Millennials:無神論者の「占い」新時代

[qz-japan-author usernames=”kurumifukutsu”]

MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。突然ですが、占いは信じますか? 今日の「Millennials Now」では、アメリカの若者を中心に人気急上昇の「占い市場」の裏側に迫ります。

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: GREG RAKOZV ON UNSPLASH

新型コロナウイルスが世界中へ広がり、世界保健機関(WHO)の「パンデミック」宣言まで。最近の世界情勢に対して、人々の不安はますます高まるばかりです。

不安になればなるほど、何かにすがりたくなったりするのも、人間の性でしょう。そんななか、アメリカではジェネレーションZとミレニアル世代を中心に、「占い」の人気が高まっています

米心理学会(American Psychological Association: APA)は、オンラインで育った世代は今、昔から伝承されてきた「占い(占星術)」に助けを求めていると述べています。

Why they’re into Astrology?

なぜ占いにハマる?

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: Photo by Josh Rangel on Unsplash

なぜ、アメリカの若者は占いに没頭するのでしょうか?

簡単にまとめると、この3つが大きな柱になります。

  • 不安やストレスが多い
  • 少しでもハッピーな気持ちになりたい
  • 占星術がインターネットと相性がいい

APAの調査データによると、2010年以降ミレニアル世代が感じるストレスは毎年増加し、2014年を境に、全世代のなかでもミレニアル世代が最もストレスを感じているようです。

2016年の大統領選挙(トランプ大統領就任)以降、政治的混乱を理由とするストレスがアメリカ人全体として高まっています。

APAの調査の2017年度版では、アメリカ人の63%が自分たちの国の将来について非常にストレスを感じていると回答。56%の人々がニュースを読むとストレスがたまると述べ、特にミレニアル世代がそう語る傾向にあるとする結果になりました。

TVにしろウェブにしろ、ネガティブな政治問題、気候変動、世界的な危機、核戦争の脅威が繰り返されています。そのようなストレスから目をそらすために、多くの人は占星術の「アドバイス」に耳を傾けようとするのかもしれません。

また、米国立科学財団(National Science Foundation: NSF)による2012年の調査によると、18〜24歳の58%が占星術は科学に基づいていると考えています。さらに、2014年のPew Researchの調査では、無神論者の49%がミレニアル世代であると報告されています。

「ミレニアル世代は、自分たちの上の世代よりも自分たちの将来についてより多くのストレスを感じ、それを公言しています。そして、彼らは宗教的でなはいので、なにか『方向性を明らかにしてくれる導き』を求めているのです」と、雑誌『Cosmopolitan』の編集長Jessica Pelsは述べています

さらに、ジェネレーションZやミレニアル世代はインターネットで成長し、ソーシャルメディアを活用、そしてモバイルデバイスで“フリック”して退屈や孤独を回避することができる最初の世代。自己分析能力も高いので、問題が起こるとなにか解決策を求めるために検索します。それゆえ、インターネットと占いの相性の良さにハマるのです。

New market

急成長する市場

このような傾向が、米国内のアプリ市場を大きく変えています。

Sensor Towerのデータによると、アメリカのモバイルユーザーが占星術アプリ(上位10点)に費やすコストは右肩上がりです。2016年には770万ドル(約8億円)でしたが、2018年には2,410万ドル(約25.3億円)。2019年にはさらに64.7%増加し、3,970万ドル(約42億円)を支払っていると推定されています。

この推移は、ゲーム以外のアプリが急成長するときの傾向と合致しており、ミレニアル世代にも支持される瞑想アプリなどを含め、ほかのライフスタイルサブジャンルでの成長が窺えます。

■2019年におけるアメリカの占星術アプリトップ10

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: SensorTower

なかでも売り上げが最も高いアプリは、Astrology & Palmistry Coachで、年間トップ10の売り上げのうち35.3%にあたる約1,400万ドル(約15億円)になっています。

一方、2016年以降、毎年トップ10のリストに挙げられている3つのアプリがあります。

幅広い占いを揃えるZodiacTouchは、2016年から2019年にかけて収益が75%増加しています。

2019年、売り上げとダウンロードの占星術アプリトップ10

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: SensorTower

2019年の売り上げトップ10には、FortuneScopeHoroscope&Palm MasterAstrolineが初めてランクイン。FortuneScopeとHoroscope & Palm Masterは、スマホのカメラで手のひらを読み取り、手相を見ることができます。

これは、2016年に人気だったアプリにはない機能であり、アプリが進化しうること、そしてテクノロジーに精通したユーザーにリーチできることを示しています。

Investors focus on it

投資家も注目

投資家も市場の可能性を見据えています。

占星術だけでなく、オーラリーディング(人のオーラを見ること)やミディアムシップ(霊媒)などを含む「神秘的なサービス」と呼ばれる市場は、現在、22億ドル(約2,300億円)の価値のある業界といわれています。

先述のアプリの売り上げのように、インターネットやアプリでの収益化がスタンダードになってきています。

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: Sanctuary

2019年初めに立ち上げられたSanctuaryは、月額19.99ドル(約2,100円)で、ホロスコープと「パワー絵文字」に加え、自身に合った占星術師とのチャットができます。

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: The Pattern

The Patternは、出生データを使用してユーザーのパターンを決定する「パーソナリティ」アプリ。その「パターン」に基づいた星占いが送られてきます。

ちなみにこのアプリ、俳優のChanning Tatumが「セラピー中に語った内容と、The Patternから送られてくる内容がほぼ同じ」として、自身のスマホが盗聴されているのではないかと訴える動画をInstagramに投稿し、炎上。その後、多くの人がダウンロードし、アプリは一時的にクラッシュしました。

このなかでも注目は、2019年、2番目にダウンロード数が多かったトップ10の占星術アプリCo-Star。若干31歳のCEOであるBanu Gulerが、2017年、NYを拠点に設立した占星術のスタートアップです。2019年、500万ドル(約5.2億円)のシードマネーを調達し、投資家たちからも期待されています。

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代
Image: Co – Star

Co-Starは無料でダウンロードできますが、ユーザーは2.99ドル(約310円)を支払うことで、友達やパートナーの出生情報をアプリに登録することができます。2019年夏の時点で、登録者数が500万超えていますが、スタイリッシュなデザインも若い世代への人気の秘密かもしれません(ウェブサイトからもお試しで出生地、誕生日、生まれた時間を入れることでチャートが見られます。気になる方は是非!)。

しかし、占い市場には問題もあります。利用者が限られている可能性があることです。着実に収益を伸ばしていますが、リーチはそれほど速く伸びていないのが現状です。 2019年、最もダウンロードされたトップ10の占星術アプリは、1900万件の初回インストールを記録。これは、2018年に比べて3%の増加にすぎないのです。

今後、世の中に対する不安が増大すればするほど、マーケットは大きくなるのでしょうか? そうであってはほしくないですが、ポジティブなアイデアを教えてくれる占いは、不安やストレスを抱える若者の良きパートナーであることは間違いなさそうです。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 新型コロナで行動が制限される、中国の若者のリアルな生活。世界中に蔓延する新型コロナウイルス。感染者の増加がほとんどなくなった中国ですが、まだ自由ではない生活を強いられる状況が続いています。そんななか、中国のクリエイティブな業界で働く若者たちはどのような生活を送っているのでしょうか? そのリアルをレポートしています。
  2. コロナの影響を受ける交通網。アメリカでは日に日に新型コロナウイルスの感染者が増え続け、イベント中止や学校閉鎖などが起こっています。日々の生活の足となる交通機関や交通系スタートアップにも影響がでています。非常事態宣言があったサンフランシスコでは、鉄道会社BARTの乗車数が2月の最後の週と3月の最初の週の間に8%低下しています。
  3. 中止・延期が続く音楽業界。新型コロナウイルスによって、音楽業界では特に、ライブパフォーマンスや大規模なイベントに関して中止と延期せざるを得ない状況になっています。今月、マイアミで開催予定だったULTRAはキャンセル、4月に開催予定だったCoachellaも10月に延期が決まっています。
  4. ウイルスから守るファッショナブルなスタイル。モデルのナオミ・キャンベルが自身のInstagramにて、新型コロナウイルスから身を守るためのオシャレすぎるスタイルを披露しています。LAからNYへ向かう飛行機に登場したナオミは、マスク、手袋、白の防護服の上に、モードなキャメル色のケープを纏い、自身の対策をアピールしました。

【今週の特集】

Image for article titled Millennials:無神論者の「占い」新時代

今週のQuartz(英語版)の特集は「AI’s power problem(AIの権力問題)」です。AIが人間が生み出した巨大なデータを基に開発されるなかで、人間の持つ「ステレオタイプ」が助長される問題が起きています。これを正すには、アルゴリズムだけではない、人間の関与が必要になる――。その最前線をQuartzがレポートします。

👇に、こちらの記事をシェアできる機能が追加されました(Quartz Japanのツイッターで最新ニュースもどうぞ)。