MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日お届けする「Millennials Now」はZ世代にフォーカスし、パンデミック以降の彼らの社会に対する価値観の変化をレポートします。
医療体制が充実しワクチンが開発されない限り、米国は2022年までソーシャルディスタンシングの措置を続ければならない可能性があると、ハーバード大学の研究チームが発表しました。いつ終わるか分からない不透明で不安な状況が続くなか、失業や一時休業、労働時間の短縮などに直面する若い世代は、ポストコロナの世界(あるいは、コロナと付き合っていく“with”コロナの世界)をどう生きていくのでしょうか?
そして今、「ポストZ世代」と呼ぶべき新しい世代に対する考察も始まっています。
Center for Generational Kinetics(以下:CGK)の社長で、2020年9月に刊行を予定している『Zconomy: How Gen Z Will Change the Future of Business』の著者Jason Dorsey(ジェイソン・ドーシー)はチームを率い、新型コロナウイルスのパンデミックがZ世代に及ぼす影響を研究しています。
研究は初期段階にあるものの、すでに幾世代にわたる大きな影響が出ているといいます。Business Inseiderに対し、ドーシーは「COVID-19は、Z世代と次世代とを分けるものになりそうです」と話しています。
Pandemic changes
変わるZ世代
いわゆるZ世代は、1990年代後半~2000年生まれを指します。2020年というタイミングは、この世代にとって非常に重要な時期にあたります。調査会社のPewが説明するように、思春期および青年期は、それぞれが世界をより意識し、自分のアイデンティティや信念を形成する時期だからです。
パンデミックの影響は、すでに顕著に表れています。
同じZ世代でも、高校生と大学・社会人ではお互いに異なる経験をしていると、先述のドーシーは言います。
「前者は卒業後の計画についてより心配し、後者は仕事の見通しについて心配している。全体として、Z世代はいままで以上に経済的なリスクを回避するようになる可能性が高く、パンデミックは彼らの仕事や学習に対する見方を変えるでしょう」
影響としては、まずメンタルヘルスの問題が上げられます。孤独や恐怖、予測できないこと(不確実性)は、メンタルヘルスの懸念をさらに悪化させるかもしれません。米心理学会によると、Z世代は精神的に悪い健康状態を報告する可能性が高く、10〜24歳の間での自殺は、2007年から2017年までに56%増加しています。今後、その状況はさらに悪化すると予想されます。
次に、仕事の問題があります。16~24歳の労働者の半数近くがバー、レストラン、ホテルなどのサービス業に従事していましたが、現在その多くが閉鎖され、あるいは大幅に縮小されています。そして、経験の未熟な若い労働者は、最初に解雇される可能性が高いのです。
そして、金銭面の問題。大学生は、インターンシップや夏の仕事、ネットワークやキャリアを構築するために不可欠な仕事を失っています。College Reactionの調査では、91%の大学生が経済や雇用市場についての懸念を訴えており、半数以上が金銭面での不安を挙げています。
こういった多くの懸念から、政治に対する視線も厳しいものになります。すでにZ世代の70%が、政府は問題解決のためにもっと努力すべきだと考えているのです。
また、Z世代に新たに生まれるコアヴァリューとして、下記が挙げられています。
- 「国家」「アメリカ」
- 「みんな一緒」だから「助け合おう」(「私」ではなく「私たち」)
- 人間は自分たちよりも強力な力によっていつでも盲目になりうるという理解(今回の場合はウイルス)
- 謙虚さ
Baby boom is coming again?
ベビーブームは来る?
では、Z世代の“次”の世代となると、どうでしょうか。「その世代はまだ幼く、どのような姿になるかは分かりません。しかし、これから先の歴史の本にCOVID-19のことが記されるのは間違いないでしょう」と、ドーシーは話しています(一部のメディアには、これから生まれてくる次世代の子どもたちにを「coronials(コロニアルズ)」と呼んでいるものもあります)。
もっとも、多くのカップルが“stay home”を余儀なくされている状況にあっても、「ベビーブーム」は期待できないようです。というのも、人間は、こうした先行きの見えない状況では子どもをつくる機会を避けるというのです。
危機下の出生率に関しては、これまでも多くの研究者たちからさまざまな見解が出されてきました。
たとえば、1965年の北米大停電から9カ月後、1966年に複数の大病院で起こった出生数の急増をThe New York Timesは報告しています。しかしその後、1970年に発表された論文で、社会学者のJ. Richard Udry(J.リチャード・ウドリー)は「出生数の増加とブラックアウトに相関はない」と説明しています。
また、2000年代後半には、ハリケーン警報が出生率に影響を与えるかどうか、米国人研究者が調査しています。ある郡における調査では、熱帯性暴風雨警報のような低レベルの警報が出された後で24時間ごとに出生数が2%増加した一方、非常に厳しいハリケーン警報の場合は2%の減少が見られたといいます。つまり、危機が高まれば高まるほど出生率は下がるというのです。
もっとも、1977年のニューヨークでの大停電でも2001年の同時多発テロでも、2005年にハリケーンカトリーナがニューオリンズに襲来したときも、さまざまな災害危機の際に出生率は上がり、ベビーブームが起きています。今回の新型コロナウイルスについて異なる見解が導き出されているのは、先行きの不透明さが人をかつてないほどに不安にさせているということなのかもしれません。
そもそもZ世代やミレニアル世代が子どもをつくらない根拠として、彼らの生き方そのもの変化を挙げる向きもあります。ジョンズ・ホプキンス大学の人口統計学者Alison Gemmill(アリソン・ジェミル)は、「セックス、結婚、家族を育てることをめぐる習慣は、この数十年間で変化してきた」と指摘しています。
意図しない妊娠や10代の妊娠は、この数十年間で最も低いレベルにまで減少。国勢調査局のデータによると、若者の平均の結婚年齢は30歳に近づいています。また、15歳から49歳までの米国人女性のほぼ3分の2が何らかのかたちで避妊していると、2018年に米疾病予防管理センターは報告しています。
対照的に、1946年から1964年にかけてのベビーブームの背景には、戦後の幸福感と経済的安定とがありました。カップルは若くして結婚し、家を買う余裕があり、すぐに子どもを授かりました。連邦政府が最初の避妊ピルを承認したのは1960年になってから。つまり、彼らには未来への希望が大いにあったのです。
いずれにせよ、かつてないほどの「特別な環境」で育っていく彼らが、これまでにない価値観と考えをもち、新たな世界をつくっていくことは間違いありません。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- 医療崩壊の助け舟に? MITが、自宅でCOVID-19患者の動きや呼吸を検知できるワイヤレスボックスを開発しました。パンク状態の病院システムを避け、他人に感染させないようにするには、自宅での滞在が最善の選択肢。そうした状況下で大きな助けになりそうですが、問題は、限界状態にある医師や看護師が、どうすれば遠隔で治療を提供し続けられるかということです。
- ミレニアル世代が「電話」に回帰。ロックダウン下で愛する人や友達とチャットしたければ、FaceTimeやWhatsApp、Zoom、Skype、Snapchatがありますが、古き良き電話がカムバックしつつあります。ミレニアル世代は電話を好まないとされていますが、“すぐにかけられる”電話が再注目されています。
- 女性たちはパンデミックをどう生きるのか? 働き盛りのミレニアル世代は自分の将来に不安を感じています。Data for Progressによると、米国のギグエコノミーの労働者、バーテンダー、ウェイターの大多数を占めるミレニアル世代の52%が、失業をはじめとする苦境に直面しています。パンデミック下で立場が弱くなるともいわれる女性はどのように生活しているのでしょうか?
- ブランドが人気メニューのレシピを公開。あのブランドが展開するメニューを家でもつくれます。家で過ごすことが多くなった人々のためにMcDonald’sはソーセージエッグマフィン、Diseneyはチュロスのレシピを公開、Wagamamaはクッキングチャンネルを開設しています。自宅での楽しみがこれで増えそうです。
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