Weekend:パンデミックの世界史

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Need to Know: Coronavirus

今知っておくべきこと

Quartz読者のみなさん、こんばんは。平日AM、PMにお届けしているニュースレターに加え、特別版として、拡大するこの感染症の「今」をお送りします。

Need to Know: Coronavirus

Quartzでは「Need to Know: Coronavirus」と題したニュースレター(英語版)をスタート。週に数度、感染の拡大による社会的・経済的なインパクトをお伝えしています。

今日は、最新版のニュースレターから「オンライン教育の取り組み」「米国への入国禁止による航空業界への打撃」「パンデミックの世界史」「NYでのオフィス消毒事情」をお届けします。

新型コロナウイルスに対する緊急度はいや増すばかり。ニュースレター「Need to Know: Coronavirus」の内容は、今回に限らず、随時、日本語でも皆さんにお届けする予定です。

また、Quartz JapanのTwitterアカウントでも、米ジョン・ホプキンス大学の統計に基づく感染者数、累計死者数、そして累計回復者数を日々アップデートしています。あわせてチェックしてみてください。

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MOOCs of hazard

学びの“危”と“機”

新型コロナウイルス感染症が「パンデミック」段階にあるとの認識が示されて以降、世界中の何百もの大学が物理的なドアに代わりヴァーチャルなドアを開くに至りました。

大学側は、学生に対して、自宅から授業にログインするよう呼びかけています。誰しもこうなることを望んではいませんでしたが、期せずしてオンライン学習にとっての転機が訪れています

MOOC(大規模オープンオンライン講座)はそもそも10年前、高等教育の民主化を目指して始まりました。

2012年、スタンフォード大学の2人の教授(Sebastian ThrunとPeter Norvig)が受け持った大学院レベルのコース「CS221:Introduction to Artificial Intelligence人工知能入門)」には、190カ国から16万人の学生が集まり、100人以上のボランティアが講義をベンガル語を含む44の言語に翻訳しました。世界中で、学ぶ者と教える者とが、世界最大の教育テックの実験をスタートさせたのです。

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Image: REUTERS/NATHAN FRANDINO

しかし、MOOCは壁にぶつかります。受講生のうち、コースを実際に修了した者はほとんどいなかったのです。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が行なったある研究によると、オンライン講座の退学率は天文学的なもので、5年間で平均約96%に上るといいます。

今日、MOOCの多くは、そのビジネスモデルを微調整しています。課金化をはじめ、修了率以外の指標を設けたり、学生が耐えられるボリュームの「ミニ学位(nanodegrees)」を提供したりしているのです。

今起きている世界的危機は、MOOCのポジションを変えました。米国拠点のオンライン教育企業Courseraでは、1月から2月にかけて、中国と香港からの入学者数が47%増加し、ベトナムでも30%増加しました(特に中国・香港では、公衆衛生コンテンツの登録者数が185%増加)。さらに、Courseraは3月12日、コロナウイルスの影響下にある世界中の大学に対して、3,800のコースへの無料アクセスを提供することを発表しました

「(実装には)何年、何十年もかかっていたかもしれません。しかし、私たちは今、コロナウイルスによって迅速なる“実験”を強いられている状況にあります」と、CourseraのチーフエンタープライズオフィサーLeah Belskyは言います。

それはよいことだと、彼女は付け加えます。「教育システムには2つの重要な問題があります。まず、高等教育へのアクセスが著しく欠如していること。さらなるテクノロジーが採用されることで、アクセスはより容易になるでしょう。そして、品質面でも大きな課題を抱えています」

そして、いずれの課題についても、今後大規模な実験がなされることになるでしょう。

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Image: REUTERS/GUGLIELMO MANGIAPANE

NOT COMING TO AMERICA

航空業界の痛手

2019年に米国を訪れたヨーロッパ人(英国を除く)は1日あたり約25,000人に及びますが、こうした旅行もすべて、30日間はできません。米国が発表した入国禁止は、欧州28カ国に及びます。

旅行業界はすでに痛手を受けています。調査会社バーンスタインの航空アナリストによると、この制限措置は週3,500便最大80万人の乗客影響します

影響を最も受ける航空会社は、独ルフトハンザ航空やオランダに本社を置くエールフランス-KLMなど、大西洋路線を定期的に運航している会社でしょう。

すでに問題を抱えていたノルウェイ航空は従業員50%をレイオフする予定で、デルタ航空はヨーロッパ行きの便を廃止し、運航の40%を削減するという大規模計画を発表しました

■2019年の米国訪問者数(国別)

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DIRE EDUCATION

歴史からの教訓

WHOは、ついに新型コロナウイルスを「パンデミック」と分類しました。しかし、歴史を見れば“世界的感染”は初めてのことではなく、感染拡大をいかに管理するかについて示唆を与えてくれます。

  1. アントニヌス帝のペスト(紀元165〜180年から250年):現在のイラクでの包囲戦から持ち帰られたレジオネラ属菌によって、ローマに天然痘・はしかが持ち込まれました。
  2. 最初のインフルエンザ(1580年):最初のインフルエンザ・パンデミックは、アジアからヨーロッパへの貿易ルートを通じて広まりました。
  3. 19世紀のコレラ(1800年代):インド・ベンガル湾で発生した流行は、植民地の貿易ルートに沿って広がりました。研究者たちは接触者を追跡することの重要さを知ることになりマました。
  4. スペイン風邪(1918年):史上最悪の医療事故で、5,000万人が死亡しました。このパンデミックでは、人と人との距離をおくことでどれだけ多くの命が救われるかを明らかになりました。公共のイベントを中止した都市の方が、発生件数がはるかに少なかったのです。
  5. 20世紀中頃のインフルエンザ(1957年、1968年):いずれも鳥インフルエンザが原因で、100万人以上が亡くなりました。免疫学や国際政策の進歩がなければ、その数はもっと多かったかもしれません。この頃までには、インフルエンザワクチンとWHOの両方が生まれていました。
  6. HIV/AIDS(1970年代から現在):HIV関連疾患によって、3,200万人が死亡しています。この世界的流行は、抗レトロウイルス薬をはじめとする医学的進歩や、注射針交換やコンドーム普及といった公衆衛生プログラムにつながりましたが、同時に、社会的な不名誉の“烙印”を捺すことの危険性についても多くのことを教えてくれます。
Boccaccio’s ‘The plague of Florence in 1348’
Boccaccio’s ‘The plague of Florence in 1348’
Image: Creative Commons

CLEANING HOUSE

清掃業者は語る

Quartzのニューヨーク本社では、オフィス掃除を徹底しています。静電スプレーガンを使って、あらゆる場所を病院用消毒剤の液膜で覆う方法をとっています。

こうした清掃に対する需要は高まっています。米テキサスに本社をもつGermBlastへの問い合わせの電話は、ここ数日で4倍に増えているといいます。GermBlastは、業務用クリーニングサービスを提供する会社で、静電スプレー「Victory」の正規販売代理店でもあります。

「静電スプレーは6月まで入荷待ちです」と言うのは、GermBlastのヴァイスプレジデントChristy Haynesです(我々との通話中、彼女は米国土安全保障省とも電話で話していました)。「あちこちから電話がかかってきます。手の除菌用品を求める人もいますし、壁に取り付ける除菌機を求める人もいます。私たちも、手に入れようにも困難な状況にあります」

A Servpro worker wheels in an electrostatic sprayer at Life Care Center of Kirkland, a long-term care facility linked to several confirmed coronavirus cases, in Kirkland, Washington, U.S. March 13, 2020.

英語版(参考)はこちら

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