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Obsession:アパレル最大手のウソを暴く

調査結果:H&Mは衣料品の「環境スコアカード」を提示していましたが、それらが消費者に誤解を招くものであること、その多くが詐欺的であることが明らかになりました。

A collage of H&M products
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
週に一度、夜にお届けする日本版ニュースレター「Obsessions」では、グローバル版の人気シリーズ「Obsessions」の翻訳をはじめとするレポート、インサイトをお送りしていきます。

ファストファッション大手H&Mは、衣料品の「環境スコアカード」を提示していましたが、それらが消費者にとって誤解を招くものであること、さらにはその多くが明らかに詐欺的であることがQuartzの調査で明らかになりました。

H&Mのオンラインストアに掲載された商品の半数以上が「(他の商品より)環境に優しい」とされていましたが、実際のところ、同社製品あるいは競合他社の同等の衣料品よりも持続可能性は低かったのです。さらにひどいケースでは、実際とは正反対のデータを示してさえいました。

今回の調査結果を機に、ファストファッション業界が自ら環境データを管理しようとする試みには、懐疑的な目が向けられることになるでしょう。新たな規制・監視の目が向けられるかもしれません。

a couple of technical issues

曰く、「現在調査中」

H&Mの売上高は現在世界第2位。年間で推定30億着もの衣服を生産していますが、その多くは売れ残ったり、あるいはすぐに廃棄されたりしています。ゆえに、H&Mは新たな排出量目標を掲げ、イメージを改善しようとしてきました。

今週月曜、QuartzがH&Mに調査結果を伝えたところ、H&Mはその後すぐに、サイトからすべての環境スコアカードを削除しています。さらに、それからまもなく、H&Mをはじめとする大手アパレル企業が結成した業界団体が、スコアカードのデータ公開を「スコア化の手法を見直す間、一時停止する」と発表しています

こうした動きを受け、国際世論においては「持続可能なファストファッションなど存在しない」という声がさらに高まっています。

今回問題になっているスコアは、業界で開発された「ヒグ・インデックス」(Higg Index)という指標によるものです。が、そもそもこの指標自体、衣料品を生産する際の“現状と比較した”影響を評価したものに過ぎません。それもあって、アパレルメーカーの多くが採用しているヒグ・インデックスは環境保護団体から厳しい批判を受けてきました。

Quartz ではH&Mに詳細を問い合わせましたが、同社からの回答は得られませんでした。H&Mからの声明によると「技術的な問題がいくつかあり、現在調査中」とのことですが、詳細は明らかになっていません。

Tipping the scorecards

スコアカードの欺瞞

問題のスコアカードについて、もう少し詳しくみてみましょう。ヒグ・インデックスの正式名称は「Higg Index Sustainability Profile」。

アパレルの世界的な業界団体であるサステナブル・アパレル連合SAC)が2012年に開発したもので、商品の環境・社会負荷を測定するものです。衣服の素材が生産される際、従来と比較してどれだけの水・化石燃料が使用されたかなどの要素が盛り込まれています。

今回のケースでは、H&Mのサイト上で、本来であれば「水使用量スコア」が-20%のドレス(つまり、平均より20%多く水を使用している)が、使用している水が20%少ないものとして表示されていました。

Hard-coding positive language

いいことしか言えない

わたしたちの調査では、H&Mのサイトでは「less」や「reduction」といったワードがハードコーディングされていたという事実も明らかになりました。

H&Mのサイトには、他のECサイトと同じく、データベースから取得される特定の商品に関するデータに付随する「プレースホルダーテキスト」がコード内に含まれています。そして、ヒグ・インデックスに関する情報を含む商品ページにおけるプレースホルダーは「最良のもの」のみが想定されていたのです。下記はそのコードの一部です。

breakdownLabels: {
waterUse: ‘less water use’,
co2: ‘less global warming potential’,
chemicals: ‘Chemicals’,
waterPollution: ‘less water pollution’,
fossil: ‘less fossil fuels use’
},

Scorecards for products

H&Mの弁明

H&Mのサイトには実に多くの商品が掲載されていますが、その大半にはスコアカードの記載はありません。記載のある衣料品が掲載されているのは、雲に伸びた女性の手と、環境保護に関するテキストが表示された特設ページです。

Screenshot of Higg Sustainability Profiles page on H&M's website
Image copyright: Quartz
This section of the H&M site listed products with Higg Index scores.

ヒグ・インデックスが高ければ、一般的な衣料品よりも環境に優しいのだろうと思いそうなものですが、実際のところ、その衣料品が「より持続可能である」ことを意味するわけではありません

わたしたちはスコアカードが記載された衣類の半数以上について調査しましたが、それらとH&Mの英国向けサイトにある他の9,600点の女性用衣類とでは、ほとんど違いはみられませんでした。

H&MはQuartzへの説明のなかで、スコアカードを表示することは、環境対策を透明化しようというコミットメント以外の何物でもないと主張しています。

「われわれは、スコアの良し悪しにかかわらず、個々の製品に関する情報を共有している。透明性は、比較可能性と説明責任の両方を生み出すため、業界全体の持続可能な変化を促すカギとなるものだ。この取り組みは、最終的にポジティブな変化をもたらすと信じている」

Crackdown on greenwashing

脱・グリーンウォッシュ

H&Mがヒグ・インデックスをオンラインストアに導入したのは、2021年6月のことでした。それ以来、ヒグ・インデックスは多くの批判に直面しています。

規制当局の監視も強まっており、加盟各社には新たなアプローチを模索する必要性も出ています。実際、今月初めにも、ノルウェーの消費者保護機関(ノルウェー消費者庁)はH&Mに対して、「MSI(Higg Materials Sustainability Index、ヒグ・インデックスの一部)をマーケティングにおいて使用する正当性を具体的なかたちで監査し、誤解を招くマーケティングを避ける」よう警告しています。

今週月曜、ヒグ・インデックスを開発した当のSACは、「消費者と接するすべての場面」におけるヒグ・インデックスの使用を停止し、データおよびその集計方法について調査すると発表しました

Changing Markets Foundationのキャンペーンマネジャーで、ヒグ・インデックスを批判するひとり、ジョージ・ハーディング-ロールズは、この取り組みは人びとを誤解させるために開発されたものだと指摘しています。

「SACは10年間、極めて汚れた(アパレル)業界をエコ色に染めようと緑のペンキを提供した。そしてこの間、測定できるはずの結果──今回明らかになったH&Mの一連の虚偽を例にとるならば、いったいどれくらいの商品がどれだけの消費者に購入され、あるいは購入されえたのか──を示していないのだ」

本日のメールは、Amanda Shendrukによるものです。日本版の編集は年吉聡太が担当しています。

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