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Weekend:インフレ下のインフラ投資

週の最後のニュースピックアップ。今日お伝えする注目ニュースは、米国のインフレへの対応から考える「インフラへの投資」。未来への投資について、いま考えておきましょう。

This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
週の最後のニュースピックアップ。今日お伝えする注目ニュースは、米国のインフレへの対応から考える「インフラへの投資」。過去を「こうしておけば」と悔やむわけではなく、未来への投資について、いま考えておきましょう。

米国では6月15日(現地時間)、米連邦準備制度理事会(FRB)がおよそ27年半ぶりとなる大幅な利上げを決定しました。30日に米商務省が公表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.6%、前年同月比で6.3%と上昇していますが、エコノミスト予想を下回っており、インフレにも鈍化の兆しがみえたともいえそうです。

しかし、インフレが落とす影はいまだ色濃く、経済は窮地に立たされています。「サプライチェーンの目詰まり」は解消できるのか? 石油・ガスは増産できるのか? ウクライナからの小麦輸出を拡大できるのか?世界経済が何かしらの好機をつかめない限り、景気後退が迫っています

何事もそうですが、インフレもまた、事前に解決できればそれにこしたことはありません。今日も続く物価上昇の原因をパンデミックやロシアのウクライナ侵攻に求めるのであれば、それらは必ずしも回避できたとはいえませんが、こと米国経済についていえば、インフレ圧力に対処できる状態にあったことは間違いありません。のちの歴史家が2010年代の米国の経済政策を振り返ってみれば、この10年で機会を逸してきたことに着目するはずです。

例えばガソリン価格の高騰は? 米国はもっと早く脱炭素化を進められたはずです。家賃は? 住宅を増やせばよかったのでしょう。サプライチェーンの混乱は? 港を整備し空港を改善すれば、事態はスムーズに進んだことでしょう。

過去10年の政策論争を振り返ると、2014年から2020年にかけて公共投資を第二次世界大戦以来の低水準にまで低下させるという決定が大きな誤りであったことが、次第に明らかになっています。2008年の金融危機からの「雇用なき景気回復」によって、FRBは緩やかな利上げを開始するまでの5年間、金利をゼロに近い水準で維持してきました。この低金利は、公共投資の魅力をさらに高めていたのです。

誤解のないように言っておくと、機会を逸したからといって、いまインフラ投資をすべきではない、ということではありません。いま建設する方が、建設しないよりはましですが、5年前に建設に着手していれば、よりよい効果が見込めたということです。

The Backstory

背景を整理する

  • 暴落の後に。2008年に住宅ローンバブルが弾けたとき、米国政府は1,000億ドル(約13.5兆円)強のインフラ投資を含む景気刺激策で対応しました。環境保護主義者、経営者、都市生活者、農家の誰もが、交通、エネルギー、通信、さらには健康・教育インフラへの支出を支持する理由を思い浮かべることができました。2015年には3,000億ドル(約40.5兆円)の追加パッケージが可決されましたが、これは誰もが十分でないと認めています。
  • 経済の「長期停滞」。 2010年代の予算配分をめぐる戦い(草の根右派運動「ティーパーティー運動」を覚えていますか?)によって、政府支出に上限が設けられました。そして、経済学者は「長期停滞」を懸念し始めたのです。つまり、グローバル化、人口増加の鈍化、テクノロジーの進歩により、投資が永久に減少するのではないかという懸念です。FRBが物価目標を達成できないことから、デフレの懸念が高まりました。ドナルド・トランプ政権下では、当時、お決まりの冗談のようになっていた(インフラに集中する)「インフラストラクチャーウィーク」の実現を求める声が超党派から上がっていましたが、結局、何も実現しませんでした。
  • そして、パンデミックがやってきた。新型コロナウイルスのパンデミックは世界経済を混乱させ、米国政府による前例のない救済措置が人びとを救いましたが、同時に、景気回復は過去40年間で最も高いインフレをもたらしました。現在、生活費の上昇に伴ってFRBは金利を引き上げていますが、ジェローム・パウエル議長は、現在のインフレの要因は自分の手に負えないものだと心配しています。米国経済にもう少し輸送能力、グリーンエネルギー、居住空間の余力があれば、こうしたプレッシャーを和らげられるのではないでしょうか?

WHAT TO WATCH FOR NEXT

注目すべき5つの動き

  1. 予算闘争、再び。インフレ率と金利が高い時期には、公共支出のコストがより明確になります。しかし、そうでなくても、民主党のジョー・バイデン大統領と共和党が半数を占める議会の間には、税金、支出、そして債務上限をめぐる争いが起こるでしょう。
  1. 金利はどこまで上がる? 現在のフェデラルファンド(FF)金利は1.58%で、過去の水準からするとそれほど厳しいものではありませんが、FRBは2023年末までに、2005年の水準である3.8%に達すると予想しています。しかし、0.5ポイントではなく0.75ポイント切り上げた今月のサプライズ利上げに見られるように、FRBは物価上昇の継続の兆候に対応し、より大きな利上げを行う可能性があります。
  1. そして、金利はどこまで下がる? 金融環境が厳しくなり、企業はコスト削減で景気後退に備えています。もし、FRBが景気後退と物価上昇スピードの鈍化を理由に利上げを一時停止すれば、長期的には中立金利を押し下げるトレンド──高齢化、技術進歩、グローバリゼーションなど──が再び優勢になる可能性があります。
  1. 現在、いくつかの投資が行われている。米議会は2021年に5,500億ドル(約74.3兆円)規模のインフラ法案を成立させました。この法案には重要な気候政策が欠けておりいくつかの無駄なものが含まれていますが、その成功と失敗は将来の投資の選択に影響を与えることになるでしょう。悪い兆候が一つあります。インフレはすでに、この資金の充てられる範囲を狭めているのです。
  1. 供給サイドの課題。さらなるインフラ構築「供給サイドの進歩主義」や「豊かさのためのアジェンダ」をめぐる議論は数多くあります。これは、生活コストを下げ、気候変動と戦うために必要なモノやサービスをより多く生産することにつながるのでしょうか? それとも、単なる一過性の流行に過ぎないのでしょうか?
今日のニュースレターは、QuartzのTim Fernholz(シニアレポーター)がお届けしました。

ONE  🚗 case study

ちなみに……

「タイムリーな公共投資」には、どれほどの効果が期待できるのでしょうか。その効果のほどを示す素晴らしい事例として、2008年の金融危機後の、米エネルギー省によるテスラへの4億5,600万ドルの低利融資が挙げられるでしょう。これは事実上テスラを救済する措置で、保守派からは政府が勝者を選ぶのかと批判されました。

しかし、結果は大成功。テスラはその後、株式を公開し融資を早期に返済。主要電気自動車メーカーのひとつとなり、他の自動車メーカーの環境対応車への取り組みに拍車をかけました。

専門家によれば、こうした手法は、EVのみならず、グリーンエネルギーやバッテリー、炭素除去プロジェクトなどにおいてイノベーションを起こすのにも役立つといいます。EVの世界市場シェアはいまや9%に近づいています。決して大きくはありませんが給油をめぐる競争も、排出ガスも少なくなることでしょう。

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