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Company:これからの電力の売り方──Octopus Energy

電気代の値上がりが止まらない欧州。そんな状況下において気を吐く、電力供給の「ブラックボックス」に風穴を開ける英国のオクトパス・エナジー・グループを深掘りします。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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ゴールデンウィーク中も世界のビジネスは動き続けています。明日から夜のニュースレター配信はお休みしますが、平日毎朝の「Daily Brief」は変わらずお届けします。

週に一度の「The Company」は、毎回ひとつの注目企業の「いま」を深掘りしてきました。ゴールデンウィーク明けからは新しいシリーズをお届けしますが、これまで配信してきたバックナンバーはすべてブラウザでお読みいただけます(要ログイン)。

気候変動を食い止めるには、再生可能エネルギーへの移行が必要不可欠であることに疑問の余地はありません。ただ、自分が毎日使っている電力がどのように発電され、どこから来ているかを知っている人は少ないのではないでしょうか。こうした電力供給のいわば「ブラックボックス化」に風穴を開けようとしているのが、英国のオクトパス・エナジー・グループOctopus Energy Group)です。

オクトパスは持続可能性の追求をミッションに掲げており、販売する電力はすべて再生可能エネルギー由来のものです。ガスについては「グリーン・ガス」と呼ばれるバイオメタンガスではありませんが、再生可能エネ分野への投資などでカーボンオフセットされています。また電力とガスの小売りだけでなく、発電や電気自動車(EV)充電設備の運営および関連サービスの提供、インキュベーター事業など多様なビジネスを展開しているのです。

Image copyright: Octopus Energy

同社はエネルギー供給を最適化するための独自の人工知能(AI)プラットフォームクラーケン(Kraken)」を武器に順調に事業を拡大し、2016年の設立からわずか数年で、英国で5位のエネルギー企業に成長しました。また、2020年末には東京ガスと合弁を設立することを決め、昨年11月からは日本でも試験的にサービスを展開しています。

オクトパスが消費者の支持を集めるのは、環境への徹底したこだわりを掲げているためです。闇雲に低価格を追求するのではなく、「公正かつ持続可能」な価格設定をモットーにシェアを伸ばしてきました。英国以外での事業では100%再生可能エネというわけではありませんが、どの国でも必ず再生可能エネルギーだけのプランを提供しています。

昨年には、環境活動家として知られる米国のアル・ゴア元副大統領が会長を務める投資ファンド、ジェネレーション・インベストメント・マネジメント(Generation Investment Management)から、6億ドル(771億円)の資金調達を受ける契約を結んで話題になりました。また、この年には持株会社のオクトパス・グループ(Octopus Group)がBコープ(B Corp)認証を取得しています。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 330万件:世界全体の顧客数。うち英国は310万件
  • 27万2,408トン:2018〜22年にオフセットした二酸化炭素(CO2)の総量。ロンドン〜ニューヨーク間の直行便33万便分の排出量に相当

UK’S ENERGY MARKET

英国の電力市場の現状

英国では1990年から段階的にエネルギー部門の分割が進められ、1990年代後半には電力・ガスの小売りが自由化されました。しかし、2010年代半ばまでは「ビッグ6(Big Six)」と呼ばれるエネルギー大手6社が、市場シェアの9割超を握るという寡占状態が続きます。

一方で中小の独立系事業者も徐々に力をつけており、電気代やガス代の比較サイトが普及したことも手伝って、大手のシェアは現在では6割を割り込んでいます。

しかし、2021年に入って原油・ガス価格が徐々に上昇したことでエネルギーの卸売価格も上がり、小売価格に一部上限が設けられている英国では、各社が原価割れで電力・ガスを供給する事態が起きました。同年11月には業界7位のバルブ・エナジー(Bulb Energy)が経営破綻するなど、昨年初めから今年3月までに破綻に追い込まれたエネルギー企業は30社に上ります。

BRIEF HISTORY

オクトパスの歴史

2015年:起業家のグレッグ・ジャクソン(Greg Jackson)がオクトパス・エナジーを立ち上げる

2017年:EV充電事業に参入

2019年:英国の顧客件数が100万件を突破。顧客数は2017年の10万件からわずか2年で10倍に増えている

2019年4月:ドイツのスタートアップの4ハンドレッド(4hundred)を買収して国外に初進出。ドイツでは翌年からサービスを提供している

2020年12月:評価額が20億ドル(2,652億円)を突破。ダブルユニコーンの仲間入りを果たす

2021年2月:オクトパス・グループがBコープ認証を取得

2021年11月:日本で試験展開開始

Image copyright: Greg Jackson, Founder & CEO Octopus Energy

ENERGY-SAVING TIPS

節電のためにできること

英国ではエネルギーの小売価格に上限が設けられていますが、今年4月の改定では上限額が54%も引き上げられ、大きな騒ぎになりました。4月には契約する電気・ガス会社から1年間の料金のおおよその見積もりが送られてくることが多いのですが、昨年から続く原油価格の上昇に加え、ロシアのウクライナ侵攻を受けたガス価格の急騰で、電気代もガス代も天井知らずの値上がりが続いています。

こうしたなか、ネットではさまざまな節電方法が紹介されています。猫を飼って湯たんぽになってもらうといったようなちょっと変わったアイデアもありますが、参考までに英国最大手のブリティッシュ・ガス(British Gas)が推奨する節電ポイントをいくつか確認しておきましょう。

📺 スタンバイモードではなく電源を切る。電子デバイスはスタンバイモードでも電力を消費しています。個々のデバイスの消費電力は微量でも、ちりも積もれば山となるで、テレビやゲーム機、電子レンジ、スマートスピーカー、コンピュータのモニターなど家中にガジェットがあふれている状態では、これに気をつけるだけでかなりの節電になるそうです。

💡 LED電球に替える。英国では平均的な世帯の消費電力に占める照明の割合は約15%に上ります。LED電球は同じ明るさのハロゲン電球と比べて年間の電気代が1〜4ポンド(168〜671円)程度安いため、家の明かりをすべてLEDにすれば電気代がかなり低下するはずです。また、照明だけでなく家電製品を購入する場合は省エネ性能にも気を付けるようにしてみましょう。

📱 デバイスの充電頻度を減らす。寝る前にほぼ無意識にスマートフォンやタブレット端末の充電をしていませんか。もちろん外出中にバッテリーがゼロになってしまうのは困りますが、残量が十分であれば毎日充電しなければならないということはありません。また常に満充電の状態だとバッテリーに負担がかかるので、充電が終わったら早めに充電器から外した方がいいそうです。

🌡 暖房の設定温度を下げる。英国では冬季を中心に暖房費がかなりの金額になります。このため、電気・ガス代が大きく値上げされると就寝時用の靴下の売り上げが伸びるという冗談のような話もあるほどです。古い家屋では機密性を高める工夫をする、カーテンを断熱性のものにするといったことも、節電に役立ちます。

👕 洗濯機や食洗機はいっぱいにしてから使う。入れすぎはよくありませんが、許容量ぎりぎりまでいっぱいにして使う回数を減らしましょう。

ONE ⚽️ THING

ちなみに……

Image copyright: Reuters/Matthew Childs

イングランド・プレミアリーグのアーセナルFC(Arsenal FC)は2018年、本拠地エミレーツ・スタジアム(Emirates Stadium)に大規模な蓄電システムを導入し、消費電力をすべて再生可能エネルギーに切り替える計画を明らかにしました。ここで再生可能エネを供給するパートナーに選ばれたのがオクトパスです。

この蓄電システムは、収容人員6万人のエミレーツ・スタジアムで1試合に使われる全電力を賄えるだけの容量があり、ピーク時ではなく電力が安い時間帯を選んで充電する仕組みになっています。1試合の消費電力は、平均的な世帯2,700世帯が2時間で使う電力の総量に等しいそうです。

ロンドンの一部のエリア限定ですが、オクトパスには一般家庭向けにもエミレーツ・スタジアムと同じ電力を届けるアーセナル・グリーン(Arsenal Green)」というプランがあり、なかなか人気なようです。

今日の「The Company」ニュースレターは、岡千尋、年吉聡太が担当しています。

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