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Forecast:ホームフィットネス新時代、到来

ホームフィットネス産業は消滅したわけではありません。今年の夏はジムや屋外での活動が盛んになるものの、その後は“振り子”が戻ってくるとの予想も。リーダー企業を紹介します。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, a glimpse at the future of the global economy-in Japanese. ※ Quartz Japanのサービスは終了しました。詳細はこちらからご確認ください。
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
The future of at-home fitness
Image copyright: Vinnie Neuberg
ニュースレター「Forecast」では、グローバルビジネスの大きな変化を1つずつ解説しています(これまでに配信してきたニュースレターはこちらからまとめてお読みいただけます)。

新型コロナウイルスのパンデミック中には、多くの人が自宅でエクササイズを始めました。しかし、例えばペロトン・インタラクティブ(Peloton Interactive)の今年の業績を見る限り、このブームは終焉を迎えたのではないかと思っている人も多いかもしれません。

さまざまな規制が解除されたいま、人びとは再びジムに通ったりマラソン大会に参加したり、もしくは単に屋外で運動をするようになっています。旅行業界やブライダル業界と同じように、これまでの反動が起きているのです。

しかし、ホームフィットネス産業が消滅したわけではありません。業界関係者は、今年の夏はジムや屋外での活動が盛んになるものの、その後は“振り子”が戻ってくると予想しています。働き方の変化と同じように、エクササイズでも「ハイブリッド」のアプローチが始まるというのです。

パンデミックで自宅に閉じ込められた人たちに向けて、スポーツインストラクターたちはデジタルコンテンツを提供するようになりました。ジムがメンバー向けにライブストリーミングをするといったシンプルな形態もありましたが、それとは別に、一部の企業は自宅でのトレーニングをさらに進化させています。特に有名なのはペロトンのサブスク型フィットネスバイクですが、ルルレモン・アスレティカ(Lululemon Athletica)のスマートミラー「Mirror」や、自宅にジムの環境を再現できる筋トレマシン「Tonal」のようなプロダクトも登場しました。

また、ウェアラブルの活動量計「Whoop」や「Oura」を使えば、自分のいる場所やタイムゾーンに関係なく、インストラクターに心拍数やワークアウトのサイクルを何回やったかを確認してもらうことができます。フィットネス業界では対面と在宅のトレーニングを組み合わせたハイブリッド化が進んでいるのです。

新型コロナウイルスの感染拡大が再発する可能性もあるという不安定な状況で、業界大手であってもどちらの方向に突き進むか決断を下すのは、まだ難しいようです。スポーツ用品を手がけるブルックス・スポーツ(Brooks Sports)の副社長カーソン・キャプララ(Carson Caprara)は、「両者の“結婚”という形になるでしょう」と話しています。

A weight lifter works out at home in front of a screen.
Image copyright: Tonal
Tonal’s home gym.

THREE ERAS OF FITNESS

ジムの歴史、3つの時代

  1. 米国初のジムは、1825年に古典学者のチャールズ・ベック(Charles Beck)が開設した運動場だと言われています。以来、ジムの価値は広さとそこに置かれている器具によって決まると考えられてきました。また、会員の数を増やしたければ店舗を増やせばいいというのが業界の常識だったのです。
  1. 2010年代になると、特定のエクササイズに特化したブティック型のフィットネススタジオが急増します。空間的な広さやトレーニングマシンの種類よりも、個性が重視される時代になったのです。また、提供するエクササイズの種類やブランド以上に、カリスマ性があってやる気にさせてくれるインストラクターの存在がユーザーを引きつけるようになります。暗闇の中でバイクを漕ぎ続ける「ソウルサイクル(SoulCycle)」や、日常生活の動きを高い強度で行う「クロスフィット(CrossFit)」といった新しいワークアウトがメインストリームに躍り出ました。
  1. 物理的な場所が重要でなくなるというフィットネスの新たな潮流は、パンデミックによってさらに加速しています。ジムが果たしてきた役割が消滅したわけではありませんが、相互接続性とカスタマイズできることが重視されるようになっているのです。自宅でもジムでも外出先でも、好きなときに好きな強度でワークアウトをしたいというユーザーのニーズを満たすことが求められています。

COMPANIES TO WATCH

注目の企業/製品

  • 🚴‍♀️ Peloton:家庭用フィットネスバイクの代表格。製品は高額であるにもかかわらず、パンデミック中には大きく売り上げを伸ばした。ただその勢いを維持するのは難しいようで、先にはハードウェアからアプリ経由のデジタルコンテンツへと軸足を移す方針を明らかにしている。
  • 🪞 Mirror:スポーツウェアブランドのルルレモンが買収したことで一躍有名になったエクササイズ向けの鏡。オリジナルのコンテンツに加え、さまざまなワークアウトを提供するためにブティックジムと契約を結んでいる。
  • 🎮 Zwift:フィットネスのゲーミフィケーションの一例。ユーザーは仮想世界のコースで他のプレイヤーたちと自転車レースを楽しむことができる。
  • 📣 Future:サブスク型のフィットネスアプリ。パーソナルトレーナーが付き、ユーザーのスケジュールや環境に合わせたワークアウトの特別メニューを作成してくれる。

🔮PREDICTIONS

今後の見通し

フィットネス業界のニュースなどを配信するフィット・インサイダー(Fitt Insider)の共同創業者ジョー・ビナーレ(Joe Vennare)は、「ジムやスタジオはエクササイズをしたいと思っている人たちが集う場所ではなくなります。むしろフィットネスのエコシステムをつなぐ軸となり、新たな集合を構築していくようになるのです」と言います。

「この集合には、栄養学や健康関連のデータ、メンタルヘルスといったものも含まれます。ルルレモンのようなスポーツアパレルブランドアップルに代表されるテック大手が、自社のエコシステムにエクササイズを組み入れるようになっている現在、フィットネス企業というくくりそのものが再定義されようとしています」

ビナーレはまた、柔軟かつカスタマイズ可能な選択肢が増えることで、エクササイズ人口が拡大すると予想します。わたしたちはパンデミックで健康により気を使うようになりましたが、疾病対策センター(CDC)の報告書によれば、米国民の4分の1は座りがちな生活を送っており、十分な身体活動をしていません。

ビナーレは「ゲームから仮想現実(VR)、屋外での活動、オムニチャンネルの選択肢、メタバースまで、すべてが関わってきます」と説明します。「さまざまな人たちがこうしたものに触れ、フィットネスの旅を始めてもらうようにするためには、さらに多くの魅力的なソリューションが必要なのです」

フィットネスアプリ「Future」を提供するフューチャー・リサーチ(Future Research)の最高経営責任者(CEO)リシ・マンダル(Rishi Mandal)は、コミュニティの一員であるという感覚はセールスポイントになるが、実際に重要なのはバランスだと話します。成功という言葉からは、ユーザーがひとりで黙々と汗をかいているという情景を想像するかもしれません。しかし、ソーシャルな体験が求められているのであればそのイメージを切り替えることも可能なのです。

マッキンゼーのアソシエイトパートナーのスコット・ヘイトン(Scott Hayton)はフィットネス業界に関するリポートのなかで、FitbitであろうがStravaであろうが、個人に合わせたワークアウトを作成する上では、コネクテッドデバイスとソフトウェアという組み合わせが役に立つだろうと書いています。

「前日にきちんと眠れなかったとき、フィットネスアプリやスマートバイクが睡眠データを取得し、ワークアウトを始めると自動的に睡眠不足の人のためのメニューが提供されるというような状況を想像してみてください」と、ヘイトンは述べます。「もしくは、例えば冷蔵庫が『きょうはコーヒーを飲むのは止めておきましょうね』と教えてくれるのです」


今日のニュースレターはTiffany Apがお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

ONE 🛀 THING

ちなみに……

瞑想やサウンドバスなどはフィットネスおよびウェルネス市場ではまだマイナーな分野ですが、身体だけでなく精神面なども含めた全体的なケアを目指すホリスティックウェルネス(holistic wellness)が徐々に広まりつつあります。

パーソナルケアはかつて、自分ひとりか、もしくはごく親しい人とだけで楽しむものでしたが、最近ではこうした活動を理由に人が集まるようになっているようです。例えば、レメディープレイス(RemedyPlace)はカリフォルニア州ウェストハリウッドで、デートや誕生日パーティー、企業の親睦会などにも使えるウェルネスセンターを運営していますが、この施設を世界初の「ソーシャル・ウェルネス・クラブ」と呼んでいます。

創業者のジョナサン・リアリー(Jonathan Leary)は、「わたしたちは人と人とのつながりの重要性を知っています」と話します。「人とのつながりによってトリートメントの効果が高められるだけでなく、何かを一緒に楽しむことでつながりがさらに深まっていくのです」


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