💎 マージ完了…でどうなる?

イーサリアムの「マージ」。「歴史的」ともいわれるその過程が先週完了し、クリプト界のみならず話題となりました。が、その実態はどれほどのものなのか。とくに電力消費の点での変化が及ぼす影響について。
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Illustration: Quartz

先週水曜(14日)、深夜まで世の中の動きをフォローしていたという人なら、真っ先にイーサリアムが「マージ(統合)」を完了した、というニュースを耳にしたかもしれません。これは、「どの取引が正当なのか」「どの取引がデジタルチェーン上の新しいブロックに記録されるべきか」をコミュニティが決定する際の方法が、根本的に変化することを意味します。

そもそも暗号資産、ひいては現代の金融には、この種の合意形成の仕組みが不可欠です。多くの人が疑問を抱かずに銀行にお金を預けられているのは、なぜでしょうか? それは、銀行が彼らの資産を消失させないことを知っているからであり、銀行口座を通じて他の会社に支払いができるから。銀行の台帳には取引が記録され、銀行の従業員が管理しています。ブロックチェーンも同様に、暗号資産の全取引が記録された台帳を保管するというルールに従って、多くの人びとに利用されています。

ほとんどの暗号資産における合意形成の仕組み、いわゆるコンセンサスアルゴリズムは当初、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と呼ばれるものでした。この仕組みの下では、台帳の保管に参加するには、チェーンに新しいブロックを追加する暗号方程式を解くためのコンピュータを持っていなければなりません。

しかし、イーサリアムが先週のマージによって切り替えた仕組みは、「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれるものです。個人がコンピュータの計算能力を捧げる代わりに、イーサリアムのネイティブな暗号資産であるETHを使って、取引の確認プロセスに参加するようになるのです。

マージは、すべての人びとに影響を与えるイベントです。開発者にとっては、最大規模のオープンソースプロジェクトのひとつとなりました。環境保護主義者にとっては、マージによって電力消費量の削減を期待できます(その削減量は、フィンランドで一晩送電網を止めるほどの規模に相当します)。そして、暗号に懐疑的な人たちにとっては、イーサリアムの供給量が時間とともに縮小していく可能性を示しています。


THE BACKGROUND

変わるイーサ

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Photo: Michael Ciaglo (Getty Images)

2014年以降、イーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)は、ブロックチェーンにはPoWに代わる別の種類のコンセンサスアルゴリズムが必要かもしれないということを認識していました。

イーサリアムは、ビットコインのブロックチェーンよりも多くのことを目指しています。これは、イーサリアムが、スマートコントラクト(特定の条件が満たされるとすぐに取引を実行する自動化ツール)を可能にするためです。1993年にスマートコントラクトのアイデアを初めて説明したコンピュータ科学者のNick Szaboは、これをデジタル自動販売機に例えています。つまり「ドルを入れるだけで、中央の承認を必要とせずに、スナック菓子が出てくる」というわけです。

スマートコントラクト機能により、イーサリアム上には、仲介者や中央機関が介在しないピアツーピア金融である分散型金融プロトコルがいくつも出現しています。1日当たりの取引量で比較すると、ビットコインのブロックチェーンの何倍にも及ぶシステムとなったわけです(驚くべきことに、1ビットコインの価値は1イーサの価値よりはるかに高いにもかかわらず、です)。

イーサリアムの人気を考えると、こうした取引は今後数年で必ず増加していくでしょう。このような取引を維持するために、イーサリアムは、コンピュータが暗号方程式を計算するのを待つ必要のない別のコンセンサスアルゴリズムを見つける必要があったのです。

マージは、そのような必然的なニーズに応えるために設計されたソリューションでした。エネルギー使用量を大きく削減できるという効果はある意味、副産物ですが、地球にとっては非常に良いニュースでもあります。

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Photo: Michael Ciaglo (Getty Images)

THE LONG HISTORY OF THE MERGE

マージへの道のり

  • 2014年:ヴィタリック・ブテリンはホワイトペーパーにおいて、ブロックチェーンが今後、従来のPoWから別のメカニズムに切り替えられる必要性が高くなると言及
  • 2015年:イーサリアムが誕生。最初のブロックでは約7,200万コインのイーサが採掘された。ブテリンはこのうち55万3,000イーサを入手
  • 2020å¹´10月: PoSに対する人びとの関心度合いを調べるため、ビーコンチェーンのデポジット契約が導入される。32イーサを預けることで、イーサリアム取引の「Validator(バリデーター)」としてネットワークに傘下できるように
  • 2020å¹´11月:ビーコンチェーンが52万4,288イーサの閾値(イーサリアムがこのチェーンを実行可能なメカニズムとみなすのに必要な最小値)に到達
  • 2020å¹´12月:ビーコンチェーンが、閾値に達した7日後にローンチ。これにより、イーサリアム取引の全体量が処理できることを確認するため、チェーンのコーディングとテストのプロセスが開始
  • 2022å¹´9月:マージが正常に完了

GOING GREEN

どれくらいグリーン?

イーサリアムのマージは、クリプトの歴史の中でも最も重要なアップグレードのひとつといえるでしょう。イーサは時価総額でビットコインに次ぐ第2位の暗号通貨ですが、イーサリアム財団によると、年間約112テラワット時のエネルギーを消費しています。これはオランダ全土の電力消費量とほぼ同量です。

マージによってエネルギー集約型であるPoWが廃止されることで、推定99.95%の排出量が削減されると同財団は説明しています。この移行は、イーサリアムをより環境に優しいものにするだけでなく、気候変動に敏感な多くの投資家の間でクリプトにまつわる“スティグマ”を減らすことにもなるでしょう。

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Graphic: Quartz

資産運用会社Alpha InnovationsのCEOであるLarry Newhookは、Quartzの取材に対して「ほとんどの機関投資家は(クリプト)テクノロジーを理解していないが、その売り文句はわかっている」と語っています。「彼らはクリプトを否定する理由のひとつとしてPoWを挙げてきた。イーサがPoSに移行することで、機関投資家がノーと言う理由がひとつ減るだろう」

もっとも、クリプト全般に対して懐疑的な姿勢を崩さない人はまだ多くいます。Trillium Asset Managementのチーフ・インベストメント・オフィサー、Jon Quealyは、「われわれは、実行可能なユースケースと思われるものを特定できていない」と指摘しています。「まだそこに到達していないし、しばらくは到達しないだろう」


ONE 💵 THING

ちなみに……

マージは滞りなく行われたように見えますが、イーサの価値を高めたわけではなさそうです。実際、マージが完了したと判断された後の最初の24時間で、イーサの価格は9%以上下落しました。ブロックチェーン関連データ分析企業のGlassnodeが8月に指摘した「投資家はウワサで買って、ニュースで売る」との予測は、正しかったのかもしれません。

イーサの価格は2021年11月、1コイン当たり4,600ドルを突破しました。しかし、それ以来、「暗号の冬」の中で約1,400ドルまで下落しています。

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