Millennials:ヒット曲誕生の「新法則」

MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日お届けする「Millennials Now」では、Spotifyのチャートを分析し、ヒット曲が生まれる新たな法則に迫ります。英語版はこちら

AP/JOEL C RYAN
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Image: AP/JOEL C RYAN

2020年3月27日〜4月3日までの期間、ポップ・シンガーでありソングライターでもあるDua Lipa(デュア・リパ)の曲は、Spotifyで最もストリーミングされた米トップ40のなかに3曲ランクインしていました。

その3つの曲というのは、最近リリースされたアルバム『Future Nostalgia』のtrack 2(「Don’t Start Now」)、track 4(「Physical」)、track 9(「Break My Heart」)。アルバム内のtrack 1(1曲目)は、トップ100入りすらできることができなかったのですが、これは異例といえるでしょう。というのも、今、「track 1」がトップ40にランクインすることが非常に多いからです。

Track 1 is No.1

track 1の人気

Qartzが行った調査によると、2020年、Spotifyの米トップ40のうち、約50%がリリースされたアルバムの1曲目、track 1でした。

これらのヒットしたtrack 1のなかには、Lil Mosey(リル・モジー)の「Blueberry Faygo」、Jack Harlow(ジャック・ハーロウ)の 「What’s Poppin」、Arizona Zervas(アリゾナ・ザーヴァス)の「Roxanne」などが含まれています。

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「track 1」として扱われているものは、その時点でシングルとしてのみリリースされているか、もしくはアルバムの1曲目であるということになります。

それらの楽曲は通常シングルであり、アルバムがリリースされるまでは1曲目としてカウント。その後、その曲がアルバムのトラックリスト内に置かれるようになります。

Top hits

ヒット曲として

Spotifyのデータによると、track 1がヒット曲になるのは、より当たり前のことになってきているようです。

Spotifyが初めてストリーミングデータを公開した2017年には、トップ40のうちtrack 1としてリリースされ、1位になった曲は約40%に過ぎませんでした。その数は、2019年5月〜2020年4月までの間にほぼ50%に到達しました。

一方、track 2〜4が1位になる割合は減少しましたが、track 5以上の割合はほぼ横ばいでした。(Spotifyのチャートデータを分析したのは、Billboardとは異なり、Spotifyのトップ40とトラック番号を結びつけるのが比較的簡単だからです)。

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New movement

新たなトレンド

track 1がヒット曲になる割合が上がっているのは、単なる統計上の動きかもしれませんが、これまでとは異なる大きなトレンドを示している可能性もあります。

それは、ストリーミングが音楽業界の最も重要な収益源となったことで、アルバムの重要性が低下している、ということです。

私たちは、ストリーミングの際に自分の好きな曲を選ぶことができるようになったので、まとめて音楽を購入する必要がなくなりました。その結果、多くのミュージシャンが、アルバムをリリースするよりも先にシングルをリリースするようになったと、Rolling stone誌は報じています

この状況は、Spotifyのデータからも見て取れます。アルバムの一部ではなく、チャートに入った時点でまだシングルだった曲がトップ40に入る割合は、2017年初頭には約30%だったのに対し、2020年初頭には40%近くまで上昇しています。

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ただ、シングルでのリリースを除くと、track 1が首位になるわけではありません。アーティストが8曲以上をリリースした場合、Spotifyでのトップ40にチャートインするのは、track 2になるようでした。

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Go viral on TikTok

TikTokの影響

シングルとしてリリースされた曲の人気が急上昇している理由として、TikTokの影響も考えられます。

米国だけでなく世界的にも最も人気のある曲は、TikTokでヒットし、拡散性のあるTikTokダンスチャレンジで使われています。

YouTube/“Roxanne” by Arizona Zervas
YouTube/“Roxanne” by Arizona Zervas

たとえば、Arizona Zervasの「Roxanne」は、TikTokのミームをきっかけにバイラルヒットとなりました。同曲は、数カ月間、Spotifyチャートの上位にいましたが、2019年末には2位を記録したこともあります。

過去のほとんどのヒット曲とは異なり、この曲のリリースは、予定されていたアルバムの発売の一部ではなく、ずっとシングルだったのです。

このように、シングルが売れるのは、ストリーミングとソーシャルメディアに牽引されている世界の劇的変化によるものであり、これまでのアーティストがしていたような「アルバム制作のために長いあいだ姿を消し、大きなイベントに戻ってくる」という状況は見られません。また、ファンもより、ソーシャルメディアを使ってアーティストの近くに寄り添っていたいと思うのです。


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