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Forecast:植物肉、頭打ち

代替肉業界に、これから何が起きる? この数年で売上高も爆発的に拡大した植物肉(プラントベースミート)ですが、2021年には頭打ちとなり、現在、その伸びは緩やかです。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
ニュースレター「Forecast」では、グローバルビジネスの大きな変化を1つずつ解説しています(これまでに配信してきたニュースレターはこちらからまとめてお読みいただけます)。

ベジタリアンにとって絶好の時代がやってきました。米国のスーパーマーケットでは、ハンバーガーからソーセージ、チキンナゲットまで、「植物由来の肉(plant-based meat)」を使った商品がたくさん売られています。自分で料理をするのが面倒なときでも、マクドナルドやダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)、チポトレ・メキシカン・グリル(Chipotle Mexican Grill)を含む大手外食チェーンに行けば同様の植物肉を使ったメニューがあり、大抵はどれも美味しくできているのです。

植物肉はベジタリアンだけでなく肉を食べる人にも人気で、米国では食卓に定着した観すらあります。もっとも、これが主流になるかはまだわかりません。売上高については、この数年で爆発的に拡大したものの2021年には頭打ちとなり、現在は増加傾向にはあるもの伸びは緩やかです。

目新しさが薄れたということも、あるかもれしれません。数年前に発売された「インポッシブルバーガー(Impossible Burger)」は本物の肉にそっくりの質感や色味で、大豆プロテインにココナツオイルなどで風味を付けただけとは信じられないくらいでした。ただ初めて食べたときには衝撃を感じたとしても、慣れてしまえばただのハンバーガーで、値段が高いだけでなくカロリーは普通の肉とほとんど変わりません。

植物肉のすぐ横に、半額の牛挽肉が置かれていたとしたら、植物肉を買い物かごに入れる消費者はどれだけいるのでしょうか。


BACKSTORY

植物肉のこれまで

植物由来の原料からつくられた代替肉は以前から存在しましたが(「Quorn」や「BOCA」などが知られています)、本物の肉の味や食感を忠実に再現することを目指した植物肉が注目を集めるようになったのは、2019年のことです。業界メディアによれば、この年は「プラントベースバーガーの年」と呼ばれており、バーガーキング(Burger King)が「インポッシブル・ワッパー(Impossible Whopper)」を発売したほか、ビヨンド・ミート(Beyond Meat)が新規株式公開(IPO)を果たしています。

植物肉の市場は2019〜20年だけで45%拡大し、12億ドル(約1,616億円)に達しました。米国の大手ファーストフードチェーンは植物肉を使ったハンバーガータコスフライドチキンを提供するようになり、こうした動きは欧州やアジアの一部地域でも少しずつ広がっています。特に、教育水準が高く高収入のミレニアル世代とZ世代は、植物肉を好む傾向にあるようです。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから数カ月は、在庫が豊富だったことも手伝って販売は拡大しましたが、感染拡大が2年目に突入した2021年後半には伸びは頭打ちとなり、いまもその状態が続いています。

2021年の米国の肉製品の総売上高に占める植物肉の割合は1%強でした。一部の専門家は、売り上げが伸び悩んでいるのは植物肉がニッチな製品になることの予兆だとの見方を示しています。オーガニックの肉や牧草だけで育てたグラスフェッドの牛肉のように、一部の消費者しか買わなくなるというのです。


PROS/CONS

いいこと/きになること

畜産業は大量の温室効果ガス(CO2)を排出するほか、水資源の過剰消費や森林伐採にもつながり、気候変動の主要な原因のひとつとなっています。こうしたなか、植物肉は食肉の持続可能な代替品として市場に出回ってきました。植物肉は実はエコではないと反論する人もいますが、植物肉は食肉よりも環境負荷が低いという議論は一般的には受け入れられています。また、動物に危害を与えないため倫理的な障壁も下がります。

気候変動によって大規模畜産の不確実性が拡大。そうしたなかで、植物肉は肉製品に対する消費者の需要を満たせるため、食の安全保障を巡る脅威を取り除くためのひとつの選択肢になり得るという意見もあります。

植物肉の価格は標準的な牛肉の2倍程度と非常に高額です。現在は生産量が少ないためにコストが高く、大量生産に移行してコストを下げるには、企業の投資と政府からの支援が必要になります。

植物肉は高カロリー。摂り過ぎると体に悪影響のある飽和脂肪酸やナトリウムが大量に含まれていることが指摘されています。これは、植物肉は普通の肉と比べて健康にいいという消費者の期待に対し、メーカー側は食肉になるべく近づけることを目指して製品を開発しているという”ズレ”があるために生じた問題でもあります。

米国民はハンバーガーとナゲットが大好き。ただし、大型スーパーやレストランで買える商品の種類は限られており、消費者に飽きられてしまうかもしれません。


THE PLAYERS

👀 注目のプレイヤー

  • インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)ビヨンド・ミート(Beyond Meat):植物肉の代名詞として真っ先に名前の上がる商品で、代替肉の売り上げでは常にトップ10に名を連ねる。最近では、価格面でも食肉と競うために値下げに踏み切った。
  • オムニポーク(OmniPork):香港のスタートアップ、グリーン・マンデー(Green Monday)が立ち上げたブランド。その名の通り豚肉を模した代替肉で、挽肉、ポークストリップ、ランチョンミート(ビーガンスパム[vegan SPAM]とも)などがある。アジアで一躍有名になった後、2021年に米国に上陸。スプラウツ・ファーマーズ・マーケット(Sprouts Farmers Market)とホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)の一部店舗で販売が始まった。グリーン・マンデーは「オムニシーフード(OmniSeafood)」のブランド名で、魚の切り身やクラブケーキなどシーフードの代替食品も手掛ける。
  • ガーデイン(Gardein):カナダの食品大手コナグラ・ブランズ(Conagra Brands)の植物肉ブランドで、ミートボールと冷凍食品が有名。先には”チキン”シリーズの提供を始め、フライドチキンやチキンナゲット、チキンフィレなどを相次いで市場投入している。
  • グッドキャッチ(Good Catch):植物由来の水産食品を手掛けるギャザード・フーズ(Gatherd Foods)のブランドで、商品のラインナップは魚の切り身からフィッシュフィンガー、フィッシュバーガー、クラブケーキ、フィッシュケーキまで多岐にわたる。2021年にはファーストフードチェーンのロング・ジョン・シルバース(Long John Silver’s)と共同開発した商品を発売したほか、全米のスプラウツで商品の取り扱いが始まった。

🔮 PREDICTIONS

今後の見通し

植物肉は食肉を模倣することで成功を収めてきました。代替タンパク質の普及に取り組むNPOのグッド・フード・インスティテュート(Good Food Institute)でプロジェクトマネジャーを務めるエマ・イグナシェウスキ(Emma Ignaszewski)は、「植物ベースの代替肉の市場をリードしているのは、味や食感、見た目が食肉とそっくりの製品だという事実は重要です」と話します。「消費者に選ばれるためには、美味しくなければならないのです」

代替肉市場は今後、以下のような方向に進んでいく見通しです。

  1. 肉の種類が多様化する。イグナシェウスキによれば、今年は植物ベースの鶏肉製品が相次いで発売されました。また、現時点では代替肉市場の1%でしかない代替シーフードにも注目が集まっています。
  1. 加工食品が増加する。製造技術が進化するにつれ、消費者は「ステーキからベーコン、さらには夕食のメインになれる高品質なサーモンまで」丸ごとすべてを求めるようになると、イグナシェウスキは予想します。ブラック・シード・フーズ(Black Seed Foods)というスタートアップは、植物ベースのラム肉やジビエ、ブランド肉などの開発を進めています。
  1. より自然な成分を求めて。成分表示にある「怪しげな化学物質」に対する消費者の懸念に対処するために、メーカーはより「クリーンな」レシピに取り組むようになるでしょう。例えば、カナダの食費大手メープルリーフフーズ(Maple Leaf Foods)の「ライトライフ(Lightlife)」ブランドでは、卵を含む動物由来の原材料と、マルトデキストリンやカラギーナンなどの多糖類を使用しなくなっています。また、サンダイアル・フーズ(Sundial Foods)というスタートアップは、原材料が8つの代替チキンの手羽先を開発しました。
  1. 市場参入する企業も増える。ケロッグ(Kellogg)やタイソン・フーズ(Tyson Foods)など老舗の食品メーカーがこの分野に足を踏み入れています。ケロッグは1999年にモーニングスター・ファームス(MorningStar Farms)を買収していたほか、タイソンは昨年に「レイズド&ローステッド(Raised & Roasted)」という植物肉ブランドを立ち上げました。それでも、スタートアップにも挑戦の余地は十分に残されていると、イグナシェウスキは言います。例えば、全米の牛乳販売の15%はスタートアップが手掛ける植物性ミルクが占めています。

今日のニュースレターはYasmin Tayagがお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

ONE 🌱 THING

ちなみに……

プラントベースミートの見た目や味、食感はどんどん本物の肉に近づいていますが、消費者はいつかは肉そっくりの代替肉に飽きるだろうと予想する専門家もいます。結局は一回りして、植物から代替肉をつくり出すのではなく、植物そのものを食べることを楽しむようになっていくだろうというのです。確かに、とても美味しいマッシュルームステーキがあるなら、代替肉のハンバーガーを食べたいとは思わないかもしれませんね。


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