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Climate:地球に優しいビットコイン大暴落

暗号資産の下落は気候変動にとってプラス? 暗号資産とブロックチェーン技術によってお金に関するこれまでの常識は覆されましたが、特にビットコインを巡っては環境負荷が指摘されてきました。

Employees work on bitcoin mining computers at Bitminer Factory in Florence
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
Published
Image copyright: Reuters/Alessandro Bianchi
月曜夜のニュースレター「Climate Economy」では、毎週ひとつのテーマについて、世界は気候変動をどう見ているのかどんな解決を見出そうとしているかをお伝えしていきます。
※ 先週土曜よりお届けする予定だった「ニュースレター特別編・IPCCのWGIIIレポートまとめ」は、今週末7/9より配信します。

ビットコインが急落しています。6月半ばには一時的に1万9,000ドル(約256万円)を割り込み、2020年12月以来の安値を記録しました。2021年11月に付けた史上最高値の約6万9,000ドルと比べると、7カ月で3分の1以下に落ち込んだことになります。

価格が下落しているのはビットコインだけではありません。暗号資産のなかでは安全とみなされていたステーブルコインのテラUSDの大暴落は、記憶に新しいところです。

米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ各国の中銀が金融引き締めを進めるなか、投資家は価格変動リスクの高い資産を手放しており、イーサリウムなど代表的な暗号資産は軒並み下げ相場に転じています。また、暗号資産に対する規制強化の動きが強まっていることも背景にあります。

経済的な側面はさて置き、暗号資産の下落は気候変動にとってプラスなのでしょうか。暗号資産とブロックチェーン技術によってお金に関するこれまでの常識は覆されましたが、特にビットコインを巡っては、以前から環境負荷という問題が指摘されてきました。

分散型金融(Decentralized Finance 、DeFi)は社会経済を完全に変えていくと主張する人たちもいますが、これらのテクノロジーが持続可能な選択肢なのかについては、まだ答えが出ていません。それでは、環境という視点から暗号資産について考えてみましょう。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 9.33テラワット時:ビットコインが史上最高値を付けた2021年11月の1カ月でマイニングに使われた電力の総量。エストニアの年間の電力消費(8.78テラワット時、2020年)を上回る
  • 1兆767億ドル(145兆4,630億円):同月のビットコインの時価総額。世界15位の経済規模を持つメキシコの国内総生産(GDP)とほぼ等しい
  • 39%:2019年のマイニングの総電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合
  • 2万5,200ドル(約340万円):ビットコインのマイニング業者が採掘を停止もしくは縮小する理論値。ビットコインの価格がこの水準を割り込むと、マイニングにかかる電気代がそこから得られる利益を上回るため赤字になる
  • 9カ国:2021年11月時点でビットコインの取引を法律で禁止している国の数。中国、バングラデシュ、ネパール、イラク、カタール、エジプト、チュニジア、アルジェリア、モロッコの9カ国

THE BIGGEST PROBLEM

環境負荷という問題

暗号資産の環境負荷という問題が取り沙汰されるようになったのは、何も最近のことではありません。

コンピュータサイエンティストのハル・フィニーHal Finney)はビットコインの「生みの親」とされるサトシ・ナカモトと最初に取引を行ったことで知られる人物ですが、ビットコインの運用が始まったばかりの2009年1月の時点ですでに、「CO2排出量をどう削減していくかについて考えている」とツイートしています。

Image copyright: VIA TWITTER

ビットコインは採掘(マイニング)に大量の電力を必要とします。ケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センター(Cambridge Centre of Alternative Finance、CCAF)は、ビットコインのマイニングに使われた電力量をリアルタイムで試算する「ケンブリッジ・ビットコイン電力消費指数(CBECI)」を公開しており、それによれば、ビットコインが史上最高値を付けた2021年11月の1カ月でマイニングに使われた電力の総量は9.33テラワット時に上ります。これは世界に先駆けて電子政府の取り組みを進めてきたことで知られるエストニアの年間電力消費を上回っています。

一方で、別の興味深いデータも存在します。ケンブリッジ大学の経営大学院であるケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール(Cambridge Judge Business School)の研究者らが発表した論文によれば、2019年に世界でマイニングに使われた電力のうち39%は再生可能エネルギー由来だったというのです。また、マイニング業者の76%は電力の少なくとも一部は再生可能エネルギーで賄っていると答えています。

意外に思えるかもしれませんが、マイニングが盛んな中国の四川省では夏季の電力の大半を水力発電で得ているほか、新疆ウイグル自治区では太陽光や風力など再生可能エネルギー発電が盛んに行われています。

もちろんマイニングが大量の電力を消費することに変わりはありませんし、再生可能エネルギーの割合が高いからといって環境負荷そのものが低いということにはなりません。ただ、ビットコインの採掘においても再生可能エネルギーの割合が高まっているというのは明るいニュースです。

PROFITABILIITY

マイニングの収益性

Image copyright: Liu Xingzhe/ChinaFile/EPA
Goats from a nearby village walk next to cooling fans.

ビットコインのマイニングで利益を出すためには、電気代が安くビットコインの価格は高いという状態が理想的です。一般的に、ビットコインの価格が一定の水準まで下がるとマイニング業者は採算が取れなくなるために採掘を停止します。

ビットコイン研究の専門家でオランダ中銀のデータサイエンティストでもあるアレックス・デブリース(Alex de Vries)は昨年に発表した論文で、キロワット時当たりの電気代が5セント(6.7円)と仮定した場合、2万5,200ドルが閾値になると試算しました。これはあくまでもひとつの理論値に過ぎませんが、ビットコインの価格と世界で行われているマイニング活動の量に相関関係があることは事実です。

また、ビットコインを巡っては電子廃棄物の問題も指摘されています。採掘はマイニングマシンと呼ばれる専用コンピューターが使われますが、常時稼働させるため製品寿命は短く(デブリースは平均1.3年と試算しています)、マイニング活動による電子廃棄物の量は年間3万トンを超えると考えられています。

ビットコイン価格が低迷すればマイニング業者はコスト削減に動くためマシンの入れ替え頻度も減り、電子廃棄物が削減される可能性はあります。

🤔 QUIZ

ここで問題です

商業規模でのマイニングは実際にはどこの国で行われているのでしょう。以下の4カ国を世界のマイニングに占めるシェアの順番に並べてみてください。
ロシア
中国
カザフスタン
米国

答えは、「米国>中国>カザフスタン>ロシア」です。今年1月のデータでは首位は米国の37.8%で、以下、中国(21.1%)、カザフスタン(13.2%)、その他(9%)、カナダ(6.5%)、ロシア(4.7%)が続きます。

中国は昨年4月までは50%前後と圧倒的なシェアを誇っていましたが、昨年6月に政府がマイニングを禁止したことで、7月と8月はシェアがほぼゼロになりました。6月からの数カ月は世界全体のマイニング活動も大きく落ち込んでいます。ただ、その後は政府の取り締まりの目を逃れてマイニングが続けられているようで、今年1月時点でシェアは4割程度まで回復しています。

中国での禁止措置を受けて、一部の業者はカザフスタン米国で電気代の安い州拠点を移したと言われています。米国のエネルギーミックスは再生可能エネルギーが20%を占めるのに対し、カザフスタンは電力供給のほぼ半分を石炭火力発電に頼っており、同国でマイニング活動が拡大すれば排出量の増加につながるでしょう。

FROM PCW TO POS

エコなアルゴリズム

環境に優しい暗号資産は存在するのでしょうか。暗号資産ではブロックチェーンに取引データを書き込む際、ネットワークの参加者全員がこれを監視して承認するシステムを取っています。

「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる参加者の合意形成のルールにはいくつか種類があり、ビットコインはより多くの計算処理をした人がコインをもらえる「プルーフ・オブ・ワークPoW)」を採用していますが、他にも「プルーフ・オブ・ステークPoS)」、「プルーフ・オブ・インポータンスPoI)」、「プルーフ・オブ・コンセンサスPoC)」といった手法が開発されてきました。

このうちPoSはPoWより電力消費が少なく、カルダノ(Cardano)テゾス(Tezos)など最近登場した暗号資産はPoSを採用するものが少なくありません。ビットコインに次いで世界2位の取引量を誇るイーサリアム(Ethereum)は現在はPoW方式ですが、今年後半にPoSに移行する計画で、アルゴリズムの変更が成功すればマイニングによる消費電力は最大で99.95%減少するとの見通しを示しています。

ONE 📉 THING

ちなみに…

ビットコインの根幹をなすブロックチェーンは、暗号資産の他にもさまざまな分野で活用されています。有名なのは非代替性トークン(NFT)ですが、例えばフェアトレードの実現に向けたサプライチェーンのトレーサビリティ管理や、アフリカでの難民向けのIDの発行などにも使われているのです。

ただ、国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は4月に発表した第三作業部会(WGIII)報告書で、データセンターやブロックチェーンを含むその関連技術はエネルギー集約型であり、エネルギー需要の拡大につながる可能性があると指摘しました。発電システムの脱炭素化が進まなければ、暗号資産は世界のCO2排出の主要な原因のひとつになる恐れもあるというのです。

WGIIIについては、Quartz Japanのニュースレターでも特集を組んで紹介しますので、概要を紹介した先週のニュースレターおよび7月9日からの配信をぜひご覧ください。

今日のニュースレターは、Chihiro OkaとSota Toshiyoshiがお届けしました。

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