Skip to navigationSkip to content

Africa:金融包摂の可能性──オカピファイナンス

コンピュータサイエンスを修めた彼女がOkapi Financeを創業したきっかけは、10年前、コンゴ民主共和国に帰国したときに見た光景でした。

Okapi artwork
This story was published on our Quartz Japan newsletter, A glimpse at the future of the global economy-in Japanese.
  • Sota Toshiyoshi
By Sota Toshiyoshi

Editor in Chief (Quartz Japan)

Published
アフリカのいまを知ることは、世界のビジネスの未来の可能性を知ること──火曜夜にお届けしている「Africa」ニュースレターでは、毎週ひとつのスタートアップを取り上げ、彼らが社会の何をどう解決しているかをレポートしています。

この10年、フィンテックモバイルマネーサービスはサブサハラアフリカ地域におけるファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)を大きく加速させました。しかし、そのなかでもコンゴ民主共和国(DRC)はいまだ近隣諸国に後れをとっています。

Digital Banking in sub-Saharan Africa Report(サブサハラアフリカ地域におけるデジタルバンキングに関する報告書)」では、この地域の金融包摂率(銀行口座やモバイルマネー口座を有する成人の割合)が43%であるのに対し、コンゴ民主共和国は26%程度にとどまっていることが記されています。また、この国では特に女性が金融サービスから排除される傾向が強く、男性の銀行口座余裕率が27%であるのに対し女性は24%ほどです。

こうした数字は大きな課題を示唆しています。コンゴ民主共和国による「Financial Inclusion Roadmap 2016-2021(金融包摂ロードマップ 2016-2021)」の調査結果によると、1日の収入が1ドル(約135円)未満で金融サービスも受けられない成人の60%が十分な食事をとれず、子どもに教育を受けさせられなかったり医療費を払えなかったりといった問題を抱えているといいます。

コンゴ民主共和国のフィンテックシーンは、こうした状況を好転させようとしています。「フィンテックスタートアップは素早くイノベーションを起こし、個人や企業、政府のニーズにあったソリューションを提供できる」。そう話すのは、 Congo Business Networkのノエル・ティアニ(Noel Tshiani)です。Congo Business Networkは、スタートアップや投資家、行政機関、メディア、そのほかのステークホルダーをつなげる役割を果たしています。

制度上の問題の解決には、常に壁がつきまといます。この国のスタートアップは脆弱なインフラ現実と規制のギャップ、コンゴ民主共和国の公用語であるフランス語という言語の壁をも乗り越えなければならないのです。それでもティアニは楽観的です。「スタートアップや銀行、通信会社は、いまだ資金の95%が現金で流通する将来有望な市場を獲得するために戦っている」

CHEAT SHEET

ビジネスとしての可能性

💡 期待される理由:9,500万人以上の人口を抱えるコンゴ民主共和国は、金融包摂率がアフリカで最も低い国のひとつです。金融サービスが利用できるようになれば、女性など社会的に立場が弱い人を含め多くの人の生活の質が向上します。

🤔 解決すべき課題:コンゴ民主共和国のテック・エコシステムは発展途上にあり、それを支える規制環境も未熟です。加えて、道路などのインフラが脆弱であることも金融サービス事業者の参入が制限される原因になっています。

🗺 これからのロードマップ:金融包摂を推進するためには、コンゴ民主共和国のフィンテック企業が状況に細かに合わせたソリューションを提供しなければなりません。政府機関などのステークホルダーの協働に加え、スタートアップへの投資拡大もカギとなります。

💰 注目すべきステークホルダー:投資家やスタートアップ、銀行、通信事業者、規制当局、政府機関は、コンゴ民主共和国のフィンテック・エコシステムの成長や強化のために互いに協力していかなければなりません。

BY THE DIGITS

数字でみる

  • 2,500万人:金融サービスを全く利用できないコンゴ民主共和国の成人の数
  • 26%:コンゴ民主共和国の金融包摂率(成人人口に占める銀行預金口座の保有者の比率。モバイルマネー口座を含む)
  • 5.7%: 2021年のコンゴ民主共和国の経済成長率。同国の経済成長は主に鉱業に支えられている。
  • 93億ドル約1兆2,576億円:コンゴ民主共和国の零細・中小企業(MSMEs)の資金調達ギャップ(事業のに必要な金額と現在アクセス可能な金額との差)の推定額。初めから資金調達を諦めていることのほか、手続きが複雑であることが融資を申し込まない主な理由に

THE CASE STUDY

ケーススタディ

企業名:Okapi Finance
本社所在地:ヴェステロース(スウェーデン)。コンゴ民主共和国、セネガル、ボツワナ、ギニアおよびケニアで事業を展開している。
創業者:Gisele Mwepu
評価額:非公開

Okapi Finance創業のきっかけは、いまから10年前にジゼル・ムウェプ(Gisele Mwepu)がコンゴ民主共和国に帰国したときに見た光景でした。

彼女はこの国の人びと、特にインフォーマル(非公式)経済で働く女性たちにとって、日々の金融取引がいかに大変なものであるかを目の当たりにしたのです。当時、人々は電気料金の支払いのために長い列に並び、銀行やATMを利用するために長い距離を移動していました。

そこでムウェプはソフトウェア工学の学位とコンピュータサイエンスの修士号を生かし、Okapi Financeを創業しようと決意します。しかし創業まもなく、彼女は単なるP2Pの送金・決済サービスでは不十分であることに気づきました。彼女が考えた理想のサービスとは、送金や支払い、与信取引、保険なども利用でき、行政サービスやほかのサービスとの相互運用にも長けたものでした。

Okapi Financeは、低所得者層が多く住むケニアのキベラで実施した調査とパイロットフェーズを経て、2018年に正式に事業を開始しました。そのサービスは、すでにムウェプの理想に近づいているといえるでしょう。

現在、Okapi Financeは送受金ペイメントのほか、請求書の送付といったサービスを提供しています。また与信取引のほか、企業によるリアルタイムの支払いや料金の受け取りも行なっており、今後も新しいサービスを追加していく予定です。

Okapi Finance landscape
Okapi Finance landscape

女性起業家向けに毎週20~50ドルのごく少額のローンを提供する試みも、こうした新しいサービスのひとつだといいます。

この取り組みにより、小規模事業者は常に在庫を補充しビジネスを着実に成長させられるのです。また、このサービスはローンの返済率も約95%という素晴らしい高さだとムウェプは話します。加えて、クレジット(信用)スコアを挙げるために顧客にOkapi Financeの利用を勧めてくれる女性トレーダーは、同社にとっての最大のサポーターでもあります。

Okapi Financeは金融リテラシー向上のためのトレーニングプログラムや教育イベントの開催にも取り組んでおり、国連開発計画(UNDP)やコンゴ民主共和国政府などとも提携しているところです。特に後者のパートナーシップは年金生活者への支払いの促進を目的としており、高齢者が銀行を利用するために長距離を移動しなくてもよくなる素晴らしい方法だと考えられています。

Women entrepreneurs who are customers of Okapi Finance
Women entrepreneurs who are customers of Okapi Finance

さらに大きなエコシステムを構築するために、現在Okapi Financeは国際送金機能の実装に注力しています。すでに同社は欧州連合(EU)から国際送金のライセンスを取得しており、米国などを含むほかの国でも提携企業を探しています。

さらに、Okapi Financeはアフリカのほかの国々への事業展開も進めているところです。同社は「ローカルパートナーモデルを採用しており、各国の地元企業が「Okapi」ブランドのライセンスを取得しサービスを提供できるようにしています。これまでセネガルとギニアのコナクリでパートナー企業がサービスを提供し始めました。

IN CONVERSATION WITH

CEOにインタビュー

──とくに女性に注目したのはなぜですか?

コンゴの女性が金融排除の影響を強く受けていることに気づきました。この国のインフォーマルセクターを率いているのが彼女たちであるにもかかわらずです。それゆえ、わたしたちは女性をターゲットとし、彼女たちをエンパワーしようと決めたのです。

──コロナは事業展開にどんな影響を与えましたか?

パンデミック以前はさまざまな国でサービスをゼロから立ち上げようと考えていました。しかしパンデミック後は戦略を変え、ローカルパートナーモデルを採用したのです。この戦略は非常にうまくいっていて、以前よりも迅速な海外展開ができているように感じます。コンゴ民主共和国以外でのサービスはローカルパートナーモデルのみで展開していく予定です。

──ローカルパートナーモデルにはどんな利点が?

利点はたくさんあります。現地のパートナー企業はビジネス環境、文化をよく知っていますし、現地でのサービスの立ち上げも簡単です。すでにこのモデルでサービス展開を予定している国がいくつかあります。例えばエジプトやエチオピア、ベナン、コートジボワールなどですね。

FINTECH DEALS TO 👀

注目ディール

  • B2Bのリテール&ECプラットフォームであるWasokoは、2022年3月にシリーズBラウンドで1億2,500万ドル(約162億2,718万円)を調達し、評価額は6億2,500万ドル(約845億1,656万円)となりました。零細小売業者向けに信用供与と商品の無料配送を提供している同社は、『Financial Times』の「Africa’s Fastest Growing Companies 2022(アフリカ急成長企業2022)」の一社に選ばれています。
  • モバイルマネーサービスを提供するWaveは、2021年9月にシリーズAラウンドで2億ドル(約270億4,530万円)を調達し、その評価額は7億ドル(約946億5,855万円)となりました。同社はアフリカで手ごろな価格のモバイルマネーサービスを構築することを目指しています。
  • 中国企業による支援を受けるアフリカのデジタル決済スタートアップOPayは、2021年8月に評価額20億ドル(約2,704億5,300万円)で4億ドル(約540億9,060万円)を調達しました。資金は同社のさらなる規模拡大に使われる予定です。 OPayいわく、同社はナイジェリアの携帯電話事業者間の銀行送金の約80%、国内の非商業者による店頭送金の20%を処理しているといいます。
🎵 今週の「Weekly Africa」は、ケニアのBoondocks Gangによる「Genge la Bundoksi」を聴きながら、ナイロビ在住のコントリビューター、Martin Sieleがお届けしました。日本版はAsuka KawanabeとSota Toshiyoshiが担当しています。

ONE 🤑 THING

ちなみに……

コンゴ民主共和国では、10人に9人がインフォーマル(非公式)経済に頼っています。それゆえ、運転資本や設備投資の原資は自身の貯金を使うほかありません。

🎧 Quartz Japanでは平日毎朝のニュースレター「Daily Brief」のトップニュースを声でお届けするPodcastも配信しています。

👀 TwitterFacebookでも最新ニュースをお届け。

👇 このニュースレターはTwitter、Facebookでシェアできます。転送も、どうぞご自由に(転送された方へ! 登録はこちらから)。