Skip to navigationSkip to content
QZ&A

日本で有色人種の女性として生きること。ドキュメンタリー『Women of Color in Japan』監督インタビュー

『Women of Color in Japan』
  • Kurumi Fukutsu
By Kurumi Fukutsu

Contributing Editor

Published

ナイジェリア系米国人のアマラチ・ヌオス(Amarachi Nwosu)。彼女は写真家であると同時に映像作家、ライターであり、講演に招かれ登壇することもあります。彼女の「ストーリーテラー」としての活動や、クリエイターたちのコレクティブ・Melanin Unscripted(メラニン・アンスクリプテッド)の創設者兼CEOとしての活動は高く評価され、「Forbes Africa 30 Under 30 Class of 2021」にも選出されています。

アマラチはこれまでに2度、2015〜16年と18〜19年の2年間、日本に住んだこともあります。

一度目の訪日時の経験をもとに、2017年、アマラチは日本における黒人の経験を探求した『Black In Tokyo』を制作・監督し、作品は150万回以上の再生回数を記録。なかなか知られることのない有色人種が日本で暮らすことの「現実」を、映像を通して伝えました。そして2021年10月、そんな彼女が新作のドキュメンタリー映画『Women of Color in Japan』(日本の有色人種の女性たち)を発表しました。

近年のブラック・ライヴズ・マターや反AAPI(アジアン・アメリカン・パシフィック・アイランダー)レイシズムとの戦いなど、世界規模で社会運動が活発化し、多様性やアイデンティティについて考えることの重要性が浮き彫りになっています。

その流れはもちろん、日本においても例外ではありません。このドキュメンタリーでは社会的包摂、平等、表現のビジョンを追求する東京在住の女性クリエイターたちに焦点を当てています。

2020年6月末の在留外国人数は288万5,904人、日本の総人口は1億2,622万7千人(2020 年10月1日現在)。外国人比率は約2.28%ほどで、有色人種のしかも女性となると、その占める割合はごくわずかです。

『Women of Color in Japan』を通して、コミュニティ間の関係を生み出す対話を始め、世界中の有色人種コミュニティの文化的なつながりを強調することで、変化のきっかけとなることを目指していると言うアマラチ。今回、彼女にインタビューし、制作背景や日本社会、そして彼女が世界とどのように繋がっていくのかを聞きました。

ナイジェリア系米国人のアマラチ・ヌオス

──日本に住んでいたときに、文化やアイデンティティの多様性を体験したことと思います。最も印象的だったことは?

東京は巨大な都市です。わたしは国際コミュニケーションを学ぶ国際的な大学に通っていましたが、日本の歴史をより深く知り、かつ、グアムや香港、ロンドン、メキシコシティ、サンパウロ、さらにはラゴスといった場所から来た人びととつながることができました。

わたしにとって決定的だった出来事のひとつは、アートと創造性がいかに人びとを結びつけるかを実感したことです。

必ずしも同じ文化をもっていなくても、読んでいる本や聴いている音楽、好きな服は似ているかもしれません。東京での親しい友人のひとりは香港出身でしたが、彼女が好きだという本がチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『アメリカーナ』だというのをきっかけに、わたしたちはつながりました。わたしの好きなナイジェリア人作家が、アフリカ人として米国社会に溶け込むことについて書いた小説が、(香港出身の)彼女の心に響いたというのには驚きましたけどね。

──日本で暮らすのは大変でしたか?

どこに行ったって、新しい文化や習慣、生活様式に適応しなければならないのは大変なことです。そのチャレンジは、非情に強力な、成長という機会を生み出すこともあります。より多くの人が新しいアイデンティティに触れることで、理解が深まり、よりよいつながりや関係性を築くことができると信じています。

日本では、西洋以外の文化が必ずしも人間的なものとして評価されていないし、社会全体にどのような利益をもたらしているかが示されていません。

「日本に住む黒人女性」として振り返ると、「自分自身を表現したもの」を見たり、自分の経験を理解してくれる人に出会ったりすることがほとんどなかったことは、否定できません。

ただ、自分自身をちゃんと表現することの大切さを学ぶことはできました。ことばの壁を越えるのは非常に難しかったけれど、文化の二面性を理解してくれる人たちと出会いつながりをもつことで、異なる環境でも学び、成長し、さまざまな習慣を学ぶことができ、さらに多くの人とつながることができました。

日本の人びとは、他の文化に触れれば触れるほど、文化的な関係を深められると思います。日本では、異文化を紹介するメディアや表現が少ないことは大きな問題です。西洋以外の文化が必ずしも人間的なものとして評価されていないし、社会全体にどのような利益をもたらしているかが示されていません。多様性は必ずしも認められてはおらず、それゆえ人種や文化のつながりを深めることができず、分断される傾向にあります。

移民政策や日本における移民のイメージも改善すべきでしょう。そうなってこそ、海外から人びとが日本を訪れ、生活する機会をつくり、日本全体の社会的・経済的成長を支える日本の未来が築かれるのではないでしょうか。

『Women of Color in Japan』

──今回発表したドキュメンタリー 『Women of Color in Japan』は、有色人種の女性で東京在住の女性クリエイターたちに焦点を当てていますが、これを通じて伝えたいことは何ですか?

2015年に初めて日本に引っ越してきたとき、日本に「ここで暮らす外国人の経験についての物語」に触れる機会は、ほとんどありませんでした。とりわけ黒人女性や有色人種の女性についての物語を見つけるのはとても困難でした。それから日本に住むようになり、さまざまなバックグラウンドをもった多くの素晴らしい女性たちに出会えたのを機に、彼女たちのストーリーをもっと知り、記録したいと思うようになりました。

日本で生まれた有色人種の女性も、別のさまざまな場所から日本に移住してきた女性も、それぞれが自分だけの経験をもっています。だから、わたしたちを結びつけてくれたのは「創造的な活動」でした。

歴史に痕跡を残さなければ、物語が語られることはありません。そして、それを伝えるのがわたしたちの義務ですから。

わたしは、自分が見たいと思う表現をメインストリームのメディアがつくってくれるのを待ってはいられなかったので、自分でそのギャップを埋めようと決め、パワフルなスタッフとキャストを集めました。東京で起きている創造的で文化的な革命を視覚的に表現し、一人ひとりの多様な物語がそこでどのような役割を果たしているのかを伝えたかったのです。

歴史に痕跡を残さなければ、物語が語られることはありません。そして、それを伝えるのがわたしたちの義務ですから。

わたしが願うのは、このドキュメンタリーが異なる背景をもつ人びとがお互いを理解し合えるようになること。日本において有色人種の女性であることがどのようなものであるかを人びとに深く想像してもらうこと。そして、この体験の「旅」を人間味あふれるものにすることです。

日本のみならず世界において、クリエイティブ業界(メディア、映像など)には、有色人種のクリエイティブな女性のための「席」が必要です。彼女たちが築き上げるものに人びとが投資する機会が必要であることを理解してもらいたいと思います。このドキュメンタリーが、他の人たちに力を与えるような理解と機会を生み出す手助けになれば、インパクトがあるものといえるでしょう。

『Women of Color in Japan』

──日本にはどのような国になってほしいと望みますか?

日本がもっと多様性やコラボレーションを尊重する国になってほしいと思っています。わたし自身日本のアーティストもブランドも好きだし、民族的に日本には属していなくとも日本の文化、食べ物、アート、環境を愛し、評価している人たちもたくさんいます。日本のアーティストと世界の他の地域、特にアフリカ大陸全体との創造的なコラボレーションを、もっと見たいですね。

──世界は変化していると思いますか? もしそうだとしたら、テクノロジーを含め何がその変化をこれほど早く引き起こしていると思いますか?

物理的な国境は存在しますが、YouTube、Instagram、Tik Tok、Twitterなどのプラットフォームのおかげで社会的な国境はなくなりつつあります。その意味で、テクノロジーは間違いなく役立っているといえるでしょう。

例えば『Women of Color in Japan』を公開するにあたっても、大手配給会社とのコネクションがなくとも自分で映画を配給し、YouTubeに投稿し、コミュニティを拡大することができます。人が異なる生活様式や価値観を理解し、それによって世界が「グローバルコミュニティ」としてよりつながりをもてるようになっているのです。

先日、Instagramを見ていたら、私が知っているシーケイ(CKay)というナイジェリアのアーティストの曲「Love Nwa Titi」が、日本のSpotifyで「バイラルトップ50」の1位になっていました。ソーシャルメディアが普及する前にはこんなことはありえなかったでしょう。アートがより速い速度で「動く」ようになったことで、世界はより狭く、よりつながりやすくなり、それがわたしたちの現実を形成し、変化させていることがわかります。

『Women of Color in Japan』

──誇りに思うことや、生きる上でのモットーは何ですか?

わたしのモットーは、「可能性は無限で、それは出発点である」ということです。その理由は、無限の可能性があり、世界の問題を解決しようとするならば、どのように革新を起こし、身の回りの空間を構築するかをよく考えなければならないからです。世の中の限界を基準にして見ていたら、いまのわたしはないでしょう。

──今後のプロジェクトについてお聞かせください。

今後数カ月のうちに、アフリカ大陸のクリエーターたちを描いた長編作品を発表する予定です。これは初めての試みで、グローバルにストーリーを構築し、さまざまなバックグラウンドをもつ人たちとコラボレーションできることを楽しみにしています。

わたしは、より多くのストーリーを伝え続け、Melanin Unscriptedを、世界を超えたインパクトのある映画を制作するクリエイティブなスタジオにしたいと思っています。その先に目指すのは、大規模なスタジオと協力し、投資を受けて、映画やメディア業界でクリエイティブやエグゼクティブレベルで有色人種の女性のための場所を増やすことです。


Quartzは、日本のメンバーシップ読者に世界の最新ニュースをニュースレターで配信しています。平日朝・夜と週末にメールで世界の「いま」がわかるニュースレターを、現在、7日間無料で体験できます。これまで配信してきたニュースレターのアーカイブもあわせてチェックしてみてください。

📬 Kick off each morning with coffee and the Daily Brief (BYO coffee).

By providing your email, you agree to the Quartz Privacy Policy.