Wednesday: Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者のみなさん、こんにちは。日本では先月から始まった「レジ袋有料化」ですが、その先端事例は、実はアフリカにありました。英文記事はこちら(参考)。

もしあなたがタンザニアに旅行しようというなら、持っていく荷物のパッキングには細心の注意を払わなければなりません。
タンザニアが「レジ袋禁止」の第2フェーズ実施を発表したのは2019年5 月 16 日。この国を訪れる人は皆ビニール袋の持ち込みが許されず、空港の指定されたデスクに置いていかなければなりません。ビニール袋での梱包や携帯そのものを避けるよう勧告されているのです。
Cleaner and greener
クリーンでグリーン
タンザニアにおける「脱プラスチック運動」の第1フェーズがスタートしたのは2017年でした。「若者と環境を守る」ために、国内でのレジ袋製造および流通を禁止とし、さらに第2フェーズでは、その範囲が観光客にまで及ぶことになりました。
サミア・スルフ副大統領からの声明によると、「政府は、この禁止令によってタンザニアを訪れる観光客が不快な滞在を強いられることを意図していているわけではない」とされています。声明は、次のように続きます。
「ただし、旅行者には、環境を保護しこの国を清潔で美しく保つことへの配慮のもと、レジ袋禁止に伴うささやかな不便さを受け入れていただきたい」

もっとも、旅行者に対してはいくつかの例外はあって、医療用、工業用、建設用、農業用、廃棄物管理用の包装材や、トイレタリー用品を運ぶのに使用される小型の「ジップロック」袋は許容されています(旅行者が出国する際に持ち出すことが条件)。
しかし、タンザニアが目指すのは“レジ袋完全排除”。同時に、この国の例は、「シングルユース・プラスチック(single-use plastic、「使い捨てプラスチック」というよりは、ほとんどリサイクルされることのない包装やストローなど“短時間使ったあとで捨てられる”プラスチック)の使用を禁止しているアフリカ34カ国のうちの1カ国に過ぎないのです。
実際のところ、アフリカ大陸はレジ袋規制において世界をリードしています。さらに注目すべきは、ローラ・パーカーが2019年4月に『National Geographic』でレポートしたように、これらのうち31カ国は、世界で最も貧しい地域であるサブサハラ・アフリカで可決されているのです。

Plastics prohibitions
厳しい禁止事項
ローラ・パーカーは、2017年に開始されたケニアでの取り組みによって「目に見えてきれいな」国になった、と書いています。
ケニアにおいて禁止事項を無視した場合の罰則は、世界でもまれにみる厳しさです。
製造業者や輸入業者、流通業者およびレジ袋を使った者は、最高で38,000ドルの罰金または4年の懲役を科せられます。この措置には抵抗も起きていますし、実施するのも困難さはあります。しかしながら、国連の推計によると、かつて年間約1億枚のレジ袋を使用していたこの国における削減努力は注目に値するものであり、効果的であると考えられます。

ルワンダは、世界初のプラスチックフリーの国を目指しています。そして、その禁止措置は効果を上げているようです。国連は、ルワンダの首都キガリを「アフリカ大陸で最もクリーンな都市」と称していますが、これには、2008年に施行された非生分解性プラスチックの使用禁止も貢献しているでしょう。
2019年5月に発表された国連の環境調査によると、レジ袋禁止は効果があり、特に廃棄物を焼却処分することが多いアフリカ諸国では効果的であると結論づけています。
実際、世界の廃棄物の約40%は焼却処分されており、深刻な大気汚染の原因となっています。
プラスチックを燃やすと、植生や人間、動物の健康を脅かす有毒ガスが放出されます。「プラスチック廃棄物の燃焼は、心臓病のリスクを高め、喘息や肺気腫などの呼吸器系の病気を悪化させ、発疹、吐き気や頭痛を引き起こし、神経系にダメージを与える」と上記研究ノートには記載されています。

レジ袋の使用削減は2つの効果があるとされています。まずは、世界の海に漂着して海洋生物に悪影響を与える廃棄物の発生を最小限に抑えること。そして、プラスチックの燃焼による大気汚染を削減することです。
禁止事項をもたない地域では、廃棄物は大きな問題となっています。例えばガーナは世界で最も急成長している経済国ですが、投資や観光を誘致しようとする努力も、アクラのような大都市における見苦しいゴミの山によって阻まれています。
「アクラの側溝はひどいものです…この街では、市民が側溝を掃除したとしてもそのゴミは近隣の山に投棄され、最終的には元の場所に戻ってしまうのです。街角にできたゴミの山には鳥が群がり、嵐の後にはいつも、流されたペットボトルがビーチに集まっています」(フリーランスジャーナリストのステイシー・ノッツ)
there is evidence
効果は確かにある
2019年3月、国連環境総会は、「シングルユース・プラスチック汚染対策」と題する決議(PDF)を可決しました。この決議は、各国政府や民間が「プラスチックのライフサイクル全体にわたって、より資源効率の高い設計、生産、使用、管理を促進する」よう奨励するもので、加盟国に対しては、「法律や国際協定の実施、適切な廃棄物管理インフラの提供、廃棄物管理慣行の改善、廃棄物の最小化のための支援を通じて、廃棄物に対処するための包括的な行動をとることを強く求める」ものです。

各国政府は、その決議に耳を傾けているようです。バングラデシュは、壊滅的な洪水の際に排水システムを詰まらせた薄いビニール袋を禁止した世界初の国となりましたが(2002年)、南アフリカやルワンダ、中国、オーストラリア、イタリアが続いています。世界各国が政府レベルでさまざまな禁止措置を取り、プラスチック製ストローやカトラリー、バッグなどの使用が問題視されているのは、そうした背景によるものなのです。
欧州連合(EU)議会では、2021年までにバッグ、ストロー、皿、カトラリー、綿棒などのプラスチックの使用を禁止する措置がとられています。米国では2019年4月、ニューヨーク州がカリフォルニア州に次いで2番目にレジ袋を禁止する州となり、ハワイ州でもすべての自治体がこれらを禁止するとしました。
ビニール袋の禁止だけでは完全とはいえません。というのも、取って代わるべき綿のトートバッグも環境問題を引き起こしているからです。批評家も、こうした努力が有効なのかどうかを疑問視しています。しかし、このアクションが廃棄物と汚染の両方を減らすのに有効だという証拠は、アフリカに確かにあるのです。
headlines from Quartz Africa
今週のヘッドライン
- Uberに新たな規制。ナイジェリアの首都ラゴスでは、配車サービスのUber、Boltに対し、新たな規制ガイドラインを導入することを発表しました。ライセンス料やサービス税に関するこの規制は、行政が交通システムの改革に目を光らせていることによるもので、今月20日にも施行される予定です。──August 12
- 奴隷貿易から現在へ。現在世界で暮らすアフリカ系の人びとのうち、ナイジェリアにルーツをもつ人は、奴隷として連れてこられた当時の割合と比較して「非常に多い」との調査結果が発表されています。これは、米国、ラテンアメリカおよび西欧のアフリカ系約5万人を対象としたDNA調査によるものです。──August 11
- 酸素が足りない。COVID-19がアフリカ全土に拡がるなかで、患者に供給する人工呼吸器が不足しています。一部の専門家によると、この不足の原因は、大陸全土で酸素ボンベ供給を担うはずのガス供給会社2社が不当に価格を吊り上げていることにあるとされています。この疑惑について両社にコメントを求めたところ、Linde Groupは回答を拒否、Air Liquideは「供給を確保するためにできる限りのことをしている」と回答しています。──August 11
- アフリカ最大の食品小売の「撤退」。アフリカ15カ国に約3,000店舗を有する南アフリカの小売大手Shoprite(ショップライト)が、ナイジェリアからの撤退を明らかにしました。Shopriteは同国において絶大なブランドとして支持されていましたが、撤退の要因としてはパンデミックによる打撃や、そもそもナイジェリアにおける購買力の低下などが挙げられています。ヨハネスブルグ証券取引所では、この知らせを受け同株価が10%上昇しました。──August 7
(翻訳・編集:年吉聡太)
このニュースレターはSNSでシェアできるほか、お友だちへの転送も可能です(転送された方の登録はこちらから)。