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Forecast:2022年の経済予測【再検証】

今年も早4月。インフレ、サプライチェーンの混乱、新型コロナに加え、エネルギー危機について、最新の情報をお伝えします。年初に配信した「予測不能かつ重要なリスク要因」の続編です。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
The wildcards of 2022
Image copyright: Lan Truong
ニュースレター「Forecast」では、グローバルビジネスの大きな変化を1つずつ解説しています(これまでに配信してきたニュースレターはこちらからまとめてお読みいただけます)。

Quartzでは今年の年初、予測不能かつ重要なリスク要因を4つ挙げましたが、そのうちのひとつがロシアのウクライナ侵攻でした。

戦争の勃発を事前に察知するのは非常に難しく、年初時点のオンライン調査では、ほとんどの人が「侵略の可能性は半分以下」だと考えていたほどです。

Quartzは過去3年間、その年の「ワイルドカード」を発表してきました。ここで言うワイルドカードとは、「可能性は低いが実際に起きてもおかしくはなく、またそうなった場合に経済に大きな影響を与えるイベント」を指します。

これは「プレモータム(pre-mortem)」思考のようなもので、自分の選択がうまくいかない場合を想定して、その理由を考えるのです。Quartzでは毎年、世界経済の低迷を引き起こす要因をリストアップしており、2020年のリストには新型コロナウイルスが含まれていました。

2022年になってからさまざまなことが起きましたが、それらをすべて踏まえた上で、年初に取り上げた「インフレ」「サプライチェーンの混乱」「新型コロナ」の各項目に加え、「エネルギー危機」について、最新の情報をお伝えしていこうと思います。残念なことに、いいニュースはほとんどありません。以下のチャートからもわかるように、経済見通しはわずか3カ月前からかなり悪化しているのです。


📉 LOWER YOUR EXPECTATIONS

見通しは引き下げられた

下記のチャートは、2022年のGDP成長率の予測を「ウクライナ侵攻前」と「侵攻後」で比較したものです。

A chart shows that forecasted GDP growth has decreased globally, for Europe, and for the US.
Image copyright: Quartz

ウォール街と中央銀行は、世界のほぼすべての地域について経済見通しを引き下げました。なかでもロシア経済への影響が大きいとみられており、S&PグローバルはロシアのGDPは今年に9%縮小すると予想します。

一方、米国では連邦準備理事会が成長率見通しを4%から2.8%に引き下げました。また、ゴールドマン・サックスは米国が今年にリセッション(景気後退)に陥る確率は20〜35%との見方を示しています。


🛢️ ENERGY CRISIS

エネルギー危機

ウクライナ侵攻を受け、原油価格は2月に2014年以来で初めて1バレル当たり100ドル(約1万2,500円)を超えました。天然ガスも急騰しています。米国は5月に戦略石油備蓄を放出する予定で、欧州へのガス供給も拡大していく計画ですが、短期的にはロシア産の原油と天然ガスを完全に補填できる手段はありません。

原油価格(引いてはガソリン価格)はさらに上昇する可能性があり、これが経済見通しにおいて最大の引き下げ要因となっています。ただ同時に、原油価格が経済に及ぼす影響はこれまでで最低の水準になっているのも事実です。つまり、石油火力発電への依存度が低下し、またエネルギー効率も向上しているために、世界経済は一時的な原油の値上がりに対して以前よりは抵抗力があるのです。


💸 INFLATION RISING HIGHER

加速するインフレ

2021年は世界的にインフレが加速しましたが、物価上昇の背景にあった状況は今年第1四半期になっても変わっていません。世界のインフレ率はほぼ半世紀にわたって低下傾向にありましたが、現在は上昇に転じて6%を超えています。各国の中央銀行が金融引き締めに動いていますが、政策金利の引き上げには即効性はなく、また半導体不足や住宅難の解消に直接つながるわけでもありません。

世界銀行は、金利上昇により債務の利払いが重荷になり、来年には12カ国前後が債務不履行(デフォルト)に陥るとの見通しを示しています。しかも、ロシアのウクライナ侵攻で世界的に原油価格食料価格が急激に上昇しており、インフレ圧力はさらに高まりつつあるのです。

持続的な物価の上昇は、市場が長期のリスクを予測し、それに備えることはほぼ不可能であることを思い出させてくれます。経済が順調なときでさえ、インフレを管理するのはかなり難しいとされています。

ルーズベルト研究所のチーフエコノミスト、ジョセフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)は、「現行のシステムは長期的な回復力より短期的な利益を優先する」と書いています。つまり危機は今後も発生し、そのたびにインフレを抑制するのがさらに困難になる可能性があるというのです。


😷 INCHING TOWARDS ENDEMICITY

新型コロナの明暗

ワクチン接種と過去の感染で免疫が確立され入院者数が減っているために、多くの国は新型コロナウイルスへの対策を緩和もしくは全廃しつつあります。しかし中国は例外で、感染者数が過去最多を更新するなか、政府は依然としてゼロコロナ政策を掲げているのです。

この方針は、習近平政権が3期目に突入する年末までは続く可能性が高いとみられています。3期目の続投が正式に決まる党大会までは、深刻な社会危機や医療崩壊といった政治的混乱を避けることが政府の最優先課題となります。

しかし、中国経済はゼロコロナ政策のために減速しており、これは世界経済に影響を及ぼします。香港中文大学のある研究者の試算によれば、中国各地で散発的に行われているロックダウンによる経済的損失は月額460億ドル(5兆7,600億円)に上ります。また、海運の輸送能力が落ち込み世界の物流が停滞しているのも、中国のロックダウンが一因なのです。

さらに、致死率が高い新たな変異株が出現した場合、経済的にも社会的にもコロナ以前への復帰はさらに遅れるでしょう。


ONE 🏘️ THING

ちなみに……

2022年も4分の1が過ぎ、中国の不動産大手の恒大集団Evergrande)がニュースの見出しを賑わすことは減りました。しかし、同社は経営危機から脱したわけではなく、3月には2021年通期決算の公表期限を逃すなど、混乱は続いています。昨年12月には227億ドル(2兆8,400億円)相当の外貨建て社債でデフォルトを起こしており、現在は政府支援によって破綻を免れている状況です。

恒大集団は7月までに3,000億ドル(37兆5,400億円)に上る債務の再編案を提示すると述べていますが、懸念が消えたわけではありません。例えば、国内の金融機関が同社の預金20億ドル(250億円)相当を差し押さえるといったことが起きているのです。

それでも、多くの人たちが恐れる銀行や関連企業の倒産ドミノといった事態には至っていません。政府は状況を管理していく方針で、これは市場や投資家にとっては安心できるサインです。


今日のニュースレターは、メンバーシップチーム(Ana Campoy, Nate DiCamillo, Walter Frick, Tripti Lahiri, Tim McDonnell, Samanth Subramanian)でお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。皆さん、よい週末をお過ごしください!

💎 毎週金曜夜は、世界の「これから」を予測する「Forecast」ニュースレターをお届けしています。

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