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Africa:アフリカの眠れる巨人──Lami

大陸最大のインシュアテック企業、Lami。APIを通じて保険商品を配信するデジタルプラットフォームを提供するスタートアップの女性ファウンダーに話を聞きました。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Lami artwork
アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

アフリカにおける保険の普及率は世界で最も低く、3%未満です。世界平均の半分以下であるこの数字は、アフリカの人びとのほとんどが保険に加入しておらず、何百万人もが経済的なセーフティネットを欠いていることを意味しています。

アフリカで保険業界が苦戦している理由はいくつかありますが、特に足かせとなっているのは商品開発の後れです。アフリカでの保険加入は複雑かつ時間がかかり、加えて保険金の請求から受け取りまでの時間も長いため保険会社には懐疑的な目が向けられています。

一方で、アフリカの人びとの保険加入への意欲は高まるばかりです。今後特に伸びると見込まれるのは年金と個人向けの生命保険で、損害保険では自動車保険が最大の功労者となっています。アフリカでは中間層が成長を見せていることに加え、パンデミックや自然災害、政治的混乱などによる経済リスクが高まっていることがその理由です。

こうした需要の増加に対応するため、アフリカの保険業界には変革が必要だと専門家たちは話します。アフリカではスマートフォンやインターネットに加え、フィンテックが急激に普及していることから、保険業界もデジタルソリューションに注目。「デジタル保険」や「インシュアテック」(insurance[保険]+technology)とも呼ばれるこうしたソリューションは、保険をより身近で手頃なものにするでしょう。顧客は保険料の支払いや証券の確認、保険料の請求を待ち時間の長い電話口ではなくアプリで行えるようになるのです。

アフリカの眠れる巨人“とも呼ばれる保険業界が、目を覚まし始めています。

CHEAT SHEET

ビジネスとしての可能性

💡 期待される理由:人口の97%が保険に加入していないアフリカは巨大な市場です。今後はテクノロジーによって大衆に手頃な価格の保険がもたらされ、正式かつ効率的な金融のセーフティネットを提供されるでしょう。

🤔 解決すべき課題:アフリカでは保険の認知度が低く、加えて従来の保険会社に対する信用も低いため、需要が低迷しています。これが市場の成長にとって大きな障壁となっているのです。

🌍 これからのロードマップ:より多くの保険会社や保険関連ビジネスがデジタルプラットフォームに参入すれば、保険の重要性に対する認識を高められるでしょう。

💰 注目すべきステークホルダー:政府の規制は大きな役割を担います。また、顧客に適切な商品を提供できるよう、より多くの保険会社や保険関連ビジネスがデジタル化を進める必要があるでしょう。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 2.8%:アフリカ全土の保険普及率
  • 680億ドル(約9兆1,941億円): 総収入保険料(GWP 、Gross Written Premium)で見たアフリカの保険市場の規模。GWPは、保険会社が元受保険契約及び再保険契約で受け取った収入保険料であり、再保険契約による出再保険料や再保険手数料を控除する前の額。アフリカのGWPは世界で8番目に大きい
  • 7カ国:アフリカの保険料の83%は、南アフリカ、ケニア、エジプト、ナイジェリア、アルジェリア、ナミビア、チュニジアからのもの
  • 70%:アフリカの保険料のうち、南アフリカに由来するものの割合。南アフリカは大陸最大かつ最も確立された保険市場
  • 54%:南アフリカで支払われる保険料のうち、生命保険が占める割合

THE CASE STUDY

ケーススタディ

企業名:Lami
本社所在地:ナイロビ(ケニア)
創業者:Jihan Abass
引き受け保険料:100万ドル(約1億3,513万円)以上

2018年にケニアで創業されたLamiは、いまや大陸最大のインシュアテック企業のひとつです。同社はAPIを通じて保険商品を配信するデジタルプラットフォームを提供しており、さまざまな保険商品を展開する保険会社とビジネスをつないでいます。

もともと2020年にB2Cモデルで保険市場に参入したLamiですが、自動車保険アプリ「Griffin」をローンチしたことを機にB2Bに軸足を移しました。その後、同社はStanbic Bankや配送スタートアップのSendy、ケニア商業銀行、オンライン小売サイトのSkyGardenなど12社以上と提携し、健康保険からデバイス用保険まで幅広い商品を提供するようになりました。現在25のアンダーライター(保険引受人)と提携して8万件以上の契約を扱っており、それぞれから手数料を受け取っています

新しい保険商品を開発した企業はLamiのAPIを利用してアプリやウェブサイトで保険を販売し、顧客側は見積もりから加入、あらゆる契約書類の受け取り、保険金の請求までをすべてオンラインで完結できます。従来の保険では加入に数日かかるのに対し、Lamiを通じた加入に要する時間はわずか数分です。また、保険金の請求から支払いまでの期間も業界平均が60~90日であるのに対し、Lamiでは1週間ほどだといいます。

2021年5月、Lamiは180万ドル(約2億4,337万円)のシード資金を調達しました。さらに2022年、同社は低所得者向けのマイクロ・インシュアランス(マイクロ保険)商品に特化したケニアのインシュアテック・スタートアップであるBluewaveを買収しています。この買収により、Lamiはマラウイとコンゴ民主共和国への参入を果たしました。

IN CONVERSATION WITH

女性ファウンダーとして

Lamiの創業者であるジハン・アバス(Jihan Abass)は、もともとロンドンでコモディティ・トレーダーとして働いていましたが、祖国に何かしらのインパクトを与えたいと考えていました。

のちにケニアに帰国した彼女は、ふとした会話からアフリカの保険業界について深く学びたいと思うようになったといいます。以下、アバスとのインタビューから、興味深い発言を紹介します。

Jihan Abass, Lami's cofounder

──Lami創業のきっかけは?

「モンバサのカフェでの会話がきっかけでした。そこの店員と話していたところ、彼女が医療保険に加入していないことを知ったんです。それを機に、なぜ人々が保険に加入したがらないのか、ふとリサーチし始めました。すると、ケニアには保険商品はあるものの、デジタルインフラが欠如していることがわかったのです」

──女性のファウンダーはアフリカのスタートアップでも多くはありませんが。

女性は得てして、必要なスキルが自身に備わっているかを疑ってしまうことがよくあります。しかし、わたしたちにはきちんと能力が備わっており、それを発揮する方法を学ぶ努力をしなくてはなりません。もっと多くの女性がSTEM分野に進出すること、そしてメンタリングスキームをもつことが大切でしょう。また、女性主導のスタートアップを支援する女性投資家を増やすことも重要です。

──誰もが保険を利用できるような世界は実現できそうですか?

わたしたちが扱う保険商品の最安値は30セントです。収入に関係なく、誰もが保険を利用できるようにしたいと考えています。最近はマイクロ・インシュアランス(マイクロ保険)の会社も買収し、市場の開拓を進めています。

INSURANCE DEALS TO 👀

保険の注目ディール

  • 2022年2月、ナイジェリア初のデジタル保険会社であるCasavaがアフリカのインシュアテック企業として過去最大の400万ドル(約5億4,083万円)のプレシード資金を調達しました。
  • 自動車保険に特化したナイジェリアのインシュアテック・スタートアップであるETAPは、4月にプレシードラウンドで150万ドル(約2億281万円)を調達しました。現在、ナイジェリアの登録車両1,200万台のうち、自動車保険に加入しているのは21%ほどです
  • さらに最近、エジプトのインシュアテック・スタートアップであるNice Deerがプレシードラウンドで100万ドル(約1億3,520万円)を調達しました。同社は保険のプロバイダーと健康保険を扱う保険会社、保険の受取人の間に入ってやりとりを円滑にしています。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、Bensoul、Sauti Sol、Nviiri The Storyteller featuring Mejjaの「Nairobi」を聴きながら、ロンドン在住のQuartz Africaコントリビューター、Priya Sippyがお届けしました。日本版の翻訳は川鍋明日香、編集は年吉聡太が担当しています。

ONE 👭🏽 THING

ちなみに……

Lamiのジハン・アバスは、アフリカで100万ドル(約1億3,520万)以上のシード資金を調達したほんの一握りの女性のひとりです。

2021年にアフリカのスタートアップが調達した資金は総額約50億ドル(約6,760億4,110万円)にものぼりますが、創業者や最高経営責任者(CEO)が女性であるスタートアップが調達した資金はその1%未満でした

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