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Africa:集まるヘルスケア投資の行き先

医療が行き渡らない。ならばどうするか? 火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポート。

Ilara Health Member Brief artwork
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。今日取り上げるのはIlara Health。ケニアの医療改革の重要プレイヤーのひとつです。

アフリカ諸国では、医療に対する政府の経済的支援が大きく不足する傾向にあります。世界保健機関(WHO)が推奨する1人当たり年間34〜40ドル(約4,400~5,150円)の医療費を支出できる国は少なく、アフリカではマラリア結核HIV/AIDSで毎年数百人の人々が亡くなっているのです。

アフリカのヘルスケア製品や医療サービスの約半分(PDF)を担う民間セクターに対しても、充分な投資はなされていません。多くの国の農村部貧しい都市部では、公的医療の穴を埋めるべく、プライマリーケアを担う民間の診療所も生まれています。こうした施設の多くには、病気の早期発見に必要な検査機器といった設備を整備する余裕はありません。それでも、こうした施設の利用が地域住民にとって唯一の選択肢であることが多いのです。

ここにはイノベーションの余地が多くあります。すでに起業家やベンチャーキャピタル(VC)はアフリカの医療サービス周りに非常に大きな可能性を見出しており、医療行為や診断ツール、医療インフラ用の融資といったものへのアクセスを拡大するソリューションを開発し始めています。

CHEAT SHEET

業界・虎の巻

  • どんな可能性が?: COVID-19によって、医療分野への投資不足に拍車がかかりました。これが既存の医療サービス提供者や医療モデルに新しいテック製品の採用や変化を迫り、業界にチャンスをもたらしています。
  • 課題は?:医療へのアクセスを確保するために、医療サービスの提供者は適切なインフラをもつ必要があります。サービスは手ごろな価格で、すぐに利用でき、顧客に最適化されたものでなくてはなりません。
  • ロードマップは?:ヘルステック分野はまだ比較的若い分野であり、医療インフラへの融資といった多くのサブセクターがまだ発展途上にあります。さらに、これまでの資金調達のほとんどは、アフリカの「ビッグ4」と呼ばれる国々(南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、ケニア)のスタートアップによるものでした。2021年にアフリカのヘルステック・スタートアップが調達した資金の80%以上はこの4カ国の企業に回っており、そのほかの地域は比較的、未開発と言っていい状態にあります。
  • ステークホルダーは?:アフリカにはVezeetaやmPharma、54gene、Ilara Healthといったヘルステック・スタートアップがあります。こうした企業に投資したVCとしては、AfricInvestやGulf Capital、Saudi Technology Ventures、JAM Fund、Unboundなどが挙げられます。

BY THE DIGITS

数字でみる 

  • 1億2,250万ドル約157億9,218万円:2021年にアフリカのeヘルス・スタートアップが調達した資金額
  • 5.7%:2021年にアフリカの企業によって調達された資金のうち、eヘルス・スタートアップに回った資金の割合
  • 55社:2021年に資金調達したアフリカのeヘルス・スタートアップの数
  • 19%:アフリカのeヘルス・スタートアップへの投資の増加率(2020〜21年)
  • 220万ドル約28億3,505万円:2021年にアフリカのeヘルス・スタートアップが調達した資金の平均額

THE CASE STUDY

ケーススタディ

  • 企業名:Ilara Health
  • 創業年:2019年
  • 本社所在地:ナイロビ
  • 創業者: Emilian Popa(現CEO)、Maximilian Mancini(現CSO)Sameer Afzal Farooqi(現COO)
  • 最新の資金調達状況:2020年にシリーズAラウンドで375万ドル(約4億7,655万円)を調達

アフリカで見られる特に深刻な病気のいくつかは、早期発見によって治療が可能です。しかし、アフリカの多くの人びとは基本的な血液検査さえも受けられない状況にあります。その原因は、プライマリーケアを担う診療所が金銭的な理由から検査に必要なものを揃えられないことにあります。この状況が、エビデンスに基づく診断を難しくしているのです。

こうしたインフラ上の課題を解決すべく、ナイロビ拠点のIlara Healthは資金不足に陥り融資も受けられないことが多いケニアの小規模な診療所に医療機器を提供しています。診療所は費用の10~20%を前払いし、残りを2~3年の分割払いで支払う仕組みになっており、債務不履行の場合はIlara Healthが機器を回収・再販します。

同社が現在提供しているのは、超音波診断装置や血液検査装置、ヘモグロビン検査装置、化学分析装置といった医療機器です。スタッフが診療所を一軒一軒訪ね、これまでケニアの42郡・約1,100の診療所に1,700台を超える医療機器を提供してきました。機器を手ごろな価格で入手するために、Ilara Healthは製造コスト削減の技術をもつ次世代の医療機器メーカーと提携し、そのコスト削減分をエンドユーザーに還元しています。

IN CONVERSATION WITH

キーパーソンの発言集

Headshot of Ilara Health co-founder, Maximilian Mancini.

マクシミリアン・マンシーニMaximilian Mancini)は、Ilara Healthを共同創業した3人のうちのひとりで、現在は最高戦略責任者(CSO)を務めています。ロンドンの投資銀行でヘルスケア分野のアナリストを3年間務めるなど、この分野のプロフェッショナルとして経験を積んできました。以下、マンシーニとのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

  • 創業のきっかけについて:「医療が大きな問題であること、そして民間の医療分野への投資が極めて少ないことはよく知られています。わたしたちは、そこからどこに向かうべきかを知りたかったのです。そのなかで浮き彫りになった共通のテーマは『研究室がない』という問題でした」
  • Ilara Healthのゴールについて:「予防と手ごろな価格の診断を、大陸の多くの場所に届けることです。何かを治療するためには、まず自分の病気が何なのかを知る必要があります。病気を予防したり早期に発見したりすることができれば、症状を改善できる可能性が高くなります」
  •   ケニアでビジネスを始めることについて:「文化を根本的に理解していないのに、相手にアイデアを押し付けることはできません。そうならないために、実際に現地に足を運ぶ必要があるのです」

HEALTHCARE DEALS TO 👀

注目すべきディール

  • ウェアラブルデバイスを使った健康情報の収集や生体認証を手がける南アフリカLifeQは2021年、事業規模拡大のために4,500万ドル(約58億円)を調達しました。LifeQが収集したデータは、健康管理ソリューションに利用されています。
  • エジプトのスタートアップVezeetaは2020年、製品のイノベーション強化と事業のグローバル展開のために4,000万ドル(約51億5,663万円)を調達しました。Vezeetaは、医師や医療サービスの検索、診察の予約、レビュー投稿などを行なえるプラットフォームを提供しています。
  • 薬局のネットワークを構築しているガーナのスタートアップmPharmaは2022年、事業拡大と技術インフラ構築のために3,500万ドル(約45億1,205万円)を調達しました。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、ルワンダのBruce Melodieの「Katerina」を聴きながら、元Quartzの東アフリカ特派員で現在はナイロビ在住のコントリビューター、Carlos Mureithiがお届けしました。

ONE 🩺 THING

ちなみに……

2021年にアフリカのeヘルス・スタートアップが調達した資金の50.9%は、南アフリカの企業にわたりました。また同年に資金調達に成功したeヘルス・スタートアップ55社のうち10社は、大規模な資金調達に成功した南アフリカの企業でした。

💎 「Weekly Africa」は、毎週火曜、アフリカの地で新たな産業が生まれる瞬間を定点観測するニュースレターです。

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