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Forecast:どこへ行く? グローバリゼーション

パンデミックで世界が国境を閉ざし、ロシアのウクライナ侵攻は物流を滞らせている…。いま叫ばれる「グローバリゼーションの終焉」についてのこれから。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
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Image copyright: Photo illustration by Quartz
ニュースレター「Forecast」では、グローバルビジネスの大きな変化を1つずつ解説しています(これまでに配信してきたニュースレターはこちらからまとめてお読みいただけます)。

5月に世界国際経済フォーラムの年次総会でスイスのダボスに集まった世界のリーダーたちは、誰もが「グローバリゼーションは終わったのか」という問いを口にしました。簡単に言えば、答えはノーです。ただグローバリゼーションという概念が危機に瀕していることは確かで、わたしたちはその問題点を洗い出し、何が現在のような状況を引き起こしたのかを理解しておくべきでしょう。

これまで何十年にもわたり、国際的に開かれた市場とデジタルテクノロジーがグローバリゼーションを正しい方向に押し進めていくはずだと考えられてきました。グローバル化は革新的かつ有益な動きであり、最終的には誰もがその流れに従うだろうと思われていたのです。

ジャーナリストのジョージ・パッカー(George Packer)はそれがどれだけ絶対的なものだったかを説明するために、「グローバリゼーションを拒否することは日の出を拒否するようなものだった」と書いています。しかし、グローバリゼーションが全盛を極めた1990年代から2000年代初頭でも、失業者の増加や気候変動、格差の拡大といったことは無視されていました。

そして、さらに大きな問題が生じました。まず、グローバル化の影響でも特にネガティブなものへの反発として、排他的なナショナリズムが力を得るようになります。具体的には、英国のEU離脱ドナルド・トランプのような指導者の台頭西側諸国と中国の対立といったことが起きたのです。

その後、新型コロナウイルスのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻によって、グローバリゼーションが約束したはずの国境を超えたモノの移動が困難になりました(なお、さまざまな懸念が急に叫ばれるようになったのは、欧米諸国で供給不安が起きたからだということは付け加えておくべきでしょう)。

しかし、いまこの瞬間でさえも、「グローバリゼーションは死んだ」と宣言するのは時期尚早で悲観的なように思えます。一度呼び出せばもう封印できない魔人は確かにいますが(例えば「インターネットの影響」をなくすことは不可能でしょう)、経済学者のジョゼフ・スティグリッツ(Joseph Stiglitz)が指摘するように、ここでグローバル化を諦めてしまえば、その課題を理解して正していく上でまたとない機会を逃すことになります。

グローバリゼーションは摩擦のない世界という輝かしい未来を提示しました。もちろん、物理の世界と同じように現実には世界経済でも摩擦を完全にゼロにすることはほぼ不可能です。だとすれば、以前からあった摩擦だけでなく、グローバリゼーションによって生じた新たな摩擦についても、それを軽減するには何をすべきかを考えていくべきでしょう。

RUMORS OF ITS DEMISE

ちょっと考えすぎ?

グローバル化を推進してきた人たちが行き詰まりについて騒ぐのは、何もいまに始まったことではありません。過去6年間だけでも、Google検索で「グローバリゼーションの終焉(end of globalization)」という検索ワードが急増したことが何回もあります。

2016年に英国が国民投票でEU離脱を決めたときには、多くの人がこれをグローバル化の崩壊の兆候だと考えたほか、2018年にトランプ米大統領(当時)が中国に貿易戦争を仕掛けた際にも、グローバル化に逆行する流れとして警戒感が高まっています。

2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが始まると、世界経済の統合がどのように崩れていくかについて多くの予想が示されました。そして、今年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻を受けて、グローバリゼーションは終焉を迎えたという見方が最高潮に達したのです。

WHAT SLOWDOWN?

何が起きているのか?

グローバル化が停滞していることの証拠として、世界の国内総生産(GDP)に占める貿易の割合が縮小していることがよく指摘されます。ただ他のデータに目を向けると、世界経済のつながりは実は強化されているようです。

中間財の貿易は拡大。部品や素材などの貿易が増えているのは、製造業において国境をまたいだネットワークが広がっているためです。国家間の輸出入は完成品だけにとどまらないのです。

デジタル化は国際貿易を後押し。世界経済を支える通信サービスの輸出は増加の一途をたどっています。

一方で、世界のデータトラフィックは2020年には30%近く拡大し、月間230エクサバイトに達しています。この数字は2026年にはさらに3倍以上に伸びる見通しです。

🔮 PREDICTIONS

今後の見通し

では世界貿易は今後どうなっていくのでしょう。

  • 貿易に再び政治(もしくは地政学)が持ち込まれるようになる。冷戦の終結によって地政学は一時的に鳴りを潜めましたが、石油や半導体のような重要な製品の貿易に関しては、再びこうした議論が行われるようになっています。
  • デジタル貿易は拡大。デジタル関連の製品やサービスの国際的なやりとりは成長を続けています。
  • 一方で政府は警戒を強める。各国が国民のプライバシー保護のためにデータの越境移転を禁じるなど、デジタル貿易の障壁が高まっています。
  • パンデミックで世界的にテレワークが拡大。遠隔勤務が増えれば、居住地域ごとの賃金格差がわずかではあるにしても解消される可能性はあります。
今日のニュースレターはSamanth Subramanian、Ana Campoyがお届けしました。日本版の翻訳は岡千尋、編集は年吉聡太が担当しています。

ONE 🏭 THING

ちなみに……

世界銀行の元エコノミストでコーネル大学教授のカウシック・バスー(Kaushik Basu)は、グローバリゼーションへの反発で世界経済が揺さぶられていたときのことを、18世紀に起きた産業革命と比較しています。産業革命の時代には児童労働が普通に行われていたほか、工場からの煙で大気汚染が非常に悪化しましたが、人類は労働時間の制限など当時は急進的と考えられていた政策によって、こうした隘路から抜け出しました。また、経済がどのように機能するかについての理解が飛躍的に進んだことも、問題の解決に寄与しています。

バスーはブルッキングス研究所のリポートで、「1776年に発表されたアダム・スミスの『国富論』における最も重要な議論のいくつかが産業革命と重なったのは、まったくの偶然ではないかもしれない」と書いています。デジタル化されたグローバリゼーションによって取り残される人が出ないよう、研究者と政策立案者は想像力を働かせて解決策を見出していくことが重要だと、バスーは述べています。

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