Startup:コロナ禍で急成長しているスタートアップ

Startup:コロナ禍で急成長しているスタートアップ

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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

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Image: REUTERS

コロナショックでリモートワークを始めてみた方、やってみると意外とイケますよね。でも大人数が集まるカンファレンスやミートアップの「リモート化」は、さすがに無理と思っていませんか?

世界であらゆるイベントが中止や延期に追い込まれるなか、設立2年目の若きスタートアップに世界の注目が集まっています。今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、オンラインのイベント開催を可能にするRun The Worldを取り上げます。

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Image: RUN THE WORLD

Run The World(オンラインイベントプラットフォーム)

  • 創業:2019年
  • 創業者:Xiaoyin Qu、Xuan Jiang
  • 調達総額:430万ドル(約4億5,000万円)
  • 事業内容:オンラインカンファレンスの運営サービス

EVENT CAN BE HELD ONLINE

オンラインで完結

「日々の仕事はリモートでこなせても人との出会いや人脈作りはリアルに限る」と、再びイベントに足を運べる日を心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。そんな期待を打ち砕く革新的なサービスが、世界から注目を集めています。

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Image: RUN THE WORLD

Run The Worldは、イベント開催と運営の全てをオンラインで完結させます。参加登録、チケット販売と支払い、コンテンツ配信や質疑応答、参加者のネットワーキング、事後フォローの全てをワンストップで提供するのです。いわばZoom(ビデオ会議)とEventbrite(チケット販売)、Twitch(ライブ動画配信)、LinkedIn(ビジネスSNS)が一つになったサービスです。

設立は2019年7月。ベータ版でサービスを磨きこみ、訪れた「コロナ特需」。先月末に正式ローンチし、世界中から問い合わせが殺到。現在爆発的にユーザーを伸ばしています。

UNCOMPROMISING SERVICE

妥協なき「リモート」

Run The Worldの利用はとても簡単です。主催者は日程を決めフォームに各セッションの内容を入力。登壇者にはIDと管理画面のリンクが送られ、略歴やスライドをアップロードします。

出席者はオンラインでチケットを購入し、当日は好きなセッションに参加します。当然スピーカーも参加者もリモートで、世界のどこからでもすぐにイベントに参加できます。

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Image: RUN THE WORLD

出席者は登壇者に拍手など絵文字で気分が伝えられ、質問もチャットで気軽にできるため、リアルタイムでの双方向型セッション運営が可能です。

アフターパーティや懇親会のような、カジュアルなつながりをサポートする「カクテルパーティー」の機能もあります。出席者は自己紹介動画をあらかじめ登録。自分の興味関心に沿ってつながるべき人を提案され、関心あればそのまま音声で会話し、関心なければ別の人が提案されます。

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Image: RUN THE WORLD

実際のパーティでは何度も自己紹介するのも大変ですし、シャイな人は積極的に話しかけるのも苦手なもの。自分に相応しい人を勝手につないでくれるので気楽ですし、つながった人はリスト化され、イベント後に一斉にメッセンジャーでフォローアップするのも簡単です。もらった名刺が誰のか分からなくなったり、後日メールでフォローするなどの手間もありません。

利用料はイベントのチケット販売額の25%のみ。会場費用やスタッフの人件費など固定費がかからないので、集客見込みが未知数でも赤字になるリスクがなく、小型・低予算のホストでも効率的にイベントを開催できます。

TECH TRAVELS BEYOND TIME AND SPACE

テックは時空を超える

創業者兼CEOのXiaoyin Qu(シャオイン・ク)は、FacebookとInstagramでエンタテイメント系プロダクト開発のリーダーを務めていた人物です。退職してスタンフォード大学のMBAに進みますが、2018年に転機が訪れます。

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Image: RUN THE WORLD

故郷・中国で医療研究者として働く母親の、初めての海外出張。シカゴで開催される学会に参加するために、中国の出国手続きやビザの取得、飛行機チケットやホテルの手配、そして仕事を2週間離れるスケジュール調整など、大変な苦労をしたそうです。

「母親が中国にいながら、オンラインでカンファレンスに参加できる仕組みがあればいい」。そう決意した彼女はMBAを中退し、Facebook時代の同僚で上級エンジニアのXuan Jiang(スアン・チアン)とともに、2019年7月にRun The Worldを立ち上げます。

その姿が有力VCアンドリーセン・ホロウィッツの女性パートナー、Connie Chan(コニー・チャン)の目に留まりました。彼女は長らく、「出会い系アプリ以外で知らない人同士がつながれるサービス」への投資機会を探していたのです。

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Image: ANDREESSEN HOROWITZ

コニーはRun the Worldを「新たなコミュニティ発見と育成のツール」と位置づけています。「自分の得意領域があれば、これまでのように参加するだけではなく、主催することもできる。自分の特技や知識を他人と共有し、報酬も得られる。カンファレンスを民主化する、新たなプラットフォームだ」と。

そして、実際のイベントで体験するコーヒーブレイクやハッピーアワーなど、偶然の出会いをオンラインでいかに代替できるかが2人の創業者がFacebookで培った知見が活きると見抜きます。「“声をかける勇気”という心理的障壁を取り除いたネットワーキングの体験は、リアルを上回る可能性を秘めている」と期待を寄せています。

FUTURE OF COMMUNITY

コミュニティの未来

Run the Worldではすでに30以上のイベントが開催されていますが、ラオスのゾウを保護するカンファレンス、新型コロナウイルス撲滅に向けたハッカソンイベントなど、ニッチでユニークなものも多いです。

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Image: RUN THE WORLD

一方、イベント参加者の90%が、世界中から訪れています。コミュニティは細分化され、メンバーは分散する。物理的な空間よりも、オンラインで気軽に集い、出会い、教え合う場が求められるのは、新型コロナウイルスの感染拡大にかかわらず、自然な流れだったかも知れません。

現在、大規模カンファレンスや新製品発表会など続々とオンライン開催へと移行していますが、「次回からはオンラインのみ」というイベントが増える可能性は高いでしょう。5Gなどのテクノロジーの進化もこれを後押ししています。

Run the Worldの社員は20名ですが、中国と台湾にも開発拠点を構えています。創業者が中華系で、米中両方に組織を構える点は、ビデオ会議ツールのZoomと同じ。リモートワークでオフィスをディスラプトしたZoomのように、Run the Worldはオンラインイベントでカンファレンスをディスラプトする存在になるのでしょうか。今後に注目です。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. ベイエリアを出て行く技術者に1万ドル支援。採用事業を手がけるスタートアップMainStreet(メインストリート)は、エンジニア、製品管理、UXおよびUI設計のポジションについて、リモートで就業するプログラムを支援しています。少なくとも1年間はオフィス外から遠隔で仕事を続ける縛りがあるものの、企業にとっては、家賃が高騰するベイエリアに集中する候補者の家賃や給与カットによって30〜40%のコストカットが期待できるそうです。
  2. 男性のためのヘルスケア企業が3,000万ドル(約32億円)調達。男性の「よりよいボディ、よりよいセックス、よりよい脳」を掲げ、テストステロン不足、薄毛、勃起不全といった男性特有の症状をケアするサービスを展開するスタートアップVault(ヴォルト)は3,000万ドル(約32億円)を調達。資金を元手にニューヨーク、フロリダ、テネシー、テキサス以外、全米42の都市に事業を拡大する計画です。
  3. コロナは「自己スクリーニング」で。新型コロナウイルス感染のリスクが高いか低いか、判断を助けるチェックツール「Buoy Health(ブイヘルス)」が登場しました。正しい情報を提供した上で何をするべきか、理解を促すことで過剰な不安を鎮める一助になることを願うと、同社CEOは説明します。
  4. 5Gデバイス、まだまだ。「5G」の知名度は上がったものの、価格が高い割に使えるところが少ない5Gデバイスの昨年の販売数は、米国全体の総売り上げの1%にも達していません。ただ、2019年の下半期だけで上半期の9倍の売り上げとなっており、今後店頭に並ぶ機種が増えて5Gの圏域が増えれば、消費者の購買意欲が後押しされる可能性があります。

今週の特集

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今日16日に配信開始の、Quartz(英語版)の特集は「The business of fertality(不妊のビジネス)」です。出産年齢が高齢化し、一方で、親世代の経済水準がかつてより上がるなか、不妊ビジネスはかつてない規模に成長しています。数千億円規模のビジネスとなった、不妊ビジネスの最前線をQuartzがレポートします。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)

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