🕳 大統領選「IT活用」の落とし穴

ケニアの大統領選の結果が15日、発表されました。アフリカ随一の「テクノロジー国家」の選挙で起きた混乱について、現地からお届けします。
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Photo: MONICAH MWANGI (Reuters)

Topic of this week Africa: 大統領選の投票が行われた8月9日からウィリアム・ルト副大統領の「勝利」が宣言された15日まで。その約1週間を、ケニア国民は不安と混乱のなかで過ごすことになりました。ケニアはアフリカ随一の「テクノロジー国家」で、国民の暮らしにはテックが多岐にわたって導入されています。しかし、この間、ソーシャルメディアに誤報があふれビジネス活動も著しく低下しました。いったいなぜこんなことになったのでしょうか? 


クラッキングを恐れて

今回の大統領選では、各投票所での手書きの集計結果用紙が、オンライン上にアップされることになりました(独立選挙・区割委員会[IEBC]、いわゆる選挙管理委員会のウェブサイト上)。これはケニア史上初めてのことです。

しかし、その実情はといえば、ナイロビの国立集計センターでは手作業で投票内容が確認されていました。さらに、15日の結果発表の直前には7人のIEBC委員のうち4人が結果を認めない方針を表明。結果の正当性をめぐり、法廷で争われることが明らかになっています。

つまるところ、不安と混乱の原因は「不信感」にあるといえます。

今年の選挙のテックオブザーバーで、ソーシャルリスニング分析を提供しているスタートアップBrand Moranのファウンダーであるエグリン・サモエイは、わたしたちの取材に対し、次のように語っています。

「ケニア国民は選挙プロセスを運営するものとしてテクノロジーを信用してはいない。誰もがシステムがハッキングされるのを恐れ、投票用紙を1枚1枚数えたいと願った」

テクノロジーは、その正確さと集計速度の向上という点で間違いなく優れています。が、IEBCが導入したテクノロジーは有権者登録と本人確認に限定され、残りのプロセスは手作業で行われることになりました。

「今年の選挙戦では、対立候補に有利になるようシステムがハッキングされたと訴える有権者の姿も見受けられた。ここで指摘されるべきは整合性、そしてデータセキュリティの問題だ」と、サモエイは指摘しています。

テックを支える人材

ケニアのシンクタンク、Kenya ICT Action Network(KICTANet)の最高責任者グレース・ギタイガは、適切な人材の必要性を指摘しています。

「テクノロジーは中立だと思われているが、テクノロジーだけでは選挙は運営できない。選挙を実際に動かすのは、テクノロジーの裏側にいる人間だ。正しい検証メカニズムに正しいデータを入力することで、初めて検証された選挙結果を得られる」(ギタイガ談)

選挙結果の検証に1週間という時間を要したため、ケニアのネット上では誤報や不正操作を疑う声が高まっています。やれ大統領選挙の結果を発信していたメディアのポータルがハッキングされた、あるいは、やれ検証システムにアルゴリズムが挿入されたなどという主張もみられます。

殺されたテック担当者

遡ること2017年8月の大統領選では、開票作業中、IEBCで情報技術部門を率いる立場であったクリス・ムサンドが行方不明となり、のちに遺体で発見されました。当時、最有力候補だったライラ・オディンガは、ムサンドが大統領選の不正操作に使われたパスワードの引き渡しを拒否したため、拷問されたのちに殺害されたと主張。最高裁判所は大統領選挙を無効とし、再選挙を要求することになりました。

当時、そして今回の選挙を踏まえて言えるのは、IEBCは投票所から投票、集計、検証、全国集計ポータルへの送信ができるよう効率を高めるとともに、国民に対してテクノロジーについての啓蒙を進める必要があるということでしょう。

「システムそのものも、信頼を高めるために大きな役割を果たす必要がある。今回の選挙でも、使用されたツールの一部が有権者を識別できなかったり、地域によってはまったく機能しなかったりした。それらが今回の不信感につながっていることも否定できない。IEBCは選挙当日までにすべてのキットをテストし、正しく機能していることを確認しなければならなかった」。ナイロビのコミュニケーションコンサルタント、チャリティ・カタゴはそうわたしたちに語っています。


STORIES THIS WEEK

今週アフリカで起きた事

  1. ケニアの新大統領のジョブディスプリプションは? 新大統領が求められる最優先事項は、経済の立て直しです。ケニア国民は、インフレや失業、汚職、巨額の公的債務に悩まされています。とくに失業率の上昇は顕著で、ケニアの人口5,300万人のうち4分の3以上が35歳以下なのにもかかわらず、失業率は39%に達しています。ちなみに、当選したウィリアム・ルトは「ボトムアップ」経済をマニフェストに掲げて選挙に挑みました。
  2. ナイジェリアがECOWASからの脱退を示唆。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)には現在15カ国が加盟していますが、そのひとつ、ナイジェリアの議員たちがこの機関の運営に対し、是正を求める声を上げました。取材によると、彼らはECOWASがナイジェリアから拠出されている資金に依存していると指摘し、ナイジェリア人を含まない職員採用活動を非難しているとのこと。
  3. Jumiaは荷物をより早くお届けします。アフリカのEコマース大手のJumiaは、荷物の60%が注文から24時間以内に配達されていると発表しました。2Q決算を発表したJumiaですが、当期の注文数は約1,030万件で前年同期比35%増。グローバル経済がロシアのウクライナ侵攻による影響を受けるなか、躍進を期待させる数字です。
  4. サッカーで儲ける準備はできている。欧州チャンピオンズリーグに代わり、アフリカのクラブチームが主役となり、スポンサーシップから利益を得るときがやってきました。アフリカサッカー連盟は今月10日、アフリカ・スーパーリーグの発足を発表しました。この新リーグはFIFAのお墨付きで、発表にはジャンニ・インファンティーノFIFA会長も立ち会っています。