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MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日の「Millennials Now」では、アメリカで引き続きテーマになっている、新型コロナウイルスに対する「世代の価値観の違い」をピックアップ。また、若者を襲う別の問題にも迫ります。
COVID-19が世界的に拡大するなか、「ウイルスは高齢者にとっては危険なものだが、若者にとっては危険ではない」といった認識も世界共通で広まっています。
米メディアThe New York Postは、「Redditが生み出し、ソーシャルメディアに浸透している『Boomer Remover(ブーマーリムーバー)』は、若い世代の間で新型コロナウイルスのキャッチフレーズになっている」と報道。ソーシャルメディア上では#BoomerRemoverといったハッシュタグが、実際に多く見られます。
Boomer Removerとは、その名の通り「ベビーブーム世代(1946年〜1964年生まれ)を排除する」という意味で、新型コロナウイルスは高齢者を消すためにできたものと、なんとも皮肉なワードとして誕生しました(日本でもある「老害」という言葉に近いかもしれません)。
このワードが誕生した背景には、60歳以上の人は若年層に比べて感染・重症化するリスクが高いことがあります。新型コロナウイルスのリスクは年齢とともに増加し、80代および90代の人々が最も高いとされています。米疾病対策センター(CDC)によると、米国でのコロナウイルス関連の入院の約40%が54歳未満であるという事実にもかかわらず、死亡患者の80%は65歳以上の人々でした。
これらの事実から、ミレニアル世代とZ世代は「新型コロナウイルスは、ベビーブーム世代の脅威にすぎない」という誤った認識を抱き、自分は大丈夫という自信が独り歩きしています。
そのため、彼らは外出したり、集まったり、自粛することを止めなかったのです。ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策調整官であるDeborah Birx(デボラ・バークス)が3月16日(現地時間)の記者会見で、ミレニアル世代は「ウイルスを止めるコアグループである」と述べ、若者に対して意識を高めるようにしたのには、そうした背景がありました。
Stay at home
外出禁止令
米国では現在、新型コロナウイルスの広がりを阻止するため、外出禁止令が各州で出されています。カリフォルニア州ではじまり、現在、17の州、26の郡、10の都市で少なくとも1億7,500万人の人々が家にとどまるように命じられています。
■米国内の外出禁止令マップ(オレンジは州で禁止、肌色は州の一部で禁止)
食料品店や病院に行き、新鮮な空気を吸うために家を出ることできるものの、この「外出禁止令」はアメリカの生活を根本的に変えています。
こういった「外出禁止令」が発生してもなお、若者は言うことを聞きません。フロリダでは春休みを楽しむ若者でビーチがぎっしりだった様子が報じられました(その後、ビーチは閉鎖)。
3月24日(現地時間)にはケンタッキー州で、若年成人のグループによる「コロナウイルスパーティー」の参加者少なくとも1人が新型コロナウイルスに感染するなど、これだけ感染が世界中で拡大しているのにもかかわらず、自由に行動している人たちがいるのです。
しかし、「若者は無敵」だという考え方は本当に正しいのでしょうか?
Are young people invincible?
若者は本当に無敵?
若者がウイルスに感染しやすい、しやすくないという話とは別に、混沌とした「ポストコロナ」の世界で若者は本当に生き残ることができるのでしょうか?
米国では約3人に1人(35%)がミレニアル世代で、労働力の最大のシェアを占めます。そして、経済の重要な部分を担っていますが、同時に経済的苦境にも直面しています。
Z世代やミレニアル世代の多くはギグワークで複数の仕事をこなしており、ほかの世代よりも保険に加入していない可能性が高いといわれます。また、多くの若者が学生時代の借金を背負い、高騰し続ける家賃を払い、マイホームとはほど遠い生活をしています。
また、薬物の過剰摂取による死亡も多いだけでなく、経済的な理由から結婚し家庭を持つことを先延ばしにし、孤独で過ごしている人も多数います。
2019年に発表されたBlue Cross Blue Shieldによるミレニアルズの健康に関する報告書によると、ミレニアル世代の中心である30代半ばの成人の8人に1人以上が高血圧で、25人に1人は2型糖尿病であることが分かっています。
しかし、多くのニュース報道は一貫して、今回の新型コロナウイルスでは高齢者や健康状態の悪い人が最も脆弱で、最も死亡する可能性が高いと強調しています。
確かに、死亡率だけを見ると、高齢者が「危険」という認識も一理あります。しかし、若者に対して心配されているのは、新型コロナウイルスの感染だけではなく、やがて訪れる「ポストコロナ」の世界で起こる、メンタルヘルスの衰弱化でもあるのです。
Mental healthcare
「うつ」の増加
Blue Cross Blue Shieldは、2017年、21歳から36歳の5,500万人のアメリカのミレニアル世代のデータを分析したレポートを開示。そのなかで、2013年以来、ミレニアル世代におけるうつ病の診断を受けた人が47%増加。そのうち、5人に1人は適切な解決法を見出だせていないという結果です。
パンデミック下で、家に留まり、Social Distancing(社会的距離=大衆の集まりから離れ、ほかの人から6フィートまたは2メートルの距離を保つこと)を実践すると、一人暮らしや不安・うつ病と闘っている若者にとって、さらにリスクが高まります。
米国科学アカデミーの新しい報告によると、社会的孤立によって認知症のリスクが50%、心臓病のリスクが29%、脳卒中のリスクが32%それぞれ増加したと述べられています。
Well Being Trustの最高戦略責任者である心理学者、Benjamin F. Miller(ベンジャミン F. ミラー)は、「ミレニアル世代の多くは、すでに社会的に断絶されたと感じている。この新型コロナウイルスの影響で置かれている状況は、その感情を悪化させている」と述べています。
また、また、既婚者の割合の低いGen-Z、ミレニアル世代は、すでに多くの人が孤独や取り残されていると感じているとも報告されています(米国人20,000人を対象、2018年、Cigna)。
さらに、18歳から37歳までの人は、ほかの世代に比べて、有意義な人間関係が築けていません。誰ともアイデアや興味を共有しておらず、孤立感を感じるため、孤独の問題に直面しています。
こういった理由から、若者のもともと悪化しているといわれているメンタルヘルスが、今回の新型コロナウイルスで起こっている環境の変化により、さらに悪化するのでは? と懸念されているのです。
さらに、アメリカでは新型コロナウイルスの影響で最も失業のリスクが高いのは、有色人種の人々と若年労働者ともいわれ、窮地に立たされる人も多く出てくるかもしれません。
Help this situation
「孤独」からの救済
こういった孤独な状況や不安な状況が続くため、少しでも家のなかで何か工夫をしてみようというアイデアが世界中で見られます。
床に洗剤を撒き、滑るようにすることでランニングマシーンを自作する人、バルコニーでマラソンを完走する人、家でDJをする人など。セレブやアーティストは、Instagramのライブ機能やYouTubeを使って音楽を配信したり、視聴者と会話。NYの人気ヨガスタジオでは、ヨガのレッスンを配信をしています。
Nikeは、家でのワークアウトをより快適にできるようにするために、Nikeメンバー全員にNike Training Club(NTC)プレミアムへの無料アクセスを提供。
また、Netflixユーザーが友達とチャットしたり、複数ユーザーが同時に番組を見ることができるブラウザ拡張機能“Netflix Party”が再注目されています。
オンライン上ではありませんが、孤独を少しでも和らげる(?)マリファナの需要も高まっています。
3月16日から3月22日の間に、米国・カリフォルニア州、コロラド州、オレゴン州、アラスカ州を含む米国の主要市場における嗜好用大麻の売上高は50%増加し、医療用大麻の売上高は前年同期比41%増加したことが調査でわかりました。多くの企業が閉鎖を命じられていますが、マリファナの販売店は「必須サービス」としてリストされており、営業を続けることを許可されています。
インターネットやソーシャルメディアの使用が、若者のうつを増加させる原因にもなっていますが、この状況下ではもはや頼らざるを得ないでしょう。やはり、自分自身で正しく取捨選択をしていくことが大切です。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- 買い物代行サービスInstacartが増員へ。北米5,500都市で展開するオンデマンド型の買い物代行サービスInstacart(インスタカート)が、買い物代行スタッフを今後3カ月で30万人の増員を発表しました。新型コロナウイルスの影響で在宅の人が増え、需要が急激に高まったことが理由です。
- 人がいないホテルやコンベンションセンターが、ホームレスの避難所に。カリフォルニアからケンタッキーまで、市と州の当局者は、ほんの数週間前にはイベントや人で賑わっていたスペースに一時的に「在宅」命令に追従する能力のないホームレスを避難させるための行動をとっています。しかし、場合によっては、密集した場所での集団感染に対する対策がなされていないこともあり、懸念されています。
- 新型コロナウイルスでテレビの視聴率増。数十年にわたるテレビ放送の視聴者数の減少を一時的に止めている、新型コロナウイルス。The New York Timesによると、米国の4つの主要放送ネットワーク(ABC、NBC、Fox、CBS)のテレビ視聴率は、3月1日から毎週増加。先週、平均して3,200万人のアメリカ人が夕方のニュースを視聴しています。。
- 人気俳優発のワークアウトアプリが無料配信。俳優のクリス・ヘムズワースが、家でできるワークアウトアプリ「Centr」を6週間の期間限定で無料提供しています。新型コロナウイルスのパンデミックのなかで隔離されている人々が、自宅で快適に過ごせるようにという目的でリリース。肉体美でも知られるクリスを覗いてみるだけでもいいかもしれません。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「Why startups fail(なぜ、スタートアップは失敗するのか)」です。スタートアップのムーブメントが世界を覆いはじめても、やはり成功するのは難しい。そんな中で、スタートアップの成否を左右する一つの要素について、Quartzがレポートします。
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