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Obsession:で、ETFってなに?

この15年あまりで市場を席巻しているETF(上場投資信託)。その特徴や仕組み、そしていま問われているポイントをまとめました。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

週に一度、夜にお届けする日本版ニュースレター「Obsessions」では、グローバル版の人気シリーズ「Obsessions」の翻訳のほか、力のこもったレポートやインサイトをお送りしていきます。

上場投資信託Exchange Traded FundETF)は、株と同じように取引可能で投資信託のように機能する金融商品です。ETFは株価指数やコモディティ価格などと連動するようにつくられており、過去15年ほどで金融市場を席巻しました。

ETF投資の拡大は、特定の企業に投資するのではなく、幅広い資産を保有する「パッシブ投資(passive investing)」の台頭という大きな流れの一部でもあります。バンガード・グループ(The Vanguard Group)の創業者ジャック・ボーグル(Jack Bogle)はパッシブ投資を強く推奨したことで知られており、資産運用をしたいと望む人たちの間でインデックスファンド(index fund)の人気が高まったのも、パッシブ投資が支持されたためです。

インデックスファンドと同様に、ETFも多種多様な資産をまとめて購入することができ、手数料も低く設定されています。両者の違いは売買の仕組みで、ETFは上場しているために市場で自由にリアルタイムでの取引が可能なのに対し、インデックスファンドは非上場でこれができません。ボーグルは投資は一度買ったらそのポジションをホールドし続けるべきとして、トレーディングには基本的には反対でした。ETFは彼のこの信念に反する金融商品なのです。

ETFは頻繁な売買を想定した商品ではないためパッシブ投資の一種だと考えられていますが、個人による株式投資が手軽になるにつれ、ETFの人気も爆発的に高まっているのは偶然でありません。ETFはインデックスファンドとの類似性にもかかわらず、簡単にショート(売り)できるという特徴も持ち合わせています。それでは、ETFがパッシブ投資とは言えない理由を考えてみましょう。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 8,553本:2021年12月時点での世界のETFの総数
  • 10兆ドル(1,275兆9,000億円):同時点でのETFへの投資総額
  • 16%:ETFの標準偏差が1増加することで引き起こされる株式のボラタリティティの増加幅
  • 1億1,100万株:世界最大のETFであるステート・ストリート(State Street)の「SPDR S&P500 Trust ETF」の1日当たりの株式取引量

EXPLAIN IT LIKE I’M 5!

これがETFだ!

A cartoon bear keeps stealing a picnic basket.
Image copyright: Giphy

まず、ETFの発行体(バンガードやチャールズシュワブ[Charles Schwab]のような資産運用会社)が、現物株の集合(バスケット)やコモディティに基づいたETFを発行すると決めます。バスケットは、米国経済に最も大きな影響を与える企業500社の株価を追跡するS&P 500のような株価指数をモデルにした概念です。世界には非常に多くの株価指数があり、運営元は相場の値動きを捉えるために、どの企業を指数に加えるかを常に吟味しています。

発行体となる資産運用会社は次に、新たなETFへの「指定参加者」(証券会社のようなブローカー)を募ります。参加者は運用会社に対して原資となる資産を拠出して、引き換えにETFの受益権を得ます。例えば、S&P 500と連動するETFを発行する場合、発行体となる運用会社はブローカーから500社の現物株を受け取るのです。証券会社はこうして手にしたETFを一般の投資家に販売します。

では、ETFの買手が見つからず、ブローカーが販売を停止するという決断を下すとどうなるのでしょう。ETFの構造は非常に複雑で、多くの人が一度に売ろうとすると取引が停止する可能性があります。専門家は、小規模もしくは流動性が低い株式で構成されるETFでは、こうした状況で問題が生じるリスクが高いと警告しています。

FUN FACT!

生みの親は物理学者

ETFを考案したといわれるネイサン・モスト(Nathan Most)は大学で物理を専攻し、第二次世界大戦中は海軍に所属して、潜水艦の水中音響の割り出しに取り組でいました。金融の世界に足を踏み入れたのは戦後で、食用油の貿易会社で倉庫の受取表の処理をしていた経験からETFを思いついたそうです。

BRIEF HISTORY

ETF小史

1989年:アメリカン証券取引所およびフィラデルフィア証券取引所で初のETF取引が計画されるが、シカゴの裁判所はETFは先物で、取引は証券取引所ではなく先物取引所で行わなければならないとの判断を下す

1990年:トロント証券取引所で世界初のETFとなる「Toronto 35 Index Participation Fund(TIPS35)」の取引が始まる

1993年:ステート・ストリートが「SPDR S&P500 Trust ETF」を発売。米国初かつ最大のETFで、現在も活発に取引されている

2009年:サブプライム住宅ローンに端を発する金融危機の影響で萎縮する投資家を呼び戻すため、米金融業界はETFのマーケティングを強化するようになる

2010年:5月6日に米国市場で36分間に及ぶ「フラッシュクラッシュ(flash crash、株式市場や為替市場で相場が瞬間的に急落する現象)」が起きる。これを巡っては、ETFの普及が一因と考える専門家もいる

CHARTED

チャートでみる

ETFへの投資は過去15年ほどで急増しており、金融危機前は1兆ドル(128兆円)に満たなかった投資総額は現在では約10兆ドル(1,279兆円)にまで膨らんでいます。

ONE BIG QUESTION

いま問われていること

A soda is being poured into a glass.
Image copyright: Giphy

インデックスファンドやETFは、特定の企業の業績に賭けるのではなく市場全体をカバーできる点で優れています。これは特に個人投資家にとっては朗報でしょう。なぜなら、個人投資家は個別株への投資では損失を出す傾向が強いためです(ゲームストップ[GameStop]株騒動で明らかになったように、Redditの住人たちは例外のようですが…)

一方で、多くの人が全体を少しずつ所有している場合、市場競争のインセンティブが失われるかもしれないと指摘する経済学者もいます。これは「共有権(common ownership)」と呼ばれる考え方で、経済学では盛んに研究が行われています。

例えば、コカ・コーラが製造を効率化する技術を開発し、商品価格を下げて、ペプシコから市場シェアを奪い返したとしましょう。これは消費者だけでなく、コカ・コーラの株主にも嬉しいニュースです。しかし、誰もがETFやインデックスファンドに投資する時代では、コカ・コーラの大株主はペプシコの大株主でもある可能性が高くなります

業界全体の“共有”が進むと、投資家は自分が投資する企業に対して競争を求めなくなることが予想されます。市場でいま起きているのはまさにこうしたことだと結論付ける研究論文はたくさん存在しますが、すべての経済学者がこの議論を受け入れているわけではありません、

今日のニュースレターはWalter Frick、Elizabeth MacBride、Morgan Haefnerがお届けしました。日本版は岡千尋と年吉聡太が担当しています。

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