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Africa:アフリカンEVの挑戦──Max

ラゴス拠点のMAXが掲げる目標は、配達員やギグエコノミーのドライバーが乗り物をより簡単に手に入れられるようにすること。そのために彼らが選んだのは、二輪のEVでした。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

世界ではますます多くの電気自動車(EV)が道を走るようになっています。アフリカも例外ではありません。しかし、欧米のEV市場は自動車中心であるのに対し、アフリカで一般的なのは電動バイクやトゥクトゥク(三輪自動車)です。

これにはいくつか理由がありますが、アフリカで流通している自動車のほとんどが輸入車である点が挙げられます。中古のわりに高価なうえに最新のクルマと比べると燃費が悪く、定期的なメンテナンスも必要です。その結果、安価で耐久性に優れ、悪路や交通渋滞のなかも移動しやすいオートバイがアフリカのモビリティ市場の最大かつ急成長中の部門になったと、アフリカのエネルギー転換に取り組むシンクタンクEnergy for Growth Hubでリサーチディレクターを務めるローズ・ムジート(Rose Musito)は指摘します。

国連環境計画(UNEP)によると、二輪車やトゥクトゥクは自動車よりも燃費がよい一方で、台数が非常に多く利用頻度も高いので、結果としてアフリカではその二酸化炭素排出量の合計が自動車を上回る可能性があるとされています。この点からも、電動バイクは気候変動対策のターゲットとしてはうってつけと言えるでしょう。

さらに、同じく二輪・三輪のEVが積極的に導入されている中国からバッテリーを輸入したり、米国やヨーロッパ、アジアから中古の電気自動車を調達してバッテリーをアップサイクルしたりなどすれば、電動バイクは自動車に比べて現地での製造が比較的容易かつ低コストであるというメリットもあります。自動車にかけられる高い輸入関税を回避できるので、最終的に電動バイクと従来のバイクの価格差はほんの数百ドル(数万円)です。これは、ガソリン車と電気自動車の価格差に比べればわずかな差と言えます。

アフリカでは現在、数十社のスタートアップが二輪・三輪のEV開発に取り組んでいます。そのひとつであり、特に配達員やギグエコノミーのドライバーが乗り物をより簡単に手に入れられるようにするという目標を掲げるラゴス拠点のMetro Africa XpressMAX)は、その目標の中心に電動バイクを据えています。

CHEAT SHEET

さくっと業界分析

💰 どんな可能性が?:自動車は二酸化炭素の排出や大気汚染の大きな要因です。それゆえ、アフリカでは多くの政府がEVメーカーや購入者に対して税制上の優遇措置を設けています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の高騰で、EVは経済面でもより魅力的な選択肢となりました。

🔌 課題は?:EVは従来の乗り物よりも初期費用が高いほか、電池のグローバルサプライチェーンは複雑で混乱しやすい傾向にあります。また、ドライバーが抱く航続距離への不安を克服するには充電ステーションの普及が求められますが、現状ほとんどの国ではそうした充電網は存在していません。さらに電気自体も高価かつ安定的な供給がなされない傾向にあり、政府がEVの普及を望むのであれば電力網の改善も必要になるでしょう。

🔧 ロードマップは?:輸入コストを低く抑える方法のひとつとして、EVを現地で組み立てることが挙げられます。そのためには、地元の運転習慣やニーズを理解するデザイナーやエンジニアに会社が投資しなければなりません。また、リースや保険料の割引など、顧客が値段の高さから購入を敬遠することを防ぐための資金調達上の工夫も必要です。

🌍 ステークホルダーは?:黎明期にあるアフリカのEV市場には、政府の支援が必要です。より多くの国がお役所仕事をやめ、税制や輸入関税の面でEVに例外措置をとり、研究開発や充電インフラに投資しなくてはなりません。また、欧米からアフリカに対して行なわれる気候変動関連援助の面でも、EVの重要度を上げる必要があるでしょう。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 〜1,500万台:アフリカで使われているバイクや三輪自動車の台数
  • 0.05%:大陸最大の自動車市場を誇る南アフリカの乗用車販売台数に占めるEVの割合(2020年)
  • 7億2,100万トン:アフリカでEVが普及した場合に2050年までに回避できる炭素排出量。風力発電機20万台分を建設した場合の削減量に相当
  • 50社:二輪・三輪のEV開発に取り組むケニアのスタートアップの数(国連環境計画[UNEP]調べ)
  • 1億ドル(約127億1,132万円):アフリカの自動車販売台数に占めるEVの割合を2027年までに10%に増やすために、国際機関や支援団体から必要な年間資金
  • 25%:電動バイクが従来のバイクと比較して1ヶ月あたり節約できる維持管理費(Metro Africa Xpress[MAX]調べ)
  • 1.5〜1.8:MAXがリースするバイク1台につきストックするバッテリーの数(ドライバーが充電を待たずに切れたバッテリーを交換できるようにするため)

THE CASE STUDY

ケーススタディ

  • 企業名:Metro Africa Xpress(MAX)
  • 創業年:2015年
  • 本社所在地:ラゴス。 ナイジェリアとガーナの8都市に350人のスタッフを擁するほか、東アフリカやエジプトにも進出予定
  • 創業者:Adetayo Bamiduro、Chinedu Azodoh
  • 最新の評価額:非公開

MAXは最初からEVの会社として設立されたわけではありません。同社が目指したのはドライバーが自分の乗り物を所有しやすくして収入を増やせるようにすることで、その目標はいまも変わっていません。同社の主力は、特にバイクを対象としたリース・トゥ・オウン(一定期間のリース後に所有できるようになる仕組み)型の金融商品です。

しかし、創業者で最高経営責任(CEO)のアデタヨ・バミドゥロ(Adetayo Bamiduro)は、ひとつだけ問題があったと振り返ります。それは、ほとんどが中国からの輸入に頼っていたバイクを顧客が嫌ったことでした。こうしたバイクは航続距離が短く、重い荷物を積みながら走るのも苦手で、さらにメーカーもなかなか改良を加えてくれなかったといいます。

これに対するバミドゥロの解決策は、自分でバイクをつくることでした。その結果、最も簡単に製造できるバイクは地元で調達した部品と海外から輸入したバッテリーを用いた電動バイクであることがわかったといいます。

同社の最新モデルである「M3」はサスペンションが強化され、バッテリーの航続距離は最長100マイル。さらに携帯電話充電用のUSBポートもついています。価格は約2,000ドル(約25万4,194円)で、同クラスのガソリン駆動のバイクに比べて初期費用は高額です。一方で、毎月のガソリン代と維持費が安いので、2〜3年で価格差は相殺されるとバミドゥロは言います。

バミドゥロ曰く、現在MAXが保有する約8,500台のバイクのうち、電動バイクは約600台に過ぎません。それでも、数カ月前に比べれば数百台も増えています。同社は2021年12月にプライベートエクイティで調達した3,100万ドル(約39億4,000万円)を使って中国からバッテリーを輸入し、ナイジェリアで独自のバイクを組み立てているのです。同社は、今後2年間で保有する車両の半分を電気自動車にすることを目標としています。

MAXがほかのEVメーカーに対してもつ優位性としてバミドゥロが挙げたのが、同社のデータベースでした。MAXは1万3,000人以上のユーザーの運転パターンを把握し、車両の設計や充電ステーションの配置を決定に生かしているといいます。

IN CONVERSATION WITH

ファウンダー曰く……

アデタヨ・バミドゥロはMAXの創業者でCEOです。以下、彼とのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

──なぜいま、アフリカの多くのドライバーがEVに乗り換えているでしょうか?

化石燃料の価格は高騰しています。大気汚染の問題以外の面でも、EVはドライバーにとってうってつけなのです。モビリティ分野の二酸化炭素排出量を削減し、電動モビリティに素早く移行することは、アフリカ全体にとっても得策と言えます。

世界的に電動化が進んでいるいま、この技術を利用しない理由はありません。経済的にも理にかなっているのです。

──EVの普及を阻む最大の要因は何でしょう?

政治的行動の不足です。インフラ整備に使える資本を確保するために、多くの取り組みが必要でしょう。私たちの顧客であるプロドライバーにとって航続距離への不安は大きな意味をもっており、信頼できる充電網の確立が求められています。

また、運転体験は優良以上のものでなければなりません。電動バイクが故障したり充電切れになったりしていたら、ドライバーは乗り換えようとしないでしょうから。

──サプライチェーンの問題は?

2万個のバッテリーをすぐに確保しなくてはなりません。EVを大規模に供給しようと考えたとき、特にこの断片化した世界のサプライチェーンはまともではありません。パンデミックと紛争によって、グローバル化の恩恵がどんどん後退していくのを私たちは目の当たりにしているのです。とはいえ、EVが未来であることに疑いの余地はないでしょう。

🎵 今週の「Weekly Africa」は、エジプトのUmm Kulthumによる「Enta Omri」を聴きながら、カイロ在住の気候変動担当特派員、Tim McDonnellがお届けしました。

ONE 🛥️  THING

ちなみに……

電動化されているのはバイクだけではありません。オランダのスタートアップ・Asoboはビクトリア湖電動漁船導入しようとしています。同社の目標は、今後5年間でディーゼルボート5,000隻のエンジンを電動モーターに置き換えることです。

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