Skip to navigationSkip to content

Forecast:クリプト、脱炭素化の道

イーサリウムでは間もなく「The Merge」と呼ばれる移行計画が実施されますが、これによりCO2排出量が99.5%削減されるともいわれています。クリプトと脱炭素の関係を探ります。

Decarbonizing crypto
Image copyright: Daniel Zender
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published

ニュースレター「Forecast」では、グローバルビジネスの大きな変化を1つずつ解説しています(これまでに配信してきたニュースレターはこちらからまとめてお読みいただけます)。

ビットコインをはじめ、ほとんどの暗号通貨が「エネルギー浪費」に与しているのは間違いありません。世界中の「マイナー」は新しいコインを生成しようとコンピュータの艦隊を率い、互いに競い合っています。彼らは24時間休みなく働き、できるだけ多くのコンピュータを駆動しようとして──その結果、ビットコインのマイニングだけで電力はフィンランド一国分を消費し、CO2排出量はロンドン都市圏に匹敵規模に達しているのです

クリプトは、その性質上「非中央集権的」なのを旨としているため、各国政府が規制しCO2排出量を管理するのは困難です。しかし、ビットコインをはじめとするクリプトコミュニティにとっても、脱炭素化によるメリットは少なくありません。それによって、なにより価格が安定するほか、個人にとっても金融機関にとっても「通貨」として受け入れられやすくなるからです。

BITCOIN’S THIRST FOR ENERGY

チャートでみる

いまでこそ落ち着いているものの、いわゆる「ビットコインブーム」によってマイナーが増え、この分野における電力消費量は急増しました。

ケンブリッジ大学による試算は、マイナーの多くが使用しているマシンや電力料金の平均値などの推定値に基づいていますが、電力を大量に消費する他セクター(例えば金の採掘など)と比較すれば、微々たるものだといえます。しかし、暗号通貨に実際の用途がほとんどないことを考えると、その消費量は注目すべきでしょう。

THE PATHS TO LOW-CARBON CRYPTO

低炭素への道

デジタル通貨を脱炭素化するための取り組みは、一般的に3つのカテゴリーに分類されます。

☀️ 新しいエネルギー源に頼る。昨年4月、決済プラットフォームを運営するSquareは、ビットコインが「社会により多くの再生可能エネルギーを配備することを可能にする」とする論考(pdf)を発表しました。が、この主張には、いくつか問題があります。まず、ビットコインがなくても、太陽光発電や風力発電はすでにかなり普及しており、価格も安くなっている点。2つ目に、マイナー間の競争が激化するなかで、クリーンな電力が配備されるのを待つ余裕のある人はほとんどいないという点。とはいえ、自然エネルギーをはじめとする低炭素エネルギー源のコストが下がれば、より多くのマイナーが安価なグリーン電力を利用できるようになるのは間違いありません。

💵 カーボンオフセット。カーボンオフセット仲介業者と提携し、カーボンニュートラルな暗号通貨を提供する暗号通貨取引所が増えています。仲介業者の中には、暗号通貨をオフセットの支払いとして受け入れるところもあります。しかし、残念なことにこれらオフセット市場はルールメイキングが不完全なままで、意図的な虚偽表示や会計ミスも横行しています。「ムーディーズ」のようなオフセット格付けサービスを目指すロンドンのスタートアップ、Sylvera(シルベラ)が2021年5月に行った調査によると、その約半数が約束通りの成果を上げていないことが判明しています。

💻 「マージ」すること。最も有望な解決策として挙げられるのが、これまでのマイニングをより低エネルギーな代替物で置き換えることでしょう。イーサリウムでは間もなく「The Merge」と呼ばれる移行計画が実施されますが、これによりCO2排出量が99.5%削減されるともいわれています。「統合」後の新システムでは、マイニングはエネルギーを大量に消費するサーバー群ではなく、通常のコンピュータで実施されるというのが、その根拠です。

COMING TO AMERICA

中国からの流出後に……

中国におけるクリプト事情をみてみましょう。中国は、クリプトシーンと敵対的な関係にありながらも、世界のビットコインマイニングチャートを支配してきました。しかし、昨年夏、当局は環境政策を理由に、国内の複数地域でマイナーへの電源をシャットアウトし、中国の市場シェアは急落しました。

この締め付けによって、ビットコインマイナーは、安価な電力と安定したルールのある国へと流出しました

これは、「マイナーがどこに拠点をおくか」によって地球環境への影響が変化することを示しています。もしマイナーが米国を選んだなら(Cambridge Centre for Alternative Financeによると、米国におけるマイニングのシェアは、前年の7.2%から2021年4月時点で約17%に急増)、再生可能/持続可能な電力でマイニングが実施される可能性は高くなります。一方、カザフスタンを選んだなら、電力が化石燃料から得られるのはほぼ確実でしょう。

いずれにせよ、ビットコインのマイニングネットワークが分散化すればするほど、そのCO2排出量を監視するのは困難になっていくでしょう。

マイニング企業Marathon Digital HoldingsのCEO、フレッド・ティールは、米国とカナダがマイニングの主要拠点になるとは考えていません。彼は、安価な再生可能エネルギーが利用できる場所であれば、地球上のどこにでも採掘が広がると予想しています。エネルギーは豊富でも、これまで経済的な理由で開発が進まなかったような場所にも、突如としてマイニングの拠点として開発する理由が生まれるのです。

🔮 PREDICTION

これから起こること

世界の電力網がよりグリーン化されれば、クリプトは他分野と同様に、不可避的にグリーン化されていくでしょう。前述したイーサリウムの移行はもう間もなく実施されると予想されていますが、他の暗号通貨もそれに続くかもしれません(ただし、ビットコイン愛好家に対する非公式調査によると、ビットコインに限っては近いうちに移行する可能性はないとされています)。

今日のニュースレターはTim McDonnell、John Detrixheがお届けしました。日本版の翻訳は年吉聡太が担当しています。

📬 今週も、夜のニュースレターをいつもより遅い時間に配信しています。配信時間についてのご感想をぜひメールなどでお聞かせください。

🎧 Quartz Japanでは平日毎朝のニュースレター「Daily Brief」のトップニュースを声でお届けするPodcastも配信しています。

👀 TwitterFacebookでも最新ニュースをお届け。

👇 このニュースレターはTwitter、Facebookでシェアできます。転送も、どうぞご自由に(転送された方へ! 登録はこちらから)。

こちらはQuartz Japan会員限定の有料ニュースレターコンテンツです

米国発の経済メディア「Quartz」の日本版では、いまビジネスパーソンが知るべき最新グローバルニュースを平日毎日、メールボックスにお届けしています。
  • 毎朝グローバルニュースが届く・読む新習慣
  • 夕方・週末は世界のビジネストレンドを深堀り
  • 英語版を含むウェブ上の全記事が読み放題