Capitalなどが参加しています。Soteに出資しているFuture AfricaはSoteが「アフリカの貿易をソフトウェアの世界に連れ出した」と評しています
  • 出荷・物流事業を担うナイジェリアのスタートアップTopshipは、2021年にプレシードファンディングで30万ドル(約3,729万円)を調達しました。Y Combinatorの2022年冬季プログラムの参加企業である同社はこれまで少なくとも125,000ドル(約1,553万円)を調達しており、次回の資金調達の際には同アクセラレーターからさらに375,000ドル(約4,661万円)を調達する見込みです。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、Akon ft. Lil Wayne, Young Jeezy(セネガル&米国)の「I’m So Paid」を聴きながら、西アフリカ特派員のAlexander Onukwueがお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しています。

ONE 🌷 THING

ちなみに……

経済複雑性観測所(Observatory of Economic Complexity)が発表した2020年のデータによると、切り花の輸出国上位5カ国にケニアとエチオピアがランクインしています。ケニアは4位、エチオピアは5位で、上位3カ国に並ぶのはオランダ、コロンビア、エクアドルです。それでも、EU圏で販売される花の3本に1本はケニア産と大きな割合を占めています。

A Kenyan woman packs red roses at the Sher Agencies flower farm in Naivasha in 2006.
Image copyright: Reuters/Antony Njuguna

💎 「Weekly Africa」は、毎週火曜、アフリカの地で新たな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。

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